【大学受験2023】コロナ世代、実学・SDGsへの関心強し「チャレンジ」志向へ…東進

 来たる2023年1月14日・15日の2日間、3回目となる大学入学共通テストが実施される。共通テストを皮切りに本格スタートする2023年度の大学入試について、東進ハイスクールを運営するナガセ・広報部長の市村秀二氏に聞いた。

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【大学受験2023】コロナ世代、SDGs・実学への関心強し「チャレンジ」志向へ…東進
  • 【大学受験2023】コロナ世代、SDGs・実学への関心強し「チャレンジ」志向へ…東進
  • コロナ禍で高校生活3年間を過ごした「コロナ世代」。志望動向に違いは?
  • ナガセ・広報部長の市村秀二氏

 来たる2023年1月14日・15日の2日間、3回目となる大学入学共通テスト(旧センター試験・以下、共通テスト)が実施される。当事者である受験生は試験まで1か月を切った今、出題傾向や受験後の志願動向への注目がさらに高まっているころだろう。

 共通テストを皮切りに本格スタートする2023年度の大学入試について、東進ハイスクールを運営するナガセ・広報部長の市村秀二氏に聞いた。

SDGs影響か、農水産系学部の人気が回復

--2023年度の大学入試に向け、模試等の情報からもすでにいろいろな傾向が見えてきていることと思います。受験生の志望動向全般について教えてください。

 昨年に続き、2023年度入試でも理高文低の傾向は変わりません。社会の高度化に伴い、理数系のスキル、技術、分析力等が不可欠になる中、社会が理系人材を求めています。受験生にしてみれば、確実に資格やスキル等を身に付けて社会に出たいという意識が、理系学部人気の背景にあると思います。

 医学、薬学の人気は依然として高い傾向にあります。コロナ禍での医療報道による関心の高まりや資格取得で就職に有利な点が影響していると考えられます。

 また、農水産系の人気が高まり、低迷期から脱したと言えます。獣医学系人気に加え、食糧危機やSDGsへの関心、農学系の学部新設が近年続いてきたこと、さらには入試における数学の負担が比較的少なく、特に女子からの人気が高まっています。

 理高文低と言いつつも、文系学部でも、実学志向・資格志向から法、経済、経営、商等が回復傾向にあります。しかし、語学系や国際系は、コロナ禍による影響は引き続き濃く、また経済的な要因ゆえの留学に対しての逆風から、回復には時間がかかりそうです。

コロナ起因の安全志向から脱し、チャレンジ志向へ

--以前の取材でコロナ禍による地元志向について指摘されていましたが、2023年度でも同様の傾向がみられるのでしょうか。

 コロナ禍で高まった地元志向・安全志向から、チャレンジ志向への変化が見えます。国公立大では、旧七帝大を中心に都市圏の難関大で、また、私立大では早慶上理、明青立法中、関関同立等の志願者数が増えると予想されます。

 一方で、難化した共通テストを避け、現役で早期に決めたいという意識が高まっており、特に中堅大学においては、総合型・学校推薦型の受験者が増加傾向にあります。

データサイエンス学部の新設ラッシュ続く

--人気を集めている大学、注目の新設学部・学科について、具体的に教えてください。

 まずは、一橋大です。特に新設のソーシャル・データサイエンス学部に注目です。募集定員は60名。二次試験では理科・地歴が課されず、文理問わず受験ができます。前期試験は英語・国語・数学(数学II・Bまで)・総合問題ですが、後期では英語・数学(数学IIIの問題も選択問題として出題)のため、後期日程は理系の受験生も上位層の併願先として選択される可能性があります。一方で、既存学部(商・経済・法・社会)の定員が減ります。法学部・社会学部は昨年に続き人気の傾向ですが、難化が予想されます。一橋大内での志願動向はもちろん、首都圏の志願動向にも影響があると考えられます。

 東海圏では名古屋市立大学でデータサイエンス学部の新設があります。こちらは数学IIIまで必須なので、理系志望の受験生が有利でしょう。

 その他、私立大学でも一気にデータサイエンス系の学部・学科が誕生する予定です。亜細亜大の経営学部データサイエンス学科、東京都市大のデザイン・データ科学部、北里大の未来工学部データサイエンス学科、京都女子大のデータサイエンス学部、順天堂大の健康データサイエンス学部等が新設され、まさに「データサイエンス学部新設ラッシュ」と言えます。

 先に文系学部における法学部の人気回復傾向について触れましたが、中央大・法学部の茗荷谷キャンパス移転は大きな話題となりそうです。中央大の法学部は1978年に駿河台キャンパス(東京都千代田区)から郊外の多摩キャンパス(同八王子市)に移ったことで、人気や難易度がやや下がりました。茗荷谷キャンパス(同文京区)への都心回帰により、早慶の法学部にどこまで迫れるのか注目です。

--昨年の記事では「コロナ禍へのリスクヘッジ」としての共通テストの重要性についてお話しされていましたが、その中での数学IAの超難化をはじめ、まだ共通テストに関して傾向が読めずに戸惑う受験生も多いのではないでしょうか。2023年度の共通テストの出題傾向をどのように予想されますか。

 問題の難易度はさほど変わらないと予想されますが、問題傾向に即した対応を行ってきた受験生が昨年よりも増える分、平均点は上がるのではないかと考えます。とにかく、問題が易化することを期待せず、難度は高いままという前提で対策を行うことが重要だと考えます。特に、多くの情報を比較したり関連付けたりする情報処理力を身に付けることが共通テストで得点するための鍵となります。時間不足にならないように共通テスト形式の演習を最後まで積むことが大切です。

共テ利用入試、可能性を広げるための1つの策として活用を

--私立大学でも共通テスト利用入試を採用する大学が増えてきています。活用する際のポイントを教えてください。

 一口に「共通テスト利用入試」と言っても3教科型なのか、4教科型なのか、出願の時期はいつなのか等細かく条件が異なります。

 まず、志望大学・学部の入試形式を正しく把握することが必要です。そのうえで、自分に合った形式を選ぶようにしましょう。また、難関私立大の共通テスト利用は合格ラインが高くなります。併願先として必ず合格を確保したいときは、受験大学を広げる、一般入試も受験する等、選択肢を広げておく必要があります。事前にしっかり調べておくことが大切です。 

 上位大学での注目は、早稲田大・教育学部における共通テスト利用入試導入と、上智大の3教科型の導入です。早稲田大・教育学部で課されるC方式は科目数が多く(7~8科目)、国立大志望者向きです。共通テスト後でも出願できるため、上位層にとっては新しい選択肢となるでしょう。上智大の共通テストのみで判定する方式は、従来は数学必須の4教科型でしたが、経済学部、総合人間科学の一部の学科を除き、文系学部では数学を受けなくても良い3教科型を導入することになっています。私立文系を志望する学生からの人気を集めるものと見られます。ただ前提として、共通テスト利用入試の募集定員は多くないので、出願校数を増やしたり、一般入試も検討したりしながら、さまざまな選択肢を検討しておくことをお勧めします。

--2023年度の共通テストに臨む受験生にメッセージをお願いいたします。

 コロナ禍での入試が続きますが、落ち着いて志望大学の入試方式を確認してほしいと思います。前回の共通テストの平均点が大きく下がった最大の原因は、受験生が出題形式に慣れていなかったということです。問題の難度や必要な知識は従来とさほど変わっていなくても、出題の形式に慣れていないために解答に時間がかかってしまい、結果得点を減らした受験生が続出しました。

 今から直前までの期間でできることは、同形式の問題でとにかく訓練を重ねること。最後の1か月、受験生は平均1日1点伸びると言われています。最後の努力次第で50点以上伸びる人もいます。

 また、特に国公立大を志望する受験生は、昨年のように共通テストの結果が難化したとしても、平均点に振り回されず、落ち着いて第一志望を貫いてほしいと思います。ボーダーライン等の情報収集をしながらも、安易な妥協はしないように。私立大は、特に難関大で引き続き人気学部系統の倍率が高くなると思われますが、一時の人気に惑わされず、将来自分が何をしたいかを良く考えて受験校や学部を決定してほしいと思います。

 最後に、新型コロナの第8波、インフルエンザをはじめとするその他感染症の流行等、2023年度入試も不安要素はあるものの、大学は感染対策や受験機会を確保する体制を取っています。受験する大学の方針や要項をしっかり確認しておきましょう。また共通テストでは、追試験の試験会場は2023年度入試においても47都道県に設置されます。体調管理には留意しつつも必要以上に不安がることなく、試験に関する正しい情報をチェックして、当日に実力を出し切れるコンディション作りをしてほしいと思います。


 コロナ禍3年目での大学受験、大学側も受験生側も慣れてきた印象はありつつも、入試直前の冬休みを挟み、感染拡大も予断を許さない。2023年度の共通テストでは、前年同様、無症状の濃厚接触者は受験が可能だが、当日受験生が体調不良を訴えた場合に継続受験を認めない体温の要件については、前年度までの37.5度以上から38.0度以上に条件を緩和する等の変更が加えられている。感染症関連の情報のみならず、受験科目や持ち物含め、自身が挑む試験に関する情報は正しくキャッチアップし、情報のアップデートを怠らないようにしてほしい。


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《橘その》

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