東大も入試を変える時代…早稲田塾が明かす「総合型選抜合格の新条件」

 大学入試では総合型・学校推薦型選抜が拡大している。東大の新学部「College of Design」創設や東北大の一般選抜縮小方針など、難関国立大でも入試改革で大きく舵を切る今、受験生に求められる力をどう見極め、鍛えるのか。総合型・学校推薦型選抜対策のフロントリーダーとして名高い早稲田塾の知見から、その核心を読み解く。

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早稲田塾池袋校 藤島 隆 氏・早稲田塾AO指導部 部長 青沼 奈緒 氏
  • 早稲田塾池袋校 藤島 隆 氏・早稲田塾AO指導部 部長 青沼 奈緒 氏
  • 「直前になるほど、生徒自身が学力の重要性に気付く」と藤島氏
  • 「早稲田塾では入試はあくまで通過点。だから塾生は就職に強い」と青沼氏
  • 慶應義塾大学の竹中平蔵名誉教授による「世界塾」は未来発見プログラムの一例。高校生がノーベル賞受賞者や企業のトップなどと直接つながる貴重な機会。
  • 対話を重ねて、自分自身の強みや可能性を可視化できるようになる
  • 自分自身で考え抜いて何度も推敲を重ねる横で最後まで伴走する

 大学入試では総合型・学校推薦型選抜が拡大し、学力評価から人物評価へと転換しつつある。東大の新学部「College of Design」創設や東北大の一般選抜縮小方針など、難関国立大でも入試改革で大きく舵を切る今、受験生に求められる力をどう見極め、鍛えるのか。2万1,000名超の合格者を輩出し、総合型・学校推薦型選抜対策のフロントリーダーとして名高い早稲田塾の知見から、その核心を読み解く。

【インタビュイー】
早稲田塾AO指導部 部長 青沼 奈緒 氏
早稲田塾AO指導部 藤島 隆 氏
両氏は長年にわたり、早稲田塾独自のカリキュラム構築を担うとともに、難関大の総合型・学校推薦型選抜の指導に従事。

変わる入試、変わる評価軸…総合型選抜の"誤解"を解く

--2027年9月に設立される東大の新学部「College of Design(CoD)」カレッジオブデザイン(定員100名)は、秋入学で入試制度も一般選抜とは一線を画す内容です。国際卓越研究大学へ選定された東北大では総合型選抜による入学者がすでに約3割を占め、2050年までに一般選抜を廃止する方針が示されています。なぜ今、日本の超難関とされる大学でもこのような入試改革を進めているのか、その背景から教えてください。

藤島氏:保護者世代が受けた教育では、迅速に正解を導き出す力を養成し、受験もその延長線上にありました。結果として画一的な人材が育ち、日本社会から多様性とダイナミズムが失われてしまった要因とも言われます。今、社会で求められているのは、誰も答えを知らない問いを試行錯誤し、解決に向かっていく主体性であり、人間性です。大学側もその重要性を強く認識し始めているからこそ、学力評価から人物評価へと入試の軸足を移していくことによって、こうした力を測ろうとしているのだと思います。

青沼氏:今では一般選抜でも志望理由や適性を問う動きが広がりつつあります。たとえば筑波大学では、2028年度から多くの学類で一般選抜を論述試験と面接・口述試験に切り替えるという大胆な入試改革を打ち出しています。少子化だからこそ、大学側には「自校のアドミッションポリシーに合致した意欲ある学生を迎えたい」という意識が強まっていると言えるでしょう。

--総合型・学校推薦型選抜は「書類の完成度で合否が決まる」というイメージがあります。

藤島氏:その点は誤解されている方が多いと思います。実際、事前の提出書類による選抜方法の見直しの動きも見え始めており、たとえば早稲田大学の国際教養学部では、これまでのような提出書類の提出は求めず、試験の本番で出願者全員に志望理由を含むエッセイの執筆を課すようになりました。「課外活動や受賞歴といった特別な活動実績がないと受けられない」というイメージは過去のものになりつつあると言って良いかもしれません。特に今年あたりから、受験生を小論文や面接を通して評価しようとする姿勢が強まってきている実感があります。ですから早稲田塾では、「未来の自分で勝負する」という方針のもと、入塾時から「大学で何を学びたいのか」という問いにとことん向きあい、その問いを磨きあげていくことがもっとも重要だと考えています。

--保護者世代には、かつてのAO入試のイメージから「学力は不問だ」と捉えている方もまだ多いと思うのですが、実際のところ学力はどのように評価されているのでしょうか。

青沼氏:「学力を見ない入試はない」と言って良いと思います。実際には総合型・学校推薦型選抜で、多くの大学が出願条件に評定平均を設けています。たとえば慶應義塾大学文学部の総合型選抜では評定平均4.1以上、上智大学の公募制推薦入試では原則4.0以上が求められています。評定条件を設けていない大学でも、英語資格や大学入学共通テストの点数を出願条件や評価対象とするなど、学力を問わないわけではありません。

藤島氏:探究のテーマは身近なところに転がっているものだと言う人もいますが、勉強しない限り問いは見つかりません。多くの生徒を指導してきて実感しているのは、高校までに学校でひととおり学ぶべき基礎学力が身に付いていなければ、ここを掘り下げたいとか深めたいといった気持ちは湧いてこないということです。実際に、志望する大学に評定が関係ないからと学校の勉強をおろそかにしがちだった生徒も、出願が迫ってくると寝る時間を惜しんで勉強し始めます。直前になればなるほど、生徒たち自身が学力の重要性に気付くようになるのです。

「直前になるほど、生徒自身が学力の重要性に気付く」と藤島氏

書類添削だけでは勝てない…5つの柱が生む早稲田塾の独自メソッド

--総合型・学校推薦型選抜による入学者数が半数を超えている今、対策塾の数も増えていますが、早稲田塾ならではの強みはどこにあり、具体的にどのような指導が行われているのでしょうか。

藤島氏:今お話ししたように、対策として書類の添削だけでは時代遅れだと言っても良いでしょう。書類がどれほど素晴らしくても、学力を含め、小論文や面接などあらゆる審査で一貫性が示されなければ、特に難関とされる大学には合格できません。

 早稲田塾は、生徒自身が探究の種を見つけ、それを大学で学ぶ価値のあるアカデミックな問いに発展させ、自分の言葉でそのビジョンを表現できるところまで到達させること。そこが強みであり、指導の目標です。これを実現する早稲田塾独自のカリキュラムは、次の5つの柱から成り立っています。

(1)自分らしさを知るために過去の自分と向きあう「自分史作成指導」

青沼氏:早稲田塾ではまず、入塾した生徒に対して「自分史作成指導」を行います。過去の自分を知ることは、未来をデザインするためのスタートラインです。家族をはじめとする「人との関わり」も意識しながら、自分が何気なく思っていたこと、モヤモヤしていたことなどをアウトプットし、ひとりひとりの探究の種を探していきます。

藤島氏:指導で大切にしているのは「対話」です。「自分史作成指導」においても、「なぜそう思った?」「どうしてそう行動したの?」と担任スタッフや生徒同士で対話を重ねていく中で、誰の真似でもない、自分らしさが研ぎ澄まされ、自分自身の強みや可能性が可視化されていくのです。

対話を重ねて、自分自身の強みや可能性を可視化できるようになる

(2)文章力を磨き、論理的思考力を養う「論文系講座」

青沼氏:文章力・表現力を鍛えることにも力を入れています。他者の視点に立って自分の考えを言語化できなければ、志望理由書や小論文、面接につながりません。その核となるのが「論文系講座」です。たとえば「論文作法(さっぽう)」という講座では、与えられたテーマについて、まずは自分の考えを文章にまとめ、次にグループでディスカッションを通じて他者の意見に触れたり、講師からの講評や助言を受けたりしながら、推敲して書き直すサイクルを繰り返すことで、文章力を磨いていきます。

藤島氏:それ以外にも、論文系講座には、医学系、あるいは特定の大学・学部に特化した講座もあります。言語化は、能力ではなく技術です。練習すれば誰でも書けるようになりますから、早く始めたほうが圧倒的に有利です。論文で扱うテーマは簡単に結論の出ない問いばかりですが、本当の知性は、答えのない問いを粘り強く考え、表現できる力です。AIが瞬時に答えを返してくれる時代にこそ、より一層重要になってくるはずです。

(3)未開の領域まで積極的に学び取る「リベラルアーツプログラム」

藤島氏:学校では探究の授業がありますが、調べ学習に留まっているケースが少なくありません。自分の好きなこと、やりたいことを追究するだけでは趣味の域を出ず、真の探究とは呼べません。さらに、ITの発展やグローバル化によって複雑化した社会では、単一の専門領域の知見だけでは不十分です。だからこそ私たちは、自分が見えていない世界まで学びを広げ、常識を問い直し、新しい視点を獲得していく必要があるのです。

 そこで私たちが生み出したのが「リベラルアーツプログラム」です。毎週1回哲学、科学、政治、経済や多文化共生といった社会課題など、多岐にわたるテーマで英語の課題文を読み、それを起点として自分自身の考えを深め、視野を広げていきます。その積み重ねが、昨日までの自分を超えて成長していくことにつながっていきます。

青沼氏:このプログラムも個人ではなく、グループで取り組みます。早稲田塾でグループワークが多いのは、仲間とのワークを通じて協働力や傾聴力、思考の瞬発力、主体性、コミュニケーション力などが身に付くからです。総合型選抜ではグループワークや集団面接が行われることもあるので、こうした経験は大いに生かされます。一方で早稲田塾は「入試はあくまでも通過点」だと捉えており、我々の指導の根幹は入試対策だけでなく、大学での学びを深める力、社会に出てからも通用する力を鍛えていくことにあるのです。

「早稲田塾では入試はあくまで通過点。社会に出てからも通用する力を鍛えていくから塾生は就職に強い」と青沼氏

(4)「本物」に出会い、高い視座を得て成長する「未来発見プログラム」

青沼氏:第1志望に合格するには、受験に向かう情熱や将来への志というのも欠かせない原動力です。早稲田塾では、それが「人との出会い」から生まれ、成長すると考え、各分野の第一線で活躍する有識者と出会える「未来発見プログラム」を開講しています。

藤島氏:高校に通っているだけでは出会うことが難しい研究者や起業家、法曹界のプロフェッショナル、政財界のリーダーなどによる講義やオンライン授業、フィールドワーク、グループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションなどを経験しながら、視座を高め、自らの研究テーマを多面的に深めます。

慶應義塾大学の竹中平蔵名誉教授による「世界塾」は未来発見プログラムの一例。高校生がノーベル賞受賞者や企業のトップなどと直接つながる貴重な機会。

(5)「総合型・学校推薦型選抜(AO・推薦入試)特別指導」

藤島氏:早稲田塾では、文系・理系、大学、学部・学科を問わず、すべての大学の総合型・学校推薦型選抜に対応し、生徒ひとりひとりのポートフォリオを形にしていきます。提出書類は大学によって多様ですが、大切なのは大学で「何を学ぶのか」「将来何を成し遂げたいのか」「そのために今何をすべきか」といった問いに向きあいながら、自分の軸を作ることです。

青沼氏:合格までのロードマップの中には「模擬出願」という取組みが高1・高2では3回、高3では出願の始まる9月を前に1回組み込まれており、出願本番を想定して志望理由書などの提出書類を作成します。特に高3では、生徒の関心あるテーマ領域を専門とする講師が指導に関わり、適切なタイミングでアドバイスを行なっています。

藤島氏:作成した書類では、高校時代に取り組んだ探究活動・経験の価値と意義が伝えられているか、探究活動の延長線上に設定された「問い」(研究テーマ)は十分な学術性を備えているか、志望大学・学部のアドミッションポリシーと志望理由がマッチしているか、将来のビジョンや自己アピールに説得力があるかといった基準で、我々がその時点での到達度を評価します。出願書類が書けないのは、文章力・表現力の不足以前に、自分の現在地と課題が客観的に把握できていないから。早稲田塾では、講師やスタッフが生徒に代わって書類を仕上げるようなことは一切やりません。自分自身で考え抜いた思いや選んだ言葉を大切に、その生徒にしか書けない出願書類を、何度も推敲を重ねて仕上げていく生徒が自分の足で合格のゴールテープまで走り切るための伴走が我々の役割なのです。

自分自身で考え抜いて何度も推敲を重ねる横で最後まで伴走する

藤島氏:さらに、東進グループの講座をフル活用することで、総合型選抜対策と一般選抜対策を1つの塾で完結できる点も大きな強みと言えるでしょう。今、受験生の6~7割が、総合型と一般を両立した受験対策を行なっています。

 たとえば、英語資格をもっていれば、総合型でも一般でも英語試験を免除する大学が増えています。英語4技能資格試験系講座では、各種英語資格試験の出題傾向と対策に精通した英語講師による指導のもと、英語4技能を伸ばすことができます。

 総合型選抜で不合格でも、一般選抜で志望校に合格する事例は少なくありません。総合型選抜は、進路の選択肢を広げる挑戦でもあるのです。

青沼氏:担任スタッフや講師に加え、元塾生で現在は大学生・大学院生として活躍する卒業生が、担任助手としてサポートしている点も、生徒たちにとっては心強い存在です。年齢も近く、メンタル面でも支えになっていると思います。

合否を分けるのは「アカデミズムの入り口」に立てているか

--総合型選抜も難関大学は合格が難しいと言われます。プロの視点から見て、合否の分かれ目はどこにあると感じますか。伸びる子、合格者に共通する特徴があれば教えてください。

藤島氏:合否の分かれ目は、一言で言えば「アカデミズムの入り口に立てているかどうか」です。繰り返しになりますが、素朴な疑問はあくまでもきっかけに過ぎず、そのまま大学に提示しても認めてはもらえません。大学は受験生に対し、先行研究を読んだり、それに関連する学問領域に触れたりしたうえで、自分なりの問いをもてているかどうかを見ているからです。ですから早稲田塾では、「あなたの問い(研究テーマ)は、個人的な趣味とどこが違うのですか」「あなたの問いは、なぜ大学で学ぶ必要があるのですか」「あなたの問いについてすでに解明されている部分と解明されていない部分は何ですか」といった質問を投げかけます。これは、アカデミックな問いへと発展させるために避けては通れないプロセスであり、壁打ちの相手になる講師やスタッフにも根気のいる作業です。だからこそ、合格する生徒に共通しているのは、このような深い問いにも心が折れずに向き合える精神的なスタミナが備わっているところですね。

--少子化によって大学全入が可能になる時代に、受験生は大学をどうやって選べば良いでしょうか。

藤島氏:目指すきっかけは有名大学の看板に憧れることでも良いと思います。早稲田塾の役割は、その希望に新しい意味を与えることです。どの学部で何が学べるのか、大学のカリキュラムをしっかり調べたうえで、自分が本当に学びたいことと接点があるかどうかを確かめてほしいですね。

青沼氏:今後の大学選びは、大学と受験生とのマッチングになっていくでしょう。受験生は大学の教育環境を解像度高く理解し、大学もその受験生のことをよく理解したうえで入学を認める。今後は大学と「相思相愛の関係」を築く受験に変わっていくと思います。

--最後に、これから大学受験を考える中高生、そしてその保護者の方へメッセージをお願いします。

青沼氏:特に好きなものなんてない、何にもワクワクしないと思っていても、感情の中に自分のモチベーションとなる原動力が隠れていることがあります。ですからどうか、中高生の皆さんは、日常の中にある喜怒哀楽を大切にしてほしいと思います。

藤島氏:保護者の方は、お子さまが夢中になっていることを否定せず、さまざまな可能性に目を向けてあげてください。私たち早稲田塾は、お子さまが自分の殻を破り、可能性ある未来を拓くお手伝いをしていけたらと思っています。

--ありがとうございました。


 お二人の話を聞きながら、もし10代に戻れるなら、何よりも自分自身が早稲田塾に通ってみたいと思った。どのような入試方式を選ぶにせよ、大学で何を学びたいのか、どんな未来にしたいのかといった問いを通じて自分に向きあう時間は、すべての高校生にとって価値ある経験になるだろう。そして、それは大学受験だけでなく、その後の長い人生をも豊かにしてくれるはずだ。


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早稲田塾が教える!5分でわかる「総合型・学校推薦型選抜」
《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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