「各都道府県に国立大学」学部は規模縮小を検討…国立大学協会

 国立大学協会は2018年1月26日、「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」を公表した。教育や研究、経営形態などの方向性や検討すべきモデルを提言し、その中で「全国各都道府県に国立大学を置く」という原則を堅持する考えを示した。

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 国立大学協会は2018年1月26日、「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」を公表した。教育や研究、経営形態などの方向性や検討すべきモデルを提言し、その中で「全国各都道府県に国立大学を置く」という原則を堅持する考えを示した。

 「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」では、高等教育の歴史と現状、高等教育を取り巻く社会構造の変化、世界の高等教育・学術研究動向の変化などとともに、将来の状況変化を踏まえた高等教育全体の在り方を考察し、国立大学の将来像について提言。

 国立大学の今後の使命とその実現のステップとして、今後少なくとも10数年後以降の将来(2030年ごろ)の日本と世界が直面する状況を把握したうえで、それまでに「国立大学の機能の最大化」と「将来に向けての準備」を進める必要性があるという。「国立大学の機能の最大化」とは、先進的な研究の高度化とイノベーション創出を牽引できる人材を育む教育の充実のこと。「将来に向けての準備」とは、留学生や社会人を含む多様な入学者の受入れ拡大、国立大学総体としての連携・協働、経営力の強化、国・地域・産業界などからの戦略的な投資の呼び込みなどを指している。

 国立大学の将来像については、「教育」「研究」「産学連携・地域連携」「国際展開」「規模および経営形態」「マネジメント」という6つの方向性を提示。たとえば「教育」では、教員養成課程において初等中等教育の教員養成の高度化に対応するため、広域エリア内での国公私を越えた連携・統合も含めて検討を行い、機能の強化・充実、教職大学院の拠点としての役割・機能の明確化を図ることを掲げている。

 「規模および経営形態」では、全都道府県に少なくとも1つの国立大学を設置するという、戦後の国立大学発足時の基本原則を堅持すると明記した。学部の規模については縮小を検討するが、進学率が低く、進学者の国立大学の占める割合が高い地域にあたっては、さらに進学率が低下しないよう配慮すべきと指摘している。

 1大学あたりの規模を拡大して経営基盤を強化するため、複数の大学を統合させるのではなく、全都道府県に国立大学(キャンパス)を維持しつつも、複数の地域にまたがって国立大学(キャンパス)間の資源配分・ 役割分担などを調整・決定する経営体導入を提案。機能的に重複して保有する資産については、整理・有効活用のほか、再配置を検討。広域的な視点から国立大学(キャンパス)の機能強化につなげる考え。

 多くの大学が有する附属病院や附属研究所に関しては、経営の独自性・自立性を高める観点から、国立大学法人から切り離して分社化するなど、独立した事業部門としての位置付けを明確化する方策を検討する。また、「マネジメント」でも、学長をはじめとする国立大学の将来の経営層を育成するシステムや研修プログラムを、国立大学共同で構築することを提案している。

 国立大学協会では、今後さらに改革の在り方などを検討し、具体的な方策案を含めたまとめを提言したいとコメントしている。「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」は、国立大学協会Webサイトにて公開されている。
《黄金崎綾乃》

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