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東大60年の体力調査が示す、青年期の運動習慣と年収の関係

 東京大学で約60年にわたって実施されてきた体力調査により、学生時代に体力が高かった人ほど卒業後の年収が高い傾向にあることがわかった。大正製薬は2026年5月18日、東京大学名誉教授の八田秀雄氏の監修のもと、青年期に身に付けるべき運動習慣と栄養知識についての情報を公開した。

生活・健康 その他
東京大学教養部体力テスト
  • 東京大学教養部体力テスト
  • どのくらいの頻度で運動をしているか
  • 運動をする際、意識して摂取する飲み物や食べ物
  • 【監修】東京大学名誉教授 八田秀雄先生

 東京大学で約60年にわたって実施されてきた体力調査により、学生時代に体力が高かった人ほど卒業後の年収が高い傾向にあることがわかった。大正製薬は2026年5月18日、東京大学名誉教授の八田秀雄氏の監修のもと、青年期に身に付けるべき運動習慣と栄養知識についての情報を公開した。

 東京大学では、実技授業の一環として入学時(4月)と1年終了時(12月)に垂直跳び、反復横跳び、腕立て伏せ、踏み台昇降、身長、体重を測定している。東京大学身体運動科学研究室が実施する東京大学体力テスト研究(UTFS)の卒業後の追跡調査では、学生時代に体力が高かった人ほど卒業後も活動量が多く、精神的不調で医療機関にかかる人が少ない傾向がみられた。さらに、社会的活動にもより前向きで、年収も高い傾向が確認されている。

 約60年にわたるデータを見ると、「身体を動かす基礎能力」である跳ぶ力、支える力、持久力が男女ともに低下している。男子では垂直跳びや腕立て伏せが1980年代後半以降に低下傾向にある。女子も同様の傾向で、特に腕立て伏せが2025年に大幅に落ち込んだ。体格そのものに大きな変化はなく、食生活もむしろ改善している中でこのような結果がみられる背景には、生活の利便性向上や屋外で身体を使う機会の減少といった生活様式の変化に加え、コロナ禍の影響も重なり、運動機能が全般的に弱くなっている可能性が考えられる。

 大正製薬が2026年4月に全国の18~29歳の男女1,000人を対象に運動頻度を調査したところ、「まったくしていない」が44.6%ともっとも多く、ついで「週2~3日程度」(13.4%)、「ほとんどしていない」(11.8%)、「ほぼ毎日」(11%)という結果だった。青年期における運動不足の実態が浮き彫りになっている。

 受験や就職活動、仕事など何かを成し遂げようとする際、知識や思考力を鍛えることに意識が向きがちだ。しかし、勉強や仕事で安定して高いパフォーマンスを発揮し続ける人は、健康な身体と体力をもちあわせていることが多い。運動すると脳への血流が促進されるなど脳にも好ましい影響があり、集中力や思考力の維持につながる可能性がある。さらに、適度な運動は自律神経のバランスを整え、ストレスの軽減や睡眠の質の向上にも寄与する。

 八田氏は、勉学や仕事に比べて体力づくりは後回しにされがちだが、実際には学びや仕事を支える土台であり、知的能力と同じくらい重要な要素だと指摘する。

 体力を高めるために、長時間あるいは高強度の運動を行う必要があるわけではない。運動の効果は単純な「量」ではなく、「強度」と「休息」のバランスによって大きく左右される。過度な負荷や慢性的な疲労は、身体だけでなく精神面にも影響を及ぼし、かえって運動の継続を難しくする要因となることもある。

 従来運動習慣がなかった人にとっては、週1回でも継続して身体を動かすことに十分な意味がある。歩く時間を増やす、階段を使う、長時間座り続けないようにするなど、日常生活の中で活動量を少しずつ増やすことも体力づくりの第一歩だ。

 運動の効果を十分に引き出し、無理なく継続していくためには、食事と栄養の管理も欠かせない。大正製薬が運動頻度の調査とあわせて行った「運動時に意識して摂取している飲み物・食べ物」に関するインターネットアンケートでは、上位5つは「水」(265人/1,000人、以下同)、「お茶・無糖飲料」(184人)、「スポーツドリンク」(110人)、「コーヒー・紅茶」(83人)、「プロテイン飲料」(75人)だった。水分補給やカフェイン、プロテイン飲料などへの意識が高い一方、そのほかの栄養素摂取への意識や知識はまだ浸透していない可能性がうかがえる。

 八田氏は、基本として大切なのは主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事をとることだとしたうえで、運動時に意識したい栄養素として以下をあげている。

 「タウリン」は魚介類に多く含まれ、体内では浸透圧の調整や細胞機能の維持に関わり、筋肉を含む体内環境を整える働きをする。動物実験では、タウリンを摂取したマウスのほうが持久的に走り続けたという結果もみられている。また、2013年にBalshaw TGらにより行われた中距離ランナーを対象とした試験では、運動前にタウリンを摂取することで3km走のタイムトライアルにおけるパフォーマンスが向上したことが報告されている。タウリンは発汗量の増加や深部体温の上昇抑制などから体温調節機能に影響し、過酷な環境下でもパフォーマンスを維持しやすくなる可能性がある。

 「糖質」は運動時に重要なエネルギー源のひとつであり、特に運動強度が高いほど筋肉に必要になる栄養素だ。主食を極端に減らすと、力が出にくくなるだけでなく、集中力の低下や疲れやすさにもつながる。

 「たんぱく質」は筋肉だけでなく、血液や酵素、ホルモンなど身体をつくる材料となる栄養素だ。運動によって負荷がかかった身体を修復するうえでも欠かせない。競技者だけのためのものではなく、日常的に身体を動かすための基礎としても大切な栄養素である。

 「鉄」はヘモグロビンの材料となり、全身に酸素を運ぶ役割を担う。不足すると疲れやすさや息切れ、持久力の低下につながることがある。特に月経のある女性や食事量を控えがちな若年女性では不足しやすく、運動習慣がある場合には意識したい栄養素だ。

 「ビタミンB群」は糖質やたんぱく質、脂質をエネルギーに変える際に必要な栄養素で、身体を動かすための土台を支える働きがある。不足すると疲れやすさやだるさ、集中力の低下につながることがある。

 八田氏は、学生時代の運動経験は重要だが、それ以上に大切なのは生涯を通じて身体を動かす習慣をもち続けることだと強調する。青年期に運動していても、その後にやめてしまうより、成人後も運動習慣を維持することのほうが大きな意義がある。過去の運動歴にとらわれず、その時々の生活の中で少しずつでも身体を動かし続けることが重要だとしている。

《風巻塔子》

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