海外教育ICT事情…アメリカで1億ドル資金調達、オランダでスティーブ・ジョブズ・スクール

 9月2日、17日とこれまで2回にわたりブレンディッドラーニング(BL)をご紹介してきました。アメリカの教育界で2015年に入ってにわかに注目を集めているのが地元密着でBLを実践しているマイクロスクール(micro school)と呼ばれる教育機関です。

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 9月2日9月17日とこれまで2回にわたりブレンディッドラーニング(BL)をご紹介してきました。アメリカの教育界で2015年に入ってにわかに注目を集めているのが地元密着でBLを実践しているマイクロスクール(micro school)と呼ばれる教育機関です。

◆アメリカで一躍注目される「マイクロスクール」

 まだ明確な定義が確立されておらずひとつのカテゴリーとして認知されているわけではありませんが、マイクロスクールとは、「全員一律集団教育の公立学校には不満があるが、授業料の高い私立学校に通わせる余裕はない。かと言って家庭学習だけでは不安がある」という人々がひとつのコミュニティを作り、おもに小中学生を対象に「個別カリキュラム」と「達成度基準進級」を基本方針とした生徒数数十人程度の学校または教室です。オンライン学習や校内SNSなど、最先端の教育ICTを多用しているのが特徴です。

 個別カリキュラムのため全員一律で決まった時間割はありませんし、達成度基準ですから年齢で自動的に振り分けられた学年もありません。登校日数も生徒によって異なるため一概には言えませんが、授業料(「授業」はありませんがほかに適当な日本語がないため)は年間数十万円単位のところが多いようです。

 日本の学校のような黒板と教壇が前にあり、生徒の机が整然と並ぶ教室はありません。多くの学校が、生徒が自由に動かせるように可動式のテーブルやソファ、本棚などを「スタジオ」型の空間に置いてあるだけです。生徒は、伝統的な講義形式の授業の代わりにパソコンまたはタブレットでオンラインで学習に取り組み、生徒10~20人に先生(ガイドやコーチと呼ばれる)が1人の割合で付いて、オンラインで上がってくる学習データをリアルタイムで分析しながら生徒に適宜助言を与えて生徒が学習を主体的に進められるよう側面からサポートします。加えて、プロジェクト学習、校外学習、運動、実験や絵画工作、グループ討議、専門家の講演なども随時実施されます。

 マイクロスクールとしてよく知られている学校には、2009年にカリフォルニア州バークレーで始まったQuantumCampやテキサス州オースチンで設立されたActon Academy、またカーン・アカデミー創始者のサルマン・カーンが2014年にカリフォルニア州マウンテンビューで立ち上げたKhan Lab School(年間授業料22,000ドル、生徒数35人)などがあります。2013年にサンフランシスコで元Googleのエンジニアが設立したAltSchoolは2015年の春から夏にかけてフェイスブックの創始者ザッカーバーグや複数の大手ベンチャーキャピタルから合計1億ドル(約120億円)もの資金を調達したことから一躍脚光を浴びるようになりました。日本とは桁違いの金額にただ驚くばかりです。

 AltSchoolは株式会社ですが、「ベネフィット・コーポレーション」という営利を追求しつつも環境や教育など社会的な貢献も目指す、新しいタイプのいわば社会企業です。当初サンフランシスコ湾岸で4校、生徒数合計150人でスタートしましたが、多額の資金を調達できたことから2015年秋にニューヨークへ進出、今後はシカゴなど全米で展開する予定です。「先生:生徒」の割合は最大1:8に抑えているため授業料は年間2~3万ドルとやや高めながら、2015年秋の新校では200人の生徒募集に対して3,500人もの応募があったそうで、アメリカの教育界で今いかに高い注目を集めているのかがよくわかります。
《小松健司》

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