【大学受験2023】駿台、共通テストを総括…傾向変わらず、全科目で「読む力」問われる

 2023年度の大学入学共通テストが終わった直後、駿台予備学校市谷校舎・校舎責任者の細谷一史氏に、出題傾向の分析、これからの共通テストの行方と対策について聞いた。

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【大学受験2023】駿台、共通テストを総括…傾向変わらず、全科目で「読む力」問われる
  • 【大学受験2023】駿台、共通テストを総括…傾向変わらず、全科目で「読む力」問われる
  • 数学易化も科目では高得点者減(科目別度数分布)
  • 大学入学共通テスト志願者の推移
  • 取材に応じてくれた駿台予備学校市谷校舎・校舎責任者の細谷一史氏

 3回目の実施となった2023年度の大学入学共通テスト(旧センター試験、以下、共通テスト)。各予備校からの問題分析速報や、大学入試センターからの中間集計を経て、2023年度の共通テストの全貌が明らかになりつつある。

 二次試験を控えた1月半ば、駿台予備学校を取材した。インタビューに応じてくれたのは駿台予備学校市谷校舎・校舎責任者の細谷一史氏。志望校選定や出願、合格までの今後の対策について聞いた。

5年連続志願者減、背景に少子化と共テ不要入試の選択増

--2023年の共通テストについて、昨年からの志願者数の推移をお教えください。

 今年の共通テスト志願者数は512,581名。前年からは1万7,786名の減少で、センター試験のころから5年連続減少しています。この要因は、少子化に加え、総合型選抜や学校推薦型選抜等の共通テストを使わない入試を検討する生徒が増えていることにあると思います。

データネット(駿台予備学校/ベネッセコーポレーション)が公開した共通テスト概況

 医学部志望者をみても、特に私立大医学部専願者には共通テストを受験しない生徒が一定数います。背景はさまざまですが、共通テストの受験メリットが少なくなったことがあげられます。

 たとえば英語リーディングについてみると、かつてのセンター試験は、大問1は発音・アクセント、大問2は文法、大問3から長文の問題が出る流れで、私立医学部の入試問題に似通っていたため、最終チェックとして利用することができました。それが、共通テストに変わってからは長文読解だけになり、私立の出題傾向と大きく変わってしまいました。実際に2023年度の問題をみても、共通テストでは発音・アクセントや文法問題が出ておらず、一方で、すでに入試が終了した国際医療福祉大学、岩手大学医学部では今年も文法問題が出題されています。

 共通テスト利用入試を実施している私立大医学部も一部ありますが、全体的に受験メリットがなくなってしまっているように思いますね。共通テスト対策と、私立大医学部対策は別物として考えていかなければならないと思います。

分量増の問題を時間内に解き切れたか…明暗を分けたのは?

--センター試験から共通テストに変わって今年で3回目。センター試験だったころや昨年から出題傾向に変化はありましたか。

 科目ごとにみていきましょう。

 まず、英語リーディングは出題語数が約6,000語と、大幅に増加しました。普段から英語長文に慣れ親しんでいないと、あの短時間で解き切るのは難しかったのではないでしょうか。分量が多く、ミスを誘発させるような文章や問題であったのは間違いないですね。

 現に、自己採点結果をみても9割以上得点した「高得点者」が減少しています。自己採点結果の度数分布から過去3か年を比べてみても、今年の英語リディングは高得点者が激減しており、過去3か年でいちばん低い結果になっている。いわゆる医学部合格を勝ち取るための1つの指標となる8割前後の得点者や、100点に近い層に関しても、軒並み減少しています。

 以前のセンター試験だと「医学部受験生は英語を9割取るのが必須」と言われていましたが、共通テストになってずいぶん変わってきた印象です。平均点以上に高い得点を必要とされる生徒たちは、英語で苦しんだのではないかと思います。

 前年との比較で言うと、出題された単語の難易度はあまり変化がなく、多くの受験生は意味を理解すること自体に苦労することはないと思います。ただ、分量が多くなれば必然的に単語数も多くなり、推測で読んでいては確実に時間が足りなかったのではないでしょうか。共通テストに必要とされる単語レベルを完璧に身に付けておかないと厳しいですね。一方、昨年に引き続き、今年も発音・アクセントや文法の問題は出題されませんでした。「知識があれば確実に取れる」という問題はなくなってきていると言えるでしょう。

全教科で求められる「速く正確に読む力」

--数学や国語についてはいかがでしょうか。

 数学は、昨年の平均点があまりにも低かったため、昨年と比べると平均点が著しく上昇し、その点では「易化」と言えます。ただ数学IAは、平均点・度数分布ともに一昨年の2021年と同水準に戻った形ですが、数学IIBに関しては、一昨年の2021年よりも満点の生徒が少なくなりました。

 この要因の1つとして、英語と同じく分量の増加があります。具体的には、IA22~23ページ(下書き用紙を除く)で昨年より3ページ増、IIBは21~22ページ(下書き用紙を除く)で昨年より2ページ増。内容も、ただ計算すれば解ける問題ではなく、文章が多く、読解力が必要な数学に変化しています。

 センター試験の「数学=計算して答えを出す」時代はもう終わり、共通テストでは数学も読む力が求められているのです。今後もこの傾向は続くでしょう。これを念頭において、日ごろから計算問題を解く力だけでなく、読解力を養っておかないと苦労すると思います。

 国語に関しても、出題形式は例年通りでしたが、英語・数学と同じく「読解力」がものを言いました。過去3か年で比較してみると、今年の国語は厳しかったといえます。難易度としては「やや難化」と分析しています。

データネットによる分析:科目別度数分布(国語、算数)

 2023年の共通テストは数学の平均点が上がったイメージが強いものの、国語や英語リーディングは平均点が下がっています。共通テスト全体の平均点が上がっているため「易化」と思われがちですが、数学の平均点の変化が底上げしているだけで、科目ごとにみると数学以外は難しい内容だったと言えます。どの科目でも重要なのが読解力でした。「読解力=国語の力」と思われがちですが、数学でも英語でも、普段から読む力を付けておかないと解きづらかったのは間違いないと思います。

 この傾向は地歴公民・理科も同様です。出題形式の変更はほとんどなかったため、差がつく要素としてはやはり読解力とスピード。知識を問う問題とは別に、その場で資料を読ませて解答させる内容の出題が全科目を通しての傾向です。

出題内容に大きな変化なく、対策しやすい側面も

--今年は「易化」と分析された数学について、具体的にどのような変化がありましたか。

 「易化した」というよりも、出題内容に大きな変化がなかったので対策がしやすく、解きやすかったというのが正しい表現かもしれません。昨年は問題の難易度が上がり、出題形式も変化したために苦しんだ受験生が多かったものの、今年は多くの受験生が昨年の問題を踏まえてしっかり準備をして本番に臨めました。受験生本人だけでなく、高校や予備校、出版業界等、教育に関わるあらゆる教育業界で昨年の問題を踏まえて準備ができ、昨年を想定したうえで対策を組み立てられたのが平均点にも影響したのではと思います。

 1つ例をあげると、今年の数学IAでバスケットボールの放物線の問題が出ましたが、実は一昨年の駿台模試でも同様のボールの放物線の問題を出題していました。模試の問題は、共通テストの問題作成方針を踏まえ、想定して作っているものです。その予想が的中したということは、大学入試センターが掲げる出題方針に関する我々の理解に誤りがなかったと言えます。共通テストのコンセプトは一昨年から一貫して変わっていません。そういった意味では、想定しやすかった問題だったように思います。

 「易化」「平均点が戻った」というと、センター試験レベルの問題に戻ったと考えられがちですが、そうではありません。公式を暗記すれば回答できる、一問一答の問題はもう時代遅れ。共通テストのコンセプトから考えて、今後も「文章を読ませてその場で考えさせる」問題が頻出するのは、今後も明らかです。そうした意図を汲み、センター試験と共通テストはまったくの別物と考えて、我々予備校も受験生に指導していかなければならないでしょう。

取材に応じてくれた駿台予備学校市谷校舎・細谷一史氏

二次試験で共通テストに似た出題にする大学も

--今年の受験生に、残りの試験を乗り切るためのアドバイスをください。

 まず学部問わず受験生全体に対してお伝えすると、英語・数学・国語の問題で、共通テストに似た問題を出題する大学が一定数みられます。昨年もそうした変更を行った大学が複数ありました。過去問に取り組むも大事ですが、今まで出たことのない新傾向の問題が出たときに、焦らずに解けるかどうかも重要なポイントになります。

 たとえば英語だと、最近は多くの大学で記述問題を出題する傾向にあり、昨年はそれまで未出題だった大学でも記述問題を出すケスがみられました。英語の記述問題に関しては、自己採点で終わらせず、周りの人にお願いして客観的な視点で添削してもらいましょう。自分では解けていると思っていても、他人から見たら減点対象になる部分もあると思いますので、そのギャップをしっかり埋めることが大事です。

 また、過去問から発展させた同傾向の問題を解くことも有効です。駿台には同じような出題傾向の過去問をピックアップする過去問分野別演習システムがありますので、生徒にはこの時期、このシステムを使って問題を解くように勧めています。

駿台の「過去問・分野別演習システム」とは

 数学で大切なのは「取捨選択だと思います。難しい問題が出てきたときに、心折れることなく「自分が解けない問題」=「周りも解けない」と割り切れるかどうか。ただ、それは共通テストの得点次第で対応が変わるでしょう。合格可能性を考えたときに、自分がどの立ち位置にいるのかによって、潔く捨てて良いのか、最後まで喰らいつくべきなのか、解き方や作戦の立て方を変える必要があります。逆転が必要だという人は、大問1で逆転ができる大学を検討に入れる等、戦略を立てると良いですね。

 地歴・理科に関しては、他の科目と異なり、とりわけ現役生はここから大きく伸びる子も少なくありません。地歴・理科は試験を受けながら伸びていく科目なので、あきらめずに集中して取り組みましょう。ギリギリまで教材を手離さないことが勝敗を分けます。

医学部受験は大混戦、あきらめずに次逆転を

--医学部受験生にもメッセージをお願いします。

 医学部を第一志望にした生徒の共通テスト得点率をみると、合格可能性が高い90%以上や8590%の高得点者に関しては昨年比で大幅に増えているものの、一昨年に比べると少ないことがわかります。医学部志望者の得点のボリュムゾンは、昨年比約5ポイント増の7585%あたり。先ほどお伝えしたとおり、センター試験では得点率8割超えが当たり前でしたが、2023年の共通テストは75~85%あたりに多くの医学部志望者が固まる「大混戦」です。つまり、医学部志望者は二次逆転を狙っているんです。

 この時期はとにかく二次試験に向けての勉強を毎日10時間以上は維持してもらいたいですね。置かれている環境は皆同じ。当然のことですが、頑張ることで合格の可能性は高くなります。現在の状況からするに、共通テストの得点率7割台から合格が出てくるのは確実ですので、共有テストの結果が芳しくなかったからといって落ち込むことなく、二次試験に挑んでほしいですね。

共通テストは、センター試験の「後継試験」ではない

来年度以降の受験生は…

--2024年度以降の受験生に向けて、共通テスト対策のアドバイスをお願いいたします。

 かねてから言われているように、共通テストのコンセプトは「読み・書き・そろばん」。この3つが大事なのは3年間の傾向をみても間違いないと思います。特に重要視されているのは、読む力。読解力や読むスピードは受験前の数か月で身に付くものではなく、習得に時間が必要です。英文も日本語も、しっかりと読む癖を付けるようにしたいですね。受験に限らず、さまざまな読み物に触れる際に意識すると良いと思います。そうした意味では、講義を聞く受動的な勉強だけでなく、自分で進める能動的な勉強が大事で、音読等もお勧めです。

 また、読解力を養うためのICTサービスやアプリを利用するのも良いと思います。駿台の高卒クラス生は速読力を培うツルも使っています。どのように読めば速くなるのか、どのくらい読むスピドが上がっているのかを診断できる機能を使って、自分の読むときの癖を客観的に分析しながら学習するのが良いのではないでしょうか。

 何度もお伝えしますが、忘れずにいてほしいのは、センター試験と共通テストはまったくの別物だということです。点数を取りづらく、差が付くのが共通テストの特徴です。センター試験のように「点が取れるテスト」という前提で挑むと痛い目にあいます。生徒本人だけでなく周りの大人も、意識して共通テストに向き合ってほしいですね。

--受験まで時間的な猶予があるからこそ、忘れずにしっかり取り組みたいですね。

 もう1つ、高校1・2年生には、この2月、先輩の姿をしっかり目に焼き付けてほしいと思っています。現役生は特に、同級生間での情報交換が多く、横軸でしか「受験」を捉えられていないことが多いんです。その点、今まさに受験に挑んでいる先輩の姿を見ることで「こんなに必死にやっていても、合格する人と不合格になる人がいる」ということを実感できます。駿台市谷校舎はいつでも見学歓迎です。受験期の先輩の集中力、緊張感を一度体験してほしいです。とりわけ医学部進学を目指している方は、日本でいちばん医学部合格者を輩出するこの場所で、ぜひ雰囲気を感じてほしいと思います。

--ありがとうございました。

2024・2025年度の共通テスト対策も駿台で早めに着手を

問題作成方針を考慮した対策を

 共通テストが重要視するコンセプトは「読み・書き・そろばん」であり、特にその中でも読む力が求められていると語る細谷氏。3回目を終えた今回の試験内容でも、その意図はより明確化され、おそらく次年度以降も変わらないであろうことが示唆された。その場で文章を読ませて考えさせる共通テストは、センター試験とはまったくの別物。いまだに「旧センター試験」と補足される共通テストではあるが、しっかり切り分けて独自に対策する必要があると、今回の取材を通して実感できた。2023年度受験生は二次試験に挑む時期、これまでの学びを糧に走り切ってほしい。

《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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