--院長からご覧になり、現状の日本の教育の問題点は何だとお考えですか。 何をもって測っていくか、というところでしょう。今の日本の大学は、社会的評価で序列化されており、ランキングマジックの呪縛に子も親も抗えない現状があります。 これは、学びを一段階でしか捉えていないからです。学部入学が結果のすべてだと受け止めてしまっている。しかし学びにはその先があるわけで、始まりがどこかというのは本来さほど重要ではないはずです。今の日本では、10代の1、2年間がその後の人生に大きく影響し過ぎていることが問題です。産業界が望む、即戦力となる人材がモデルケースとなり、それを作るにはどうすれば良いかと、ゴールから逆算した教育が是とされ、それがどんどん低年齢化しているのは深刻です。 しかしこれからは、ゴールの先が保証されている時代ではありません。そこから先をどう自力で生き抜いていくかが問われています。--生徒にどのような成長を期待されますか。 女子学院の教育の礎であるキリスト教教育には、大切にしていることが二つあります。一つはこれまでお話ししてきたように多様性を認め合うということ。他者を自分と同等に大切な存在として認めていく。 もう一つは、自分が与えられた力を世に還元していくことです。各々、神様から何かしら与えられているものがあります。人間は何かの能力や才能を持って生まれてきているのです。それを6年間かけて、自分の内面を見つめながら探し出して欲しい。そしてそれを将来、自分のためではなく、人のために使って欲しい。自分が持っているものを、持っていない人のために使って欲しいと思います。 もちろん、見つけられないことも多くあります。そしてそこで示された道が、自分の思いとは違う場合も多々あるでしょう。しかしそれは、自分が神様から求められた仕事なのだから、自分にはできると自信を持って臨んで欲しい。人間には必ず、与えられる場所があります。私たちは神様に遣われ、生かされているのですから。--最後に、校長先生の座右の銘を教えてください。 新島襄(にいじまじょう)の「寒梅」という漢詩です。「庭先に咲いた一輪の早咲きの梅。風や雪を笑顔で耐え忍び、花を咲かせる。他者と争わず、力まず、自ずからあらゆる花に先駆けて咲く」と、他者と争うのではなく、置かれた場所でひたすらに励むことの大切さをうたっています。 女子学院の生徒たちには、この詩に込められたメッセージのように、孤高を恐れず、しっかりと自分の力で、その人生に胸を張って生きて行って欲しいと思います。--ありがとうございました。 女子学院は10月8日・10日に「マグノリア祭」を開催する。今年のテーマは「Journey」。各日とも、生徒たちによる展示のほか講堂と小講堂を利用した楽器演奏や聖歌の披露も予定されている。また、10月8日には、卒業生を招いた鵜崎創院長と在校生によるパネルディスカッション形式の講演会を実施する。 マグノリア祭の入場は原則、小学3年生以上の女子1名とその保護者1名のペアに限られる。10月8日は小学3年生以上の姉妹2名と、保護者1名の組合せも可。入場を希望する場合は、事前に学院Webサイトで公開されている受付用記入用紙に必要事項を記入し、当日受付に持参すること。詳細はWebサイトで確認できる。 受験生とその保護者にとって、マグノリア祭は女子学院の校風に触れられる良い機会。親子で足を運んでみてはいかがだろうか。※編集部注:2016年度の京都大学学校別合格者ランキングにおいて、全国14位、関東圏では1位。2015年度の合格者は4名(現役3名)だった。