東大入試のプロが語る「現役合格」への王道…駿台「東大入試情報講演会」から

 全国から毎年1万人ほどが挑戦する東京大学の入試。現役合格にはどのような力や勉強が必要になるのか。7月22日に行われた駿台予備学校主催「東大入試情報講演会」の概要をレポートする。東大合格への王道とは。

教育・受験 高校生
PR
駿台予備学校 東大入試情報講演会
  • 駿台予備学校 東大入試情報講演会
  • 駿台予備学校 お茶の水校3号館(東大専門校舎)責任者の吉井素子氏
  • 「駿台予備学校 東大入試情報講演会」資料より
  • 「駿台予備学校 東大入試情報講演会」資料より
  • 「駿台予備学校 東大入試情報講演会」資料より
  • 「駿台予備学校 東大入試情報講演会」資料より
  • 「駿台予備学校 東大入試情報講演会」資料より
  • 「駿台予備学校 東大入試情報講演会」資料より

 駿台予備学校(以下、駿台)は、2023年7月22日、都内の駿台お茶の水校3号館(東大専門校舎)において、「東大入試情報講演会」を開催した。東大入試に精通した受験指導のプロ「進路アドバイザー」が、2023年度東大入試結果を分析。合格への王道を示す東大に特化した講演会で、駿台の7都府県の11校舎を会場に、8月26日まで計12回行われる。

 中学生・高校生および保護者を対象としており、この日も中学生から高校3年生まで幅広い世代の生徒と保護者が約130名参集し、その人気ぶりから急遽2会場目が設営された。東大入試はどういったもので、現役合格にはどのような力や勉強が必要になるのか。この記事では同講演会の概要をレポートする。

 講師を務めた駿台お茶の水校3号館(東大専門校舎)責任者の吉井素子氏は出席者に向け、「東大入試は科目が多く、総合力が求められる。模試をうまく活用して苦手科目をなくす努力を」と激励を寄せた。

学問選択の幅広さが東大の魅力のひとつ

 日本の最高学府である東京大学。少子化が進んでいるにも関わらず、東大の志願者数は大きくは変わっていない。全国から毎年1万人ほどが「東大に行きたい」という強い思いからチャレンジするあこがれの大学だ。

 その人気要素のひとつに、入学後に学びたいことを選べる環境がある。東大では、文科一・二・三類、理科一・二・三類の6類に分かれて前期の2年間で一般教養(リベラルアーツ)を学び、3年生から10の学部に分かれた専門課程に進むシステムだ。各学部・学科には「この科類から一定数を受け入れる」という指定枠があるものの、少数ながら科類に関係なく学生を受け入れる「全科類枠」も設置され、文理をまたいだ進路選択ができるようになっているのが特徴となっている。

 吉井氏はこうした東大の進学システムを紹介したうえで、「卒業生の進路は非常にさまざま。まだ専門が絞り切れず、興味が幅広い人にお勧め。この選択の柔軟さが東大の魅力のひとつ」と述べた。

東大入試ではバランスの良い総合力が必要

国公立大学個別試験科目・配点例

 入試の全体的な特徴としては、文科類で地歴2科目、理科類で古文・漢文も含めた国語が必要など、他の国公立大学に比べて科目数が多いうえに、バランスの良い学力が求められている。吉井氏は、「東大はアドミッション・ポリシーを通じて、受験生に『文系理系を超えた幅広い基礎知識や能力』『知識の詰め込みでなく関連付けて解を導く能力』を求めている」とし、「東大を目指すなら、こうした能力を身に付けられるよう努力してほしい。東大入試実戦模試を活用し、しっかり準備を」と呼びかけた。

意外と比率が大きい共通テストは9割得点を目標に

 東大の入試システムを理解したうえで、ではどういった勉強をどのレベルまで到達すれば良いのか。吉井氏によると、東大受験に向けて勉強するにあたり、合格の1つの目安であり、目標ラインとなるのが、各科類ごとの合格者平均点だ。年によって得点率が異なりバラつきがあるものの、過去3年のデータを見ると、たとえば文科類は総計550点満点のうち350~360点、理科一類は340~350点、理科三類は約390点などとなっている。

2021~2023年度入試 東大合格者得点状況

 また、共通テストの合格者平均点データから、「理科三類を除く全類、共通テストで9割が目標になる」と言う。つまり、共通テストでは配点110点のうち9割の100点を取ることが求められ、そこから合格者平均の350点に届くには、2次試験では残り250点(440点満点の6割)が必要となる。吉井氏は、「合格に必要な得点で考えると、共通テストと2次試験の比は100点:250点。比率で見れば1:2.5となり、共通テストのウェイトは実は大きい。東大入試は2次試験勝負だと思われがちだが、共通テストも意識して勉強を進めてほしい」と強調した。

 さらに、配点の5分の4を占める2次試験については、駿台独自のデータから分析。これは、駿台が独自に入試得点の開示データを分析したもので、東大からは公式発表されていない2次試験の貴重なデータの一部を利用したものだ。

東大成績開示データ 合格者平均点推移【文科類・総合点】
東大成績開示データ 合格者平均点推移【理科類・総合点】

 たとえば2021年から2022年度を見ると、文理とも合格者平均点が20点前後も下がっている。これについて吉井氏は、「共通テストの難度が高かったことに加え、2次試験も難化して得点できなかったことが背景にある」とし、「年度によって得点にはバラつきが出やすい。こうした傾向を踏まえ、過去問に取り組む際には、年度ごとの2次試験の合格者平均点や科目別のレーダーチャートから得点の目標ラインを決めてほしい」とアドバイスを送った。

東大合格に求められるのは知識、思考力、表現力

 

「東大は1点で落ちるシビアな世界」と語る吉井氏

 そして、東大合格に求められる力として、「2024 東京大学案内」が示している高等学校段階までの学習で身に付けてほしいことを紹介。東大合格には科目を横断して「知識・理解力、思考力、表現力」が必要になると述べ、「知識だけでなく、考える力・表現する力を養う必要がある。そのためには、まずはしっかりと知識を身に付け、理解すること。その土台の上に、考える力と、それを答案用紙に言語化できる表現力を鍛えることが重要」と語った。

模試をうまく使って苦手をなくす学力づくりを

 最後に、吉井氏は模試の活用法について、「2021年度第2回東大入試実戦模試<駿台・Z会共催>」(2021年11月実施)における成績評価パターン別合格率を示しながら説明した。これは、2021年11月に行われた同模試の受験者(現役生)の英数国及び地歴または理科2科目の偏差値をA(60以上)・B(50台)・C(50未満)に分類し、各科目のA~Cの組み合わせをグループ分けして、その後の東大入試での合格率を示したものだ。

 たとえば全科目がAである「A-A-A-A」のグループは合格率が100%となっており、逆に全科目がCである「C-C-C-C」は同0%となっている。

 これは「A=得意科目、B=普通、C=不得意」とも言い換えられるが、注目すべきは「Cが1つ増えるごとに合格率が落ちること」だと吉井氏は言う。

成績評価パターン別合格率 文科二類

 「不得意科目であるCが合格の足を引っ張ることになる。得意科目を伸ばす勉強も大事だが、東大合格には不得意科目であるCをなくす学力づくりが不可欠。たとえば全科目がB-B-B-Bでも、入試科目が多い分、苦手がなければ6割が合格している」「東大合格への王道は、苦手科目をなくし、多くの受験生が解ける問題でミスをしないこと」だと力説した。

 さらに、同模試の2022年度東大入試合否状況の図を示した。これは同模試にてA~E判定を受けた受験生のどのゾーンがどれだけ合格したかを表したものだ。この図から、合格可能性が80%以上とされるA判定でも不合格になっている受験生がいることや、同60%のB判定及び50%のC判定で多くの合格者がいることを指摘。「模試でA・B判定が出ていても不合格になる人がいる。模試は判定が出るのが1か月後であり、1か月前の学力を診断したものなので過信してはいけない。逆にCゾーンは合格のボリュームゾーンであり、伸びしろがある」と説明した。それを踏まえ、模試の活用方法について、「模試は受験の練習の場であり、自分の今の位置がどこにあるのか、何が足りないかを知るもの。模試の結果をうまく使って改善を行い、判定がたとえ良い結果でなくてもめげずにチャレンジしてほしい」とエールを送った。

2022年度東大入試合否状況 理科一類

 講演会終了後、吉井氏のもとには多くの生徒と保護者が並び、熱心に質問や相談をしており、吉井氏はひとりひとりに丁寧に受け答えをしていた。

 吉井氏からは、東大を目指す受験生に向けて、力強い激励のメッセージを寄せていただいた。「東大合格に近道はありません。最後まであきらめずに、東大に行きたいという強い思いを抱き続けられるか、それに向かって日々たゆまぬ努力を続けていけるかにかかっています。東大の壁は高く、険しいと感じられることもあるでしょうが、簡単には登れない、超えられないことこそ、東大の魅力なのだと思います。具体的な課題や目標を見つけ、それをひとつひとつ乗り越えた時に、東大が求める受験生に成長していくはず。東大合格はゆずれない。駿台は頑張る受験生を応援しています」。


生徒と保護者のやる気に火をつける講演会

 中学生から高校生と、その保護者まで幅広い聴講者が数多く集まり、東大入試の人気や注目度が伺えた講演会だった。講演会では東大入試の仕組みといった基礎編的な部分から、各科目の出題傾向、合格の目安となる目標ライン、模試の活用方法といった応用で多岐にわたる内容を分かりやすく紹介。東大の魅力に触れつつ、東大受験の特徴やその対策まで網羅的に説明することで、東大を目指す生徒と保護者のやる気に火をつけ、力強い後押しをしていた。駿台の東大入試情報講演会は今後8月末まで全国7都府県11校舎で開催(お茶の水校3号館でも同内容で2023年8月13日に実施)される。東大に興味がある親子はぜひ足を運んで、情報収集に活用してほしい。

吉井氏による東大入試情報解説動画
7都府県11校舎で開催
駿台予備学校「東大入試情報講演会」

高校3年生・高卒生対象
東大入試実戦模試ほか、模試ラインアップ
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top