「医学部は入学後のほうがもっと大変?」現役医学生が語るリアル(2)

 難関の医学部に合格した後の生活を描いた漫画、『Dr.Eggs ドクターエッグス』(集英社)。漫画のタイトルどおり「お医者さんの卵」たちのストーリーだ。カルペ・ディエム代表 西岡壱誠が、慶應義塾大学の現役医学部生とこの漫画を読み、話を聞いた医学部の実情とは。

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  • 『Dr.Eggs ドクターエッグス 1』(集英社)より/©︎三田紀房
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  • 『Dr.Eggs ドクターエッグス 1』(集英社)より/©︎三田紀房

 大学の医学部に入ってからの生活を描いた漫画、『Dr.Eggs』。漫画のタイトルどおり「お医者さんの卵」たちのストーリーを描いたものだ。

 本記事では、筆者(全国で教育支援事業を行っている東大生集団 カルペ・ディエム代表 西岡壱誠)が、実際に医学部に通う大学生たちとこの漫画を読み、話を聞いた医学部の実情を共有する。

 今回取材に協力してくれたのは、慶應大学医学部2年生のSKさんだ。実際に読んでもらった所感としては、次のようなものだった。

 「非常にリアルでしたね。大学生のちょっとした会話とか、大学の先生の雰囲気とか。ただ、ちょっと厳しい大学を描いているな、とは思います。慶應の医学部は、他大学と比べてもかなり自由な校風だと言われるので自分がそう感じるだけかもしれませんが、ここまで厳しくはないかな、と。でも、地方国公立の医学部はこれくらい厳しいイメージがありますね」

 この漫画は、山形県にあるという架空の大学の話をしている。都会の医学部の人から見ると厳し過ぎると感じる面もあるのかもしれない。そういった面も含めて、本記事ではリアルな医学部生たちに迫っていこうと思う。

留年は2年生が多い?

 『Dr.Eggs』では、医学部に入ってからのことが描かれている。医学部への入学といえば、何年も浪人することになる人もいるくらいいまだに難関だが、それ以上に入学「後」が大変だというイメージを抱いている人も多いだろう。『Dr.Eggs』 でも、大学2年生になってから勉強が辛くなっていくようすが描かれている。

 たとえば、主人公がテスト前に、夢で暗記事項に押しつぶされそうになるシーンがある。

(c)三田紀房
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 このシーンについて何人かの医学部生たちに話を聞いた結果、確かに実際に勉強についていけなくなって留年してしまう人が多いのは2年生なのだそうだ。

 さて、その理由とは、一体何なのか。それは、勉強の中身だという。

 カリキュラムは大学によって違うが、一般的には1年生の間に教養科目を、2年生から基礎医学が始まると言われている。そして、基礎医学の勉強は、大学受験まででやってきた勉強とは方向性が違っているのだそうだ。たとえば、今回話を聞いた慶應大学医学部2年生のSKくんは、こんなふうに述べている。

 「2年生からの医学部の勉強は、とにかく暗記が多い。たくさんの量を覚えなければならなくて、それがとても大変なんです。

 医学部に合格するくらい勉強を頑張ってきた人たちは、本質の理解をしてから暗記をする習慣がついている場合が多いと思います。僕も数学の公式は丸暗記せず、理論を理解してそこから公式を導く勉強をしていました。でも、医学部の勉強ではそのやり方法は通用しません。量も膨大な上に、ただ単純に覚えているかどうかの勝負になりがちなんです。」

 「暗記が多く、大学受験の勉強と質が違うこと」。これが、医学部2年生で留年が多い理由なのだそうだ。暗記の勉強は、時間をかければ必ず身を結ぶものだ。しかし逆に、誤魔化しが効かず、地道な努力をしないとうまくいかない面もある。

 そして、大学受験の勉強では昨今、暗記の勉強の占める割合が少なくなってきている。

 数年前から「大学入試センター試験」は「大学入学共通テスト」に変わり、センター試験の時とは変わって「単純な暗記ではなく、思考力・判断力・表現力を問う問題」が課せられている。この試験に合格するための勉強は、丸暗記するのではなく、暗記は大雑把でも良いからむしろ本質的に理解することが求められている。

 ところがそれに対して、医学部の2年生からの勉強は「丸暗記」こそが求められる。そう考えると、確かに同じ「勉強」であっても、求められる能力が真逆になってしまっている面があるのかもしれない。その点において、高校までの勉強とは異なる分、医学部の勉強に合わない人もいるのだろう。

医学部は実際、大変なのか?

 だが実際のところ、医学部生の多くは、そんな「今までと違う勉強」にも効率的に対応できているようだ。今回話を聞いたSKくんは、次のように語ってくれた。

 「たしかに量も膨大だし、ひたすら詰め込むのが苦手な人にとっては大変かもしれません。でも、先輩からテストで出やすいところを教えてもらったり、効率良く勉強する術を教えてもらったりできるので、情報を集められる人は問題なく対応できるんじゃないかと思います。慶應義塾大学だと、やっぱり高校から上がってきた内部生たちはそういった情報戦が得意な印象がありますね。逆に、大学から慶應に入り、部活やサークルにも所属しないとなると、助け合いができないのでキツイかもしれません。」

 医学部では、部活やサークルを通じた人との繋がりが大事だというのは、漫画でも描かれていた。サークルに入らないと大学を辞めることになる、というシーンだ。

(c)三田紀房
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(c)三田紀房
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 テスト範囲のシェアや実習のスケジュールなど、ちょっとしたことから学びにダイレクトに関わることまで、部活やサークルの付き合いの中から学ぶ、ということだ。

 医学部における勉強は、単純な頭の良さではなく、人付き合いやコミュニケーション能力も求められるということだろう。仲間と協働して学ぶことができるかどうかも、大学での勉強と大きく関わっているのだ。

 さて、最後に医学部生たちに、「医学部は、高校生の時に想像していたよりも大変か?それとも楽か?」と聞いてみた。回答は、「楽」と答える人が圧倒的に多かった

 「高校生までのイメージだと、『勉強漬けの日々かな』と思っていました。でも正直な話、テスト前に頑張れば何とか乗り切れる部分は結構あって、要領が悪くなければ大丈夫だと思います。医学部に入ってからの方が大変、ということはないと思いますよ。」

 医学部生としての学生生活は、意外と“リア充”なのかもしれない。





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《西岡壱誠(カルペ・ディエム)》

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