AIがあれば勉強は不要?の誤解…これからの時代に重要な3つの力とは

 YPスイッチが展開する、プログラミング教育 HALLOは、プログラミングスキルに留まらない学びを提供している。国内外で13万8千人以上の子供たちの学びをサポートするやる気スイッチグループの教育メソッド・ノウハウをもつYPスイッチ社長の山下誠氏と、AI研究開発の第一線で活躍するPFN会長の西川徹氏に、AI時代に必要な力と、HALLOが育む学びの価値について聞いた。

教育・受験 小学生
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YPスイッチ社長 山下誠氏とPFN会長 西川徹氏
  • YPスイッチ社長 山下誠氏とPFN会長 西川徹氏
  • YPスイッチ社長 山下誠氏とPFN会長 西川徹氏
  • YPスイッチ社長 山下誠氏
  • Preferred Networks(PFN)会長 西川徹氏
  • YPスイッチ社長 山下誠氏とPFN会長 西川徹氏

 AIの活用が急速に広がる中、子供たちは何を学び、保護者はどのように寄り添えば良いのか。文部科学省は2026年7月、次期学習指導要領に向けて小学校「情報の領域(仮称)」、中学校「情報・技術科(仮称)」の創設を含む情報教育拡充案を示し、2028年度からの先行実施も検討している。

 やる気スイッチグループとPreferred Networks(PFN)の合弁会社である「YPスイッチ」が展開するプログラミング教育 HALLO(以下、HALLO)は、プログラミングスキルに留まらない、子供たちの人生を豊かにするための土台となる学びを提供している。国内外で13万8千人以上の子供たちの学びをサポートするやる気スイッチグループの教育メソッド・ノウハウをもつYPスイッチ社長の山下誠氏と、AI研究開発の第一線で活躍するPFN会長の西川徹氏に、AI時代に子供たちに必要なものについて聞いた。

AI時代に必要なのは、科学を理解し自分で考える力

--AI時代を生き抜くために必要なものは、何だとお考えですか。

西川氏:AI時代に限らず、テクノロジーの進化が速い時代には、科学を正しく理解する力が必要だと思います。AIは急速に進化してきましたが、誤りを完全に防げるわけではありません。だからこそ、AIが何を得意とし、どこに限界があるのかを理解することで、道具として正しく使いこなせるようになります。「AIを使って何を成し遂げたいのか」を、自分の中で明確にすることが重要です。

山下氏:AI時代に必要なのは、論理的かつ批判的に考える力だと思います。一言で言えば思考力ですが、その中でも、筋道を立てて考えることと、出てきた情報をそのまま受け入れずに考えることの両方が重要です。自分がのめり込めるものをもつこともAI時代だからこそ大切であり、同時に時代が変わっても変わらない本質だと感じています。自分にとって豊かな時間を過ごせたと思えることこそが、人間にとっていちばんの幸せではないでしょうか。そして、そのような人生を送るためには、物事に本気で向きあって没頭する時間が必要不可欠だと考えています。

情報活用能力は、これからの基礎教養になる

--文部科学省が示した情報教育拡充をどのように受け止めていますか。

山下氏:標準の総授業時間数を増やさない中で、情報の新しい領域を設ける方向が示されたことは興味深いことだと受け止めています。これは既存教科が軽視されるということではなく、これからの時代に情報活用能力が基礎的な素養になるということだと思います。情報活用能力やプログラミング、生成AIへの向きあい方を、国としても重要な課題として捉えているのでしょう。プログラミング教育を推進する立場から見ても、意義のある流れです。

西川氏:情報を学ぶことは、既存教科の学びを深める力になると思います。自分が実現したいことや学びたいことを言語化する力が身に付けば、AIを活用して関連分野へ学びを広げることが可能です。情報を学ぶことで、子供たちの学習効率や興味は大きく伸びていく可能性があります。

--家庭や民間教育にはどのような役割がありますか。

山下氏:情報教育拡充までの準備期間を考えると、指導者の育成や教材の整備など、懸念は多くあると思います。生成AIのリスクまで扱うなら、単に操作方法を教えるだけでは不十分です。だからこそ民間教育機関の価値は高まります。学校教育が間口を広げ、民間教育がひとりひとりの個性にあわせて、考え抜く力やクリエイティビティを発展的に伸ばす。その相乗効果が、子供たちの情報活用能力を底上げするのではないでしょうか。

西川氏:プログラミングを含む情報領域は、ものづくりにつながり、論理的思考力を向上させる、とても面白い分野です。しかし、指導にばらつきがあったり、宿題のように「やらされるもの」になってしまったりすると、せっかくの面白さが伝わりません。私たちがHALLOで活用する、プログラミング教材『Playgram(プレイグラム)』を開発した背景には、正しく、面白く、子供たちがはまっていける教材を作ろうという思いがありました。学校教育は学問との出会いの場所であり、その出会いから興味をもった子供のポテンシャルを引き上げるのが民間教育の役割だと考えています。

YPスイッチ社長 山下誠氏とPFN会長 西川徹氏

AIを避けるのではなく、親子で同じ目線に立つ

--AIの活用が急速に広がる中、家庭や教育現場ではどのような課題が生じているのでしょうか。

山下氏:子供がAIに相談して親に言い返したり、問題の答えをAIに求めて解答用紙に答えだけを書いたりすることは、もはや特別な例ではなくなっています。こうした使い方が広がると、自分で考えたり試行錯誤したりする機会が失われかねません。また、AIの判断をそのまま正しいものとして受け入れてしまう子供も出てきています。だからこそ、早い段階からAIとの適切な向きあい方を学ぶことが重要です。

西川氏:ゲームやスマートフォンと同じように、テクノロジーを完全に遠ざけようとしても、子供は抜け道を見つけます。もちろん、年齢にふさわしくないコンテンツを制限する仕組みは必要ですが、AIについては実際に使いながら、その特徴や限界を理解していくことも大切だと思います。大切なのは、「AIに何ができて、何ができないのか」を知ることです。AIは時に誤った情報を示すこともあります。そのため、AIの回答をそのまま信じるのではなく、本当に正しいのかを自分で考え、確かめる力が必要になります。

 同時に、AIだけでは得られない学びや感動に触れることも大切です。映画や音楽、読書、リアルな体験、人との交流は、子供たちの価値観や創造性を豊かにします。これからの時代も変わらず、現実世界での多様な経験を積む機会を意識的に作ることが重要だと考えています。

--保護者はどのように子供に寄り添えば良いのでしょうか。

山下氏:AIを避けるものとして捉えるのではなく、うまく付きあうものとして考え方を変える時期に来ていると思います。AIに直接答えを聞くのではなく、自分で考えたことを試す、壁打ちをする。そのように、子供が考えを深めるようすを、大人に見守ってほしいと思います。

西川氏:大切なのは、まず同じ目線に立つことだと思います。保護者自身もAIを使ってみることで、その長所や限界が見えてきますし、共通の理解をもって話ができるようになります。AIを禁止するかどうかではなく、親子で一緒に理解しながら使っていくことが大切です。

山下氏:AIは知的好奇心を刺激する強力なツールです。だからこそ、AIを学びや創造を支える道具として活用できるよう導くことが、大人や教育に関わる者の役割ではないでしょうか。

YPスイッチ社長 山下誠氏

AI時代にも、知識や言語を学ぶ意味は変わらない

--AIが文章作成や翻訳を支援するようになった今、知識や外国語を学ぶ意味はどこにありますか。

西川氏:AIはそれらしい翻訳をしてくれますが、ミスをすることもあります。また、細かなニュアンスや場の空気、表情を読みながら表現を変えることは、人間同士のコミュニケーションだからこそできることです。英語を学ぶことは、自分の世界を広げることにもつながります。AIは学びを支援するツールですが、自分の中に知識があることで、AIの結果をより深く解釈し、判断できます。

山下氏:AIは過去のデータ整理は得意ですが、ゼロから新しい価値を作ることはまだ苦手です。ここで生きてくるのが、自分で得た知識や、積み重ねてきた経験です。たとえば世界遺産をただ観るのと、その歴史を知った上で観るのでは感じ方が違うように、自分で蓄えた知識は体験をより豊かにします。また、そのリアルで豊かな体験は、知的好奇心や探究心の源泉になります。

--プログラミング教育は、その力を育むうえでどのような役割を果たすのでしょうか。

西川氏:プログラミングの世界では、AIが自動でコードを書くツールも広がっています。ただ、それを使いこなすには、プログラムがどう動いているのか、複雑なシステムをどう設計すべきかを理解している必要があります。AIは正しそうなものを作りますが、間違った方向に進むこともあります。おかしなところを指摘して、AIを正しい方向へ導くのは人間です。

 これからは、プログラミングがエンジニアだけの仕事ではなくなると思います。定型作業や事務作業を効率化する際にも、どのように自動化するのかを考えるプログラミング的な概念が必要になります。プログラミングは今後、読み書きや四則演算に近い、基礎的なスキルになっていくのではないでしょうか。

山下氏:プログラミング教育というと、コードを書くことを思い浮かべる方も多いと思います。HALLOでは、もちろん技術としてのプログラミングも学びますが、大切にしているのは、AI時代を生きるために自分で考える力、クリエイティビティ、自分の考えを言語化し伝える力です。プログラミング的思考力を伸ばし、論理的かつ批判的に考える力を身に付けることが重要です。そのため私たちは、コンピューターや情報処理の仕組み、理論からAIなどの応用技術までを体系的に学ぶ「コンピューターサイエンス」を土台として取り入れています。本質的な仕組みから理解することで、論理的かつ批判的な思考力を深く身に付けることができます。

Preferred Networks(PFN)会長 西川徹氏

HALLOが育む「考える力」「創る力」「伝える力」

--HALLOでは、単なるプログラミングスキルに留まらない学びをどのように提供しているのでしょうか。

山下氏:HALLOでは、PFNが開発したPlaygramという教材を使い、コードの書き方やプログラミングの技術を学びます。その過程で育む力を、次の3つに整理しています。

  • 1つ目はプログラミング的思考 ー 考える力

  • 2つ目はクリエイティビティ ー 0から1を創る力

  • 3つ目はプレゼンテーション ー 言語化し伝える力

 これらは、子供たちのこれからの人生を豊かにする土台になるものだと考えています。Playgramは、子供たちが夢中になってゲーム感覚で試行錯誤を繰り返すように設計された教材です。コーチは答えを教えるのではなく、子供がエラーに気付き、自分で直していけるように導きます。プログラミングはなかなか思いどおりに動かないことがありますが、そこで諦めず、動くまでやり直す経験を重ねることで、諦めない気持ちや検証する力につながります。

 また、レベルが上がると「クリエイトモード」というステージに進みますが、これは何もない場所に自分でお城を作ったり、ギミックをつけて遊園地のようにしたりして、自由な発想で世界を作っていきます。そこにはゼロから発想する楽しさ、それを再現する喜びがあります。

 さらにHALLOでは月1回、自分が作った作品について、工夫した点や作品への想いなどを友達の前で発表します。自分の気持ちや考えを整理して、自分の言葉で伝え、承認される場があることも特徴です。

西川氏:試行錯誤をする力と体力を幼少期から身に付けることは、非常に重要だと思います。プログラミングでは、不具合を修正するときも、作りたいゲームを形にするときも、試行錯誤が必要です。うまく動かない、違う方法を試す、を繰り返し、ついに動く。その瞬間を快感だと思えるようになるまでの体力は、これからの時代、ますます重要になると感じています。これは受験や研究にも通じます。難しい課題に向きあうとき、道を切り開くのは試行錯誤する力です。仮説を立て、検証し、間違っても諦めずに進む。その力を身に付けるうえで、プログラミングは大きな手段のひとつだと思います。

 Playgramで重視したのは、子供たちに楽しんでもらうことでした。私自身、プログラミングを始めた当初、コンピューターを使いこなせばいろいろな世界を作れるというワクワク感がありました。そのワクワク感を伝えたいという思いが、この教材の根底にあります。

山下氏:AI時代において、プログラミングは専門職だけのものではなく、社会を動かす仕組みを理解し、AIを道具として使いこなすための基礎になると考えています。HALLOは、子供たちが楽しみながらその世界に出会い、自分で考え、作り、伝える経験を重ねられる場です。

YPスイッチ社長 山下誠氏とPFN会長 西川徹氏
プログラミング教育 HALLO

 今回、強く印象に残ったのは、AIが学びや仕事を大きく支援する存在になっていく一方で、「何を作りたいのか」「どの情報を信じるのか」「どのように人に伝えるのか」を最終的に決めるのは人間だということだ。だからこそ、HALLOが育む「考える力」「創る力」「伝える力」は、単なるプログラミングスキルにとどまらず、子供たちがAI時代を主体的に生きるための土台になるのだろう。

《畑山望》

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