女子文系バイアス、高1から強まり数学点数に影響か

 Institution for a Global Society(以下IGS)は、生徒の潜在的なバイアスを明らかにする診断ツール「Ai GROW(アイ・グロー)傾向チェックテスト」のデータをもとに、中学3年生~高校3年生(計3,325名)の「文理傾向バイアス」の変化を男女別に分析し、結果を公表した。

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Ai GROW 傾向チェックテスト「文理傾向バイアス」男女別推移グラフ
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  • 東京学芸大学大学院 教育学研究科 西村圭一教授

 Institution for a Global Society(以下IGS)は、生徒の潜在的な文理傾向等におけるバイアスを明らかにする診断ツール「Ai GROW(アイ・グロー)傾向チェックテスト」のデータをもとに、中学3年生~高校3年生(計3,325名)の「文理傾向バイアス」の変化を男女別に分析し、結果を公表した。中学3年生時点では男女ともに理系傾向であったにもかかわらず、高校1~2年生にかけて女子生徒は男子生徒よりも文系へのバイアスが急激に強まることが明らかになった。

 調査対象は、県立高校2校、私立高校3校、私立中高一貫校3校の計8校に在学する計3,325名(中学3年生55名=男子45名・女子10名、高校1年生1,210名=男子667名・女子543名、高校2年生1,027名=男子675名・女子352名、高校3年生1,033名=男子687名・女子346名)。測定期間は2021年10月~2022年8月。

 今回の調査は、小学4年生・中学2年生では数学のスコアに男女差が見られないとするTIMSS(国際数学・理科教育調査)の2019年度の調査結果と、高校3年生では数学の平均点に統計的に有意な男女差が出るとする東京理科大学数学教育研究所の2020年度基礎学力調査報告をもとに、中学3年生~高校2年生の間に生まれる数学力の男女差の原因を調査することを目的にIGSが実施したもの。脳が潜在的に「自分は文系」「自分は理系」と捉える「文理傾向バイアス」により文理選択を「数学が苦手だから文系」と決める生徒が見られる一方で、デジタル化が進む実社会において数理科学的なものの見方やスキルは文系・理系を問わずさまざまな場面で役に立つ。

 調査の測定に使用した「Ai GROW(アイ・グロー) 傾向チェックテスト」は、国際機関で人種差別傾向を判別するためにも利用される認知バイアスの測定手法を用いたアセスメントで、作為的な回答ができず信頼性に長けるもの。従来のアンケートやペーパーのテストでは顕在化しにくい生徒の潜在的な文理傾向(文理傾向バイアス)、心理的安全性、自己肯定感、自己効力感を、3分程度の測定でリアルタイムに可視化することができる。

 IGSは、今回の調査で明らかになった高校1~2年生の女子生徒における文系へのバイアスが急激な強まりについて、男女別の数学点数の推移やステレオタイプに関する先行研究をふまえ、文理選択を迫られる高校1年生の時期から2年生の時期に「女子は文系」というバイアスが環境(先生や保護者からの声かけ等)の要因で強まり、実際に高校3年生で点数に影響が出ている可能性を指摘。自覚することが難しい文理傾向バイアスの定期的な可視化は重要で、数学との身近な接点を実感できるよう、将来やりたいことと直結するイメージを抱いてもらうような環境づくりや声かけの必要性を訴えている。

 東京学芸大学大学院 教育学研究科・学長補佐の西村圭一教授は、「女子生徒の文系バイアスが強まる現象は、世界共通のことではありません。バイアスは先生や保護者、友だち同士の影響が大きいため、その影響を小さくする働きかけをする必要があります」とコメント。バイアスへの早期対策により、進路選択時の幅が広がり、キャリアにおいても数学的素養の発揮が期待できることを指摘している。


《増田有紀》

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