【中学受験2017】浜学園に聞く、関西入試の動向や人気上昇校

 2017年の中学入試における関西の受験日程などの変更や受験生の動向、親子に向けた受験当日までのアドバイスなどを、浜学園経営企画室渉外チームの山田晃一担当課長に聞いた。

教育・受験 小学生
浜学園経営企画室渉外チームの山田晃一担当課長
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 2017年の中学入試。関西では1月の本番を控え、いよいよ緊張感の高まる季節を迎える。入試日程などの変更や受験生の動向、親子に向けた受験当日までのアドバイスなどを、浜学園経営企画室渉外チームの山田晃一担当課長に聞いた。

◆近畿統一入試日初日、午後試験の学校が増加


--2017年の関西圏における、受験者数、難関校(別コース設置校)の志願者数に変化はありますか。

 中学入試初日の受験率は長らく減り続けていましたが、一昨年からは微増に転じています。ただ、今年は昨年比で、受験者や志願者の総数は大きくは変わらないでしょう。

 午後入試が登場してから、年々エスカレートしてきた各学校の入試日の前倒し傾向は相変わらず顕著です。特に増えたのは、近畿統一入試日の初日の午後入試。それから2日間は午前入試と午後入試がギッシリで、入試全体がほぼ3日間で終了するような勢いです。

 ただし、受験の機会は以前と比べて増えているわけですが、小学生は精神的にも体力的にも限界があります。安易に受験校を増やすのではなく、過密なスケジュールの中から自分にとって有利な組み方を選択して受験することになります。

--受験生は1人あたり何校くらい受験するのでしょうか。また、入試に大きな変更点や傾向がありましたら教えてください。

 上位校受験者は1人あたり3~4校、中堅校受験者は1人あたり2校弱くらいでしょう。男女では体力的な差もあるので、男子の方がやや多く受験する傾向が見られるでしょう。

 関西の入試で注目すべき点は次の4つです。

・親和中学校(兵庫県)や東山中学校(京都府)など多くの学校で新たに統一入試初日に「午後入試」が導入されたこと。
・高槻中学校が女子の募集を開始(共学化)するに伴い、従来の3回入試を廃して、午後入試を含む2回入試に絞り、本格的な難関校の入試スタイルとなったこと。
・親和中学校が、神戸大学附属中学校との併願を意識した「適性検査型入試」を導入したこと。
・エコ入試の普及で「Web出願」を採用する学校が大きく増え、全体で30数校になること。

◆昨今人気上昇の学校は、高槻・開明・須磨学園


--どんな学校に人気がありますか?その理由は何でしょうか?

 関西でいわゆる最難関クラスに位置づけられる学校(兵庫県の灘・甲陽学院・神戸女学院、大阪府の大阪星光学院・四天王寺、京都府の洛南高等学校附属・洛星、奈良県の東大寺学園・西大和学園)は、もちろん一番人気があります。いずれも伝統校であり、その人気は以前から衰えることなく、今なお続いています。

 一方、それに次ぐグループで、昨今人気が上昇している学校があります。

 たとえば、高槻は、学校法人大阪医科薬科大学と同法人になったこと、共学化(女子の募集開始)と本格的進学校への転換が人気上昇の理由です。

 また、開明は、入学後の生徒の学力を伸ばす力が強いことが年々評価され、難関校化しています。学校の施設も新しくなりました。

 須磨学園は、熱心な学習指導や良心的な進路指導、多彩な行事が魅力とされています。

 国立の神戸大学附属は、環境のよさ、安価な授業料、大学のネームバリューに加えて、入試日が他校と重ならないことから、非常に人気が高く、難関となっています。

◆近畿地区の一般的な併願パターン



--男子・女子の人気校と、一般的な併願パターンを教えてください。

 関西の場合、最難関の灘、甲陽学院、神戸女学院は、入試を2日間行います。したがって、第1志望が2日間入試の学校かそうでないかでパターンが変わるので、その点がわかりやすい代表的なパターンを日程順であげます。

【男子】
 男子の場合、灘や甲陽学院のように2日間入試であるかどうかでパターンが分かれます。

例1)
第1志望:1月14日に灘あるいは甲陽学院の1日目・15日午前に同校の2日目
→第2志望:1月15日午後に西大和学園、16日に東大寺学園または、洛南高校附属
→第3志望:1月17日に清風南海(B入試)、あるいは六甲(B日程)

例2)
第1志望:1月14日午前に大阪星光学院か洛星(前期)または六甲(A日程)
→第2(3)志望:1月14日午後に清風か明星あるいは金蘭千里(前期B日程)
→第2(3)志望:1月15日午前に須磨(第2回)、清風南海(SS入試)/15日の午後に高槻(B)

【女子】
 女子の場合、神戸女学院が2日間入試です。

例1)
第1志望:1月14日午前に神戸女学院の1日目
→第3志望:1月14日午後に金蘭千里(前期B)・親和(前期2)
→第2志望:1月15日に須磨学園(2回目・3回目)、神戸海星女子または高槻中(B)
→1月16日に神戸女学院の2日目

例2)
第2志望:1月14日午前に四天王寺または、高槻(A)あるいは、15日午後に西大和学園
→第3志望:1月14日午後に帝塚山(1次B)または金蘭千里(前期B日程)
→第1志望:1月16日に洛南高校附属

 このように近畿統一入試では、京都や奈良の名門校が、灘と甲陽の入試日と重なるのを避けるため、統一入試が開始してから3日目に入試日を置きます。そのため志望の順が必ずしも時系列にならないことがあります。

◆親が受験生の子どものためにすべきこと


--冬休みから入試当日までのアドバイスを、保護者と受験生それぞれにお願いします。

 保護者の皆さんへのアドバイスですが、入試が目前に迫ると恐怖感で圧倒され、落ち着いて勉強できなくなることもあります。そんなとき「自分はこんなにできるんだ」と言い聞かせ、恐怖を克服できるようなイメージトレーニングがしやすい環境を整えてあげてください。

 たとえば、お子さんが今までに受けた模擬テストで成績がよかったものや、問題集の難問が見事に解けたときの解答が書いてあるノートなど「成功体験」を思い起こせるようなものを勉強部屋などの壁に貼ってください。また睡眠時間はしっかりとらせてください。

 それから、マイナス志向の話を絶対にしないこと。入試直前になっても、親の目から見るとまだ理想からは程遠い状況だと思うこともあるでしょう。しかし、それを指摘するとかえって反発を招き逆効果となります。親は一歩退いて見守り、理想の5割もできていたらよしとするくらいが適当です。そして、常に前向きなアドバイスをしてあげてください。

 受験生の皆さんへのアドバイスとしては、生活のリズムを崩さないことが第一です。

 年末年始はクリスマスから始まって大晦日にお正月と、周囲はお祭り気分で騒がしくなります。しかし、そういう雰囲気につられて、2~3日でも生活のリズムを崩してしまうと、それを取り戻すだけで何日もかかってしまいます。受験生にお正月はありません。それは合格発表のあとにやってくると思って頑張りましょう。

 入試直前の1週間は、受験生の皆さんのテンションは上がっていますが、その割に集中力は続かないものです。したがって、家での勉強時間は減らし、小刻みに時間設定された塾の時間をなるべく利用して、規則正しい勉強のリズムを作るようにしましょう。また、受験はたいてい朝から始まるので、「朝型」の生活に体を保っておくことが大切です。

◆「前受け校」受験のメリット


--この時期の生徒に対し、心がけている点や指導方針がありましたら教えてください。

 本番を迎えて落ち着かない、緊張する、というお子さんへの対応として、一番よいのは「前受け校」の受験です。

 近畿地区の学校は「統一入試日」より前に受験することはできませんが、高知県、香川県、岡山県、北海道などの私立中学入試の中には、関西に受験会場を設けてくれる学校も増えており、12月下旬ならびに1月上旬に受験できます。それらの学校の試験で本物の試験の緊張感を味わってから、本番の入試に挑む「前受け校」を受験されることをお勧めしています。

 また、受験勉強の最終段階である今、もし取り組んでいる問題が難しくて解けなかったら、「本番だったらどうしよう」と案じるのではなく、「これが入試の本番でなくて運がよかったな、得をしたな」と思い、解法を完全にマスターすることを重ねるよう指導しています。最後までそういう方法で勉強すれば、自己ベストの状態で受験できますよ。

--ありがとうございました。
《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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