【中学受験】グノーブルに聞く「過去問」活用術<国語・算数>差をつける親のサポート

 受験生にとっては天王山と呼ばれる夏。半年後には入試本番を迎える中学受験生の保護者にとって、そろそろ気になり始めるのは「過去問」のこと。過去問題対策について、「中学受験グノーブル」に話を聞いた。

教育・受験 中学生
インタビューに答える中学受験グノーブル 国語科 山下倫央先生
  • インタビューに答える中学受験グノーブル 国語科 山下倫央先生
  • インタビューに答える中学受験グノーブル 算数科 盛田一樹先生
◆算数科 盛田一樹先生

--「過去問を解く」一番の目的は何ですか。

盛田先生:算数の過去問は、答えを覚えるまで何度も繰り返すことが重要なのではありません。過去問を解く最大の意義は、「入試本番で最適な『時間配分』を考える訓練」をすることです。入試本番で失敗しうる最大の要因は時間配分のミスです。あとから振り返ってみて「この問題を飛ばして次を解けば合格できたかもしれないのに、ここで慌ててミスをしたから失敗した」というのは本当に悔しい。それを極力避けるためにも、「初見」の問題に向き合ったとき、いかに時間配分を失敗せずに解くかということが重要になります。

 極論すると、過去問で合格点に達していなくても、自分がその学校を受ける際に時間配分を失敗せずに解くことができれば、自身の持つ実力を最大限発揮できると言えるでしょう。

--保護者は何をサポートすればよいのでしょうか。

盛田先生:毎回正確に時間を計り、子ども任せにしないで学習計画は一緒に立ててください。そして、保護者の方にやっていただきたいもっとも重要なサポートは「試験問題のコピーを取ること」です。

 書店で販売されている過去問題集には、時系列に各教科の問題が掲載されています。たとえばあるページで算数の問題のあとに理科の問題が続いているといった場合、算数の部分と理科の部分を切り離します。そして「平成28年度算数」という具合に、年度毎、科目毎に分けてファイルに入れておき、子どもが取り組むときにはその年度のその教科だけを渡すという形にするとよいです。解答解説についても同様です。同じページに複数教科の解答、解説が掲載されている場合は、教科別に切り離してください。

 面倒な作業だと思われがちですが、このひと手間をかけるかかけないかで大きな差が出ます。なぜなら、他教科の問題や解答が目に入ってしまうと、過去問を解く最大の意義が損なわれるからです。入試本番では見たことのない問題に向き合わなければなりません。何が出てくるかわからない初見の問題に、新鮮な気持ちで向き合えなければ、過去問を解く意味がなくなります。

 1冊まるごと、あるいはコピーを取ったとしても他教科の問題を切り離さずに渡してしまうと、お子さんは解く前に他教科の問題や解答、解説まで目にしてしまうことになります。

 先に申し上げた通り、過去問は初見の問題を最適な時間配分を考えながら解く訓練です。「あ、これ見たことある」ということがないように、先にお子さんの目に触れないよう気を配っていただきたいと思います。解答用紙は、途中式を書かせる学校については原寸大でコピーを取ったほうがいいでしょう。

--過去問にはいつから取組み始めればよいですか。

盛田先生:いたずらに早く始めればよいというものではありません。早く始めすぎてお子さんの心が折れるようでは本末転倒です。一般的には、基礎学力が十分についているお子さんについては、夏休み後、9月からのスタートが最適であると思います。基礎学力にまだ不安があるというお子さんの場合には10月以降のスタートでも構いません。

--何年分取り組めばよいですか。

盛田先生:志望順位の高い学校は、書店で売られている過去問集を1冊やればよいと思います。「形式、分量、傾向」に慣れることが目的なので、ある程度慣れたらそれ以上やってもほとんど差は出ません。

 ただし、5年生以下のお子さんについては、今から行きたい学校があれば今年分(平成28年度分)を1冊買っておくとよいです。そして6年生になってからもう1冊買うという「ダブル買い」をお勧めします。特に2次、3次試験を行う学校については1冊に3、4年分しか掲載されないため、「ダブル買い」をすることで多めに過去問を手に入れることができます。

--塾には何をお願いすればよいのでしょうか。

盛田先生:入試問題には、合否を分けるような重要な問題と、誰も解けないような難しい問題があります。解いた問題と解答用紙を塾の先生に提出し、何を復習すべきかという問題の選別をお願いするとよいでしょう。

 ただし、塾によっては、1クラスあたりの生徒数が多い場合、提出してから2週間経っても返却されないといったケースもあるようです。子どもは「○○点取れたから合格!」と「結果」しか眼中にないことが多いのですが、過去問を仕上げるためには解きっ放しでは意味がなく、そこから何かを掴み取ることがとても大切です。

 そのためにもお子さんを細かく見てくれる、信頼出来る存在を9月くらいまでには見つけておくとよいでしょう。お通いの塾の講師がベストですが、塾の外でもいい。塾の外に新たに探す場合には、秋以降はどこも繁忙期に入るため、力のある講師は新規受付を終了する場合が多いので気をつけてください。

 「この年度の問題は、あの問題には手をつけず、この問題を解くべきだった」「この分野が頻出なので他の教材で補強しよう」などと客観的に評価し、適切なアドバイスをしてくれる存在がいれば、過去問を解く効用が最大限発揮され、志望校合格に向けて盤石な実力をつけることができるでしょう。

--ありがとうございました。

 次回は、社会と理科について過去問の利用方法を聞く。
《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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