コロナによる学習損失、生涯年収17兆米ドル失う恐れ

 ユニセフと世界銀行、ユネスコは2021年12月6日、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関連した学校閉鎖の結果、17兆米ドルの生涯年収を失う恐れがあると発表した。

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ユニセフ(国連児童基金)、世界銀行、ユネスコ(国連教育科学文化機関)
  • ユニセフ(国連児童基金)、世界銀行、ユネスコ(国連教育科学文化機関)
  • 教室で授業を受ける子どもたち(パキスタン、2021年9月撮影) (c) UNICEF/UN0512126/
  • 首都カラカスにある学校が再開され、対面で授業を受ける子どもたち(ベネズエラ、2021年10月撮影) (c)  UNICEF/UN0546715/Vera
  • 首都ヤウンデの公立学校で、タブレットを使って授業を受ける子どもたち(カメルーン、2021年11月撮影) (c) UNICEF/UN0551715/Dejongh
 ユニセフ(国連児童基金)と世界銀行、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は2021年12月6日、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関連した学校閉鎖の結果、現在の生徒たちは17兆米ドル(現在価値)の生涯年収を失う恐れがあると発表。学校閉鎖による影響は、考えられていたよりも深刻であることが明らかになった。

 同報告書「世界的な教育危機:回復への道のり」によると、低・中所得国における「教育の貧困」状態にある子供の割合は、パンデミック以前にすでに53%に達していたが、長期間におよぶ学校閉鎖や、学校閉鎖中の遠隔学習が十分に効果を発揮していないことを考慮すると、その割合は70%にのぼる可能性があるという。

 学校閉鎖が学習損失につながることは、実際のデータによって裏付けられつつある。分析によると、学習損失の大きさは、学校閉鎖の長さとほぼ比例している。

 しかし、国や教科、生徒の社会経済的地位、性別、学年によって、大きな偏りがみられた。たとえば、「低所得世帯の子供、障がいのある子供、そして女の子は、同世代の子供と比較して、遠隔学習へのアクセス機会が少なかった」「年少の子供、特に未就学児ほど、遠隔学習へのアクセス機会が少なく、学習損失の影響を受けやすかった」「ガーナ、メキシコ、パキスタン等の国では、社会経済的地位の低い生徒の学習損失が大きかった」ことが明らかになった。

 ユニセフ本部教育グローバルチーフのロバート・ジェンキンスは「COVID-19のパンデミックは、世界中の学校を閉鎖に追い込み、ピーク時には生徒16億人から教育の機会を奪い、ジェンダー格差を広げました。女の子の学習損失が大きくなるにつれて、児童労働、ジェンダーに基づく暴力、児童婚、早期妊娠などのリスクが高まっている国もあります。この世代の教育危機を食い止めるためには、学校を再開し、開校し続けなければなりません。そして、生徒が学校に戻れるよう支援を行い、学習損失の回復を促進する必要があります」と述べた。

 これまで各国政府が出した経済対策のうち、教育費に充てられたのは3%以下であった。学習損失を早急に回復するためには、さらに多くの資金が必要だ。各国は、この世代の生徒たちがこれまでの世代と同等の能力を身に付けることを目的とした「学習回復プログラム」を導入するべきだ。また、子供たちが学校に戻ってからのさらなる学習損失を防ぐため、彼らのレベルにあわせたより良い指導ができるように、教師への支援を強化する必要がある、と報告書では強調している。
《編集部》

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