駿台予備学校に聞く、医学部受験生のための「模試」活用アドバイス…受験後の行動がポイント

 夏休み明け、医学部受験対策には、他学部受験とはまた違う学習テクニックやコツが必要だ。本記事では、数多くの医学部合格者を輩出している駿台予備学校 進学情報事業部統括 湧井宣行氏に、模試との付き合い方についてアドバイスをいただいた。

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 医学部受験対策には、他学部受験とはまた違う学習テクニックやコツが必要だ。とりわけこれから受験本番に向けての大詰めの時期、模試を活用した学習について、あらためて確認したいところだろう。

 本記事では、数多くの医学部合格者を輩出している駿台予備学校 進学情報事業部統括の湧井宣行氏に、模試との付き合い方についてアドバイスをいただいた。

受けるべき模試の種類とその理由

--夏休み明け、医学部を志望する受験生が受けるべき模試の種類を教えてください。

 駿台予備学校(以下、駿台)の模試には医学部に特化したものはありませんが、2022年は入試までに記述型模試をあと2回、共通テスト形式のマーク型模試を2回、夏休み明けから入試本番までに行う予定です。

実施基準日

2022年実施 駿台の模試

受付開始日

9月25日(日)

第2回駿台全国模試(記述型)

8月15日(月)より受付中

10月9日(日)

第2回駿台・ベネッセ記述模試(記述型)

8月15日(月)より受付中

10月30日(日)

第3回駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試(マーク型)

9月1日(木)

12月11日(日)

駿台atama+ プレ共通テスト(マーク型)

10月3日(月)

 記述型において、「駿台全国模試」は理系の受験者の多くが東大や医学部などの難関大学志望者で占められているハイレベルな試験です。「駿台・ベネッセ記述模試」は、全国から学校単位で多くの現役生が受験するため、母集団が大きい分全体としてのレベルは「駿台全国模試」よりは標準的です。

医学部志望者が受けるべき「駿台模試」の詳細はこちら

 医学部志望者の場合、記述型は国公立の個別(2次)試験対策や、慶應義塾大学・東京慈恵会医科大学・日本医科大学をはじめとした記述を課す私立大への対策として、マーク型は大学入学共通テストだけでなく、マーク型の出題形式の私立大対策としても、4回すべて受験することを勧めています。さらに、旧帝大(北海道大学・東北大学・東京大学・名古屋大学・京都大学・大阪大学・九州大学)の医学部を考えている場合には、大学別の実戦模試で出題傾向や現在の自分の立ち位置を確認しておくと良いでしょう。駿台の模試には旧帝大の出題傾向に合わせた模試も実施しています。

--夏休み明け以降、受験生が模試を受けるべき理由を教えてください。

 夏休みが明けると、現役生の受験対策学習が本格化し、浪人生との差が縮まってきます。そこで模試を受けて自分の立ち位置を意識することが重要になってくるのです。特に医学部の場合、他の学部と比べて浪人生が多いうえに、各大学の定員が大体100名前後という狭き門。毎年全国レベルで熾烈な競争になります。そういった意味で、規模の大きい模試を受けて自分の学力の客観的な評価を得ることには大きな意味があります。

--私立大の医学部入試は「大学によって問題に特徴があるので、一般的な模試を受けてもあまり参考にならない」「大学ごとに個別の対策をしないと合格できない」という意見もあります。とは言いつつ、私立大専願の場合でもやはりこの4つの模試はすべて受けたほうが良いですか。

 受けたほうが良いと思います。実際に駿台から私立大医学部への合格者を見ていると、国公立大併願組が合格を勝ち取っていることが多いのです。つまり、私立大の医学部は大学によって出題形式に特徴はあれど、最終的には総合力が合否の決め手になっているということ。むしろ特定の大学に特化した対策だけをやるというのは自分で勉強の範囲を狭めているだけ。リスクが高いと思います。

 共通テストの得点率にも言えることですが、マーク型の入試だからといってマーク型の勉強だけをするよりも、総合的に記述型を含めた個別試験対策をしっかりやっているほうが得点力を伸ばせるのは確かです。

 一方、私立大専願で共通テストを受ける予定がない場合でも、共通テストの勉強は私立大のマーク型入試の対策にも十分通用するので、共通テスト模試も受けることを勧めます。母集団の数が多い模試を受けて、自分の立ち位置を知るとともに、不得意分野を洗い出し、次の学習計画に反映させていく材料にすべきです。

模試の心構え

--医学部合格を目指して受験勉強を進めていく中で、模試はどうやって活用すれば良いのでしょうか。

 特に現役生は、夏休み明けすぐの模試ではまだ努力の成果が成績として現れてこないかもしれません。その中でも結果に一喜一憂するのではなく、自分が足りないところを確認することが最優先。模試を受ければ自分に何が足りないかが具体的にわかるので、そこを補う学習が有効です。

 特に医学部入試は倍率が高い分、1点の差が大きく明暗を分けるため、どこかに弱点が残っているとそれが命取りになってしまうことがあります。先ほどからお伝えしているとおり、医学部に合格するには総合力が勝負。弱点を洗い出してそれを早めに潰していくことが非常に重要です。

「医学部受験において1点は非常に重い」と語る、駿台予備学校・湧井宣行氏

--模試を受けるにあたって、事前に準備しておいたほうが良いことはありますか。

 共通テスト型模試は出題パターンがある程度決まっているので、問題を解く順番を決めておくなど、事前に立てておいた作戦を模試で試してみると良いですね。大学別の実戦模試も同様に、各大学の出題傾向に合わせて戦略を立ててから模試を受けることをお勧めします。

 また、共通テスト本番でも各大学の個別試験でも合格最低ラインの得点率は大体わかっているので、次の模試では各教科何割を目指すかを具体的に目標を立て、それを目指して勉強を進めると良いでしょう。

--模試の当日に気を付けておいたほうが良いことはありますか。

 入試本番で使う予定の鉛筆や消しゴムを使ってみるとか、お昼ご飯に何を食べるかとか、入試本番をシミュレーションしてみると良いですね。生徒の中には、緊張で前夜に眠れなくなることを想定して、睡眠不足で受けてみたという人もいました。

 学力が高く何の不安もないような子でも、入試本番になると手が震えるほど緊張することもあります。模試はあくまでも模試ですが、緊張感をもって自分を追い込むことも良いシミュレーションになるのではないでしょうか。

--模試を受けた後にすべきことはありますか。大学受験の模試は結果が返ってくるまでに1か月前後かかるので、つい受けっぱなしにしてしまう人も多いのではないでしょうか。

 まずは自己採点ですね。マーク型模試は正誤がすぐにわかりますが、記述型でも模試の実施者が提供する解説を良く読みながら自分なりに分析し、自己採点をすることが大切です。

 特に駿台の模試は、試験問題はもちろん、受験者に配付される「解答・解説集」も、入試の最新の傾向を汲んだ、非常に洗練された内容になっています。毎年合格者に聞くと、模試の復習には時間をかけ、この「解答・解説集」をじっくり読んでいたと皆、口を揃えて言います。さらに約1か月後、結果が返却されたときには「採点講評」を確認し、自己採点と実際の答案を比べながら、再び全体をざっと見直します。この2段階の復習が非常に効果的です。

解答・解説集は最強の学習ツール「駿台模試」&復習で差をつける

--確かに、直後と約1か月後の2回見直すことで、身に付けたことを忘れずに定着させられますね。忘却曲線を考えてもちょうど良いタイミングですね!

 はい、その通りです。作問者が命をかけていると言って良いくらいの力の入れようなので(笑)、復習の際にはぜひ熟読し、活用してほしいのです。

--ちなみに駿台模試の問題を作成しているのは、現場の講師の先生方ですか。

 はい、駿台模試の問題はすべて駿台の看板とも呼べるエース級の講師陣が作成しています。普段の授業で生徒のようすや学習の進捗を把握している講師ですので、模試の問題は「このくらい理解していてほしい」「ここだけは必ず覚えておいてほしい」という思いを詰めこんで作成します。いわば日ごろの学びの集大成です。「解答・解説集」に関しても、少なくともそこで出題されたテーマについては、どんな参考書よりも詳しく最新の情報が集約されています。

模試結果、どこに注目すべき?

--返却される結果には、得点だけでなくさまざまなデータが記載されていますね。どこに注目すべきですか。

 もちろん、志望校の判定評価や順位を見て、現在の立ち位置を確認することはとても大切です。ただ、少ない定員で1点を争う医学部受験では「全教科において弱点をなくすことが必須」と考えると、科目ごとに示された単元別の正答率と自分の結果を見比べるのが良いでしょう。そこを見れば今、どの単元の得点率が低いか、どの科目が弱いかを一目瞭然で把握できます。

--得点率が受験者平均に達していないところが今の自分の弱点だとわかるわけですね。弱点を把握したあと、どのようにそれらを補強していけば良いでしょうか。

 まず、できなかった原因を考えることです。学校ですでに履修した内容であれば、教科書やそれと一緒に配られる問題集など、基礎基本に立ち返るのがもっとも有効でしょう。

 もし原因として「解答時間が足りなかった」という場合は、なぜ時間が足りなかったかというのを自分でしっかり分析すること。英文読解が遅いなら速読の練習をしてみるとか、化学の計算が遅いようなら決まった計算のパターンを身に付けるための問題をこなすとか、弱いところの経験値を上げることでスピードも上げていくという方法を試してみると良いでしょう。

 一番危ないのは「ケアレスミス」という理由で片付けてしまうことです。ミスの内容を良く分析してみると、単なる「ケアレス」ではなく、何か根本的な原因があったり、結局は基礎が疎かだったりというケースが意外と多いものです。客観的に間違いを認め、教科書なり、自分が使っている参考書なりをもう一度確認してみることは、少々回り道に思えても後々に影響する重要なプロセスだと思います。

--基礎基本に戻る際に、教科書以外でお勧めの教材はありますか。

 現役生であれば普段から付き合いのある高校の先生に模試の問題と答案を見せて、どんな問題をやれば良いか相談してみるのが一番です。

 また、駿台でも採用している「atama+」は間違いの原因となる単元までさかのぼってくれるので、このようなAI教材もお勧めです。そういった最新の教材を活用することで、効率的に弱点の補強ができます。

「総合力こそが医学部合格の鍵」と話す、湧井氏

--先ほどから何度か出てきている「総合力」。結局、模試でも入試本番でも差がつくのは、難易度の高い問題が解けるかどうかよりも、多くの受験生が解けている問題を着実に、かつ網羅的に得点していける力なのですね。

 「本当はできたはず」とか「ケアレスミスだった」は言い訳で、冷静に考えると、単に「できなかった」ということなんです。基礎基本が抜けているために、問題を解いている途中で何が何だかわからなくなってしまったり、初歩的なミスをしてしまったりするんです。だからこそ、素直に受け止めて、悔しさをバネに、基礎基本に立ち返ってほしいですね。

--模試というと、受験生もその保護者もどうしても結果に気を取られてしまいがちです。この時期の判定評価は、どのように受けとめれば良いですか。

 仮にE判定が出てもすぐにあきらめる必要はありません。「どうしてE判定なんだろう」と具体的な原因の解明と対策を練ることに意味があります。そのうえで「どの科目のどの単元であと何点取れていたら、E判定がB判定になるか」と分析してみる。それによって勉強の計画を立て直せば、まだまだ合格の可能性は十分にあります。

 たとえば「駿台全国模試」は2回ありますが、まったく同じ単元は出題されません。ですから、たとえ2回ともE判定であっても、それぞれ復習を念入りにやることで、両模試で出題された範囲を網羅できます。つまり、かなり幅広い範囲で得点力を付けられるということです。E判定からの逆転合格が毎年起きるのは、模試の復習をしっかりやった学生たちが合格を勝ち取れている証拠です。

第1回駿台全国模試問題(2022年6月施行)

--逆に判定評価が良い場合、気を付けた方が良いことはありますか。

 油断しないことが一番ですが、「余裕がある分、まだ手をつけていないところに早めに着手することができる」と学習を次のステップに進めましょう。たとえば記述型模試に強くて、好成績が取れていても、共通テストの国語や地歴公民は直前からの学習では焦りを生む科目です。文系科目はやれるうちにやっておくと良いと思います。

 ちなみに2022年度入試における共通テストは、理系型で60点以上も平均点が下がったにもかかわらず、医学部は全国どの国公立大学でも8割以上取らないと勝負にならないという厳しい結果でした。万が一共通テストの国語と地歴公民が弱い場合、あっという間に点数が開いてしまいます。共通テストでの高得点が最低条件の国公立大医学部受験は、それだけでかなり厳しい戦いになります。

--医学部の中でも国公立大、私立大それぞれ大学ごとに偏差値の開きはありますね。どこを目指すかによって模試の結果の見方は異なりますか。

 国公立大や中堅以上の私立大志望であれば、母集団のレベルが高い「駿台全国模試」での立ち位置を目安にするのが良いと思います。一方、私立大専願でおもに中堅以下を目標にしている場合であれば、「駿台全国模試」だけではなく、より幅広い母集団の「駿台・ベネッセ模試」も参考にすると良いでしょう。

--高1・高2生も模試を受けておいた方が良いですか。

 早いうちから模試を受けることにはメリットがあります。まず、高1・高2生の模試はあらかじめ出題範囲が決まっているので、その範囲を勉強してできなかったところをしっかり復習するという勉強のペースメーカーにできます。これまでお話してきたように、特に医学部は総合力勝負。弱点は早めに潰しておくに越したことはありません。

 また、高2あたりからは、自分が得意だと思っている科目でなかなか点が伸びないという現象が起きることもあります。得意だからこそ、つい難問奇問に時間をかけて、基礎がおろそかになっているのか、苦手科目ばかり勉強して、得意科目の勉強時間が減っているのか。自分の学力の客観的な把握、そして弱点の分析と克服の仕方を高1・高2生から身に付けておくと、いざ受験学年になってやることが増えたときに有利です。

--最後にあらためて、医学部受験だからこそ意識しておきたい模試との付き合い方を教えてください。

 国公立大でも4倍くらい、私立大だと10倍以上の高倍率。しかもその狭き門に挑戦してくる人たちは、全国でも学力が高い層が圧倒的に多いのが医学部受験の難しいところです。

 このようなハイレベルな集団で合格を目指す以上は、模試であっても「1点でも多くとりにいく」という気概をもっていてほしい。そして復習する際も、「大体できた」ではなくて、「どうやったらあと1点、あと2点取れたのか」という貪欲な気持ちをもって取り組んでほしいと思います。

 駿台の模試は、一流の講師陣が実際の入試に出題される可能性の高い分野を研究し尽くしてつくり上げています。「あと1点」の力を存分に身に付けるための最強の教材として、模試をフル活用してください。

--本日はありがとうございました。

 受験生やその保護者にとって、模試はともすれば「合否占い」のように位置づけてしまうもの。今回の取材を通して、それで思考停止するのはあまりにもったいないと痛感した。現状の学力を解像度を上げて把握するとともに、最先端の知見をもつ一流講師陣が「命をかけてつくっている」問題をしっかりと自分のものにしていければ、狭き門であっても逆転合格は十分にありうるということだ。医学部受験生には9月から4回の模試を「合否占い」ではなく、書店や学校では手に入らない希少な教材として十分に活用してほしい。

最新の問題を詰め込んだ最強の教材「駿台模試」
《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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