どうなる?東京都立【高校受験2019】合格の鍵はスピードにあり

 難関高校での合格実績が際立つSAPIX中学部を訪問し、教育情報センター課長の伊藤俊平氏に、2019年度の入試の特徴やこれからの学習方法等について聞いた。

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SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏
  • SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏
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  • SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏
 2018年度の東京都での高校入試は、進学指導重点校を中心とした自校作成問題の復活や、私立高校の授業料無償化の影響など、変化のある年だった。2019年度はどのような入試になっていくだろうか。難関高校での合格実績が際立つSAPIX中学部を訪問し、教育情報センター課長の伊藤俊平氏に、2019年度の入試の特徴やこれからの学習方法等について聞いた。

中学校生活のすべてが評価対象の都立



--都立高校入試の特徴を教えてください。

 都立の特徴としては、まず「中学校生活のすべてを評価対象とする」という点があげられます。私立のほとんどでは英数国が入試教科ですが、都立ではそれ以外も対象になります。学力検査では英数国理社の5教科が対象ですし、調査書点も加味(*1)されます。

*1:学力検査と調査書点は、7:3の割合で評価される。

 また、「都立の受験日が都内の私立より10日ほど遅い」ことも特徴の1つです。具体的には、私立は2月10日が解禁日で、都立の入試日程は2月22日なので、併願しやすい状況にあります。神奈川公立は14日、千葉公立の前期が12、13日で私立と日程が近く併願しにくいことを考えると、東京の生徒の受験は長期戦になります。そのうえ、都内には私立がたくさんありますので、都立のトップ高は、私立との併願で鍛えられた生徒が受験することになるので厳しい受験になっています。ほとんどの都立受験生にとっては都立が最後の受験になりますから、入試スケジュールの立て方が重要になります。

 「入試問題の性質が私立と異なる」点も特徴としてあげることができます。難しい問題が出題されるかどうかといったことを超えて、まったく性質が異なると理解したほうがよいですね。私立では学習指導要領の範囲外から出題されることもあり、上位校では高校範囲の英文法など難度の高い問題が出されます。都立では学習指導要領の範囲内から出題されますが、分量が多くなりますので、学力検査はスピード勝負になってきます。より短時間に正解を導いていく必要があります。

都立トップ校は難関校として不動の位置付けに



--私立高等学校等授業料軽減助成金(授業料の実質無償化)の影響による、平成30年度の都立高校の倍率低下、定員割れなどが話題となりましたが、具体的にどのような影響がありましたか。

 まずは東京都内在住者に対する私学助成金についてですが、年収制限はあるものの、他県から見ても手厚い内容になっています。ただし、気を付けてほしいのは、申請してから支払われるということです。まずは授業料を払って、払った実績に基づいて助成されます。もちろん、PTA費や設備費は対象外です。

 都立が私立人気に押された時期がありましたが、平成13年(2001年)度から進学指導重点校(日比谷、西、戸山、八王子東、後に青山、国立、立川を指定)が指定されたことをきっかけに、都立人気が復活してきました。それをさらに後押ししたのが、「公立高校の授業料無償化」です。一方で、前述の私学助成金制度をきっかけに、私立ならではの独自性が見直されてきました。たとえば私立には、教育ICTを活用しやすい設備があるとか、面倒見が良いといった、学校による顕著な特長があります。

 2018年度には都立が定員割れしたことが話題になりましたが、具体的な2018年度の受験者数を見てみますと、実際には普通科の上位校は微増しています。それ以外の学校では、受験者数が減少していますが、これは、特色のある私立に受験生が流れた結果だと考えられます。

 進学指導重点校のようなトップ校は、都立とはいえ独自裁量がある程度認められていますし、難関校としての評価も固まっていますから、私立に流れることなく、トップ層の受験生が集まっていますね。

SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏
インタビューに応える伊藤俊平氏

自校作成問題の復活で、独自性が強い入試へ



--2018年度から、進学指導重点校で自校作成問題が復活しましたが、その点についてお聞かせください。

 自校作成問題は、2001年度の日比谷から始まり、進学指導重点校全校で実施されましたが、2014年度からはグループ作成問題に切り替わりました。そして2018年度、自校作成問題が復活しました。

 日比谷受験者の英語の平均点を、前回の自校作成問題最終年の2013年度と比較すると、2014年度には大幅に下がりましたが、2016年度、2017年度には記述問題が減ったことにより跳ね上がり、安定しない状況が続きました。2018年度に自校作成問題が復活したわけですが、日比谷の平均点も2013年度の水準に戻ってきています。今後は、自校作成問題になることで、学校の意図が反映された独自性の強い入試になっていくと思います。

青山・小松川・多摩科学技術に注目



--2019年度、特に注目が高まっている学校があれば教えてください。国私立についても併せてご紹介ください。

 都立で注目したいのは、青山(渋谷区)です。大学入試改革への対応に積極的な学校で、人気が上がってきています。東京の東側では小松川(江戸川)ですね。国公立の大学進学に実績があります。また、多摩科学技術(小金井市)は取組みが新しく、進学指導特別推進校になって注目度が高まってきたと感じています。

 国立では、東京学芸大学附属(世田谷区)があげられます。これまで神奈川公立の合格発表の後に学芸大附属の入学手続きがあり、神奈川公立第1志望のトップ層の受験生の多くが併願していましたが、2019年度は手続き日を早め、神奈川公立や都立を待たずに入学手続きをしなくてはならないため、より志願度の高い受験生を集めるものと思います。

 私立では、広尾学園(港区)、明法(東村山市)、目黒日本大学(目黒区)です。広尾学園は高校では本科コースの入試をとりやめて、医進・サイエンスコースのみになり、受験日も10日と12日という、多くの難関校と同じ日程になりました。明法は、高校から共学化し、GSP(グローバル・スタディーズ・プログラム)に力を入れて注目されています。旧日出学園の目黒日本大学は、名前どおり日大の準付属になり、説明会に1,000名を集めるほどの人気です。

再出願のチャンスもある都立高校



--併願校の選び方については、どのように考えればよいでしょうか。

 併願校を選ぶときに考えたいのは、都立高校は入試日程が最後の難関校だということです。

 また、知っておいてほしいのは、都立の出願日は2月6日、7日ですが、13日に取り下げて、翌14日に再提出する制度があることです。この取り下げ・再提出は、私立校の多くの受験日・発表日をまたいでいますから、私立入試の状況を踏まえて、都立校の再出願ができることになります。とはいえ、受験期間に入ると、じっくりと検討する余裕はありませんから、事前に、万が一私立がうまくいかなかった場合に、都立の出願先をどうするのかを、検討しておいてください。

 東京から通えるエリアには人気の高い私立高校がたくさんありますから、都立を第1志望にしている人は、私立のセカンドベストを併願校として選んでください。以前は、進学校志願者は進学校を併願する傾向がありましたが、大学付属校を併願する受験生も増えてきました。昨年、大学付属校は軒並み受験者数を増やしていますが、併願校として受験した生徒が増えたことも影響していると考えられます。

 さまざまな併願候補が考えられますが、入学した高校、大学で過ごす3年間、7年間を考えて、各学校の特徴をよく検討し、第1志望を中心に併願パターンをきちんと考えることが大切です。

現中3の皆さんへ--教科別の特徴をつかみ、過去問題で仕上げを



--2019年度受験生に、入試本番までの学習についてアドバイスをお願いします。

 都立上位校の学力検査は特殊ですし、学校ごとに特徴がありますから、独特の形式に慣れておくためにも、過去問題を解くことが重要になってきます。それと同時に、実力をつけていくことも平行して行ってください。

--教科別の学習ポイントを教えてください。

 英語では、どうしてもスピード勝負になります。たとえば日比谷の長文問題には語彙の注釈がありますが、スピードアップを考えると注釈を見なくてもわかるくらい、ワンランク上の語彙力をつけてほしいです。英作文も必ず出題されますが、こうした客観的な正答がない問題の演習では、第三者の添削を受ける必要があります。また最近の英語の特徴としては、テーマ性のある長文がよく出題されています。英語を道具として使いながら長文読解をさせる問題です。

 次に数学ですが、出題方針どおりの小問集合、関数、平面図形、発展問題が出題されます。受験生が後回しにしがちな作図と証明も含め、全分野を頑張って解いてほしいですね。問題文が長いですから、やはり数学も時間切れにならない注意が必要です。

 国語は、出題形式は変わっていませんが、特徴が出るのは説明文です。長谷川宏の「高校生のための哲学入門」(ちくま新書)のように、抽象的なテーマが扱われることがあります。さまざまなテーマに触れておき、読解力の底上げが必要です。また200~250字の作文が出題されていますが、5分程度しか時間が残らないこともよくありますから、事前の演習は必須です。とはいえ、選択肢問題もおろそかにせず、得点を落とさないように気をつけてください。

 理科、社会は共通問題ですが、上位校合格のためには85~90点はほしいところです。そうなると、5題以上間違うことはできませんから、完璧を目指す必要があります。また、理科は実験やそのための操作、社会は図表の読み取りや資料を用いたものなど、教科ごとに特徴的な問題が出題されるので、そのための演習を行っておく必要があります。

現中2の皆さんへ--学校の勉強を大切にし、本質を知っておこう



--2020年度受験生(現中2)に、志望校選択や学習のアドバイスをお願いします。

 1点目としては、早い段階で都立が第1志望だと決めているのであれば、都立というひとくくりで考えるのではなく、各学校の特徴について知っておいてほしいですね。

 2点目は、新聞に掲載された共通問題でかまいませんので事前に目を通しておき、「1年後にはこういった問題に取り組むことになるのだ」と知っておくことです。

 そして3点目は、学校の勉強を大切にということです。調査書への影響もありますが、本質を知っておくことが重要だからです。たとえば数学で出題される関数問題は、そもそもどういったものかを理解していなくても解けますが、関数とは何かという基本を知っておくことで、本質を問われた場合に対応することができます。

創業以来のぶれない授業で教育改革へも対応



--SAPIX中学部の特長についてお話しください。

 創業以来、学校教育法に明記されている学力の3要素「思考力・判断力・表現力」の習得に力を入れてきました。さらには、他者と協働して主体的に学ぶ力を身に付ける大切さから、生徒同士、生徒と講師の双方向のやりとりを重視した少人数での授業を行っています。こうした教育改革、入試改革に合致した授業を、今後も一貫して行っていきたいと考えています。

--難関高校を目指す小・中学生のための情報誌「スクエア」を配布されていますね。

 生徒の学習への動機付け、入試情報の提供などを目的に、2か月ごとにお配りしています。たとえば、SAPIX出身のOB、OGたちが高校選びについて座談会を行ったページや、高校の校長先生にお話を伺っているページもあります。

SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏
SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏

--ありがとうございました。

 私立高校の授業料実質無償化の影響から、都立高校の定員割れが話題となった2018年度入試。しかし、中堅以上の都立ではむしろ受験者数が増えており、特に進学指導重点校人気はますます高まっている。東京の受験生には豊富な選択肢という恵まれた環境もある。併願校も含め、進学したい学校を自らの目でしっかり選び、悔いのない受験をしてほしいと心から願う。

中1・2生のための受験相談会



 SAPIX中学部では2018年12月8日(土)に各校舎で、SAPIXに通塾していない中学1、2年生とその保護者を対象に「中1・2生のための受験相談会」を開催する。当日は英語・数学の各20分間の診断テスト(入室テストとは異なる)も実施する予定だ。参加費・受験料ともに無料、希望者は各校舎に電話で申し込む必要がある。
《渡邊淳子》

渡邊淳子

IT系メディアのエディター、ライター。趣味はピアノ。

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