田園調布雙葉高校がデジタルぺンを導入…その利点とは

 2015年6月、東京にある私立田園調布雙葉学園高等学校の情報社会学の授業において、大日本印刷(DNP)のデジタルペンを活用した公開授業が行われた。デジタルペンは、同社が日本の学校現場に合うよう開発した「OpenNOTE(オープンノート)」システム。

教育ICT 高校生
PR
鉛筆と変わらない感覚で使えるのもデジタルペンの利点だ
  • 鉛筆と変わらない感覚で使えるのもデジタルペンの利点だ
  • 「オープンノート」システムのデジタルペンと専用の用紙
  • ペン軸の横に赤外線カメラが内蔵されており、専用用紙のドットを読み取る仕組み
  • パソコンにBluetooth接続でデータを送信。USBケーブルで充電する
  • パソコンルームを使っての授業。この日は19人の生徒が授業に臨んだ
  • パソコンルームを使っての授業。この日は19人の生徒が授業に臨んだ
  • デジタルペン用の解答用紙。一見するとほとんどわからないが、特殊な配列のドットが細かく印刷されている
  • 特定の箇所を焦点化して全員分並べて表示することが可能
◆授業中の作業を簡略化

 デジタルペンを使った授業への、生徒の反応は上々だという。「デジタルペンそのものの仕組みにも興味を持っており、リアルタイムにすべての回答が公開されるため、あまり変な意見を書けないという緊張感もあるようです」。

 また、先生側の授業中の作業も大きく簡略化された。「生徒が記入するための専用シートを印刷する手間はありますが、今までの授業では生徒たちが書いたプリントを、いちいち書画カメラに置いて映すという手間がありました。その点、デジタルペンでは瞬時に生徒たちの回答が表示されるので、授業中の作業が簡略化され、流れを止めずに進められるのは大きな利点です」として、授業の中にデジタルペンを積極的に取り入れている。

 「デジタルペンは、今回の情報社会学のディスカッションのように、答がないものに使うのに適しています。今後は数学で解答までのプロセスを見せるなど、主要教科でも、理解を深めるためにもっと使っていきたいです」。

◆導入が簡単で教室を選ばず活用できる

 デジタルペンを使った授業はパソコンルーム外でも行われている。次回は、図書館でデジタルペンを用いて本の帯をつくる授業を予定している。デジタルペンと1台のノートパソコン、プロジェクターさえあれば、教室を選ばずに対応できるのがオープンノートの利点でもある。デジタルペンとパソコンとの接続は、Bluetoothを介して行われるため、ネットワーク環境の整っていない学校でも導入がしやすい。

 また、同校では「嫌われる勇気」の著者である岸見一郎氏など、外部の知識人を講師に迎えた「高校生・大学生・社会人100人授業」を校内で開催している。学外から一般募集をした約100人でグループワークを行い、その際の発表にもデジタルペンを用いて各グループの意見を全員に可視化した。

◆動画を作成し反転授業に活用

 今後の予定としては、動画ソフトを使い、デジタルペンで書きながら話しているようすを録画して「授業の事前動画」を作成し、生徒に事前に動画を見てもらうことで、反転授業なども行えるとしている。

 他校でのオープンノート導入例としては、小学校でひらがなの書き順を確認したり、展開図を書き立体を組み立てて、元の展開図とともに発表を行ったりといった、多様な授業が行われている。

 デジタルペンを使った学校教育の取り組みはまだ始まったばかりで、これからもアナログとデジタルをつなぐ第三のツールとしての新しい使い方が期待される。
《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top