【発達障害2】あれ、周りの子と少し違う?子どもに現れる3つの兆候

 全6回にわたり、発達の遅れや偏り、「発達障害」の側面から、その特徴や具体的な関わり方について紹介するコラム「発達障害」。第2回では、実際に子どもに見られる行動や、子どもの発達について気になったときの保護者の関わり方を紹介する。

教育・受験 未就学児
 このコラムでは全6回にわたり、未就学期における子育てや育ちの環境について、おもに発達の遅れや偏り、「発達障害」の側面から、その特徴や具体的な関わり方について紹介していきます。

 第2回では、発達障害について、実際に子どもに見られる行動や、子どもの発達について気になったときの保護者の関わり方をご紹介します。

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◆あれ?ウチの子周りと少し違う…?と感じたら

 子育ての中で「あれ?ウチの子周りと少し違う…?」と感じる方は多いと思います。

 生後8か月くらいまでは誰にでも懐いたのに、1歳くらいになったら急に母親しか抱っこできなくなることとか、2歳半ばごろまで、なんでも素直に聞いてくれていた子どもが、急にわがままになって、なんでもイヤイヤいうようになる、だとか。

 実は、このような反応はとても自然なことで、認識力、自我の発達の段階で起きる反応で、発達障害ではありません。

 私どもが運営する保育所や、児童発達支援事業所にも、必要以上に心配して1歳くらいで相談にお越しになる保護者の方がいらっしゃいます。

 とても子育てに熱心であり、子どもにも十分に愛情を注いているからこそ心配になるので、このような相談は大歓迎です。お近くに相談できる場所があれば、ぜひ足を運んでみるべきです。

 しかし、中には、乳児の段階から子どもからの愛情を保護者自身が感じられなかったり、発語がほかの同年代の子どもと比べて極端に遅かったり、2歳後半になっても大人との意思疎通がうまくいかない乳幼児がいます。

 そのような子どもは、もしかしたら発達障害かもしれません。

◆3つの兆候と現れる時期

 自閉症や広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の兆候を、イギリスの精神科医ローナ・ウイング氏は3つにまとめています。

1、社会性の障害(対人関係)
2、コミュニケーションの障害(ことばの遅れ)
3、イマジネーション、想像力の障害


 それぞれ、詳細に紹介します。下記のような行動が見られたら、相談所に相談してみるとよいでしょう。

1、社会性の障害(対人関係)

 0歳児のことばの獲得の前の段階でも、ものに対する注意や保護者への反応が弱いなど、1歳代後半から2歳代に目立った違いが出てきます。

 この時期の一般的な乳児は、お母さんやお父さんを見つけると目をキラキラさせて寄ってきて、求めてきます。自閉症スペクトラムの子どもたちは、このような行動が少ない傾向にあります。

2、コミュニケーションの障害(ことばの遅れ)

 社会性の障害があると、結果としてことばの獲得も遅れていきます。ことばの獲得は、関係性に伴い発達します。つまり、愛着関係の上に構築されるのです。

 子どもは自然に「犬はワンワンだ」と覚えるのではなく、保護者が子どもと一緒に犬に興味を持ち、「ワンワンだね」と言うことで、「犬はワンワンなんだ」と認識できるのです。

 母親が十分にことばがけをしなかったから、ことばの獲得が遅れるというわけではありません。あくまで、社会性に障害があるために、母子関係の構築が希薄になりやすく、愛着関係の構築がゆっくりになります。そのため、ことばの獲得ものんびりになる傾向があるということです。

3、イマジネーション、想像力の障害

 特有なものへの執着的な行動や、独自のやり方での感覚的な行動パターンなどが見られる場合も、自閉症や広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の兆候に含まれます。これは、あらゆる場面に柔軟に対応できない、という問題と深い関係にあります。人との関係はとても複雑なので、人と話そうとすると自分の世界に入ってしまい、自分のいる世界から抜け出せないことがあります。

 以上の3つような傾向を我が子に感じている場合、もしかしたら、自閉症スペクトラムの傾向があるかもしれません。

◆子どものためにできること

 保護者は、自分の子どものことを誰よりも深く愛し、理解している存在です。きっと、少しの違和感でも、早期に感じている方が多いのではないでしょうか。そのような保護者の方は、「普通に育ってくれたらいいのに」と思うこともあるでしょう。「なぜ我が子だけ普通じゃないの」と、悩み苦しんでいることと思います。

 “普通”というのは、曖昧でよくわからない定義ですが、一般社会で不自由なく、その文化の中で、習慣にのっとって暮らすことが“普通”なのかな、と思います。

 そうすると、障害もひとつの個性だから、個性を認めて“普通の子どもたち”と“普通”に育てていこうというのは、少し、難しいことでしょう。いわゆる“普通”の中で生きづらを感じてしまうのが「障害」だからこそ、生きづらさは個性によるものではなく、あくまで障害によるものなのだと思います。

 だからこそ、早めに「療育」をすることで、社会に順応できるスキルを身に付けていくことこそが、発達に凹凸のある子どもたちにしてあげられる、大人の責任ではないでしょうか。

◆子育ての基本は「愛情」

 発達に凹凸を抱える子どもたちの保護者の方の中には、「ウチの子は普通と違うから、もっと教育に力をいれなければ」「いろんなお教室に通わせなければ」などと考えてしまう方もいらっしゃると思います。そして、それが「療育」であると考えてしまいがちです。

 しかし、子育ての原点は「愛情」です。

 いわゆる“普通”の子どもでも、愛情がなければ愛着障害として、自閉傾向に似た症状が出てきます。反対に、発達障害を抱えた子どもでも、親からの格別な愛情に育まれれば、いつもニコニコ、健やかに育ち、大人になり、社会生活に馴染めていきます。

 ただし、そういった子どもと違い、発達障害を抱える子どもは、社会に馴染むのが苦手な傾向にあります。そうすると、生活するうえで失敗することも多いため、セルフエスティーム(自己肯定感)が低下していくのです。

 保護者の対応としては、ちょっと難しいことを挑戦させて、失敗しそうになったら手助けをして、成功体験をたくさん増やすサポートをしてください。そして、思いっきり褒めてあげてください。

 褒めるだけで能力を伸ばすことは難しいでしょう。自分自身の力で、困難を乗り越える経験が絶対に必要です。もちろん、失敗や挫折も必要です。しかし、発達障害を抱える子どもたちは、その壁を突破する自力が弱いのです。だからこそ、親のサポート、つまり、「愛情」がもっとも重要なのです。

◆一歩踏み出る勇気が大切

 最後に、子どもの発達に気になる点があれば、思い切ってすぐにお住まいの自治体に相談をすることをお勧めします。各自治体には、発達支援サポーターのような研修を受けた職員が必ずいます。また、お住まいの地域で利用可能な、相談施設も紹介してもらえます。

 決して一人で悩むことなく、ともに育児について考えてくれる機関に、ぜひとも相談してください。相談するということは、「我が子は障がい児なんだ」と認めるような気がして決断できず、とても勇気がいることです。ただ、自分や周りのことを気にするのではなく、我が子のことだけを考え、行動してもらいたいと思います。

 次回は、発達障害を抱えた子ども側の視点から、お母さんやお父さん、周囲にいる大人が取るべき対応法を紐解いていきます。

第1回:発達障害とは? 4つの分類や定義を解説
第3回:子どもが抱える「生きづらさ」とは
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 耳にすることも多くなった、子どもの「発達障害」。コラム「発達障害」では、全6回にわたり、未就学期における子育てや育ちの環境について、おもに発達の遅れや偏り、「発達障害」の側面から、その特徴や具体的な関わり方について紹介する。

著:株式会社SHUHARI 代表取締役 中村敏也
 1977年7月埼玉県生まれ。明治大学経営学部卒業後、企業勤務の傍ら待機児童問題に興味を持ち、保育学や法制度を学ぶ。2004年9月、埼玉県志木市にて「保育園 元気キッズ 志木園」を開園。以降、地域のニーズに対応しながら小規模保育事業、認可保育所、児童発達支援事業へと展開を拡げる。2017年1月現在、志木市・新座市・朝霞市内に7施設を運営。2018年度には埼玉県内初の小規模保育事業と児童発達支援の複合施設を開園予定(埼玉県・朝霞市)。新座市子ども子育て会議委員。

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Q2,イギリスの精神科医ローナ・ウイング氏は、自閉症や広汎性発達障害の兆候を○つにまとめている。
(ヒント:本記事の本文を読んで【半角数字】で答えてね)

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《中村敏也》

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