女子の理系進学、保護者の男女平等度や性役割態度が影響

 東京大学などの研究グループは2019年10月17日、「女子生徒の進学を阻む要因は?」と題した研究成果を発表した。保護者の男女平等度の低さ、性役割態度の強さ、理系分野ごとの否定的イメージが、女子生徒の進学の障壁となり、進路選択に影響を与える可能性を示している。

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一般的に考えて、女の子が次にあげる専門分野への大学進学を希望したら、賛成するか
  • 一般的に考えて、女の子が次にあげる専門分野への大学進学を希望したら、賛成するか
  • それぞれの分野に賛成・反対する理由
 東京大学などの研究グループは2019年10月17日、「女子生徒の進学を阻む要因は?」と題した研究成果を発表した。保護者の男女平等度の低さ、性役割態度の強さ、理系分野ごとの否定的イメージが、女子生徒の進学の障壁となり、進路選択に影響を与える可能性を示している。

 研究グループは、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の横山広美教授を中心とする東京大学、NIRA総合研究開発機構、滋賀大学、名古屋大学のメンバーで構成。女子生徒の理系進学が少なく、男女のジェンダーギャップ指数の低い日本において、保護者の男女平等度や性役割態度が女子生徒の進路選択に影響する可能性に注目し、調査を行った。

 調査には、保護者の男女平等度と性役割態度が女子生徒の進路選択に与える影響を測定するため、「平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)」を用いた。インターネット調査会社を通じて、大卒以上の娘および息子(年齢は問わない)を持つ保護者1,236人(母親・父親各618人)を対象に男女平等度や性役割態度について15問の質問群から測定。一般的に女子生徒が理系・文系の専門分野に進学することを志望した場合、どの程度賛成するか、また賛成・反対の理由についても調べた。

 分析の結果、SESRA-Sのスコアが高い(男女平等で性役割態度の弱い)保護者ほど、理系・文系を問わず、どの分野であっても女子生徒の大学進学に肯定的である一方、スコアの低い(男女不平等で性役割態度の強い)保護者ほど、どの分野の進学にも否定的であることが明らかになった。

 また、調査対象とした保護者の40%以上は、女子生徒が志望すれば進学に「すごく賛成する」「どちらかといえば賛成する」と回答。その理由については、理系全般では「就職に困らないから」、文系全般では「女性に向いているから」を選んだ。女子生徒の理系進学先として、保護者からもっとも賛成を得た分野は薬学だった。

 一方、理系進学を反対した保護者の理由では、工学系全般は「女性には向いていないから」、獣医学・畜産学・看護学は「重労働だから」、薬学・医学・歯学は「学費が高いから」が選ばれ、理系分野間で異なる否定的なイメージを持つことが示唆された。情報科学・生物学・数学・物理学については、賛成する保護者が「就職に困らないから」と回答したのに対し、反対した保護者は「就職があるかわからないから」と答えていた。

 研究グループは、「保護者の影響は理系女子が少ない理由を説明する一部ではあるが、保護者の男女平等度や性役割態度、理系分野間での反対理由の違いに着目した研究は新しく、保護者の性役割態度の強さや理系への分野間で異なる否定的イメージが、女子生徒の進学の障壁になる可能性が示された」とコメント。今後は、性役割態度をはじめ、女性の理系進学に影響する社会的要因をモデル化し、国際比較を通じて、理系の中でも分野によって異なる女子学生率の低さについて解明していく予定だという。

 今回の研究は、科学技術振興機構(JST)のRISTEX「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」の2017年度採択プロジェクト「多様なイノベーションを支える女子生徒数物系進学要因分析」の支援を受けて実施。研究成果は、科学教育の国際的学術誌「International Journal of Science Education」のオンライン版に10月17日付(日本時間)で公開された。
《奥山直美》

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