東京五輪も視野、千代田高等学院のグローバル・アスリート

 2020年の東京オリンピックに向け、アスリートたちは日夜汗を流している。こうした世界の大舞台でスポーツに取り組む高校生たちが、学業と練習を両立できるよう、ICTなどを活用した特別なカリキュラムで応援しようというのがGAコースの特徴だ。

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荒木貴之校長と吉田さ良らさん
  • 荒木貴之校長と吉田さ良らさん
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  • インタビューに応えるテコンドー選手の吉田さ良らさん
  • 荒木貴之校長
  • テコンドー選手の吉田さ良らさん
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  • テコンドーの練習風景
  • テコンドーの練習風景
 2016年4月、学校法人武蔵野大学と法人合併し、先駆的に高大接続を実現した千代田女学園が、2018年4月に大きく生まれ変わる。校名を「武蔵野大学附属千代田高等学院」と変更し、共学化するとともに、隣地には「千代田インターナショナルスクール東京」が開設される。

 千代田高等学院には、IB(国際バカロレア)・IQ(文理探究)・GA(グローバル・アスリート)・LA(リベラル・アーツ)・MS(メディカル・サイエンス)と5つのコースが設置されるが、これまで紹介したIBIQに続き、今回はGAコースを取り上げる。

 2020年の東京オリンピックに向け、アスリートたちは日夜汗を流している。こうした世界の大舞台でスポーツに取り組む高校生たちが、学業と練習を両立できるよう、ICTなどの活用や特別なカリキュラムで応援しようというのが本コースの特徴だ。

 荒木貴之校長と、現在千代田女学園高等学校の1年に在籍し、昨年7月のJOCジュニアオリンピックカップ全日本ジュニアテコンドー選手権大会中学生女子ー44kg級で3位に輝いた吉田さ良らさん(吉はつちよし)に話を聞いた。

◆スポーツを通じ国際的な友好と親善に貢献する人材を育成

 GAコースは、グローバル化の中で、世界共通の文化としてのスポーツの発展や、スポーツを通じた交流により世界の人々との相互理解や認識を高め、国際的な友好と親善に貢献する人材を育成する。定員は20名で、さまざまな競技において日本代表クラスで活躍するトップアスリートが対象だ。

 カリキュラムは、午前中に基本的な科目を履修し、午後は各自の競技種目の練習に励むことができるようになっている。国際的に活躍するため、スカイプ英会話などを使った英語によるコミュニケーション能力の向上、オンライン学習システムを活用した学習のフォローアップが特色だ。

 また、高大接続の一環として附属の武蔵野大学人間科学部と連携し、スポーツ心理学やコーチングについても学び、セカンドキャリアも視野に入れたキャリア育成を支援している。附属校としての大学への入学優先措置もあるという。

◆トップアスリートの存在は学校全体を活性化

 荒木校長は、GAコースを設ける意義を次のように語る。

 「私が大阪の追手門学院高校在職時、プロサッカーチームのユースやアメリカンフットボールの選手をお預かりしていたことがありました。彼らは国際大会にも出場し、自らが『日の丸を背負っている』という自負がありました。体育祭でも大活躍で、会場全体がおおいに湧きました。

 千代田女学園にもすでに吉田さんのようなテコンドーの選手や、全国大会で3位に入賞したソフトテニスやバトントワリング、クラシックバレエなどの第一線で活躍している生徒がいます。

 本校は国際バカロレアの候補校として、認定プロセスの途上にありますが、国際バカロレアが大切にしていることとして『多様性』があります。ハーバード大学のハワード・ガードナー教授は、人間には8つの知性があるという『多重知性理論』を提唱しています。8つの知性の中には、言語的、論理数学的、音楽的、身体運動的、空間的、対人的、内省的、博物学的知性がある、と。そう考えると、学校にはさまざまな知性が集まってこそ、集団知として育っていける。彼らのようなトップアスリートの存在は、学校全体を活性化させるのです。」

荒木貴之校長
荒木貴之校長


◆学業と練習の両立に奮闘するトップアスリート、吉田さ良らさん

 吉田さ良らさんは日本のジュニアでトップクラスのテコンドーの選手だ。テコンドーは韓国の国技だが、世界206か国に普及し、競技人口は7千万人を超える国際的な競技である。男子、女子の階級において、型(プムセ)と競技(キョルギ)を争う。2000年シドニーオリンピックより正式種目として実施され、岡本依子選手が67kg超級で銅メダルを獲得している。

 吉田さんがテコンドーを始めたのは「兄がやっているのを見て面白そうだったから」との理由で、その多彩な蹴り技に惹かれたという。2月に開催された「第1回 全国少年少女選抜 ジュニア選手権大会」では準優勝という成績を収めた。

 現在は学業と練習の両立に奮闘する日々だ。

 「夜の9時半まで練習があるので、勉強はできるだけ学校で集中するようにしています。さらに、学校外では細切れの時間に勉強するようにして、練習時間に集中できるようにしています。それでも定期試験の前日は練習を休ませてもらっています。」

 どのアスリートにとっても時間の自己管理が大きな課題だが、来春より新たに設置されるGAコースでは、こうした選手の悩みに応え、学業と練習の両立がしやすい仕組みを作っていく。

インタビューに応えるテコンドー選手の吉田さ良らさん
テコンドー選手の吉田さ良らさん


◆ICTフル活用で無理のない学修サポート

 「新しいGAコースのカリキュラムはとても魅力的です。午前中に学校が終わるので、道場へ行くまでに自主トレーニングの時間がたっぷり取れるのは本当にありがたいです」と吉田さんは語る。スポーツが盛んな学校でも、一般の生徒と同様に午後まで授業を受けなければならないケースが多く、午後を丸々練習時間に充てられるというカリキュラムは珍しい

 「まとまった練習時間を確保したいジュニアアスリートたちの中には、通信制の高校を選ぶ人も少なくないようですが、高校生には完全な自己管理は難しく、生活が乱れがちになるのが課題だと言われています。GAコースのカリキュラムは、規則正しい生活リズムの中で、学業とスポーツが両立できる点が秀逸だという声はさまざまな競技関係者から聞いています。」と荒木校長はGAコースの利点を語る。

 また、トップアスリートには、国内外問わず、遠征がつきものだ。千代田のGAコースではICTをフル活用する。

 「遠征で学校を留守にすることが多くなると思いますが、トップアスリートの場合、抜けた部分を補習で補うというわけにはいきません。補習に来てもらうことで練習や休息の時間を拘束することになり、かえって彼らを苦しめてしまうことになるからです。だからこそICTをフル活用したい。そこでiPadによる学修サポートです。Classi(クラッシー)というタブレットやスマートフォン向けの学習支援アプリを使って、遠征先などで空いた時間に自習してもらいます。Classiでは、その生徒が苦手な問題をAI(人工知能)で把握できるため、類題に多く取り組むことで弱点補強が可能です。できるだけ競技に集中してもらえるよう、アスリートたちが取り組みやすいカリキュラムにしていきたいですね。」

 GAコースの定員は20名と少人数なので、生徒一人ひとりの事情に合わせた、きめ細やかな対応が可能だ。

◆目標は「東京オリンピック出場」

 吉田さんの目標は「東京オリンピック出場」だ。

 「学校との両立の難しさもあり、これまでは練習時間が非常に限られていました。他のトップ選手に比べて圧倒的な練習不足です。私の目標は2020年の東京オリンピックに出場すること。テコンドーでオリンピックを目指すには、まずは日本一でなければなりません。これからもっと練習時間を増やして、しっかり体を作り、必ず日本一になりたいと思っています。」

 憧れの選手は、女子レスリングの吉田沙保里選手だ。吉田選手のように、心身ともに強靭でありたいという。そして目指すは、吉田選手のようにオリンピックでメダルを取ること。高い志のもと、今日も暑さが厳しい体育館でハードな練習に励んでいる。

 荒木校長は、吉田さんをはじめとしたGAコースに相応な生徒について次のように語る。「一流のアスリートは自分にストイック。練習に練習を重ねても、さらに自分の限界を越えようとするところ、そして、こうすれば自分がもっと強くなると自分自身をしっかりと俯瞰できているところに心から尊敬の念を覚えます。GAコースでは、そうした一流のアスリート同士が、競技の枠を超えてお互いに切磋琢磨してくれたらと思っています。また、他コースの生徒との交流の場もあるので、コースの枠を超えて多くの生徒たちの良い起爆剤になってほしいですね。全校あげて、オリンピックを目指すアスリートたちを応援したいと思っています。」

テコンドーの練習風景
テコンドーの練習風景


 千代田高等学院のように、5つもの多彩なコースを1つの高校に設置するという例は希少だ。一方、世界の教育の潮流はAdaptive(個別化)。つまり千代田高等学院は、日本はおろか世界の教育の最先端を走ろうとしている。ただし、実現しようとしていることは至ってシンプル。「生徒の長ける部分をとことん伸ばす」ーそれだけだ。生徒本位の教育を追求すれば、行き着くところはそこなのだ。

 「学校にはさまざまな知性が集まってこそ、集団知として育っていける」という荒木校長の信念のもと、Adaptive(個別化)とDiversity(多様性)の両輪で稼働する千代田高等学院の新たな環境は、生徒の潜在能力を最大限に引き出し、実り多い3年間をもたらすだろう。
《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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