子育てストレスを早期発見、福井大研究グループが評価法開発

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大人または子どもの気持ちを推測する課題時に選択的な脳活動と抑うつ気分の間で関連を示した脳領域
  • 大人または子どもの気持ちを推測する課題時に選択的な脳活動と抑うつ気分の間で関連を示した脳領域
  • 養育機能低下の進行・予防モデル
 福井大学と科学技術振興機構は平成30年2月5日、脳の機能画像から、子育て中の母親らの抑うつ気分が深刻化する前兆を早期発見する評価法を開発したと発表した。養育者のメンタルヘルスの重要性が指摘される中、支援ツールやシステム開発への寄与が期待される。

 福井大学 子どものこころの発達研究センターの友田明美教授、島田浩二特命助教らの研究グループが、子育ての負担や不安から、ほぼすべての養育者が感じる抑うつ気分の程度差に注目。就学前の子どもを育児中の健康な女性30名を対象にfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使用した実験を行った。

 なお、抑うつ気分とは、気分の落ち込みなど心の疲れを表すもの。「気分が落ち込んでふさぎ込む」「悲しい気持ちになる」「希望を感じられなくなる」などの状態を示す。

 実験参加者には、MRI装置のベッド上に仰向けになってもらい、社会能力に関わる課題を遂行しているときの脳活動を測定。「大人の気持ちを推測する能力を測定する課題(RMET)」では、「感情推測課題」として目の領域に範囲が限定された大人の顔写真を見せ、その人物が表す感情状態を推測し、「混乱している」「憎しみを持っている」など感情語の二肢強制選択で回答。統制課題の「性別判断課題」では、感情推測課題と同じ写真を見せて性別を判断するテストを行った。

 実験では、感情推測課題時の脳活動から性別判断課題時の脳活動を差し引くことで、相手の気持ちを推測する能力に選択的に関与する脳活動推定値を算出。抑うつ気分は、過去2週間の気分に関する質問に自記式で回答する「ベック抑うつ質問票」で測定し点数化した。

 fMRIによる脳機能計測実験の結果、抑うつ気分の点数が高い実験参加者ほど、大人の気持ちを推測する能力に関与する右下前頭回の脳活動が低下することが判明。実験参加者の脳の活動が低下していることが一目でわかる統計値画像も得られたという。

 研究グループでは、実験結果について「普段は見落とされがちな抑うつ気分の深刻化の徴候が、日常で目に見える認知行動面の変化では把握されないが脳機能面の変化を指標とすることで把握されうることを示唆し、心の疲れの深刻化に伴う対人関係性の問題などを含む子育て困難の予防的指標の開発に資するものといえる」と評価している。

 実験参加者からも「普段は気にかけなかった心の疲れを自覚するきっかけとなる」「深刻化してうつになる前に適切な休息やストレス対策を取りたい」などの意見が得られたことから、健康な養育者が抑うつ気分の深刻化の徴候を受け入れやすく、早期の適切な支援につながりやすい新たな評価法だとしている。

 この方法を取り入れた「養育困難リスク評価」(未公開特許出願中)は、養育者の脳の画像を通じてストレス状態を客観的・定量的に計測でき、抑うつ気分が軽くなる経過も把握できるため、リスクが高い養育者が支援を拒否することなく、積極的に受ける事例が増えることも期待できるという。
《奥山直美》

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