「誰もが使えるツールを」堀田龍也教授ら黒板投影型ICT活用プロジェクト始動

教育ICT 小学生

東北大学大学院 情報科学研究科 堀田龍也教授(撮影:中尾真二)
  • 東北大学大学院 情報科学研究科 堀田龍也教授(撮影:中尾真二)
  • 教員が考えるICTの効果のベネッセによる調査結果(撮影:中尾真二)
  • 授業でなにを使い、なにを映しているのか(撮影:中尾真二)
  • ベテラン教員ほどICTが効果的な場面を認知している(撮影:中尾真二)
  • 実証実験の内容とねらい(撮影:中尾真二)
  • 堀田龍也教授(撮影:中尾真二)
  • 東京学芸大学 高橋純 准教授(撮影:中尾真二)
  • Kocriの説明をするサカワ 常務取締役 坂和寿忠氏(撮影:中尾真二)
 教育ICT研究の第一人者である堀田龍也教授(東北大学大学院)の呼びかけに応じ、高橋純准教授(東京学芸大学)のほか、北海道から沖縄まで全国の若手からベテランまでの小学校教員15名が集まり「黒板投影型ICT活用プロジェクト」のキックオフミーティングが開催された。

◆ベテラン教員ほどICTの有効な活用場面を認知

 堀田教授は、10年以上前から学校教育におけるICT機器活用に関する調査、研究を続けている。一連の研究の中で、ICTの活用は多くの教員がその効を認めていることがわかっている。また、よくいわれるベテラン教員はICTを使いこなせないというのは誤解であり、ベテラン教員ほどICTの有効な活用場面を知っており、効果的な授業ができるという調査結果も出ているという。ICTスキルだけが高い教員は、必要でない場面でデジタルを利用しがちだともいう。

 そもそもデジタル機器を導入すれば、効果的な授業ができるというわけではなく、授業の本質的な部分を支援できるツールやシステムを重視すべきである(堀田教授)。また、ICT導入で板書がなくなることはなく、板書との連携をとることが重要だという。必要なのは、日々の普通の授業で、ICTスキルや授業スキル、経験などに左右されず誰もが使えるツールであり、今回のプロジェクトはそれを研究するためのもだと堀田教授は語った。

◆黒板メーカーの老舗が考案したKocri

 堀田教授が目を付けたのはiOS対応の「Kocri(コクリ)」というアプリだ。「黒板と板書を大事に考えたアプリで可能性を感じた」(堀田教授)のがその理由だという。Kocriは、黒板メーカーの老舗である「サカワ」が、ユニークな採用や社風で有名な「カヤック」と共同開発したもの。プロジェクトに参加する先生方には、Kocriを実際の授業で使ってもらう。そのようすを記録・分析し、教育現場に生かしていく計画だ。

 Kocriの特長は、Apple TVを利用することで、Kocriアプリさえ用意すれば、手持ちのプロジェクターで従来の黒板に投影するだけで電子黒板として利用できることだ。専用のプロジェクターも、大掛かりな電子黒板も実物投影機(書画カメラ)も必要ない。システム構成は、iPad(iPhoneやiPod touchでも可能)、Apple TV、HDMIケーブル、プロジェクターとなっている。KocriはApp Storeから無料でダウンロードできる。投影できる教材は、任意のPDF、jpg、pngといった文書、画像ファイル。動画ファイルも投影可能だ。iPadの内蔵カメラを実物投影機のように利用することもできる。

 堀田教授の研究では、授業でよく使われるICT機器はプロジェクターや実物投影機であることがわかっている。多くの教員が、教科書を拡大提示したり、生徒の提出物などを映し出したりして授業に活用しているという。タブレットの内蔵カメラを利用できるKocriは、この部分でも有用性があると見ている。

 ほかには、黒板にグリッドやスケール、ドットなどを固定表示させる背景投影機能。文字や図形を投影する機能などがある。投影する画像や図形などは白黒反転が可能で、バックを黒にすると、投影されるコンテンツは板書されたものと同化する。普通の黒板に対して、投影と板書がシームレスに行える。

 現在、搭載されている機能は上記のようなものだが、サカワではプロジェクトのフィードバックにより、製品の改良、アップデートをしていくという。

◆信頼を得るには地味な成果の積み重ねが必要

 高橋純 准教授は、「板書というと地味だ、時代遅れだという人もいて、派手な取組みが注目されがちだが、児童生徒・保護者・教育委員会などの信頼を得るには地味な成果の積み重ねが必要。短期のにぎわいよりも長期の活用と成果をめざしたい」とプロジェクトの意義を強調した。

 今回の会議では、集まった先生方に実際にKocriを体験してもらう時間も設定された。画像を反転させる機能、グリッド、方眼を表示させる機能は、実際の授業での利用場面が想像しやすかったためか、多くの教員の興味を引いていた。

 参加者は、1人が中学校でほかはすべて小学校の教員だったが、「(文字表示機能を利用して)漢字テストに使いたい」「カメラで撮影した画像がすぐに使えるのは便利」「こどもを褒めるために活用できないか考えたい」「導入した機器が活用されていない例があるが、そんな無駄をなくしたい」といったさまざまな意見が出された。

 実験が始まると、プロジェクトメンバーの先生方は、日々の授業のようすや成果、問題点を専用の掲示板に書き込み、堀田教授や高橋准教授はそれらを分析する。教授らは、板書や一斉掲示による新しい授業スタイル、テンプレートの作成、さらにはデジタル教科書のコンテンツ作りにも参考になるデータがとれるのではないかと期待している。
《中尾真二》

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