子どもの留学、保護者が注目・注意すべき3つのポイント

 子どもが「高校留学をしたい」「中学で留学したい」と決断したとき、その選択を尊重しつつも、保護者は必ず「安全性」「投資として正しいか(留学費・学費の費用対効果)」「教育の質」の3点に注目、そして注意すべきだ。ニュージーランドを中心に、例を紹介する。

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子どもの留学について、保護者はどのような点に留意すべきか? Clive Jones氏に話を聞いた
  • 子どもの留学について、保護者はどのような点に留意すべきか? Clive Jones氏に話を聞いた
  • ニュージーランドの教育システム 日本の教育制度との対応を表す 画像作成:Education New Zealand
  • ニュージーランドの都市 オークランド(Auckland) 画像はイメージ (c) Tourism New Zealand
 空の便や情報網、都市環境の整備により、保護者の学生時代よりはるかに身近になった「留学」という選択。興味のある分野をより深く学び、異国の地で研鑽を積もうとする子どもには、将来の可能性を拡げる一つの道として有効だろう。

 しかし、数十年の人生経験しかない子どもを海外へ送り出すには、保護者自身の知識や心構えも必須だ。子どもの「留学したい」とする気持ちを尊重しつつも、焦燥感やその場の勢いだけで留学の可否を判断しないためには、一体どんな点を考慮すればよいだろうか。エデュケーション・ニュージーランド 国際戦略部門代表のClive Jones氏に話を聞いた。

◆子どもの留学、保護者が気をつける3つのポイント

 ニュージーランドの留学戦略を主導する“仕事人”としての顔を持つ反面、四姉妹の父親としての顔も持つJones氏。長女はイギリス・ロンドンへ留学中のため(2017年3月時点)、送り出す保護者の気持ちも、迎える国側の気持ちも理解している。

 Jones氏によると、子どもが留学を考えた際、特に保護者が考慮すべき点は「安全性」「留学費」、そして「教育の質」にある。

1、留学先の安全性

 子どもを海外へ送り出すうえでもっとも大切なことはやはり、留学先の安全性だろう。国全体だけでなく、滞在する学校や居住区のあるエリアがどのような場所であるか、必ず事前にチェックしておこう。

 留学先の安全性を確かめる具体的な指標の一つには、イギリスの経済誌「Economist(エコノミスト)」が毎年発表している「世界平和指数(Global Peace Index)」がある。世界平和指数上位の国は、アイスランド、デンマーク、オーストリア、ニュージーランドなど。留学先の感染症や安全対策、テロ概要などは、外務省のWebサイト「海外安全ホームページ」で確認できる。犯罪の発生率や詳細なエリアデータは、学校の留学担当教諭や留学エージェントに相談し、入手してもよい。

 Jones氏は、「子どもの留学先が安全かどうかを気にするのは、日本やニュージーランドといった国に関わらず、保護者ならみな同じこと」。治安、風紀、清潔さ、犯罪…考えると際限はないが、保護者として留学先の安全性をチェックするのはまず、当たり前のことだろう。

2、子どもへの“投資”として正しい選択か

 過去に比べさまざまな留学プランや奨学金が揃い、驚くほど低費用で実現できるようになった留学だが、決して安いとは言えない留学費が掛かることには変わりない。Jones氏は留学を「子どもへの投資」とたとえ、留学が子どもにとって実りある体験となるかどうか、保護者が事前に検討し尽くす必要性を説いた。

 Jones氏は、「留学費用は安くありません。少なくない費用を掛け、本当に我が子を海外に送り出す必要があるかどうか、教育投資として正しいか、保護者の立場から考えてほしいと思います」と語る。海外で過ごす日々は、子どもの生活や価値観に大きな影響を与えるだろう。留学経験を有意義なものにできるか、また、その素質を持った子どもなのか。そして、留学に行く時期は適切かどうか、など、「子ども」と「留学」をかけ合わせた際に生まれるメリット・デメリットを、客観的な視点から考察することも必要だ。

3、教育の質

 Jones氏によると、「安全だから」「人気の留学国だから」「安いから」といった積極的な要素が揃っても、留学先の国や学校を選ぶうえで忘れてはならない要素があるという。それは、受け入れ先の国や学校が提供している、教育そのものと学習環境の質だ。

 たとえば、ニュージーランドは教育の質を保証するため、教育機関の種類に応じた監査機関を設けている。初等教育から中等教育はERO(Education Review Office)、総合大学以外の高等教育はNZQA(New Zealand Qualifications Authority:ニュージーランド資格庁)、総合大学はUNZ(Universities New Zealand)が担当し、教育プログラムの品質管理の検査、保証を行っている。つまり、留学生欲しさから言葉巧みに子どもたちを呼び込み、粗悪な教育を提供する悪行を排除し、国内外を問わずすべての子どもに良質な教育を提供する体制を整えている。

 また、ニュージーランド政府は世界的にも早期段階から「留学生の生活保障に関する服務規程(Code of Practice for the Pastoral Care of International Students)」を設けており、留学生を受け入れる全教育機関はすべて、これに遵守、登録するよう義務付けている。服務規程には、留学生オリエンテーション、宿泊設備、学生サポートやアドバイス、留学生からの苦情に関する対応方法など、豊かな環境で教育を受けられるよう、留学生の生活にも配慮した内容が盛り込まれている。

 留学先でよく起こる問題の中には、寮やホームステイ先の住環境や滞在中の健康・安全に関するものだけでなく、期待していた教育内容を受けられない、という事例もある。国は教育を保証しているか、留学生に対する事前オリエンテーションや入学当日のガイダンスはあるか、また、クラス分けや学校生活でのバディ制度など、留学生に対する特別対応は事前に調べておきたい。

◆保護者のお墨付きは「退屈」の証? 譲歩すべきポイント

 ここまでのポイントをまとめると、留学先として選ぶにふさわしい国は「安全」で「子どもに有益」であり「良質な教育」を提供する国であるべきだということがわかる。しかし、Jones氏によると「保護者がよいと思った国・学校は、子どもにとってつまらなく思えることもある」。

 そこで、保護者と子ども、双方が納得する留学先選びには何が必要かJones氏に聞いた。Jones氏は、保護者が求める「留学像」を掲げながらも、子どもの“冒険心”も尊重した留学国選びをしてほしいとコメント。具体的には、教育と遊びにメリハリがつけられる国やエリアがよいという。

 なぜなら、友達との街遊びやパーティ、留学先での旅行にはワクワク・ドキドキ、時にスリル満点が付き物で、「安全」や「安心」とは掛け離れている場合もある。一方、学校にこもってばかりの勉強漬けでは多文化・異文化に触れる機会を失い、異国の地へ赴いた意義を失う。子どもにとって留学はいわば“冒険”としての一面を持ち、成長には多少の刺激も必要なのかもしれない。

 つまり、親子の気持ちを尊重した国・エリアを選ぶなら、整った教育環境はもちろん、少し郊外に足を伸ばせば、山や川、平原で行うスポーツや観光・行楽に興じる時間が持てる国やエリアがよい。もちろん、ナイトクラブが乱立し、風紀の乱れた区域は論外。一夜の余興より、地球を舞台にした自然体験を経て、新しい自分に会えるドキドキに胸を踊らせてほしいものだ。

 Jones氏は、「ニュージーランドなら、保護者が重視する安心や安全、良質な教育も、子どもが求めるスリルを味わうことができるアクティビティも満載です」と語る。四姉妹の親として、そしてニュージーランドを愛する者としての両面から、留学受け入れ国としての自信を語った。

 一定の年齢を過ぎれば、時折大人の顔も見せる我が子。親の一存で進めるべき場面はもう、ないのかもしれない。ただし、保護者だからこそ監督すべき安全・金銭面への配慮は忘れずに、いつ「留学したい」と言われても応えられるよう、子どもを成長の旅へ送り出す心づもりをしておきたい。

(協力:ニュージーランド大使館 エデュケーション・ニュージーランド、ニュージーランド航空)
《佐藤亜希》

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