子ども達の学習環境は、ICTにより大きく変化してきている。中学受験を控える小学生も例外ではなく、インターネットを利用した映像授業を取り入れている進学塾がある。「教育ITソリューションEXPO(EDIX)」で5月18日、進学教室 浜学園でWebスクールなどを担当する、映像配信事業統括責任者・Eラーニング特任研究員の圓林真吾氏が講演した。◆通塾を再現するWeb講義を開発 浜学園では、授業・テキスト・テストなど、塾の教室で塾生が受ける学習システムを、自宅でも受講できるWebスクールを開講している。特別なシステムではなく、教室と同じ授業を自宅で受講し、家庭学習の後に復習テストを受験する仕組みで「通塾を再現」し、学習効果を上げるのがポイントだという。 通塾との併用のほか、通塾困難な子どもが自宅で受講するケースもある。通塾の半額の受講料で提供することにより、地域格差や所得格差をなくし、多くの子どもに「浜学園の最高の授業を届けたい」と圓林氏はいう。 コンテンツには、実際に教室で行われた講義を撮影して活用している。その数は年間5,000講義に及ぶ。良質の講義を量産するためには、品質と行程の管理が重要で、よりよい講義映像を撮影するための撮影方法や、機材の設置場所を試行錯誤することに、多くの時間を費やしたという。児童の顔はモザイク処理し、声は消去するなど子どもへの配慮をするとともに、講師が撮影を意識せずによい講義を行えるよう、機材を天井付近に設置するなど、講師への配慮も行っているそうだ。 圓林氏は、Webスクールのポイントは「子ども達と保護者が活用できること」「学習環境そのものであること」だと説明する。既存のシステムを流用するのではなく、小学生とその保護者向けに開発された同システムは、利用者の64%が初回から使え、32%が初回は戸惑ったがその後は問題なく使えており、2009年のサービス開始以降、トラブルは1度もないという。◆Web講義の学習効果 進学塾の多くが、同じ単元を繰り返し学習するスパイラル方式を取り入れる中、Webスクールでは過去の授業をさかのぼって受講することにより、弱点の克服が行える。Webの活用により個への対応も実現するのだという。 また、家庭学習でわからない問題があるときに、解説講義を視聴できる「Web全問解説講義」も提供する。個々の講師への質問もFAXのほか、Webで受け付けるなど、さまざまなシーンでICTを活用している。◆家庭の受講環境 ところで、小学生のいる家庭ではインターネットで講義を受講できる環境が整備されているのだろうか。 浜学園が2011年5月28日から6月15日に、全塾生小1〜小6を対象に行った「中学受験を考える家庭のインターネット利用状況」に関する調査(有効回答者数:2,538名)によると、インターネット環境が自宅にないと答えたのは、もっとも多い小1と小4で3.4%、小6ではわずか1.7%。インターネット利用者の65%が光ファイバー、13%がADSL、16%がケーブルテレビのサービスを契約しており、多くの家庭でWeb講義受講(回線速度384kbps以上を推奨)の環境は整っているようだ。そのうえで、受講できない家庭を最小限にとどめるために、WebスクールはWindowsのほかMac OSやAndroidと複数のOSに対応させたという。 少子化の影響により、教育産業の市場規模は縮小傾向にある。ICTにより社会全体が変化するなか、塾も新しい時代に対応しなければならないと圓林氏は指摘する。浜学園では、紙とデジタルを結びつけた新たな学習環境実現のため実証実験など、調査研究に取り組んでいるという。
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