好奇心を学びの原動力に…ソニーの教育プログラムCurioStep「シネコポータル・ワークショップ」

 シネコポータル・ワークショップについて、実施校の先生・児童のほか、ワークショップのナビゲーターを務めるシネコカルチャーの福田桂氏に話を聞いた。

教育・受験 小学生
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 「子供たちの好奇心を個性豊かに育み、世界を動かす夢とチカラになるように」をテーマに、ソニーが自社の多様なテクノロジーとクリエイティビティを生かして展開している教育プログラム「CurioStep with Sony(キュリオステップ、以下、CurioStep)」。プログラミング、科学、デザイン、音楽等、STEAM分野を中心とした多様な学びのコンテンツで子供たちが好奇心を広げるサポートをしている。

 今年度(2022年度)「CurioStep」のプログラムの一環としてスタートしたのが「生態系をつくって、育てて、考える シネコポータル・ワークショップ」だ。ソニーコンピュータサイエンス研究所 研究員の舩橋真俊氏が2010年から進めている「協生農法(Synecoculture)をはじめとする拡張生態系」に関する研究の一端を、子供たちにも体験してもらうというもの。今回は全国各地の小中学生に、約7か月間を通じてワークショップに参加してもらった。子供たちには、「シネコポータル」の入門キットをベースに、植物の成長やそこに生息する生物の観察記録をつけてもらい、全5回のオンラインワークショップの中で植物の成長に関する報告会を実施した。

 なお、舩橋氏の研究テーマである「拡張生態系」とは、人の手で多種多様な植物を混生・密生させることで生態系がもともともっている自己組織化能力(=生態系の拡張原理)を引き出し、健全な表土を育み、自然状態を超える生物多様性や生態系機能を実現するもの。この原理を生かした農法を「協生農法」、この農法を活用している農園を「協生農園」と言い、「シネコポータル」は、いわば小さな協生農園。参加者自らがつくって育てて考えることで、表土の構築過程や生態系の自己組織化能力を体験できるようにしたものだという。「シネコポータル」の詳細はこちらを参考にしてほしい。

 今年度、ワークショップに参加したのは全国6つの小中学校。そのなかの一校、福島県福島市立三河台小学校にうかがい、取組みについて話を聞いた。

「シネコポータル・ワークショップ」の取組み

 福島市立三河台小学校では、教育実践論文募集(ソニー子ども科学教育プログラム)に30年以上継続応募しており、理科教育に力を入れてきたという背景がある。同校の山本 巌校長が先導となり、今回の「シネコポータル・ワークショップ」を教育活動に取り入れたという。

福島市立三河台小学校

--本ワークショップへの参加には学校としてどのようなねらいがあったのでしょうか。

山本先生:かねてより本校では理科、生活科に研究の視点を置いて取り組んできました。生活科で1年生はアサガオを、2年生は自分で選んだ野菜を3年生はホウセンカを栽培しています。年間を通して植物の成長を調べるといった学習は高学年でも行っています。

 植物を育てるというのは、知識を得ることはもちろん、観察したり栽培方法を工夫したりと、さまざまな学びに触れることができます。シネコポータル・ワークショップは、単に植物を栽培するだけではない、さらに一歩踏み込んだ生物多様性や生態系といった学びを子供たちに提供できる機会になると考え、今回のワークショップに参加することにしました。

福島市立三河台小学校の校長山本 巌先生

--2年生と6年生の希望者が中心になってシネコポータル・ワークショップの活動に参加したそうですが、子供たちの反応はいかがでしたか。

山本先生:2年生の子供たちは、休み時間や放課後を使って水やりをしたり観察したり、勉強というより日常の体験として活動を楽しんでいるようです。子供たちが花壇の目立つところに「シネコポータル」という看板を立てたので、「今どうなってるの」とワークショップのメンバーではない子も一緒になって世話をする等、学校全体でシネコポータルへの認識や、興味・関心が高まっていると感じています。

 6年生の総合的な学習の時間で、環境問題をテーマにした学びを取り入れていたこともあって、実際に目にしたシネコポータルにおける混生・密生の生態系が、自分たちの日常生活とどうつながっているのか考えるきっかけになったのではないでしょうか。今回の経験が、地球規模で生態系を守っていかなければならないという意識が芽生える第一歩になったら良いなと思っています。

--シネコポータル・ワークショップの教育的な意義について教えてください。

山本先生:2年生は自分たちの花壇にアゲハチョウを呼ぶにはどうしたら良いかを考え、6年生は、植物の生育条件を変えて育てていました。教科書的な答えありきの活動ではなく、子供たち自らが予想を立てて、工夫しながらシネコポータルと向き合う姿が見られました。結果が予想とどう違ったかを検証し、さらにそれを深掘りしていくという学びのサイクルは、今回のような長期間の取組みだからこそできたことだと思います。

 同じくシネコポータル・ワークショップに参加している全国の小学生とオンラインでつないで自己紹介をすることから始まって、自分たちのシネコポータルは今どうなっているのかということを発表し、SNSを使って共有する機会もありました。約7か月にわたって、同じ取組みをしている子供たちと交流した経験が、やる気やモチベーションアップにつながったようです。

 また、コロナ禍で外に出て体験する機会や、人と新しく出会う機会が減ってしまっているなかで、シネコポータル・ワークショップを通じて日常生活で交わることがない他校の子供たちとつながれるという意義も大きかったと思います。

低学年は興味関心の蓄積を

 「シネコポータル・ワークショップ」の活動を行うなかで、このワークショップに参加していない児童のなかにも興味をもつ子が増えたという山本先生。実際に参加した児童はどう感じたのか。

 そこで生活科研修主任として2年3組を担任する菅野章子先生、同学級の児童の齋藤沙奈さんに、ワークショップに参加した感想を聞いた。

--まず、先生は子供たちがシネコポータル・ワークショップに参加するにあたってどのようなサポートをしたのでしょうか。

菅野先生:この学校には、ビオトープがあったり校庭に植物をたくさん植えていたり、教室でダンゴムシやカタツムリ、カナヘビを飼っていたりと身の回りの植物や生き物に触れられる環境が日常的にあります。シネコポータルも、生活科の授業というよりは子供たちの興味関心に応じた日常の延長として取り入れました。もともと野菜や花を植えていた自分たちの花壇や植木鉢があって、そこにシネコポータルも加わった感覚です。

生活科研修主任で2年3組担任の菅野章子先生

--まずは春に植物を植えるところからスタートしたと思います。感想を教えてください。

沙奈さん:どんなものをどんなふうに植えたら楽しいかみんなで話し合って決めました。おいしいものができたら良いねって、カブ、二十日大根、ニンジンに枝豆にとうもろこしにブルーベリー…いろいろなものを育てました。水をあげたり、葉っぱの間引きをしたり、だんだん大きくなっていくのを見ながら、実がなったときはうれしかったです。この葉っぱ苦いね、ニンジンおいしいねってみんなで食べたのが面白かったです。

 あと、春に植えたニンジンにアゲハチョウの幼虫を見つけました。もっとたくさんニンジンがあれば、もっとたくさんのアゲハチョウが来て卵を産んでくれるのかなと思って、秋もニンジンを植えました。これからどうなるのかワクワクしながら観察しています。

2年生の齋藤沙奈さん

菅野先生:子供たちは、ニンジンの花はすぐ咲かないから、花壇がさみしくならないようにと、冬に咲く花を自分たちで調べてきてウィンターコスモスやチューリップの球根を植えたんです。通常の生活科では、植えた植物がどう成長していくかを学習しますが、シネコポータル・ワークショップは、子供たちのやりたいことが先にあるという順序。「もしかしてこうやったらこうなるんじゃないかな」と、予想を立ててから行動するという学びを、低学年ながら自然にできるようになってきたと感じています。

 子供たちにとって、自分が関わった植物が大きくなっていき、実際に収穫して食べたりするのは何物にも代えがたい経験です。収穫したニンジンを、「どうやって食べる? 茹でる?」と聞いたら、話し合ったうえで「生で食べたいから、先生マヨネーズとお味噌を買ってきて」とリクエストしてくれました。一晩でブンタンの木にいたアゲハチョウの幼虫がカラスに葉ごと全部食べられてしまったこともあったのですが、子供たちはめげずに「また葉っぱが生えてきたから大丈夫なんだね」と話していて。すべてが学びにつながっていて、楽しさの延長に学びがあるのだということをシネコポータル・ワークショップの活動を通じてあらためて気付かされました。

二十日大根の収穫のようす。「自分が栽培に関わった植物を実際に収穫したり食べたりする経験は何物にも代えがたい」と菅野先生

高学年にとっては日ごろの学びを生かせる場に

 それでは高学年の子供たちにとって、シネコポータル・ワークショップの活動はどのような学びにつながったのか。理科研修主任を務め、6年1組を担任する野口卓也先生、同学級児童の菅野瑞希さんに取組みのようすを聞いた。

--ワークショップに参加した感想を教えてください。

瑞希さん:シネコポータルの入門キットに書いてあるやり方だけじゃなくて、「もっとこうしたい」ということがたくさん出てきました。シンボルツリーとしてブルーベリーの苗木を植えましたが、水をあげる木とあげない木を比較したり、雑草を取らないとどうなるのか試してみたり。実際にやってみて、予想と違ったことと予想通りだったこと、どちらもあったのがおもしろかったです。「コスモスは名前に秋という字が入っているから秋に花が咲くんじゃない?」「二十日大根は本当に20日で芽が出るの?」というのは予想通りでした。

6年生の菅野瑞希さん

--フラフープを使って、植える種類を分けるというアイデアはどこから出たのでしょうか。

瑞希さん:まず春に植えたときは、いろいろな種類の種や苗をごちゃまぜにして植えたんです。その後、テレビで同じ種類の花がきれいに揃っている他の花壇をみて、シネコポータルもそんなふうに育ったら面白いと思ったので、秋にはフラフープを使って区切って植えてみることにしました。春に植えた方は、大きい葉っぱに隠れて見えなくなる草木も多くて何がどのくらい育っているのかというのはわかりづらかったのですが、秋に区切って植えたものは、どの植物の育つスピードが速いかぱっと見てわかるようになりました。でも、区切らずに植えたものと区切って植えたものを比較すると、ごちゃまぜに植えた方が、育ちが良かったことは意外な発見でした。

6年生が工夫を凝らし、フラフープを使用して土壌を区切っているようす

--「生育条件を変えて比較する」「フラフープを使って仕切りを作る」といったアイデアは、すべて子供たちから出てきたものだそうですが、先生はどのように指導されたのでしょうか。

野口先生:彼女らはこれまでの理科の授業で習ったことを自然とシネコポータル・ワークショップの活動にも取り入れていたんです。5年生のときにインゲン豆の発芽を題材に植物の成長について学びましたが、植物の成長には水が必要という知識、比較実験には条件を揃えることが大切だといった前提となる学びがあったからこそ、こういった発想につながっているのだと感じました。ただの思いつきではなく、きちんとした理由をもって予想をするという、授業で学んできた内容が生かされているというのはうれしいですね。授業で学んだことをシネコポータル・ワークショップに生かして、そこで学んだことを授業にも還元できてというところに意義を感じています。

理科研修主任で6年1組担任の野口卓也先生

--ワークショップに参加した前と後で、子供たちにどんな変化が感じられましたか。

野口先生:わが校の児童たちは、日常的に理科の授業や日々の学校生活の中で植物を「育てる」という経験はたくさんしていると思うんです。ですが「マリーゴールドの花壇を作る」「花の一生を観察する」といったような目的をあえてもたずに、「どうなっていくかわからないからやってみよう」というシネコポータル・ワークショップの進め方は、ゴールや目的をもって行う普段の学びとは違うものを得られたと思います。

 また、全5回のプログラムを通じて全国の小中学生と交流できたことも大きいですね。住んでいる場所が違うので気候も違うし、同じ植物を植えても場所によって違いがあること等、オンラインで一気に情報をもらえるのはもちろん。方言や学校の風景が違うなど、シネコポータル以外の部分を知ることができることも含めて、他県の子供たちと交流できたのはとても良い刺激になりました。

シネコポータル・ワークショップ ナビゲーター福田氏に聞く

 編集部では後日、シネコカルチャーナビゲーターの福田桂氏に取材をした。福田氏はこれまでに、六本木ヒルズや銀座ソニーパークで行われたワークショップでも「シネコポータル」をつくって育てて考える活動を行ってきたという。

 「CurioStep」の中で、全国の小学生に対して「シネコポータル・ワークショップ」を展開した背景や思いを聞いた。

--「シネコポータル・ワークショップ」の学びのポイントについて教えてください。

福田氏:多様な植物や生物を観察し、植物と積極的に関わる体験を通して、我々の身の回りを循環している生態系の存在を意識するきっかけをつくるというのがワークショップのねらいです。

 一般的に、植物を育てる際、私たちはいろいろなものを排除していきます。何も生えていない土を用意して、1種類だけを植えるやり方を教わります。ほとんどの子供たちはそうやって学校でアサガオやミニトマトを栽培しているはずです。

 ですが、一歩山の中や人の手の入らない場所に入ってみると、いろいろな植物がいろいろな大きさで、いろいろな形で生えているわけです。さらに季節によっても違って、冬になると枯れているものもあれば緑のものもある。れぞれがつながり合って助け合って、それで生態系が成り立っているんです。

多様な生物が季節を通じてさまざまな形で存在し、それぞれがつながり合い助け合って成り立っている

 学校で習うのは、「植物を育てる=(植木鉢などに)1種類を植える」ですが、むしろ自然界はいろいろな植物が一緒に育つのが当たり前であって、その中から人間がひとつの育てたいものを選び取って育てているんです。ですので、まずはいろんな植物があっていろんな条件下で植物は育っていくということを、子供たちに伝えたいという思いがありました。

 そして「シネコポータル・ワークショップ」でみんなが育てた野菜や花、果樹などが育つのに必要な光、水、土、空気、そして植物を食べて生きている動物や私たち人間も、すべてつながって影響し合いながら生きているということに気付いてほしいと思っていました。このシネコポータルには物質循環の姿が投影されています。農薬や肥料を使わなくても自然に植物が生育するためのバランスがとれていくものなんです。

 自然にはもともとそういう力がある。生物多様性を高めるために人間ができることは何か、「シネコポータル・ワークショップ」を通じて子供たちが感じ取ってくれたらうれしいです。

シネコカルチャーナビゲーターの福田桂氏

--全5回のワークショップを通じて、子供たちと交流を行いました。子供たちの反応はいかがでしたか。

福田氏:毎回、「今日はこんなことを話そう」と台本を考えて臨んだのですが、実際に子供たちと接すると、ワーっと質問をしてくれて、それに答える形になりました(笑)。子供たちの表情だったりふるまいだったり、エネルギーが画面の向こうからやってくるような感じで、「シネコポータル」の経過報告だけではない、高揚感も含めてみんなで共有できたと思っています。

 先ほど述べた1種類の植物を育てることと、いろいろなものを育てることの違いについても、私が説明しなくても子供のほうから「育てているひょうたんの草刈りをしたら、ひょうたんが枯れてしまったのですが なぜ?」という疑問を投げかけてきてくれる等、リアルな体験の中で学ぶ場となりました。大人のように余計な先入観がないぶん、子供たちは素直に受け入れてくれて、そのうえで起きたことを報告してくれ、やりとりをしながら僕自身が成長させてもらったように感じています。

--「シネコポータル」を全国の学校で子供たちに伝える意義とはどのようなものだとお考えになっていますか。

福田氏:子供たちにとって、毎日の生活の中で目を引くことや気になることって、きっとたくさんあると思うんです。ところが普段の授業や生活の中では、いろいろな制約もあって、気になることをとことん追求できないのも現実ではないでしょうか。

 でも僕は、どうしても気になることや自分が興味をもったことについて、考えたり確かめたり、調べてもわからないことは自分で実験をしてみたりという経験が、とても重要だと考えています。自分の中にすとんと落ちてくるような「わかる」経験をすることで、学びが自走していくと思うんです。

 本格的に学問に向き合うのは一般的には大学生前後ですが、それ以前であっても、わからないことを自分で問いながら理解を深めていくという学びの本質は、幼いときから当たり前にもっているものなんです。学校の成績やテストの点数にはすぐに結びつかないかもしれません。でも、興味のあることや分からないものに関して、日々問いを立てて、それを確かめて、誰かに聞いてもらうことで、理解が深まり、楽しい世界が広がっていく。「学び」というものは楽しいものなんだと、伝わったらうれしいです。

ソニー「CurioStep」が目指すものとは

 これまでも数多くのプログラムを展開してきた「CurioStep」。単発の学びではなく、今回のような長期にわたるワークショップを実施するに至ったきっかけはどこにあったのだろうか。運営を担当するソニーグループのサステナビリティ推進部CSRグループ山本理恵子氏は次のように語る。

山本氏:私たちの活動として、子供たちが自分の好きなことや関心をもてることに出会うきっかけが届けられたらという思いでワークショップを開催しています。そこからさらに、子供たちの好奇心を育むというところを目指して、子供たちに継続的な学びを届けたいと本ワークショップの実施に至りました。

 好奇心をきっかけにまずは挑戦して、そこから感じたことを自分で調べたり考えたり、また新たな問いを立ててさらにチャレンジするという学びのサイクルをサポートするには、ある程度の長いスパンが必要になります。シネコポータルの、「時間をかけて植物を育てる」という取組みはまさに、長い目で見た学びのサイクルを具現化するものとなりました。

ソニーグループ サステナビリティ推進部CSRグループ山本理恵子氏

--ワークショップに参加する子供たちのようすを見て、いかがでしたか。

山本氏:思っていた以上に、子供たちは私たちからのメッセージを素直に受け取って実践してくれたように思います。たとえば第1回目のワークショップの時点では、子供たちから出てくる質問も「水って何回あげたら良いの?」「こういうときってどうするの?」といった、福田さんに正解を求めるものが多かったんです。

 ですが、福田さんは子供たちに「まずは試してみて、どうなったかよく観察してね」と繰り返し伝えてくださいました。すると後半は「フラフープを使ってみたよ」といったように、「やってみたらこうなった」という結果を私たちに教えてくれるようになっていきました。7か月間の活動を通じて、子供たちの大きな変化を感じたところです。

福田氏:子供たちのなかにある自らの疑問を手掛かりに学んでいけるということを伝えたかったんです。

--「シネコポータル・ワークショップ」の活動に大きな手ごたえを感じているとおっしゃいましたが、「CurioStep」が目指す学びと、今後の展望を教えてください。

山本氏:福田さんが言うように、子供自身の好奇心を原動力に、自ら学びのサイクルを広げていく部分を育てていきたいと思っています。生態系や植物だけではなく、地球の歴史や文化等、「シネコポータル」の関連分野への興味も広げていくことができたらうれしいですね。今回、長期にわたるワークショップをやってみて、みなさんのおかげで非常に実りのあるプログラムになったと思っています。ぜひ今後も継続して活動を続けていきたいと思っています。


 「シネコポータル・ワークショップ」を通じて、「CurioStep」が目指す学びの在り方が全国の子供たちに広がっていく。その先に見える未来はきっと明るく、笑顔にあふれたものになるだろう。

 なお、この1年間の「シネコポータル・ワークショップ」についての各校の取組みについては、SNSからも確認できる。また、必ずしも団体で行う必要もなく、プランターがあれば「シネコポータル」を作ることができる。ぜひ学校で、あるいはご家庭で、小さな「協生農園」を体験してみてほしい。

シネコポータル・ワークショップ公式ページはこちら
《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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