【大学受験2023】分量増、さらに難化した東大英語を制するには…J PREPが解説

 英語塾J PREPは2023年2月27日、「2023年度東大二次試験 英語問題分析速報」ウェビナーを開催した。同塾が誇る入試問題の定量・定性分析の知見をもとに、東大入試における英語試験の出題傾向や対策について解説した。

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【大学受験2023】分量増、さらに難化した東大英語を制するには…J PREPが解説
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 英語塾J PREPは2023年2月27日、「2023年度東大二次試験 英語問題分析速報」ウェビナーを開催した。東京大学二次試験の翌日のこの日、同塾が誇る大学入学選抜試験の試験問題分析の知見をもとに、東大入試における英語試験の出題傾向や対策について解説した。

 セミナーでは、3つの視点で東大入試英語試験を分析。元イェール大学助教授でJ PREP代表の斉藤淳氏がデータ解析の視点から定量的な問題分析を、次にJ PREP国内大学受験部統括責任者の桂侑司氏が経験豊富な大学受験統括講師の立場から今回の問題の解説と今後の学習法を、さらに同塾国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏が英語母語講師の立場から試験問題の特徴や今後の学習に役立つ情報を解説した。

多角的な分析をもとに大学受験英語を制する「J PREP」

 斉藤氏は今年の東大入試における出題について、「筆記試験は、分量は増えたものの、語彙難易度は英検2級~準1級の間くらい。リスニングが難しいのが特徴で、英検1級よりも語彙が難しく、差が付く内容だった」と総括した。また、桂氏は「英語に関する全技能や大量の情報処理能力に加え、高度な論理力や日本語の表現力まで要求されるのがポイントだった」と語った。

筆記問題:語彙は難しくないが分量増

 セミナーでは、まず斉藤淳氏が登壇し、データからみた東大入試の概要を説明した。斉藤氏は比較政治経済学を専門にイェール大学で教鞭を取っていた経験から、これまでさまざまな英語試験の定量的・計量的な分析およびテキストマイニング(テキストの統計分析)を行っている。東大入試についても、明治時代までさかのぼり、東大で実施された英語入試問題を分析してきたという。分析の指標は、分量、語彙、背景知識、設問の4要素。今回は定量的に評価しやすい分量と語彙(ボキャブラリー)の2点に絞って、分析を行った。

 斉藤氏はまず1月に行われた大学入学共通テスト(以下、共通テスト)を振り返った。今年の共通テストは試験時間80分に対して総英単語数6,014語が出題され、試験時間中に求められる英単語処理速度は1分あたり75.2語であると算出。これは、34年前にあたる1989年の共通一次試験(100分2,728語、1分あたり27.3語)に比べると2.76倍にものぼり、「とにかく大幅に分量が増えている」と語った。こうした分量の増加は大学入試全体の傾向としてみられ、東大入試についても「共通テストほど劇的な変化ではないが、それでも分量が増えて難しくなったことは間違いない」と指摘した。

1989年度と2023年度の東大英語試験の分量比較

 そのうえで、「東大入試英語の半世紀」を振り返り、年々出題単語数が増えていることを視覚的に示した。実際に東大入試で出題された総英単語数は1989年の2418語に比べ、2022年には5857語で2.42倍、2023年には5721語で2.36倍と34年間で2倍以上に分量が増えている事実を提示した。

CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)における分類

 また、語彙難易度については、出題された英単語がCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠:言語能力の習得レベルを測るための国際的な指標)のどのレベルに相当するかを、難易度分析サイト「Text Inspector」を使って分類。その結果、2023年東大入試の筆記試験においては、もっとも簡単な英検3級レベル(A1)のボキャブラリーが、全体の58.1%であることがわかった。1989年の66.4%や、昨年2022年の66.5%に比べ、A1レベルが占める割合が減少したことから、やや難化したと解釈できる。「英検3級レベルの単語が58.1%という難易度は、標準的なアメリカの大学で使う経済学の教科書に類する難易度」だと斉藤氏。

東大英語筆記試験の難易度推移

 J PREPで高校2年生のテキストとして使用しているマイケル・サンデル氏著『Justice(これからの「正義」の話をしよう)』原書は、A1レベルの語彙の割合が54.5%で、おおむね英検準1級レベルの語彙難易度だと紹介。「『Justice』原書レベルの書籍を、辞書を引きながら読む練習をして読解力を養成すると東大入試も楽に読みこなせる」とアドバイスした。ちなみに、同書は慶應義塾大学医学部の入試問題にも出題されたという。

マイケル・サンデル氏著『JUSTICE』原書の英単語難易度分析
大学合格以降も役立つスキルを身に付ける「J PREP」

リスニング:語彙レベルが高く難度が高い

 一方、東大入試の特徴はリスニングが難しいことだと指摘。スピーキングのスキルを代替的に測定するための手段として、リスニング試験が存在しているため、読解問題よりも難度の高いボキャブラリーが出題される傾向にあるという。「入学後に授業を英語で受けて、ディスカッションに参加できる実力があるかを測っている」と斉藤氏。今年のリスニング試験の読み上げ台本の語彙難易度は英検3級レベルが58.5%と昨年の60.3%に比べて難化。印刷配布されたテキストに至っては49.9%であり、昨年の55.6%よりも大きく難化している。「東大のリスニングは、分量やスピードはそれほどではないものの、ボキャブラリーが非常に難しい。出題されるジャンルは違うものの、スピードと語彙難易度はTOEICとほぼ同等であり、共通テストより語彙が難しい」と評価した。

東大英語リスニング試験の難易度推移
英検と大学入試の難易度比較

4技能を3技能で測る東大入試

 最後にまとめとして、以下3つの特徴の紹介で締めくくった。

1)東大入試は4技能を3技能で測ろうとする試験
2)量は安定、語彙は昨年より難化
3)リスニングは英検1級や総合読解問題よりも語彙が難しく差がつきやすい

 また、受験の際には、入学者募集要項に記載されているポリシーを熟読したうえで、受験勉強の戦略を組み立ててほしいと語った。「東京大学では、将来的に日本の学術研究や実務、臨床の場でリーダーになる人材を育てることをミッションとしている。その準備に足る英語力を高校生のうちに獲得してほしいという思いが入試に表れている」と述べ、「目安としては中3~高1で英検準1級に合格し、高3で東大入試英語の9割得点を目指すスピードで勉強を組み立てると失敗せず、他の難関大学でも英語で苦労することはまずなくなる」と分析した。

安定して得点できる英語を柱に

 次に登壇した桂侑司氏は、東大入試の内容に踏み込んだ定性的な分析を述べ、それに対応した英語勉強法を提案した。

 まず桂氏は、先の斉藤氏の話題を引き継ぎ、東京大学の入学者募集要項・入試のポリシーを紹介した。入学者募集要項にて英語による受信力・発信力並びに批判的な思考力を身に付けておいてほしいとしていることから、「リーディング、リスニング、ライティング、スピーティング、クリティカルシンキングの技能が入試で問われている」と説明。東大の英語試験では、制限時間の中で大量の英単語を理解し、記述解答する処理能力が求められ、なおかつ文法・語法・語彙・要約・和訳・英作文など語学のあらゆる側面を一度の試験で測ることになる。さらに論理力や表現力、読解力も試され、その典型問題が要約問題だと語った。

入学者募集要項から大学側の出題意図を汲み取る

 さらに東大入試全体の特徴として、入試科目数が多く、全科目で満遍なく点を取るのが難しいことを述べたうえで、「英語で点数を稼ぐ戦略が有効」と強調。「英語の科目特性は、練習の環境と本番環境で得点のブレが少なく、一旦実力をつければ安定して点数を取れること。この特性を利用して、入試の柱にするのが非常に有効」とした。それをふまえ、東大二次における英語の配点をみると120分120点で、合格者の平均得点は類にもよるものの、約7割とれれば合格者平均に到達できるとした。「J PREPの上位クラスに在籍する高3生は100点(8割)を1つのラインとして目指せるよう指導している」という。

東大入試の難しさ

クリアなロジックと状況理解力

 ついで、具体的な出題内容を解説。大問1の要約問題は、417語を70~80語にまとめるもので、「いちばん対策がしづらく、付け焼刃も役に立たない。文法、英作文の構文解釈を固めた後、高3秋~冬くらいでの完成を目指すべき」とした。また、文章の芯をとらえる力を、英語力と分けて考えたほうが良いとし、日本語の要約練習や表現力を磨くことでそれを習得できるとアドバイスした。

 大問1Bは空所補充の問題。913語と問題全体の中でもっとも長く、「大問1全体の分量が、大問5の長文読解よりも多いのが近年の特徴」とし、「次の展開を考えながら読むスキルが必要となり、読書量が物を言う」と解説した。

 大問2は英作文で、2023年度の出題テーマは「30年後の移動手段」について理由を添えて60~80語の英語で述べるというもの。「なぜそうなるか合理的な理由も添えるのが難しく、よく考えられている問題」と評価した。東大の自由作文はイラストの説明やことわざ・格言の解釈がよく出題されるが、最近の傾向としては自分の身近な問題について意見を書かせるものも多く、それらが順不同で出るため、いずれのパターンにも対応できるように対策することが必要とされる。「平易な英語を正確に運用できるかを評価しており、スピーキング能力を疑似的に測定している。(英作文力の習得に関しては)繰り返し添削指導を受けることが上達の近道」だと語った。

 次の和文英訳は、2018年以降毎年出題が続いており、「ただの直訳ではなく、日本語を一度言い換えてそれを英訳するといったような、日本語と英語を行ったり来たりする能力が問われている」という。東京大学ではこうした日本語を置き換える作業が非常に多いと分析した。

 大問3はリスニングで、設問量がかなり多く、先読みが必須であること、英米のラジオ採録からの出題頻度が高いため、練習しておくことが重要と述べた。文法・語法問題は基本的に正誤問題が出題され、幅広い文法・語法知識が問われている。今回は知識のみ問われたが、通年は前後の文脈を見て論理関係の矛盾を見抜く等読解力が試される問題が多いとした。

 また、大問4の英文和訳は、ごく一般的な問題であるとしつつも、設問の論点を外さず、出題者の視点に立って俯瞰的に解答できるようになる習熟が必要であり、また、時には意訳したり自然な日本語表現に修正したりするテクニックを身に付けるのが重要だと述べた。

 最後の大問5は長文読解。2023年度は808語の分量で、毎年小説や随筆、伝記等が出題される。「小説や随筆ならではの比喩、省略、暗喩を見抜くことが求められ、英文への慣れが必要」と解説。また、「一貫して問われているのは状況理解力」と分析した。

 桂氏は、最後に東大入試を攻略するためのキーワードとして、クリアなロジックと曖昧な情緒や裏側を読み解く状況理解力の2つを挙げた。要約問題に代表されるように、東大は非常にクリアなロジックを求めているということ、そして読解問題をはじめとして、曖昧でクリアではない情緒や裏側を読み解く力が求められるということの2点だ。また、東大英語では、基本事項でありながら見落としがちなポイントを突く出題がよくなされるため「細部にまで注意を払って対策をしてほしい」とも語った。

データにもとづいた「J PREP」の英語教育を体験する

試験問題全体に共通するテーマを読み解く

 最後に登壇したTom McCormack氏は、「英語母語講師から見た東大英語試験の特徴」と題して講演した。McCormack氏は「東大入試でもっとも重要なことの1つは、受験生がその年の英語試験全体に共通するテーマを認識できるかどうか」だと説明した。「受験生はテストでさまざまな分野の文章を読んだり聞いたりすることになるが、通底するテーマを理解することで解答の助けになる」と述べた。たとえば2021年の問題のテーマは「芸術と複製」、昨年は「儀式と習慣」だったが、今年は「過去と現在と未来、そして歴史と記憶のあり方について考える」という、大きな共通テーマがあったと紹介した。

東大英語試験にはその年ごと全体に通底するテーマがある

 次にMcCormack氏は東大入試の特徴である要約問題について触れ、「30年後の移動の手段」について理由も含めて、60~80字で意見を書くという今年の問題について、2点の解答例を示して解説。1つ目の解答例は、再生可能エネルギーを動力源とする電気自動車等のカーボンニュートラルな輸送手段を挙げたもので、これは「環境に焦点を当てており、我々が想像しうる模範解答」だと述べた。

解答例1

 2つ目の解答例は「移動手段は変わらない」という主張に「より効率的になるかもしれないが、一般市民は気付かない程度の違いだから」と肉付けしたもの。「常日頃から、さまざまな分野の情報を取り入れることで(英作文における)良いアイデアや素材を得ることができる」と語った。

解答例2

幅広い分野の情報に触れ、広範なリスニングを

 リスニングについては、「東大入試で非常に重要」と位置付け、桂氏同様に、実際のラジオ番組やポッドキャストから採録されることが多いと解説した。さらにリスニング上達のための教材として、アメリカ英語はアメリカのNPR(National Public Radio、米国公共ラジオ放送)やVOA(Voice of America、ボイスオブアメリカ)、イギリス英語はイギリスのBBC(British Broadcasting Corporation、英国放送協会)、世界各国の英語はアルジャジーラやTED Talks、日本の英語はNHKを視聴することを勧めた。

東大英語リスニング対策で活用したい各国の情報番組

 また、McCormack氏は東大入試ではさまざまな分野から多彩なテーマが出題されていると指摘。今年の問題では大問3Aで生物学の分野から「伝書鳩の驚異的な記憶力」が話題になっており、そのほかにも、社会学や心理学、環境学、言語学、政治・社会学等1つの試験でさまざまな学問領域のテーマが取り上げられていると述べた。そのため直接的に関心のない分野や詳しくない分野の本も読んでおくことが大切だと指摘。推奨図書および情報メディアとして、全般についてはBBCやジャパンタイムズ、ニューヨークタイムズ等を、科学分野はナショナル・ジオグラフィックやネイチャー等を例示した。

多様な学問領域から出題されている

 最後に、McCormack氏は東大入試の全体的な印象として、幅広いトピック・分野と時間的制約を挙げた。これらの特徴をもつ東大入試英語を制するポイントとして、3つのアドバイスを示した。

1)広い分野の本を読む習慣をつける
2)毎週新しい英語を聞き、集中的かつ広範なリスニングを行う
3)文章の形式を知り、練習する

 図書館等を活用し、幅広い分野の書籍に触れることや、先に例示した各国の公共放送をはじめ、幅広いテーマを扱うニュース等を聞くことで比較的易しく長文のリスニングに慣れることを促した。また、英作文では簡単かつ明確な言葉で簡潔に書くことを心掛け、添削してもらうことを推奨した。

東大英語対策・海外大進学にも強い「J PREP」

東大入試で求められる4技能を養う場

 日本の最高学府たる東京大学は入試のポリシーにて、同大学の使命として「世界的な視野を持った市民的エリートの育成」を示し、英語試験の出題意図として「発音、語彙、文法構造といった細部の把握と、論理構成の理解や文化的背景についての知識に裏打ちされた大局的な把握」を掲げている。東大入試ではそうしたリーダーになる人材としてふさわしい英語の力が試されており、単なる英語力だけでなく、幅広い分野の知識や文化、論理力や読解力、日本語表現力までが取り上げられるのが特徴だ。J PREPでは読む、書く、聞く、話すの英語4技能に加えて、考える力に対応する取り組みを普段の授業から行っており、それはまさに東大入試にそのまま対応できる力を育んでいるといえるだろう。

《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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