日本の高等教育、学費が高くサポート体制が不十分…OECD調査

 経済協力開発機構(OECD)は、加盟国の高等教育(大学以上)に関する調査結果を発表した。同調査では、平均学費と、補助金や公的ローンを利用する学生の割合を比較している。

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2008~2009年、平均学費と公的補助金をもらっている学生の割合
  • 2008~2009年、平均学費と公的補助金をもらっている学生の割合
  • 高等教育機関への進学率(英語)
  • 2008年、高等教育に利用された公的補助金の割合(英語)
 経済協力開発機構(OECD)は、加盟国の高等教育(大学以上)に関する調査結果を発表した。同調査では、平均学費と、補助金や公的ローンを利用する学生の割合を比較している。学費面だけではなく、国のサポート体制、大学進学率などを合わせた分析が特徴だ。

 国別に計算された学費平均は、米国が6,000ドル(約50万円)以上と最高で、これに日本、オーストラリア、ニュージーランド、オランダが続いた。これら上位5か国の中、日本以外では75%以上の学生が公的ローンや補助金などのサポートを受けているという。

 累進課税制度をとるデンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンなどでは、学費が無料の場合が多いだけでなく、生活面においての公的補助金も多いという。そのほか、メキシコ、スイス、ベルギー、イタリア、オーストリアなどでは、補助金などの利用率は低く、日本と変わらないが、学費が比較的安い。

 学費と補助金の関係性は、高等教育への入学率にも影響している。オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、オランダ、米国など、比較的学費が高い国でも、補助金や奨学金が数多く存在するため、入学率はOECD平均やG20(主要20か国・地域)の平均を上回る。同じく補助金の多いアイスランド、ノルウェー、スウェーデンなどでもG20平均以上だった。

 その一方、メキシコ、スイス、ベルギー、イタリア、オーストリアなど、学費は比較的安いが補助金制度が少ない国では、G20か国の平均を下回ることもあるようだ。日本では、学費の平均も高額なうえ、学生が利用できる補助制度が少ないため、入学率はOECD平均、G20平均を下回った。

 高等教育に使われる公的資金の中で、学費援助に使用される割合は、日本で約26%。50%を超えるチリや英国に比べると低いが、米国、フランス、韓国などは日本よりさらに低いことがわかった。しかし、OECDが注目するのは学費援助の形態だ。日本では、使用されている公的基金のほとんどがローンという形で学生に提供されており、返済不要な補助金や奨学金として使われる金額はOECD諸国の中でも低いのが現状。

 OECDによると、適切な学費と、支援サポートのバランスが必要だという。米国のように、学費が高くても、補助金や奨学金制度が充実していれば高等教育機関への進学率を高く保てるという。その一方で、学費が低くても、サービスが比較的充実していないメキシコなどでは、進学率も平均未満だった。

 学費が高いうえに補助金や奨学金サービスの少なさが調査結果として現れた日本の高等教育。学費とサポートのバランスをどのように築き上げていくのかが注目される。
《湯浅大資》

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