留学生と我が家だけのドラマを紡ぐ、AFSホストファミリープログラム

 異文化学習の機会を提供するAFSは、これまで70年にわたり高校生留学・国際交流をサポートしている。AFSを通して留学生を受け入れた経験のある4家庭に、日本にいながらにして得られるリアルで身近なグローバル体験について伺った。

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AFSホストファミリー取材のようす
  • AFSホストファミリー取材のようす
  • AFSで留学生を受け入れた野竹さんご一家
  • AFSで留学生を受け入れた竹内さんご一家
  • AFSで留学生を受け入れた宮下さんご一家
  • AFSで留学生を受け入れた樋川さんご一家
 グローバルな学びの体験として、真っ先に思い浮かぶのは「留学」だろう。異文化学習の機会を提供するAFSは、これまで70年にわたり高校生留学・国際交流をサポートしてきた。AFSの加盟国は約60か国、交流国は100か国以上にもおよぶ。

 留学プログラムの他、AFSでは世界各国から日本にやってくる高校留学生のホストファミリープログラムを提供している。AFSを通して留学生を受け入れた経験のある4家庭に、ホストファミリーになることで得られる、リアルで身近なグローバル体験について伺った。

 「コミュニケーションがとれるか不安だったが、実は言語力は問題にはならなかった」。取材の冒頭、参加者全員が異口同音に意外な感想をもらした。海外からの留学生を迎えるとなると、言葉が通じるかと不安になると思うのだが、AFSでは「英語が話せること」を受け入れ条件とはしていない。

 AFSホストファミリーとは、受け入れによる金銭を受け取らないボランティアで、海外から来日する高校生を、家族の一員として受け入れる。AFSが留学生とホストファミリー双方の書類を参考にしながらマッチングを行う。留学生受け入れ中も、地域のAFSボランティアが相談役となり、留学生、ホストファミリー、学校をそれぞれサポートする。

ホストファミリープログラムを提供する「AFS」の詳細はこちら
 留学生の受け入れ期間は、年間生(実質10か月程度)を中心に、セメスター生(6か月程度)、短期(1か月程度)、テンポラリーファミリー(週末のみから1週間程度)とさまざまなプランを設けている。

 国籍や年代、性別などあらゆる者が違うもの同士、言葉が通じないところから、どのようにしてコミュニケーションをとっていくのだろうか。

お話を伺った皆さま



竹内さんご一家


愛知県在住。ご夫婦、長男(大学生)、次男(小学生)の4人家族。
2007年に1か月の短期で17歳の香港生(男子)を受け入れた。当時長男が小学1年生。その後も短期で香港生(男子)、インド生(男子)、長期でフィリピン生(男子)、セルビア生(男子)の計5人を受け入れた。

野竹さんご一家


長野県在住。ご夫婦、長女(小5)、長男(小2)の4人家族。
2016年に年間生の17歳のフィンランド生(女子)を受け入れた。当時長女は7歳。その後も短期やテンポラリーファミリーで16歳のフィンランド生(男子)、17歳のアメリカ生(男子)、17歳のネパール生(男子)の合計4人を受け入れた。

樋川さんご一家


長野県在住。ご夫婦、長女(高2)、長男(中3)、次男(小3)の5人家族。
2019年に年間生の17歳のウルグアイ生(男子)を受け入れた。2020年12月から年間生で17歳のフランス生(男子)を受け入れ中。

宮下さんご一家


長野県在住。ご夫婦、長男(23歳)、長女(大学生)、次女(高3)の5人家族。
2012年にセメスター生として半年、17歳のニュージーランド生(男子)を受け入れた。当時子どもたちは小・中学生。2014年にニカラグア生(男子)を2か月、2019年に年間生の16歳のフランス生(女子)など合計5人を受け入れた。

自分が留学できなかったから…ホストファミリーを受け入れた理由



--ご自身の英語体験や留学経験などあれば教えてください。

樋川さん(お母さま):私自身も17歳のときに、AFSを通じてアメリカに1年間留学しました。そのときのホストファミリーにも子どもがいました。22歳、自分と同じ年の17歳、14歳、13歳の4人でした。自分がホームステイさせてもらったことへの恩返しとして、今度は自分がホストファミリーで役立ちたいという気持ちがあります。

宮下さん(お母さま):高校生のとき、オーストラリアで1か月語学学校にホームステイで留学しました。社会人になってから、ワーキングホリデーで1年間留学しましたが、そのときは半年働き、半年は語学学校に通い、カナダ人と3人で1軒家のシェアハウスで暮らしました。

AFSで留学生を受け入れた樋川さんご一家


--留学経験のある方がいらっしゃる一方で、その経験がなかったり、英語力に自信がなかったり、ご家族それぞれの思いもあると思います。ホストファミリーになりたいと言ったときの、ご家族の反応はいかがでしたか。

樋川さん(お母さま):夫は自分が受験一直線だったことを後悔していたようで「自分も留学したかった」と常々言っていました。だからこそホストファミリーとして留学生を受け入れたいと賛成してくれました。

野竹さん(お父さま):妻は留学経験がなく、最初は心配していましたが、僕の熱に押されて賛同してくれました。留学生を受け入れる前は確かに不安もありましたが、受け入れてみたらたいした問題はなく非常に良い経験になったので、それ以降も継続して留学生を受け入れています。

--受け入れ前どのようなことに不安を感じていましたか。

竹内さん(お母さま):初めは言葉が問題だと思っていましたが、そのうち言葉は壁ではないと感じるようになりました。特に子どもたちは、大人と違ってすぐにコミュニケーションがとれるようになりました。子どもも英語を覚えますし、留学生も2、3か月も経つと日本語を話せるようになるので、あっという間に問題はなくなりました。コミュニケーションにおいて、子どもたちがある種の緩衝材になってくれていたのかもしれません。

野竹さん(お父さま):食事なども含めて留学生が日本の生活になじめるか心配でした。でも自分たちの生活を変えたり、特別な準備などをすると、受け入れる側もストレスになってしまうと思い、あえて留学生から日本の生活や学校になじんでもらうようにしました。結果的に、自分たちも大らかに受け入れることができたし、留学生もすぐに生活に溶け込んでくれました。

AFSで留学生を受け入れた野竹さんご一家


成長期の子どもがいるからこそ、留学生を受け入れたほうが良い理由



--お子さまが小学生のタイミングで留学生を迎え入れたご家庭が多いようですね。留学生を受け入れたからこそ、お子さまが成長したと感じることはありますか。

竹内さん(お母さま):子どもが小さいうちからホストファミリーをしていたので、そのおかげで誰とでも話せる子になったと思います。ちょうど先日、大学生になった息子がふと「誰とでも垣根なく話せるし、あまり怖いものはないな」と言ったときには、それまでホストファミリーになって感じていた大変さや苦労が報われた気がして、とても嬉しかったです。

樋川さん(お母さま):高校生の娘が留学に意欲的になり、自分で申込みまでしました。残念ながら昨年はコロナ禍で受け入れ枠が少なく、叶いませんでしたが、気持ちが海外に向くようになりました。

 中学生の息子もかつては「日本が一番いい」と言うほどの国内志向でしたが、留学生との関わりをきっかけに、高校は国際コースのある学校を受験し、この春から進学します。それまでとても内向的だった息子が、人とのコミュニケーションを学び、その留学生が帰国するとき、見送りに行った帰り道で号泣していたのが、とても印象深いです。

野竹さん(お父さま):うちはまだ小学生なのですが、留学生の出身国についての関心をもつようになりました。地図帳を持ってきて国の位置を調べたり、「行ってみたい!」と言ったり、興味を示しています。

宮下さん(お母さま):我が家がホストファミリーになるきっかけは特殊で、運命的だったんです。当時中学生だった長女が「地元の高校に通う留学生の受け入れ先がなくて困っています」と書かれた手紙を、たまたま持ち帰ってきたんです。ふと目にとまって、連絡をして、それがニュージーランド生を受け入れたきっかけでした。

 私の住んでいる地域は外国人の方が少なく、海外の情報に接する機会もあまりありません。留学生を迎えたあとは英語だけでなく、それ以外の外国語にも興味をもち、K-POPを韓国語で歌ったりしていたほどです。

 ニュージーランド生の受け入れ当時、娘たちは小5と中2でしたが、まだサービスを開始したばかりのSkypeでのオンライン英会話レッスンを試しに受け始めました。結果的に長女も次女も高校卒業までオンラインレッスンを続け、外国語に興味をもった彼女たちは長女はスペイン、次女はイタリアに高校生のときにAFSを通して留学もしました。

 留学生を受け入れなかったら、外国人に積極的に関わるようなことはなかったと思うので、本当にちょっとしたきっかけで、子どもたちの人生が大きく変化したと感じています。

AFSで留学生を受け入れた宮下さんご一家


家族皆成長できるホストファミリー経験



--留学生を受け入れたことで得られたご自身の成長、または気付きなどを教えてください。

竹内さん(お父さま):セルビア人の留学生から学ぶことが大きかったですね。セルビアは戦後まだ20年しか経っておらず、モノやお金に対する価値観が日本とはまったく違います。日本に1年もいたのに、服を1枚も買いませんでしたし、使い古したタオルも大切にセルビアに持ち帰りました。裕福な家庭の子でしたが、モノを大切にする心があり、学ぶことが多かったですね。

 彼の家族観からも多くの学びがありました。セルビアの方々にとって、休日はかけがえのない家族と一緒に過ごすことをとても大切にしています。当初、私たちは「せっかくだから高校の友達と遊んできたら?」と勧めていましたが、彼にとっては違和感を感じたようで、寂しい思いをさせてしまったことがありました。

 文化や価値観の違いによる悩みやトラブルに発展しそうなとき、AFSの地域ボランティアの方に話を聞いてもらい、サポートをしてもらいました。第三者として双方の話を冷静に聞いてくれるのでホッとしますし、ホストファミリー生活を送るうえで欠かせない存在でした。

 家族との時間を大切にするという彼の価値観に触れたことがきっかけで、大学生の息子も私たちも「家族を大切にするのは照れくさいことではない」と思うようになり、家族皆で話したり、一緒に並んで出かけたりする機会も増えました。

野竹さん(お父さま):留学生を迎え入れた経験から、オンラインでの異文化交流の取組みを始めました。過去に迎えた留学生も参加してくれて、関係が継続しています。

樋川さん(お母さま):私の場合は、自分が留学した当時のホストファミリーへの感謝が一段と深まりました。コロナが収まったら会いに行こうと思っています。

 また自分自身の大きな変化としては、留学生からの一言をきっかけに転職をしたことです。大学卒業後、国際方面に進みたいと思っていましたが、結局違う職に就き、留学生とのふとした会話で仕事の愚痴をこぼしたのです。そうしたら真剣な顔で「チャンレンジすればいいのに」と言われて。その一言で転職を決意し、海外事業のサポートという、自分の本当にやってみたかった仕事に就くことができました。

宮下さん(お母さま):我が家の変化としては、家計の見直しをしたことです。留学生を受け入れるとなると今までよりはお金がかかるので、それまであまり気にせずにいた家計管理をきちんと見直してみようと思った、いいきっかけでした。

 また他人を迎え入れることで、家族誰しもが当たり前にやってきていた我が家独自の「マイルール」に気付くことができ、そのおかしな点を見直すことができました。お国柄から折り合いが難しい留学生とも、何度も話し合いを重ね、お互いに相手の文化を受け入れて、日本のこともわかってもらうよう努力したプロセスからも多くの学びがありました。

--帰国後の留学生との関係について教えてください。

野竹さん(お父さま):今ではAFSを通さずに、メールやLINE、WhatsAppなどで連絡を取り合っています。もう「家族」なので。

竹内さん(お父さま):留学生の住む国や出身国のニュースを見ると、思い出して連絡したりしますね。世界に家族がいると感じます。

AFSで留学生を受け入れた竹内さんご一家


--リセマム読者へのメッセージをお願いします。

野竹さん(お父さま):インターネットで情報はいくらでも集められますが、そこでは知り得ないナマの情報を、その人の声で聞くことができます。ありきたりな言葉になってしまいますが「かけがえのない経験」とは、まさにこのことだと感じます。

宮下さん(お母さま):ホストファミリーは、子育てと同じで、良いことだけではなく、大変なこともあります。留学生と家族の成長は、まるでドラマを見ているようです。第1話ではこんな問題が起こり、第2話はこんな発見があって、第10話の最終回の感動は言葉では表現できないほどです。ホストファミリーごとにまったく違うストーリーがあります。そのご家庭がその留学生とでなければ紡げない、オンリーワンの思い出がつくれるはずです。

--皆さま、本日はありがとうございました。

 高校生という多感な時期に、自分の国とは違う場所に飛び込む留学生と、それを家族として迎えるホストファミリーの結び付きは、一言ではとても言い表せないものだろう。取材に応じた皆さまの言葉からは、リアルな生活を通して、決してきれいごとでは済まされない留学生との生活が垣間見えた。しかしお互いをさらけ出し、ときにはぶつかり合うことで、その関わりから「家族」としての強固な結び付きが生まれる。

 留学生を受け入れたホストファミリーの子どもたちもまた、世界に羽ばたくことが多いと聞く。小さいうちに生活の中で自然に外国人と触れ合う環境を与えられた子どもたち、外国人とともに暮らした経験のある子どもたちにとって、国外・国内という垣根は非常に低いものなのだろう。ホストファミリーというグローバルな環境で育ち、高い視座をもった子どもたちの将来は多くの可能性を秘めている。

 留学生に日本での貴重な体験を提供しながら、自分の子どもにも留学に行かせるのと同等、もしくはそれ以上に多くの異文化体験をさせてあげられる。ホストファミリープログラムは、日本にいながらにして世界への貢献もできるという、子育て世代にとって非常に魅力的なグローバルな学びの体験といえる。

《神谷玲衣》

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