大阪【高校受験2023】クラス増減で公立校の倍率に異変、改革熱心な私立高に人気集まる…第一ゼミナール

 他府県に比べて複雑かつ特殊とされる大阪府の高校入試。第一ゼミナールやファロス個別指導学院などを展開するウィザス 学習塾事業本部顧客支援部 室長の高澤隆一氏に、入試の特徴をはじめ、注目校や効果的な対策、保護者の心構え等を聞いた。

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ウィザス 学習塾事業本部顧客支援部 室長 高澤隆一氏
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  • 大阪府公立高校入試 合否の決まり方
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 他府県に比べて複雑かつ特殊とされる大阪府の高校入試。2023年度入試が近づくにあたり、どのように準備をしていけば良いのだろうか。第一ゼミナールやファロス個別指導学院等を展開するウィザス 学習塾事業本部顧客支援部 室長の高澤隆一氏に、大阪府高校入試の特徴をはじめ、難関校や人気校の動向、効果的な対策、保護者の心構え等を聞いた。

大阪府の公立入試の特徴と2022年度出題傾向の振り返り

--大阪の公立高校入試の特徴をあらためて教えてください。

 大阪では、2月に特別選抜、3月に一般選抜があります。特別選抜は実技系等の特色あるコースの学校が多く、難関の文理学科(北野高校、豊中高校、茨木高校、大手前高校、四條畷高校、高津高校、天王寺高校、生野高校、三国丘高校、岸和田高校)や普通科は、ほぼ一般選抜に集中しています。おもな特徴は以下の6つです。

1.公立の入試問題はレベル別に3種類

 理科・社会の問題は全校共通ですが、英語・数学・国語の問題は難易度に基づきA~Cの3タイプあります。「A(基礎的問題)」「B(標準的問題)」「C(発展的問題)」となっていて、Cがもっとも難しく、文理学科等の難関校はすべてC問題を採用しています。一時期、大阪府のC問題が難しすぎると話題になりましたが、今はだいぶ難易度が落ち着いてきています。

2.調査書:入試の得点配分の比率は5タイプ

 調査書と入試の得点配分は学校によって異なります。I~Vの5タイプがあり、Iタイプが7:3で、7割が当日の入試の点数、3割が調査書。Vタイプはその逆の3:7で、入試点数3割、調査書7割です。

3.文理学科受験は調査書よりも当日の入試を重視

 調査書は5段階評価で9科目45点満点です。中1~2は2倍、中3は6倍で、中3の調査書のウェイトが圧倒的に高い。ただ通知表の評価が1つ上がっても実質6点分。文理学科の得点配分は7:3で、6点よりもさらに圧縮されるので入試の実力重視で考えた方が良いでしょう。

4.文理学科上位校で英検2級取得が過熱

 英検2級を取得している生徒は入試当日の8割の点数が保障されます。たとえば文理学科トップの北野高校は受験者のおよそ94%が2級以上を取得しているので、実質4科目入試になっています。この制度は大阪独自といえますが、最近は英検2級取得後に英語をあまり勉強しなくなる生徒が多いことや、大学入試においても同じ英検2級を利用できるアンバランスさ等が問題視されていて、制度として今後見直しが入る可能性もあると考えています。

5.自己申告書で繰上げ合格を決めるボーダーゾーン制度

 「ボーダーゾーン」制度は、合格ラインの上下1割の生徒は基本的に実力差がないとみなされ、出願書類と併せて提出した自己申告書をもとにゾーン内の生徒の合否を決定できる校長裁量があります。

6.少子化にともなう公立高校の減少とテコ入れ

 大阪府の再編整備により、定員割れが3年続くと閉校対象になります。公立高校の数が減っていると同時に、大阪は私学無償化の収入上限が910万円と手厚い内容なので、私立にシフトする動きが加速し、公立私立が共存していく状況が年々色濃くなっています。また、それに絡んで、従来の工業高校を統合させて新工業系高校を作る動きも出ており、公立高校のテコ入れが進んでいます。

--2022年度の入試を振り返って、難化・易化が目立った科目、出題傾向の変化がありましたら教えてください。

 科目別に振り返ると、英語ではC問題で読解の大問数が1つ減り、時間内に解ききる生徒が増加しました。また、筆記の条件英作文では、自身の経験に基づき考えを述べさせる問題が出題され、思考力や表現力を問われるように。B問題は、難易度や問題数の変更はないものの、新しく指導課程に加わった原形不定詞や現在完了進行形等、新単元からの出題が複数見られました。

ウィザス 学習塾事業本部顧客支援部 室長 高澤隆一氏

 数学では、C問題は出題形式が以前の大問3つ構成に戻り、記述問題は例年通り2題で図形の証明と関数の記述でした。C問題は元々図形問題の比率が高く、多くの中学生は図形が苦手なので、その練習量の差がそのまま得点差になったと考えられます。B問題は2021年度の出題形式が受け継がれ、図形問題の配点率が下がり、規則性や関数の記述等は例年どおりでした。

 国語は問題数や難易度に変化はないものの、現代文で例年にはない「空欄のない『条件記述』」が出題されました。一方の古典では記述問題の出題がなくなり、本文要約に関する書き抜き問題が出題され、文章内容・大意をつかめるかがポイントとなりました。

 理科・社会は統一問題だけなので、標準的な問題でした。ただ、理科は出題単元が中3内容に偏っていた、社会は公民問題の比率が高く難化した等の特徴がありました。

公立トップ不動の北野が増クラス、北部の偏差値に異変

--文理学科10校の動向はいかがでしょうか。

 北野高校のトップは不動、ついで天王寺高校で、北野高校とのワンツーは変わらず。2023年度の入試の動きをみると、北野高校は1クラス増設され、定員が40名増えました。一方で、北野高校と同じ大阪北部にある茨木高校で1クラス減ったので、このあたりでどう倍率が動くのかがポイントになります。茨木高校は元々倍率が高い人気校なので、茨木高校を受験する上位層が、1クラス増でチャレンジしやすくなった北野高校に流れることも予想されます。上位層が抜けることによって、例年どおりの倍率になるかもしれませんし、定員減により上位層も下位層も抜けてしまい、倍率が下がるということもあり得ます。過去の例では1クラスの定員の増減で偏差値が2~3程度動くことがあるので、それを踏まえて進路を検討する必要があると思います。

--大学合格実績が伸びている公立高校はどこでしょうか。

 国公立大学のうち、旧帝大および神戸大の合格実績をみると、ワンツーの北野高校と天王寺高校が安定的に合格者を出しているのに加え、ここ3年は三国丘高校の合格実績が上がっています。三国丘高校の合格実績はかなり顕著な伸びを見せています。対して、高津高校はやや苦戦しているようです。高津高校と四條畷高校は同レベルと考えて良いと思いますが、旧帝大の合格実績では四條畷高校の方が20名程多い。入口と出口を比べると、四條畷高校が生徒の力を伸ばしているというのが見てとれます

--文理学科以外の公立注目校について教えてください。

 大阪北部では春日丘高校が注目です。淀川以北にはトップ校から順に北野高校、茨木高校、豊中高校と3つの文理学科がありますが、この3校が難しいとなると、春日丘高校に集まります。文理学科は難しいけれど、普通科の中で上位を狙う生徒が集まる学校で、倍率が高い人気校です。

 一方、大阪南部で注目なのは泉陽高校です。泉陽高校は、文理学科の三国丘高校を敬遠する生徒が受験する学校です。三国丘高校の難化にともない、三国丘高校を断念した生徒も学力が高い子が多いのです。そのため、北部の春日丘高校と南部の泉陽高校は、同じような図式で、学力が高い生徒が集まってきています。

「文理学科に加え、普通科の上位校に学力が高い生徒が集まっている」

私立は学費無償化やコロナ対応の追い風がやや鎮火も、改革熱心な高校が人気上昇


--私立高校の受験の特徴を教えてください。

 私立高校の入試日は2月10日の統一日なので、基本的に専願または公立の併願校としてこの日に1校受けることになります。私立専願で落ちてしまったけど、どうしても私立高校に入りたい生徒のための1.5次入試という制度もあります。また、私立高校の学費無償化と、さらにコロナ禍のオンライン対応が早かったことからここ数年は私立に追い風が吹いていましたが、制服や修学旅行積立金等の制定品が公立よりも費用がかさむことを受け、直近では私立への熱がやや落ち着いたように感じます。学校によっては、成績優秀者への特待制度で制定品無料を打ち出しているところもありますね。

--私立の併願校で人気の高校はどこでしょうか。

 今年の私立注目校は、北部・中部・南部で3区分すると、北部は去年に引き続き箕面自由学園高校だと思います。府内私立高校の受験者数で昨年は箕面自由学園が1位になり、専願入試のみのコースもできるほどの人気です。背景には、教科力が高い先生方が集まって、学力の底上げを図り、入学した生徒たちの満足度が上がって、口コミでさらに良い先生が集まってくる好循環が生まれたことが大きなポイントです。また、校風は自由で、多様性を重んじ、先生方は生徒を信じて応援してくれるので生徒たちの満足度が高いですね。全国模試のランクで国公立ゾーンに入る高3生が多くいるそうで、次の入試で国公立大学の合格実績が上がるのはほぼ間違いないでしょう。

 中部は、テレビ番組にも出て話題になった興國高校です。かつてはやんちゃな生徒が多い学校だったのですが、今やスポーツで有名な名門男子校です。これまでにJリーガー、プロ野球選手、ゴルフ選手等を続々輩出しているスポーツ校であるうえに、国公立大学にも124名合格しているのが凄いところで、今年は受験者数がなんと300人増えました。校長先生のお人柄と教育改革で良い先生方が集まり、保護者の心をガッチリつかんでいます。

 南部は初芝立命館高校が注目されています。これは、京都の立命館大学が茨木市に大阪いばらきキャンパスを開設して、経営学部を学部移転しており、さらに2024年に映像学部・情報理工学部も学部移転する予定という動きと関連しています。これによって大阪南部でのブランド力が高まり、立命館大学の附属校としてブランディングが確立できたからです。そうした流れに伴って、中学入試・高校入試とも人気が集まり、偏差値も上がりました。立命館大学の大阪いばらきキャンパスに通えるならと、先を見据えて志望する生徒が増えてきていると感じます。

冬休みの学習アドバイス

--受験生に向けて、冬休みの学習アドバイスを教科ごとにお願いします。

英語


 C・B問題ともに読解問題が中心のため、基本語彙の習得は必須。教科書の単語は確実に押さえましょう。また、中2・中3の文法内容からの出題が多く見られるため、十分に練習を。リスニングでは必要な情報を的確にメモを取りながら聞く練習を行いましょう。

数学


 C問題は平面図形と空間図形の練習が必要です。平面図形では円に関する問題、空間図形では平面図形になおす練習を重点的に。また、例年出題される整数問題を意識的に触れましょう。B問題は例年出題される1次関数の利用や、図形の証明、相似と三平方の定理の練習をしましょう。

国語


 現代文は、記述問題に書き慣れることはもちろん、抜き出し問題と記号問題の対策が必要。また、ここ数年出題されている「文芸評論」のテーマの文章を中心に読解していくと良いでしょう。古文では全体の内容を正確につかむ練習をしておきましょう。

理科


 冬休みは中1・2の内容で忘れている単元や苦手な単元を重点的に。「なぜなのか?」を考えながら学習することが大切です。また、たくさんの問題集に手を出すのではなく、1冊の問題集を何度も繰り返し学習することが成績向上につながります。

社会


 地理・公民・歴史と分野によって得手不得手があるので、強化したい分野を中心に取り組みましょう。単元別学習ではなくテーマごとに取り組むことをお勧めします。ただし、公民は演習量が不足していると思いますので単元別学習も良いでしょう。

合格者は停滞期の中2に勉強法を確立して一抜ける

--2024年以降に受験を控える中学1年生と2年生の保護者はどのような準備をしておくと良いでしょうか。

 2022年度の文理学科合格者について現場の先生に聞いてみたのですが、中2のときに偏差値60なかった生徒が、受験時には70を超えて文理学科に受かるといったケースが多々ありました。そうした生徒の共通項は、中2の時に頑張って成績を伸ばした生徒なんです。

 一般的に中2は成績が一旦停滞しがちです。中1の学習はまだ小学校の延長線上にあり、体験ベースで学べるものの、中2の後半になると急に論理的な学びが必要になり、勉強の質が変わります。そこをスムーズに移らせてあげるのが我々の腕の見せ所ですが、そうした学習の停滞時期に、勉強量を確保して一歩抜けた生徒がそのまま伸びていく。文理学科に合格する子は、中2のときに勉強のやり方を確立させた生徒が多いです。

 我々も中2の夏から勉強の取り組み方を変えよう、スイッチを入れよう、と示すのですが、そこでちゃんと受け止めてロジカルシンキングにシフトできるかがポイントになる。早めに手を打つことが重要かと思います。

「中2の学習の停滞時期に、勉強量を確保して一歩抜けた生徒がそのまま伸びていく」

--受験のことを考えると保護者もナーバスになります。最後に、保護者に心構えとアドバイスをお願いします。

 保護者の方の中でも、特にお母様が忙しすぎて、パンク寸前になっている方が多いように感じます。仕事も家事もあるうえに、子供の受験対策やコロナの感染予防も重なってストレスをためてしまっている。そこで弊社では、オンラインの保護者セミナーを開催しています。新家庭教育協会から講師を招いて、親の大先輩としての体験談を語っていただくのですが、参加した保護者の満足度が高く「胸のつかえがおりた」等の感想をいただいています。

 また、生徒向けのオンライン自習室も保護者の方に好評です。わが子が勉強しているようすを間近で見て褒めることができますし、子供も褒められて頑張るという良い循環ができます。特に受験前は親子ともストレスがかかるので、勉強は塾に任せていただいて、お母様自身が元気になれるようにすることで、子供も安心して受験勉強に臨めると思います。

--ありがとうございました。

 ユーモアを交えながら熱心に語ってくれた高澤氏の言葉からは、常に受験生や保護者を思い、気遣う情の深さが感じられた。大阪の高校には高澤氏のように、熱をもって教育に取り組み、子供と真摯に向き合う教育者が多いのも特徴の1つなのだろう。熱心に子供を育む環境の高校と縁を結べるように、塾を上手に活用しながらこの冬のヤマを乗り切っていただきたい。

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《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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