東大生100人に聞いた「不合格の時に救われた親の声かけ」

 中高生指導の東大生集団 カルペ・ディエム代表 西岡壱誠氏が上梓した『自分から勉強する子の家庭の習慣』(すばる舎)から、受験期の親と子の関係性について、特に「子供が不合格になったときの親の声がけ」について紹介する。

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東大生100人に聞いた「不合格の時に救われた親の声かけ」
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 東大に合格するような子供が育つ家庭では、親のさまざまな工夫が行われている場合が多い。勉強面だけでなく、生活面やコミュニケーションの面から、他の家庭とは少し異なることが行われている。筆者(中高生指導の東大生集団 カルペ・ディエム代表 西岡壱誠)は『自分から勉強する子の家庭の習慣』(すばる舎)を上梓した。これは、東大生100人へのアンケート結果をもとに、東大生の親がどのように子供と接していたのかについて概観するものとなっている。

 今回は、受験期の親と子の関係性について、特に「子供が不合格になったときの親の声がけ」について共有したい。

不合格がわかった時に親がかけてくれた言葉とは

 まず、東大生は受験期に、「努力や過程を認められる」という経験をしている場合が多かった。

・中学受験で第一志望に受からなかったときにも、「でも、よく頑張ったよ」と、手を叩いて褒めてくれたのをよく覚えている。そのうえで、「直前期に成績が伸びたのは頑張ったからだ」「算数が足を引っ張ったのかもしれないが、1年前と比べたら全然違った」と、頑張りを具体的にたくさんほめてくれた。

・高校時代、外で勉強していて、家ではほとんど勉強していなかった。家に帰ってくるのは遅い時間の場合が多かったが、「どうせあんたのことだから勉強しているんだろう」と言って、特に何も勘ぐってこなかったのは印象に残っている。そして東大に1度不合格になったときも、「いつも勉強していたんだから、それでだめなら仕方ない」と言って、努力自体を認めてくれた。母は勉強していたところを見ていないはずなのに、「いつも勉強していた」と言ってくれたのを聞いて、「ああ、わかってくれる人がいたんだな」と思って、涙が溢れた。

 このように、不合格の際にも、受験のときの努力や受験までの過程を褒め、結果についてはあまり触れない。あくまでもそこに至るまでの過程にフォーカスしているのだ。

なぜ「過程」をほめるのか

 どうしてこのような対応が多かったのかについて追加で調査したところ、「負け癖をつけないようにするため」という目的が見えてきた。

 東大生の親に失敗したときに過程をほめる理由を聞いたところ、「失敗したときに、子供が腐らないようにするため」「次の挑戦を見据えられるように、前を向けるようにするため」という回答があった。

 不合格になった際に一番避けなければならないのは、ただ「失敗だった」となってしまうことだ。だが、不合格は必ずしも「失敗」を意味しない

 たとえば、第一志望のレベルが高ければ不合格になる確率があがるだろう。それに対して、自分の実力的にはマッチしている、安全に合格できる可能性の高いレベルの学校を第一志望にしてしまえば、合格になる確率があがる。

 だが、挑戦する受験の方が、努力の幅は大きい。行けるか行けないか微妙なラインの学校を目指し、一生懸命勉強して不合格になった人は、不合格だったとしても、その挑戦の過程で大きな成長を得ることができて、挑戦自体がプラスになるものである。不合格だからといって失敗だとは言えない。

 とはいえ、「不合格」という結果はインパクトが強く、子供はただの「失敗」と捉えてしまうことも多い。そして、「この挑戦は失敗だったので、自分にとってプラスはまったくなかった」と捉えてしまうと、次の挑戦をしなくなってしまう「負け癖」が付いてしまい、「どうせ自分なんて無理だ」と次の挑戦を忌避するようになってしまう。こうなると、受験のトラウマをその後の人生で引きずることになる。

 そうならないよう、頑張った過程を褒めてあげることで、その努力を「頑張って、成長することには成功した」という成功体験に昇華させてあげることができるわけである。

「不合格」のショックを払拭するコツ

 また、それと同時に、「何が良くて何が悪かったか」考えさせる過程も多かった。内省を促し、良かった点も引き出すことで、負け癖的な思考ではなく、次に繋がる思考ができる。

・不合格になった後に、食事しながら、きちんと家族でどこが悪かったのか、どうしておけばよかったのかについて会話した。でも親から、「お前、ここが悪かったんじゃないか」と言われたわけではない。むしろ、自分が「やっぱりこの勉強が足りなかった」と言っているのを、「いや、でもこれは頑張れていたんじゃない?」とできていたことを肯定しつつ、「強いて言えばこっちが足りなかったのかもしれないね」と、やんわり教えてくれた。

 このような「不合格になったのはなぜなのか」についての分析は、次に生かすためのヒントとして機能することになる。たとえば中学受験で失敗したのであれば、高校受験・大学受験での挑戦に生かせる。もちろん、「不合格」のショックから、分析どころではないほど泣き崩れてしまうこともあれば、親がどんなに声を掛けても塞ぎ込んでしまうこともあるだろう。

 そんな場合の対処法として考えられるのは、食事だ。大学受験で2回不合格になった東大生の中には、「ピザを頼む」というルールを課している家庭があった。落ちたときには宅配ピザを注文し、とにかくたくさん食べる。ピザというと楽しいイベント時に食べるものといった陽気なイメージがあるかもしれないが、だからこそ不合格になってしまったときのどんよりとした感情をピザで払拭するのだ。唐揚げでもショートケーキでも良い。子供が好きな食べ物を用意して気分をあげるというのもひとつの手段かもしれない。

 ちなみに上述の家庭では、3度目の正直で東大に合格した後も、何か失敗したり落ち込んだりする出来事があると、ピザを頼むというのが習慣化しているそうだ。

 繰り返しになるが、「不合格」は失敗ではない。次の挑戦へのステップなのだと親が捉えることで、子供も潰れずに前を向くことができる。本記事の声がけを参考にしてもらいたい。


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《カルペ・ディエム》

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