ルネ中等部 横浜校の先生が語る「eスポーツとプログラミングを通じて育まれる力」

 ルネサンス高校グループが中学生を対象に、eスポーツやプログラミングを軸とした学びを提供する「ルネ中等部」は現在、全国に7拠点(池袋・新宿代々木・横浜・名古屋・大阪・岡山・博多)と拡大中だ。ルネ中等部 横浜校で数多くの中学生と接する今井康平先生と櫻井優子先生に話を聞いた。

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ルネ中等部 横浜校の先生が語る「eスポーツとプログラミングを通じて育まれる力」
  • ルネ中等部 横浜校の先生が語る「eスポーツとプログラミングを通じて育まれる力」
  • 今井先生(左):ルネ中等部 横浜校およびルネサンス高等学校横浜キャンパスeスポーツコース責任者。櫻井先生(右):ルネ中等部 横浜校およびルネサンス高等学校横浜キャンパスeスポーツコースの職員
  • 「eスポーツも部活動と同じように学生生活をより豊かなものする役割を担っている」と語る今井先生
  • ルネ中等部タイムテーブル。昼の部・3限は講義かプログラミングを日替わりで実施
  • 横浜校には約80台のゲーミングPCとゲーミングチェアがあり、リラックスしながらeスポーツに没頭できる
  • マウスとキーボードも貸し出しているので遠方からも手ぶらで通うことができる
  • 横浜校では中学生と高校生の混成チームがルネカップのヴァロラント部門の上級で優勝
  • 「横浜市は積極的にフリースクールの出席認定に取り組んでいる自治体で、今は昼夜を問わず、どの時間帯でも所属中学校の出席を認めてもらっている」と語る櫻井先生

 eスポーツやプログラミングを中心とした学びの場を提供する「ルネ中等部」は2020年の新宿代々木校と大阪校に始まり、2021年には横浜に開設。現在は全国に7拠点(池袋・新宿代々木・横浜・名古屋・大阪・岡山・博多)と拡大中だ。

 「ルネ中等部」は今、eスポーツを軸にどのような教育活動を行っているのか。横浜校の今井康平先生と櫻井優子先生に、生徒のようすや保護者へのアドバイス、今後の展望などについて話を聞いた。

今井先生(左):ルネ中等部 横浜校およびルネサンス高等学校横浜キャンパスeスポーツコース責任者。櫻井先生(右):ルネ中等部 横浜校およびルネサンス高等学校横浜キャンパスeスポーツコースの職員

eスポーツを通じて社会に出て活躍できる力を身に付ける

--2021年に開校されたルネサンス高校 横浜キャンパスと同じ場所に「ルネ中等部 横浜校」が開設されました。開設の背景を教えてください。

今井先生:ルネ中等部はeスポーツとプログラミングを中心に、子供たちに多様な学びを提供する場です。乗り入れ路線が多い横浜はアクセスも良く、ルネサンス高校横浜キャンパス開校当初から、ここに中等部も開設することを目標にしていました。今では静岡や埼玉、小田原などから通う生徒もいます。ルネサンス高校の充実した設備を中学生から使うことで、eスポーツやプログラミングに早い段階でなじめるのは意義のあることだと思います。

--ルネサンス高校グループは、日本の高校でいち早く2018年にeスポーツコースを開講されました。今、あらためてeスポーツにはどのような役割があるとお考えでしょうか。

今井先生:高校のeスポーツコースもルネ中等部も、eスポーツやプログラミングを通じて「社会に出て活躍できる力」を身に付けるという共通の教育目標が根底にあります。一般的な中学校や高校の部活動と同じように、eスポーツから派生する学びによってコミュニケーション力問題解決力が育まれ、イベントなどに参加して友達をつくることもできます。eスポーツも部活動と同じように学生生活をより豊かなものする役割を担っています。たとえば、学内のeスポーツ大会のルネカップでは、ゲーム参加はもちろん配信も生徒が行ったり、ルネサンス高校グループがブース出展した東京ゲームショウでは、生徒たちが主体となりブース内イベントを取り仕切ったりしました。

「eスポーツも部活動と同じように学生生活をより豊かなものする役割を担っている」と語る今井先生

 東京ゲームショウでは、大阪や名古屋など他拠点の生徒も集まり1つのイベントを作り上げました。eスポーツ関係の企業やプロゲーマー、芸能活動をされている方などをお呼びし、eスポーツと仕事との関わり、ルネサンス高校グループの取り組みについて対談を行い、そのようすをYouTubeで配信しました。中等部の生徒も友達同士でブースに来てくれて、出展している憧れの企業の人たちやプロゲーマーなどが一堂に会する華やかなイベントを体感していました。普段はプレイヤーとして知っているゲーム会社のことを身近に感じたり、自分自身が社会に出るイメージを膨らましたり、社会との接点を感じる刺激的なイベントになったと思います。

eスポーツに適した環境と通いやすい時間帯

--ルネ中等部のおもな利用方法や生徒の過ごし方について教えてください。

櫻井先生:現在、ルネ中等部 横浜校では週5日講義があり、生徒は自分自身が通いやすい時間を選ぶことができます。月曜日と金曜日は13時から17時の昼間の時間帯に講義があります。火曜日・水曜日・木曜日は夕方、17時から19時に講義があります。利用する時間は生徒によって異なるので、生徒数27名のうち1日10名ほどが受講しています。電車を利用して通う生徒がほとんどなので、昼間の部は横浜市内から来る生徒が多く、夕方になると遠方の生徒が多くなります。

今井先生:昼間の部の生徒の教室の利用可能時間は10時から17時までですが、講義の開始時間を13時以降に設定したのは、朝弱い生徒でも講義を受けられる時間をアンケートなどで調査した結果からです。朝早くから登校して講義前に練習している生徒もいますので、eスポーツがきっかけとなり早くここに来たいと思ってくれて、生活リズムが整っていくことはとても良いことだと捉えています。

--どのような時間割なのでしょうか。

櫻井先生:フォートナイト、ヴァロラント、リーグオブレジェンドの3つをメインとしたeスポーツは、昼間の部で1日2時間、夕方の部で1日1時間の講義を行っています。ルネサンス高校eスポーツコースの高校生が中等部の指導にあたり、中等部の専任講師がフォローしています。ゲームのアップデートがあってeスポーツの講義ができないときは、他のゲームや動画等を使っての解説講義をしています。

ルネ中等部タイムテーブル。昼の部・3限は講義かプログラミングを日替わりで実施

今井先生:基本的にはeスポーツの実技練習のあとに最後の1コマでプログラミングや英数国社の講義科目を実施しています。このeスポーツのあとに講義科目があるのが大きなポイントで、好きなゲームに集中して、生徒たちの気持ちが温まった状態で専任講師が付いて、講義科目に取り組めます。

櫻井先生:数学はプリントを準備し、クイズ形式で数学王を決めたり、社会は都道府県のカードを使って名産品を学んだり、基礎学力を重視した内容をゲーム感覚で取り組めるよう工夫しています。小学生のころから勉強に苦手意識がある生徒もいますので、飽きずに楽しく学べる講義づくりを心がけています。

--プログラミング学習についてはいかがですか。

今井先生:パソコンに触れたことがない生徒も多く、パソコンの電源の入れ方、キーボードやマウスなどの使い方、タイピングといった基礎から教えます。すでに独学で学びレベルが高く「次はこのプログラミング言語を学びたい」と言ってくれる生徒もいますし、まずはScratchから始める生徒もいます。個人のレベルによって指導内容はバラバラですので、メインのプログラミング指導講師だけでなく、eスポーツの講師を務める高校生にもフォローしてもらい、ひとりひとりに寄り添いながら教えています。

櫻井先生:横浜校には約80台のゲーミングPCとゲーミングチェアがあり、マウスとキーボードも貸し出しているので遠方からも手ぶらで通えます。ゲームをやっていくとマウスやキーボードなど、道具をランクアップして自分のものを持ちたいと思うようになっていくんですが、周りの友達や先輩に見せてもらったり、触らせてもらったりして、新たなつながりも生まれています。野球のグローブやサッカーのスパイクを選ぶのと同じで、友だち同士で一緒に買いに行ったり、お揃いにしたり楽しそうな姿を見かけます。

横浜校には約80台のゲーミングPCとゲーミングチェアがあり、リラックスしながらeスポーツに没頭できる
マウスとキーボードも貸し出しているので遠方からも手ぶらで通うことができる

今井先生:保護者の方からも家で使うパソコンについてご相談いただくこともありますし、我々スタッフにも気軽に聞いていただいてアドバイスをさせていただいています。

--ルネサンス高校や他の中等部の拠点とはどのような連携がありますか。

今井先生:中等部でeスポーツを教える高校生の講師はルネサンス高校eスポーツコースの生徒で、彼らも普段は、プロ選手やプロ経験のあるeスポーツ専任講師から講義を受けて練習をしています。練習メニューはいろいろありますが、いかにわかりやすく教えられるかを準備して中等部の生徒に指導してくれています。中等部の生徒にとっては質問もしやすく、先輩の情熱も伝わります。中等部には将来、ルネサンス高校のeスポーツコースに入って先輩のように中等部の講師をやりたいという生徒も出てきました。

 生徒同士は、Discordで池袋と新宿代々木といった近い拠点の生徒と交流しています。中等部の他のキャンパスに遊びに行くこともありますね。先ほどお話したルネカップは他のキャンパスの高校生や他の拠点の中等部の生徒と一緒に試合ができる実力試しの場です。横浜校では中学生と高校生の混成チームがルネカップのヴァロラント部門の上級で優勝しました。大阪と横浜の生徒がペアを組んで外部の大会に出て、東京ゲームショウで初めて顔を合わせることもありました

横浜校では中学生と高校生の混成チームがルネカップのヴァロラント部門の上級で優勝

--所属中学校の出席の扱いについて教えてください。

櫻井先生:毎月出席を記録して、生徒のご家庭に封書でお渡しして保護者の方経由で学校の先生に届ける、あるいは私どもから所属の中学校にPDFなどのデータをメールでお送りする場合もあります。横浜市は積極的にフリースクールの出席認定に取り組んでいる自治体で、今は昼夜を問わず、どの時間帯でも出席を認めてもらっています。

「横浜市は積極的にフリースクールの出席認定に取り組んでいる自治体で、今は昼夜を問わず、どの時間帯でも所属中学校の出席を認めてもらっている」と語る櫻井先生

本当の自分を出すことができる環境

--中学生と日々接する中で、こんなふうに生徒が変わったという例を教えてください。

今井先生:たくさんあるのですが、2つの事例をご紹介します。まず1人目は、ルネ中等部に入った当初は先生や周りの子と目を合わせられず、コミュニケーションも一方通行になりがちだった生徒の例です。その生徒がある日突然、「先生、なんだか急に話せるようになりました」と職員室に走って来たことがありました。「フォートナイトの講義で、自分は真面目に講義を聞いていたのに、全然違うゲームをやっている友達を見ていたら、ちょっとした周囲のリアクションを気にしていた自分が馬鹿馬鹿しくなってきて、急に目を見て話しても良いんだ、と思えるようになりました」と、緊張が解けた自分の心の変化を言語化してくれました。その生徒は今、eスポーツコースの高校生で、先日eスポーツの大会があったのですが、自分でメンバーを組んで出場して見事に優勝しました。優勝インタビューを受けるときも、ちゃんと目を見て受け応えできていて、成長を感じました。

緊張が解けた自分の心の変化を言語化し、伝えに来てくれた生徒について語る今井先生。生徒たちの変化と成長を感じることがたくさんあるという

 2人目は、eスポーツの実力をもっと上げたい、eスポーツ業界の知識をいち早く身に付けたいという生徒の例です。自分からルネ中等部を見つけ「ここに入りたい」と保護者に言う勇気があった生徒で、eスポーツの腕前は、年齢さえクリアできればプロチームにすぐに入れるレベルでした。入学前は自分と同じ実力をもった同年代を探しても見つからないと孤独を感じていたようですが、ルネ中等部に入ったところ、なんとeスポーツの高校生講師と既にネット上で知り合いだったんです。その生徒は今、高校生といっしょに日々腕を磨いています

櫻井先生:これからeスポーツを始めるという女子生徒の例もあります。1人になりがちで、高校生講師や私もできるだけ声掛けをしていたものの、eスポーツには自信がなさそうでした。ところがある日、体を動かすゲームを使い、中学生と高校生を交えた対抗戦を開いたとき、その生徒が高校生をしのいで活躍し、その日を境に表情もどんどん明るくなっていきました。今は友達もでき、eスポーツや講義科目も頑張っています。

今井先生:ルネ中等部の生徒は、体験などで新しい生徒が来た時にも気軽に話しかけてくれるんです。もちろん話しかけられたくない生徒もいるので、そういう時には空気を読んで距離を置きますが、やはり多くの生徒が、自分自身がここに来た時に話しかけてくれたのがうれしかったと言っています。周りの生徒たちが受け入れる空気を作ってくれるのはとても助かります。

子供が好きなことを大切にする身近なサードプレイス

--お子さまのゲームと学びの関係に悩みや迷いがある小中学生の保護者の方にアドバイスをお願いします。

今井先生:ゲームもスポーツも関わり方が大事で、やはり目標を決めると良いと思います。習い事は皆がプロを目指しているわけではありませんし、それはeスポーツも同じです。どこまでのレベルに到達したいのか、到達後も続けるのか、趣味として続けていくのか。eスポーツコースではプログラミングも学ぶので、eスポーツではこの大会でこれぐらいの成績を出す、プログラミングは自分でひとつゲームを作るといった目標をもつことが大切です。

 私はゲーム業界に転職したことがありますが、ゲームが好きでも業界や仕事がわからずに苦労しました。もしゲーム業界に進みたいなら、働くための基礎知識はルネ中等部やルネサンス高校eスポーツコースで身に付けることができます。

 生徒たちには、自分がやっていること、好きなことを保護者に理解してもらえるよう、このゲームではこういうことをやって、ここが楽しいと自分の言葉で言えるようになってほしいと話しています。保護者の方も、ぜひお子さまが取り組んでいることに興味をもって耳を傾けてほしいと思います。

櫻井先生:ゲームはただ時間やお金をかけただけではうまくいかないことも多く、大会で結果を残そうとすれば、ずっと同じことをしていても壁は超えられません。自分で何がいけなかったのかを考えて、どう改善ができるのか、問題を解決する力やコミュニケーションスキルが必要です。保護者の方には、eスポーツにはそうした社会でも求められる力が必要で、お子さまがずっとゲームをしているように見えても、実はさまざまな力を身に付けているので、何かひとつのことに没頭して取り組むことは大切であることを理解していただけると嬉しいです。

お子さまがゲームばかりしているように見えても、実は、問題を解決する力やコミュニケーションスキルなど、社会で役立つさまざまな力を身に付けていることを保護者の方に知ってほしいと語る櫻井先生

--今後の展望をお聞かせください。

今井先生:私はカードゲームが好きで、カードゲームを通じて年齢や職業もさまざまな人と接しています。カードゲーム以外の共通点はなくても、雑談からその場でしかもらえないアドバイスも得られ、息抜きにもなっています。今は情報疲れする社会で、大人も子供も関係のない、そうした「サードプレイス」が必要だと感じます。ただ、子供の居場所にはさまざまな制約もあります。特にフリースクールは近くにないと通えませんし、電車にひとりで乗ることが難しいお子さまもいます。ですので、そうしたサードプレイスが身近にある環境を整えるために、ルネ中等部をもっとたくさん、各地に開設していきたいですね。

 また、みなとみらいにあるIT系の会社やエナジードリンクの会社など、さまざまな企業とルネサンス高校グループは協力関係を築いています。横浜にはIT企業も多く、プログラミングを勉強する生徒に来てほしいと声をかけていただくこともあります。進路を見据えて、eスポーツを通したさまざまな仕事の存在を生徒に発信していきたいです。

櫻井先生:ルネ中等部に来て楽しいと思える環境をさらに充実させたいです。実は、生徒とよくボードゲームをしているのですが、テーブルを囲んで顔を見ながら会話をすると、お互いを良く知ることができます。居心地の良い場はボードゲームとも親和性が高く、コミュニケーションの活発化や自分を理解する機会にもなると思います。ボードゲームをしながら進路の相談に乗ることもありますし、保護者の方と3人で面談することもあり、ゲームを介すと緊張せずにリラックスして話すことができます。今後もそんな心地良い場所づくりを追求していきたいですね。生徒たちがオリジナルのボードゲームを作ることにもチャレンジしてみたいです。

--ありがとうございました。


 今井先生と櫻井先生のお話からは、生徒たちひとりひとりと、どのように接していくのか、日々丁寧に考えているようすが感じられた。生徒と先生とのほど良い距離感が、「自分自身をもっと表に出しても良い」という安心感を醸成し、信頼関係を築いていくのだろう。穏やかな表情の生徒と先生が過ごしている温かな教室の雰囲気が印象に残る取材だった。eスポーツやプログラミングから生きる力を育むルネ中等部 横浜校のその雰囲気を知るために、一度、訪れてみてはいかがだろうか。

ここから未来の自分に手を伸ばす
eスポーツ&プログラミング「ルネ中等部」
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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