対面での入試講演会やオープンキャンパスの機会が減っている。めまぐるしく変化する近年の大学受験にあって、最新の情報を手に入れることは受験生にとって、最大のタスクとも言えるだろう。
そんな「情報戦」の大学入試に挑む受験生や保護者に有益な情報を届けるべく、ベネッセコーポレーション教育情報センター(以下、ベネッセ教育情報センター)・センター長の谷本祐一郎氏に話を聞いた。
全国の学校への進路指導サポートのノウハウを家庭にも
--ベネッセ教育情報センターでは、長きにわたり全国の高校の進路指導のサポートをされているようですが、コロナ禍、学校における進路指導に変化はありましたか。
コロナ禍、個室・対面での個別指導にやりにくさを感じている先生方が多くいらっしゃいました。また、大学が生徒に対して行うオープンキャンパスや説明会だけでなく、塾・予備校が先生方に対して行う入試セミナーや講演会の開催も減り、最新の情報をアップデートする機会が著しく減少しました。
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一方で、センター試験が共通テストに、AO入試が総合型選抜に変わるなど、ここ数年は変化の多い年でもありました。大学入試のバリエーションが増え、大きな動きがあったにもかかわらず、情報をキャッチアップする機会に恵まれずに悩む先生方や保護者を間近でみてきました。
--なるほど。ここ数年の現状を目の当たりにして、新しいサポートの必要性を感じたということですね。
はい。進路に関する情報は自らキャッチアップすることが大事になってきた気がします。たとえば、興味関心と学力に合わせてその子に合った大学を先生が提案してくれる「先生任せ」の進路指導だけでなく、直接ご家庭に情報を届けることでお子さまの進路選択を叶える機会が必要だと感じています。
そこで進研模試のデータ、高校・大学のデータを直接受験生本人やご家庭に届ける取組みとして、YouTubeチャンネルを開設しました。
ベネッセ教育情報センターYouTube公式チャンネル入試に関する知見の宝庫…YouTube公式チャンネル開設
--教育・受験に関する多くの実績と知見をもつ、ベネッセ教育情報センターのYouTubeチャンネルとあらば、入試情報の宝庫になりそうですね。
コンテンツはおもに4つのカテゴリーで配信しています。前年度の入試を振り返ったり、次年度の動向を分析したりする「大学入試結果・動向分析」、大学の入試担当へのインタビューを通じた「大学インタビュー」、そして来たる大学受験に備え、高校1・2年生に向けて基本的な入試制度や用語をレクチャーする「大学入試解説」、さらに今年度から始まった新教育課程に関する情報をまとめた「新課程」の4つです。
--先日は、2022年度の大学入試を概観する「入試結果概況」を公開しましたね。
はい。「最近の大学入試はチャンスが大きい」ことをテーマに、ここ数年の募集人員や合格者数の推移、倍率や合格率の変化を分析してお伝えしています。夏休みの学習に活用できるポイントも合わせてご紹介していますので、ぜひ生徒の皆さんに見ていただきたいですね。
--3年前の2019年と比較して、これほどまで違いがあるとは驚きました。コロナ前の知識では、直近の進路指導に対応しきれないというのが頷けますね。
概況に加え、「2022年度入試分析」のカテゴリーでは、早稲田・明治・法政を皮切りに、人気大学の入試結果を大学別に解説する動画も用意しています。これからも続々と公開していく予定です。
秋にはリセマムコラボの「入試最新動向セミナー」も
--リセマムは、そんな貴チャンネルと、2022年12月に共同でオンラインセミナーを開催させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。
こちらこそ、よろしくお願いします。リセマムとのオンラインセミナーでは、直前までの模試のデータをまとめ、最新の志望動向をご紹介しながら、2023年度入試を予想しようと思っています。オンラインセミナーで聞きたいこと、取り上げてほしいことがあれば、ご要望いただきたいですね。今後の動画制作にも生かしていこうと思いますので「こんな情報がほしい」「●●大学の入試について知りたい」など、リクエストいただけると嬉しいです。
--オンラインでの動画配信という仕組みは、視聴者となる受験生の「生の声」を生かしやすいのもメリットですね。
今までの知見とこれからの取組みをリンクさせながら、従来の学校への進路指導のサポートと、ご家庭への情報提供いずれも充実させていこうと思います。ぜひご期待ください。
動画やコラボセミナーにあたってのリクエストはTwitter DMから!「今までは進路指導の先生、つまりその道の“プロ”に向けて情報提供をしていましたが、YouTubeチャンネルでは受験の“ビギナー”である受験生やご家庭を対象にしていますので、情報の咀嚼には気をつかっています」と話す谷本氏。取材場所の隣では、チームメンバーが動画を鋭意制作中。視聴者に伝わりやすい表現について、喧々諤々と議論を重ねていた。
自社の知見とノウハウを提供することで、「より多くの生徒に納得できる進路選択をしてほしい」という一心で取り組む、ベネッセ教育情報センターの新たなチャレンジにこれからも期待したい。