【MOOCs-1/3】一流大学の講義を無料受講できるMOOCsとは

 世界中の誰もが、インターネットにさえつながっていれば一流大学の講義を無料で受けられる、という学び手にとって夢のような学習環境が普及しはじめている。

教育ICT その他
Coursera
  • Coursera
  • Udacity
  • edX
◆MOOCsの例

・Coursera
 Coursera(コーセラ)は、大学と協同しオンライン講義をMOOCsとして公開する教育ベンチャー企業である。2013年8月時点で、世界80大学が400を超える大学レベルの学習コースを公開しており、受講者は400万人を超えている。学習コースは英語だけでなくスペイン語や中国語など多言語で提供されており、近い将来日本語も含めた多言語対応をすることも発表されている。

 Courseraは2012年にスタンフォード大学の教員であるダフニー・コラーとアンドリュー・ネグによって設立された。Coursera設立のきっかけとなったのは、ネグ教授が2011年にスタンフォード大学教員として開講したオンライン講座「Machine Learning」であった。この講座は10万人を超える受講者を集め、これをきっかけとして両教授はCourseraを設立した。

 CourseraはMOOCsを開講する大学と契約を交わし、大学から提供される教材や講義ビデオなどの教育コンテンツをMOOCsとして公開する。すなわち、Courseraは大学になりかわってオンライン講座を公開するMOOCsの「プロバイダー」のような役割を担っている。

 また、Courseraでは「シグネチャ・トラック」という本人認証を行ったうえで認定証を交付する学習コースを設けている。「シグネチャ・トラック」で得た認定証は、米国の大学単位推薦サービスが発行する「ACE Credit」に置き換えることで、全米2,000の大学の単位を取得することができる。

 Courseraは活動資金の多くをベンチャーキャピタルからの出資に頼っている。2013年7月までにCourseraは、複数のベンチャーキャピタルから6千万ドルを超える活動資金を提供されている。

・Udacity
 Udacity(ユーダシティー)は、大学レベルのMOOCsを公開する教育ベンチャー企業である。2013年8月時点で、合計28の学習コースを公開しており、世界203か国から受講者を集めている。UdacityはCourseraのような大学単位ではなく、個人の教員がコースを開講する。コースの中には人工知能によるロボットカーの制作のような、通常の大学では開かれないような特徴的な講座も開講されている。

 UdacityもCourseraと同じく、2012年にスタンフォード大学の教員であるセバスチャン・スラン教授らによって設立された。Udacity設立のきっかけとなったのは、スラン教授が2011年にスタンフォード大学教員として開講したオンライン講座「Artificial Intelligence」であった。この講座には16万人を超える受講者が集まり、これがUdacity設立のきっかけとなった。

 UdacityもCourseraと同じく、ベンチャーキャピタルからの出資を受けている。

・edX
 edX(エデックス)は、大学が自らオンライン講座をMOOCsとして公開する大学連合コンソーシアムである。2013年8月時点で、世界27の大学が学習コースを公開しており、受講者は100万人を超えている。edXは2012年にマサチューセッツ工科大学とハーバード大学が共同で6,000万ドルを出資し共同設立した。edXの加盟校はMOOCsを開講するプラットフォームを共同開発し、その一部をedX Codeという名称で、オープンソースで公開している。

・FutureLearn
 FutureLearn(フューチャーラーン)はedXと同様に、オンライン講座をMOOCsとして公開する英国オープン・ユニバーシティが所有する企業である。FutureLearnは2013年9月頃から英国やアイルランド、オーストラリアの大学によるオンライン講座を開講することを予定している。

 第2回では、誕生の経緯から発展の背景について紹介する。

【筆者プロフィール】重田勝介
 北海道大学情報基盤センターメディア教育研究部門准教授。大阪大学大学院卒(博士 人間科学)。東京大学助教、UCバークレー客員研究員を経て現職。研究分野は教育工学・オープンエデュケーション。大学によるオープンエデュケーション事業に携わりながら、教育のオープン化と大学教育の関わりと可能性についての研究を進めている。著書に「職場学習の探求」(日本生産性出版・共著)、「デジタル教材の教育学」(東京大学出版会・共著)など。
《重田勝介》

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