ベネッセ調査、大学教員と大学生が求める「教育」の違い

 ベネッセ教育研究開発センターは4月23日、全国の大学生を対象に実施した「第2回 大学生の学習・生活実態調査」の報告記者発表会を都内で開催した。

教育・受験 その他
神戸大学大学教育推進機構 教授 川嶋太津夫氏
  • 神戸大学大学教育推進機構 教授 川嶋太津夫氏
  • ベネッセ教育研究開発センター 主任研究員 樋口健氏
  • 調査のポイント
  • 授業の経験率、アクティブ・ラーニング型授業に対する経験率の増加が見られる
  • 大学教育に対する、大学生の受け身的な姿勢の強まりが見られる
  • 第2回 大学生の学習・生活実態調査報告書
  • 在学中の海外留学意向は4割が持っているが、実現するのは5%に満たない
  • 語学力の身につき度合いは、学年が上がるにつれて下がっている
 ベネッセ教育研究開発センターは4月23日、全国の大学生を対象に実施した「第2回 大学生の学習・生活実態調査」の報告記者発表会を都内で開催した。大学側のアクティブ・ラーニング型授業が増えている一方で、大学生における教員や保護者への依存傾向が強まっていることが問題視された。

 ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育研究開発センターは2012年11月上旬、大学の1~4年生を対象に、大学の授業形態や大学生の学びの姿勢や保護者との関係についてのインターネット調査を実施。対象大学生は合計4,911名(各学年約1,200名 × 4学年)。母集団の性別や各部系統、大学所在地の属性は、学校基本調査に近似した分布とし、設置者の属性については国公立の比率が高めとなっている。同調査は2008年秋(リーマンショック前)に第1回を実施しており、この4年間における変化も同時に見ることができるという。

 ベネッセ教育研究開発センターの主任研究員である樋口健氏から報告された結果概要のポイントは、「大学の教育改革の進展と大学生の意識」「保護者や教員への依存傾向の強まり」「海外留学の意向と語学教育の課題」の3つだった。

 教育改革における大学側の試みとしては、グループワークやプレゼンテーション、ディスカッション、教室外の活動など、主体的な参加を求めるアクティブ・ラーニング型の授業が増え、大学の教育改革の進展がうかがえたという。また、そのような授業に対する学生の経験率は2008年比でそれぞれ7ポイント前後増加していることも明らかになった。その一方で、大学生側は興味がなくても単位を比較的簡単にとれる授業、または自分で調べて発表する授業より講義形式の授業を好む傾向が強まっていることが明らかになった。

 保護者や教員への依存傾向に関しては、「保護者のアドバイスや意見に従うことが多い」「困ったことがあると保護者が助けてくれる」といった回答の割合が増え、特に男子大学生の親子関係の緊密化が顕著となっているという。この背景には、「手を差しのべたい親」の存在も推察されるようだ。また、大学に対しても、「学生生活については教員が指導・支援するほうがよい」と考える割合がほぼ倍増している傾向が明らかになったという。

 海外留学の意向に関しては、海外留学をしたいと思っている大学生が全体の4割弱となり、経験済みの4年生は5%弱にとどまった。希望する留学時期は2年生の時が最も多く、次いで3年生となり、両学年で6割を超えるという。

 語学力が「身についた」と感じている層の海外留学意向は5割を超えるが、そうでない層は3割、語学力が留学意向に大きく影響しているようだ。しかしその語学力は学年が上がるにつれて低下しており、海外への就労意識も同様の傾向を示しているようだ。

 神戸大学大学教育推進機構教授の川嶋太津夫氏は、本調査の意義について「大学側が熱心になればなるほど、学生は受動的な授業を好む、というジレンマが生じている今、学生が何を考え何をしているのかについての明確なデータが必要。全国規模でかつ継時的に実施される調査はそれほど多くない」と述べた。

 本資料の活用については、「教育は、エビデンス・ベースの政策・議論・改革が必要。教育は誰もが個人的に体験してきているが、議論の際には正確かつ客観的なデータに基づく必要があり、本調査が議論の出発点となる」と語ったほか、「各大学が本調査と同様の調査を行うことで、強み・弱みの客観的理解に役立つ」とも語り、大学の教育改革、および教学IRでの活用を期待した。

 今回の報告書(全188ページ)およびダイジェスト版は、ベネッセ教育研究開発センターのWebサイトからダウンロードできる。
《柏木由美子》

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