電子黒板利活用のメリットとデメリット…小学校教員の声

 イードは7月27日、授業における電子黒板の利用状況および利用の可能性に関して、小学校教員4名にインタビュー形式で調査を行った。日立ソリューションズとエプソン製の電子黒板機能内蔵型プロジェクターを使用しながら、使用感や、学校での使い方を聞いた。

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日立ソリューションズ、電子黒板機能付き超短焦点プロジェクター(CP-TW3003J)
  • 日立ソリューションズ、電子黒板機能付き超短焦点プロジェクター(CP-TW3003J)
  • ボードスタンド利用時のCP-TW3003J
  • エプソン、電子黒板機能付き超短焦点プロジェクター(EB-595WT)
  • ボードスタンド利用時のEB-595WT
◆電子黒板を使うデメリット

・電子黒板の設置に時間がかかる
 電子黒板を共用で使っている学校が多い現状では、「授業前、毎回教室まで運んでキャリブレーション(ペンの位置合せ)が必要なのが手間」、現状、教室への移動と設置が教師の負担になっている。

 まず、電子黒板の機材一式を教室へ運び込むが、スタンド付きホワイトボードなどは、エレベーターがないとほかの階への移動は困難だ。さらに、パソコンやLAN回線を接続し、キャリブレーションをしなければならず、授業間の短い5分休みに準備するのはかなり厳しい。必然、授業前の時間が確保できる1、3、5校時に使用希望が集中し、使いたいときに使えない。

 リセマム編集部が全国の小学校、中学校、高等学校の教員329名(小学校109名、中学校111名、高等学校109名)を対象に実施した電子黒板の利用状況調査(6月20日~30日、インターネット調査)によると、授業で電子黒板を使用しているのは調査対象者全体の34.3%ほど、使用している教員のうち、「週に2~3日以上」活用しているのは24.7%(「ほとんど毎日」15.9%、「週に2~3日程度」8.8%)と少ない。また、「授業準備のしやすさ」に「やや不満である」(31.9%)、「大変不満である」(7.1%)と約4割の教員が不満に感じているという結果だった。

・板書を残せるが、全体的に電子黒板は板書に適さない
 電子黒板は書き込んだ内容を保存できるというメリットがあるものの、表示サイズが黒板より小さいため、「授業中にずっと見せておきたいものを表示しておくスペースがない」「後ろの児童から見えにくい」「板書というより、資料提示用」などといった意見が聞かれた。

 また、「書き込んだ文字で、とめ・はね・はらいなどの細かい表現ができない」との声も。書き順を含めた細かい意識は、常日ごろから意識してほしいため、国語以外の授業の板書でも気を付けているという。黒板への板書なら可能なタッチが、電子黒板のデジタルペンでは表現できないという。

・教材の不足
 電子黒板に適した教材を用意するのも、現段階では容易ではないという。使いたい教科のデジタル教科書がない場合は、事前に必要な資料を集めたり作成したりしなければならないことが多い。

 中には「長年の財産として、スキャナーで取り込んだ資料があり、PowerPointで提示して電子黒板上で書き込みできるようにしている」といった苦労をされている教員もいるが、こうした独自教材を教員間で共有する方法も大きな課題だ。

 電子黒板の利用状況調査によると、「教材の種類」については「やや不満である」(26.5%)、「大変不満である」(9.7%)を合わせて36.2%が不満に感じていることが明らかになっている。

・動作、操作、取扱い上の不安
 電子黒板と接続するパソコンの動作の不安、不満がある。「ペンが反応しなくなり、パソコンがフリーズすると、再起動が必要で時間がとられてしまう」「ペンの位置がずれてキャリブレーションが必要になり、授業の流れが止まってしまう」ことなどが懸念される。

 数秒の間は、児童の集中力を断ってしまうという。一度でもそのような経験をしてしまうと、電子黒板に対する信頼度が落ちてしまうこともあり、教員視点からは以後の使用をためらうという。さらに、ペンで書き込む速さに電子黒板側のレスポンスが追いつかず、書きづらいことが気になる教員も少なくないようだ。

 また、「子どもが壊してしまわないか」「事故が起きないか」といった心配も聞かれた。

・電子黒板を使ってみて感じたデメリット
 「使い方がわかりづらい」「ツールバーのアイコンの数が多すぎる」「見てすぐにどんな機能なのかがわからないツールがある」「実物投影機から取り込んだ画像に重ねて書いた文字を消すと、画像まで消えてしまう」「書き込んで自動的にテキスト変換された文字が、背景の方眼のマスに収まらない」「信頼性が気になる」など。
《鈴木良子》

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