閲覧性の高い「Pat-mi手帳」、作者が語る誕生秘話

月と週の予定が一度にわかる手帳「Pat-mi(パットミー)」の誕生秘話と実用例

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ふせんで構造を作っている様子。このままでは二つ折りができない。(画像1)
  • ふせんで構造を作っている様子。このままでは二つ折りができない。(画像1)
  • Pat-miは確認したい週のところのページをめくるだけ!(画像2)
  • 最初に見せていただいた試作。基本的な構造は発売中のPat-miとほぼ同じ。(画像3)
  • 佐久間さんがひらめいた瞬間の机を再現した様子。(画像4)
  • ふせんを重ねて貼っている様子。これがPat-miの構造のヒントに。(画像5)
  • コピー用紙で構造を作っている様子。A5サイズでちゃんと二つ折りができるように計算。(画像6)
  • ビジネスシーンでもPat-miは大活躍!(マンスリー)(画像7)
  • ビジネスシーンでもPat-miは大活躍!(バーチカル)(画像8)
 月と週の予定が一度にわかる手帳として、2015年9月に誕生したコクヨの「Pat-mi(パットミー)」。特長はなんといってもその構造。手帳を開くと、月間と週間のスケジュールが一度に閲覧できるので、ページの行き来のわずらわしさがなく、直感的に使える手帳として、好評だ。(画像2)

 さて、この「Pat-mi」という手帳、便利そうではあるが、そもそも誰がこんなものを作ったのか。気になるPat-miの生い立ちを調査した。

◆Pat-mi誕生のきっかけ

 2014年8月、大阪のグランフロントにて、ジブン手帳の作者・佐久間英彰さんとコクヨスタッフの打ち合わせが始まった。

 きっかけは、佐久間さんからコクヨスタッフに届いた「とにかくすごいアイデアを考えたので感想を聞きたい」というメール。「最悪、なかったことにしてもらってもいいですから」と言われたものの、コクヨスタッフが気にならないわけがなかった。

 「これなんですけどね…」(画像3)

佐久間さんが静かに取り出した“これ”が、新しいコンセプトの手帳「Pat-mi」の試作品である。

「これ、どうやって思いついたんですか?」スタッフの一人が純粋に質問した。

「夜中に仕事してた時、机の上を見たら、なんかピーンと来たんですよね。」

 佐久間さんはそう言って、その時の机を再現した写真を見せてくれた。(画像4)
それは、何枚もの付箋を上にずらした状態で重ねて貼っている写真だった。(画像5)ブレインストーミングなどでよく見る風景ではあるが、佐久間さんにとっては何かしらの違和感というか発明のヒントとして感じ取れたらしい。

 「そこで、すぐに新しい付箋を取り出して、こんな感じにずらして貼ってみました。そして7等分にし、日玉を書いたら、なんとなく下がマンスリーっぽくなったんですよね。上にはバーチカルのスペースもできているし。見てわかる通り、今のままでは二つ折りにすることはできませんよね。そこで次は、A5サイズでちゃんと二つ折りができるように計算してみました。」と佐久間さんは語った。(画像1、6)

 そうして仕事そっちのけで “発明家”の意地と集中力をフルに発揮し、夜も更けた明け方4時ごろにはデザインとともに数か月分の試作品まで一気に自作してしまったそうだ。試作品は、現在販売中の商品と基本的な構造はほぼ同じ。この時点で、Pat-miがほぼ完成していたことがわかる。

◆「手帳は1年分で1冊」はもう古い? 1か月1冊の分冊スタイル

 新しい手帳のコンセプトは、

1:一瞬で「月間」と「週間」を把握できる手帳
2:一~二ヶ月だけに割り切って、薄く軽くした手帳
である。

 アナログな手帳なのに、デジタルと同じようなスマートな動きと閲覧性を実現。また、普通の手帳は1年分を持ち歩くが、、この手帳なら一ヶ月1冊に分冊されているため、必要な月のみをチョイスして持ち歩けるという新たなメリットも兼ね備えていた。確かに4月に過去の1月や2月のことを振り返る、ということはどれだけあるだろうか。

 佐久間さんから衝撃的ともいえる新しい手帳のアイデアを聞いたコクヨスタッフは、打ち合わせが終わるころにはこの手帳に魅力を感じていた。そして、この新しい手帳にさまざまな意見が飛び交った後、いくつかの社内会議をクリアし、コクヨで商品化に向けて取り組むことが正式に決定したのだ。


◆ビジネスでも家庭でも活躍 Pat-miの実用例

 しかし、アナログな手帳ながら「従来よりもスマート」で、「1~2か月分だけ持ち歩く」と言われても、利用シーンがイメージしづらい。一体、どのような場面で使えばよいのか。

 お勧めシーンは、たとえば会社の打合せ時などの「今月と来月の2か月分の予定だけわかれば十分」という場面。1冊まるまる持ち歩く必要のある手帳はカバンの中や社内の移動時にかさばることが多い。そんなとき、1か月に1冊のスリムスタイルの「Pat-mi」なら、使い終わった月やまだ使わない月の分は保管用ケース入れて卓上保管できるため、必要な1か月分だけ携帯でき、カバンの中でもかさばらない。ビジネスシーンでの活躍が期待できそうだ。

 具体的には、プロジェクトのマネジメントを担当した場合、プロジェクト用に「月間」で全体スケジュールを把握しつつ、「週間」で並行して細かい予定もつかんでおく、という使い方があげられる。また、「月間」はグループメンバーの内容、「週間」は自分のスケジュール管理、というように、2つのスケジュールを同時に管理するという使い方も可能だ。A5サイズでコンパクトにたためるので、持ち歩きだけでなく、デスク上で卓上カレンダーのように使うのもよさそうだ。(画像7、8)

 もちろん、会社だけなく家庭用としても十分使える。実際に使っているユーザーからは「家族みんなが見られるよう冷蔵庫に貼っておき、自分の予定と家族の予定の両方管理するツールとして使っています」といったように、家族で共有できる新しいカレンダーとして使われているようだ。(画像9、10)

◆熟練の職人が手作り! 個人アレンジの自由度も◎

 従来の手帳様式からすると「1年の中で数か月だけ割り切って持ち歩くなんて…」という声が多かったのも事実。しかし、いざ使ってみると、これが快感に変わったりもする。「手帳は1年間、ずっと1冊まるごと持ち歩くもの」という固定概念から少し外れるだけで、軽くてスマートに持ち運べて、しかも開いたページで月間、週間の予定を把握できる。まさに新しい手帳体験ができそうだ。

 少しだけ構造の話をすると、実は「Pat-mi」は印刷以外の部分はすべて手作業によって作られている。商品原型となった佐久間さんの手作り試作品は見た目以上に複雑な構造をしており、ちょっとのズレも許されないシロモノだった。実際の製品化行程においても、機械が入り込む余地がほぼなく、佐久間さんが手作りで行ったこととほぼ同じことを熟練の職人が1つずつ、手作業で製作している。

 ちょっと作り方はアナログだけど、使ってみるとデジタルのようなスピードと閲覧性を体験できる「Pat-mi」。店頭で手に取って実感してみてはいかがだろうか。

 ちなみに、この革新的な手帳『Pat-mi』を作った佐久間さんは、『ジブン手帳』でライフログを提唱している作者でもある。その佐久間さんが今度は「予定だけ」とか「過去なんか見ない」と完全に割り切った手帳を提唱している。佐久間さんはいったいどちらの手帳を使っているのか、ここの矛盾は突っ込まないでいただきたい。

【開発秘話】え!これって手貼り生産?閲覧性の高い「Pat-mi手帳」が生まれた秘密。

《inspi編集部》

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