教授昇進、論文や書籍が増えるほど確率上昇

 引用文献データベースに収録されている論文数や書籍数などが増えるほど、教授に昇進する確率が上がることが2018年5月8日、科学技術・学術政策研究所の実証分析結果よりわかった。一方、研究業績発表がゼロの期間が長いほど、教授昇進の確率は低下した。

教育・受験 先生
論文データベースなどと「researchmap」データベースとの接続
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 引用文献データベースに収録されている論文数や書籍数などが増えるほど、教授に昇進する確率が上がることが2018年5月8日、科学技術・学術政策研究所の実証分析結果よりわかった。一方、研究業績発表がゼロの期間が長いほど、教授昇進の確率は低下した。

 今回の研究には、科学技術振興機構が提供する国内最大級の研究者データベース「researchmap(リサーチマップ)」を利用。日本の大学に所属する研究者の研究業績や属性、経験などが昇進に与える影響について、イベントヒストリー分析(基準となる時点からある反応や事象が起きるまでの時間を対象とする一連の分析手法)により検証した。

 分析の結果、エルゼビアが提供する世界最大級の抄録・引用文献データベース「Scopus(スコーパス)」で公開された論文、出版された書籍、競争的資金の獲得件数が増えるほど、教授への昇進を促進する可能性が高いことが示唆された。

 また、研究成果の発表がない期間が長いほど、教授への昇進の機会が減ることも示された。その一方で、追加の分析によると、研究者が研究者キャリアの全期間において高い研究発表頻度を維持することは必ずしも教授昇進に必須ではなく、研究開始から5年および20~30年の期間では、1年に1本以上の論文を発表し続けることが重要であることも示されたという。

 科学技術・学術政策研究所では、実証分析結果について「アカデミアのキャリア形成とワークライフバランスの両立を図るうえで非常に重要な示唆になり得るのではないか」と評価。研究開始5年間に持続的に研究発表を行うことが、長いアカデミアでのキャリアにとって重要であることが示されたことから、近年増加している若手研究者の1~2年間の短期任期付き雇用の整備・見直しが急務であると指摘している。

 また、研究スタートから5年の間に出産や育児などのライフイベントが重なる場合は、研究者個人として論文・学会発表が途切れないように極力工夫し、所属機関などはそのサポートを行うことなどが考えられるとしている。
《奥山直美》

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