ソニーが主催する「CurioStepサマーチャレンジ2023(6月15日~9月3日)」は、子供たちの好奇心とクリエイティビティを刺激する教育イベントで、今年もさまざまなワークショップやトークイベント、コンテストが開催されている。
「楽しく学べる、ソニーの社会体験 Student Wonder Program」は、中学1年生から高校3年生までのお子さまと保護者が、ソニーの歴史をはじめカメラ・音声・映像・AIロボットなど最先端技術の原理や知識を、ソニーの製品に触れながら楽しく学べるワークショップ。8月23日に行われた第4回目のワークショップのようすをレポートする。
ソニーの歴史:クイズ形式で楽しく「ソニー」を知る
ソニーストア銀座で開催された「Student Wonder Program」は満席で、ソニーストア北川氏と松本氏の2名が明るく元気に進行した。参加者は、まず配布された資料を見ながらクイズに挑戦。ソニーが創立された年や当時の社名、創業者である井深大氏と盛田昭夫氏の名前、社名が「ソニー」となった年、ソニーの名前の由来などが出題された。
続けて会場となったソニーストア銀座の設立経緯が説明された。1966年に新製品などのショールームとして誕生。創業者のひとりである盛田昭夫氏が、街の雰囲気や訪れる人々の洗練されたイメージからショールームを建設するのにふさわしい場所として「銀座」を選んだという。
北川氏は「今は体験とともに、気に入った製品をその場で購入できるストアとなり、日本だけでなく世界中のお客さまが来館するため、ソニーとしても大切な場所のひとつとなっています」とその役割を話した。ソニーは今、テレビやオーディオプレーヤー、カメラなどのエンタテインメント・テクノロジー&サービス事業をはじめ、PlayStationなどのゲーム&ネットワークサービス事業、ソニー・ミュージックの音楽事業、ソニー・ピクチャーズの映画事業など、さまざまな事業を世界中に展開している。

カメラ:ミラーレス一眼やレンズのしくみを実機に触れながら理解
次は「一眼カメラ」のしくみを学ぶ。ソニーは現在、写真撮影にも使われるスマートフォンXperia(エクスペリア)やデジタルスチルカメラCyber-shotとともにデジタル一眼カメラ α(アルファ)も開発している。その一眼カメラの2008年製品と最新製品を見比べる。従来のカメラには、レンズから入ってきた光を反射させて、人がのぞくファインダーに映像を写す「鏡(ミラー)」があり「一眼レフカメラ」として発売されている。だが最新のカメラには鏡がない、いわゆる「ミラーレス一眼カメラ」だ。鏡がなくともしっかりと写すセンサーの技術開発により、以前とは比較にならないほどの軽量化が実現したという。

子供たちは、最新のカメラでオートフォーカスを体験。シャッターボタンを半押しすると緑の枠が出て自動でピントが合う。子供たちは家族の顔にピントを合わせたり、被写体が動いても目にピントが合うことなどを試した。ソニーのカメラは、操作に慣れていなくても、簡単な操作できれいに撮影ができるという。
続いて構造模型を用いて、レンズのしくみが解説された。凸レンズは物を大きく、逆に凹レンズは物を小さく見せるが、これらを何枚も組み合わせることで、適切なサイズでの撮影が可能になるという。子供たちは、実機を触りながらカメラのしくみを楽しく理解していった。

音声:音へのこだわりやノイズキャンセリングのしくみを体験
ソニーの音へのこだわりを知る時間へ。ポータブルオーディオプレーヤー ウォークマンがどんな素材でできているかを参加者が考える。ステンレスや真鍮、チタンなどの意見が出たが、正解は銅。最近は電気を使ったデジタル信号で音楽を聴くため、効率良く電気が通る素材の銅が選ばれているという。ただ銅はさびやすく、曲がりやすく、傷つきやすい。それを防ぐために金メッキでコーティングしているという。高級なオーディオ設備と同様のクオリティで屋外でも音楽を楽しみたいというニーズに、ウォークマンは応えているという。
さらにノイズキャンセリングヘッドホンのしくみを体験。会場に東京メトロ千代田線の車内と同様の音を流し、電車内の環境を再現した。ヘッドホンの右上部に手のひらを当てると周囲の音が聴こえる。ノイズキャンセリングヘッドホンにはマイクがついていて、そのマイクで外の音を拾う。音は空気の振動で伝わり、振動は波で表わされる。その波と反対の波をぶつけることで、周囲の音が消えて音楽を楽しめるしくみになっていると説明された。

映像:画素って何? を身近なテレビ画面で理解
ストア内の展示スペースへ移動し、数多くのテレビが配置された場所でディスプレイや映像のしくみを学ぶ。ディスプレイは赤・青・緑の3色をもとに映像を表現している。その3色を組み合わせたまとまりを「画素」とよび、カメラやテレビの画像や映像は、この画素を集めて表示されている。また画素数が多いほど画質が良くなり、4Kテレビや8Kテレビの大画面では細部まできれいに見えるようになっている。

「画素」はどのようになっているのか。子供たちはディスプレイに近づきルーペを使って画面を覗いて確認。小さい四角い画素は見る場所によって光の強さが変わることがわかる。赤・青・緑の3色それぞれの光の強弱を変えることで、さまざまな色を出すことが可能になるしくみだ。画素数は、スマートフォンで見るYouTubeはおよそ207万画素、子供たちがルーペで見た4Kテレビはおよそ829万個という。また新製品の8Kテレビは3,300万もの画素数になっているとのことで、非常に映像がリアルだった。

自律型エンタテインメントロボット:「aibo」を通じて最先端技術に触れる
ソニーが取り組むAI(人工知能)と自律型エンタテインメントロボット「aibo(アイボ)」の紹介へ。「aibo」はソニーが生み出した最先端技術の結晶で、初代モデルは1999年に生まれた。現在のaiboは単純に人間の命令に従うだけではなく、自ら意思をもって動いている。

aiboは自ら考え、気付き、行動する「自律思考型」とよばれるロボットだ。周囲の環境を鼻のカメラ、胸元や頭にあるセンサー、背中のカメラなど、体のあらゆるところについたセンサーで感じ取り、何をどうするかを判断している。こうしたセンサーを使った技術は「センシング」とよばれ、今、何がどこにいるという情報や、今、目の前にいる人はどういう人かを考えて、状況をロボットが理解する。
ソニーが人間の脳のしくみを研究してaiboの中に組み込んだことから、このしくみが実現した。「AI(人工知能)を支える根幹技術であるディープラーニングは、人間の神経細胞(ニューロン)のしくみを模したシステムのことで、このしくみを用いることで、データに含まれる特徴を段階的により深く学習することができます。深く学ぶのでディープラーニングといいます」(北川氏)
aiboは体の中に登載されたAIとインターネット上のデータ保管場所であるクラウドの双方を組み合わせることで賢くなり、その見た目以上に技術が詰まっているという。撫でたり、触ったりして関係を深めることで自分のペットにできるaiboを見て、子供たちからは「かわいい!欲しい!」という声がたくさんあがった。

プログラムの最後は、ソニーがこだわってきた“音と映像”を体感する時間。ワークショップの会場となったソニーストア銀座のシアタールームは、音楽を静かな環境で楽しめる空間となっている。このシアタールームには、5.1.2チャンネルという小さな空間でも迫力ある音が楽しめる音響設備が整備されている。子供たちは映画の歌唱シーンを、複数のスピーカーから迫力ある音声で視聴し、本物の映画館さながらの迫力を体感していた。
実物に触れることで得られる深い理解
ワークショップ後に実施されたアンケートは親子ともに好評で、夏休み中の良い体験の機会になったことが伺えた。子供たちからは「ノイズキャンセリングヘッドホンやカメラが体験できて楽しかったです」「機械のしくみについて深く聞けたので良かったです」「aiboや8Kテレビが楽しかったです。aiboがかわいい」「aiboのセンサーの数や性能などに驚きました」「カメラの内部など自分が知っていたものよりも技術が進んでいて驚きました」など先端技術への驚きの声が多く聞こえた。
保護者からは「最先端の技術をわかりやすく丁寧に説明していただきありがとうございます」「作っている実物を実際に手にする中で、説明していただけたのでとてもわかりやすかったです」「(子供に)ソニーの商品をねだられそうです」などプログラムに満足したようすが感じられた。また「子供が進路を考えるうえで何かのきっかけになればと思いました」「夏休みの学習の一環として参加しました」「学生のうちにいろんな経験をさせたいと思いました」と子供たちの進路への関心や好奇心を喚起するために、保護者がこうしたプログラムの機会を求めている声も数多くあった。
「Student Wonder Program」は、ソニーの製品を実際に見る・聴く・触ることで、普段は接していてもなかなか気付かない技術の原理や作る人たちのものづくりへの思いを知ることができる。子供たちの好奇心を刺激し、親子で気軽に楽しめる機会はとても貴重だ。ソニーの教育プログラム「CurioStep」におけるさまざまなプログラムにも、さらに期待が高まった。