寝る子は受かる!? 石田勝紀氏と枝川義邦氏に聞く学習効率と睡眠の関係

 ライズTOKYO主催の、眠りと学習に関するイベント「脳活すいみん課外授業」が開催された。乳幼児や小学生、受験生を持つお母さま方約50名が参加し、学力のみならず、子どもの将来にも大きな影響を及ぼす睡眠について、熱心に聞き入っていた。

教育・受験 小学生
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セミナーでは熱心に質問する参加者の姿も見られた
  • セミナーでは熱心に質問する参加者の姿も見られた
  • 教育デザインラボ代表理事の石田勝紀氏
  • 早稲田大学教授で脳科学者の枝川義邦氏
  • 挨拶するライズTOKYO代表取締役社長の宮崎誠司氏
  • 機能性寝具ブランド「RISE(ライズ)」の高反発マットレスの展示も行われ、参加者たちは自由に体験することができた
  • 質問する参加者
  • スイーツを楽しむ参加者たち
  • 受験直前の睡眠時間に関するライズTOKYOの調査
 東京都港区にて、ライズTOKYO主催の、学習と眠りに関するイベント「脳活すいみん課外授業」が開催された。

 イベントは、教育デザインラボ代表理事の石田勝紀氏と早稲田大学教授で脳科学者の枝川義邦氏によるトークショーで幕をあけた。小学生や中学生のお子さまを持つお母さま方約30名が参加し、学力のみならず、子どもの将来にも大きな影響を及ぼす睡眠について、熱心に聞き入っていた。

 会場では、質の高い睡眠をサポートするライズTOKYOが展開する機能性寝具ブランド「RISE(ライズ)」の高反発マットレスの展示も行われ、参加者たちは自由に体験することができた。

機能性寝具ブランド「RISE(ライズ)」の高反発マットレスの展示も行われ、参加者たちは自由に体験することができた

睡眠不足が与える負の影響とは



 「睡眠負債」という言葉をご存じだろうか。「2017年 ユーキャン新語・流行語大賞」でベスト10入りし話題になった睡眠負債とは、わずかな睡眠不足が借金のように日々蓄積されることにより、生活や仕事の質が低下してしまう状態のこと。さらにはうつ病や癌、認知症などの遠因ともなり、それが経済的にもマイナスの影響を及ぼすという。枝川氏によると、米国では10年以上前から睡眠負債(Sleep debt)が話題に取り上げられていて、同じく米国の調査機関によると、その経済損失は日本の場合、1年間で約15兆円と報告されている。

早稲田大学教授で脳科学者の枝川義邦氏
早稲田大学教授で脳科学者の枝川義邦氏

 「仕事や子育てなどで忙しいと、1時間くらい睡眠時間が減っても大したことはないと思い無理をしがち。たまに睡眠時間が短くなる程度なら、翌日早く寝るなどして挽回できますが、睡眠負債が恐ろしいのは、睡眠不足のダメージが蓄積し、ある一定限度を超えると、後戻りするのが難しいこと」と枝川氏。「睡眠は、貯金も一括返済もできません。日々コツコツと適正な睡眠時間を取ることが重要です」と説明する。

 子どもも例外ではなく、乳幼児期から学童期の睡眠不足は、学習・記憶力低下、情緒不安定、無気力、発達の遅れなどの可能性があり、将来の経済活動に影響を及ぼすとも考えられている。

優秀とは何か



 親ならだれでも、わが子に優秀な子どもに育ってほしいと願うだろう。ところで、「優秀」とはどういうことだろうか。仮に学力が高いことを優秀と言うのだとしたら、石田氏がこれまで指導してきた優秀な子どもは、「器用に何でもできる“マルチタスク型”と“一点集中型”に二分される」という。

 「マルチタスク型の子は物事を合理的に考える傾向があり、効率的な勉強法やスケジュールの立て方を教えるとうまく適応でき、学力も上がっていく。「一点集中型(シングルタスク型)」の子は、好き嫌いがはっきりしていて好きなことしかしない。このタイプの場合、まず好きなことをさせて気分を高めてから、苦手なこともするように導いていくことが大事」と石田氏。

 枝川氏は、「チャールズ・スピアマンという英国の心理学者は、人間が知的活動を行う際に共通して働く一般因子(g因子)というものを考えて、知識や技能を働かせるときの共通因子を説明しました。これは、今でいう『地頭』のようなものでしょうか。つまり、この因子が高い人は“優秀”ということになります。一方、ガートナーという米国の心理学者が唱える多重知能説では、言語的知能、空間的知能、論理的・数学的知能、音楽的知能、身体的・運動感覚的知能など知能は多様だと考えています。要するに、優秀さを測る物差しは一つではないわけで、案外これは重要なポイント」と指摘する。

 「つまり、“偏差値”や“学歴”といった狭い尺度で優秀かどうかをとらえる時代ではもうなくなってきているということ。自分が何をやりたいのかをもとに、 “その子らしい”進路選択をしたほうが、幸せな人生を送れるのではないか」と石田氏は言う。

睡眠と学力の関係



 睡眠不足と子どもの学力との関係についてはどうだろうか。

 石田氏は、学習塾の経営者として30年以上にわたり3,500人以上の児童生徒を指導してきた経験から「勉強ができる子はよく寝ている」と感じているという。「昔は『四当五落』、つまり4時間睡眠の人は合格し、5時間寝る人は不合格と言われたものですが、今はそういう根性論は通用しない。勉強は量より質。いかに効率よく勉強をし、睡眠時間を確保するかが大事です」と石田氏。

教育デザインラボ代表理事の石田勝紀氏
教育デザインラボ代表理事の石田勝紀氏

 これは数字でも証明されている。

 以下のグラフは、睡眠時間ごとの第一志望校の合格者・不合格者数(大学受験)を示している。これによると、合格者の平均睡眠時間は6時間10分、不合格者は5時間51分で、合格者の睡眠時間がやや長い。顕著な差がみられるのは、7時間~8時間未満。

受験直前の睡眠時間に関するライズTOKYOの調査
受験直前の睡眠時間に関するライズTOKYOの調査

 「適正睡眠時間は年代によって異なり、10代前半では9時間、10代後半で8時間、大人で6時間半から7時間半、高齢者は6時間程度と言われています。このグラフからは、適正時間しっかりと睡眠をとった子が合格に近づいたといえるでしょう」と枝川氏。

 また、「睡眠は、身体が欲する生理作用。寝ている間に成長ホルモンが分泌され、傷んだ細胞を修復します。また、脳がその日にインプットした情報を整理し、記憶として定着させる働きもある。せっかく勉強しても睡眠時間が短ければ、記憶を定着させにくくなってしまいます。受験は長期戦。しっかり睡眠をとって記憶を定着させて長期戦に備えてほしい」という。

ゲームは脳を疲れさせる



 石田氏によると、保護者からよく聞く悩みの一つに「子どもがゲームばかりする」というものがある。ゲームは睡眠時間を侵食するだけでなく、学習効率にも影響を及ぼす。

 ある大学の調査によると、せっかく勉強しても、その後1時間以上ゲームをすると、勉強したことがリセットされてしまうという結果が出ている。枝川氏によると「脳には、今覚えたことを一時的に記憶しておく場所がありますが、ゲームをすることで、その場所が一杯になってしまう。疲れたから気分転換にゲームをするという人がいますが、これでは脳には疲れがたまっていってしまう」のだという。

 疲れた脳で勉強をしても効率は上がらない。気分転換をしたいなら、短時間だけと決めてゲームをするのが賢明だ。

教育熱心な親ほど陥りやすい過ち



 子どもに勉強をしてほしいと思うのは親の常だが、教育熱心な親が陥りやすい過ちがあるという。キーワードは、「気合・努力・根性」だと石田氏。「塾に通わせ、家庭教師をつけ、気合と努力と根性でがんばれと親が叱咤して勉強させればある程度までは成績は上がる。しかし、本質的な学力は上がらない。また、自主的に勉強するわけではないので、塾や家庭教師をやめたらすぐ下がる。将来、子どもが自立したときに、自分で学び続ける力もつきません。親は、無理に勉強させるのではなく、楽しんで勉強できる方法を考えることが重要であり効果的です。実際に、これまで指導してきた“できる子ども”を振り返ってみると、ガリガリ勉強していた子はいません。勉強は量より質なのです」

 これは脳科学的にも裏付けられている。枝川氏は、「ごほうび(インセンティブ)を与えて、おしりをたたいてやらせる“飴と鞭”のやり方よりも『楽しいな』と思いながらやっているほうが脳の働きもいい」という。

質問する参加者

効果的な指導法とは



 石田氏は、これまでの指導経験から、「できない子には共通する生活習慣がある」という。ポイントは、(1)あいさつ、(2)時間を守る、(3)整理整頓の3つ。「このうち2つ以上ができない子は、例外なく勉強もできない。できない子には、まずこの3つができるよう指導すると驚くほど学力が上がっていきます」という。その理由は、「あいさつは、前向きさ、主体性につながる。時間を守ることは、勉強と遊びのメリハリをつけて時間管理ができるということにつながる。整理整頓は、プリントやノートを整理し体系的にまとめる力につながる。日常生活をどうマネジメントするかがすべて勉強に直結しているのです」(石田氏)

 睡眠も、生活習慣の一つとして、マネジメントすることが大事だ。

 「24時間をどうデザインするかがポイント。睡眠時間を8時間としたら残り16時間をどう過ごすか。もっと言えば、8時間深い眠りを得るために起きている時間をどうするかも考えないと、脳のパフォーマンスは上がらない」と枝川氏は語る。

 「人間は日の出から翌日の日の出までの24時間のリズムで生活しています。一部のバクテリアから動物、人間とすべて同じ。昼間の活動は夜の睡眠の質に影響を与え、睡眠の質は、昼間のパフォーマンスに影響を与える。表裏一体なのです」と枝川氏。長く眠ればよいわけではなく、睡眠の質も大事と続ける。

 「よい睡眠=時間×質と考えましょう。質のよい睡眠の準備には部屋は明るすぎないほうがよいので、蛍光灯よりは白熱灯のほうがいいでしょう。スマホは、コーヒー以上に脳を覚醒させてしまうので寝る1時間半から1時間前には使用を控える。お風呂も睡眠と関係しています。ぬるめのお風呂に長めに入ると体の深部の体温が上がる。これが下がるときに、自然な眠気が訪れます。眠っている間の環境も大事です。特に大事なのは湿度。湿度が高すぎると水分が体から出て行かないため体温が下がりにくく、自然な眠りを妨げます。寝返りは湿度調整の意味もあるので寝返りしやすいマットレスを選ぶといいでしょう。マットレスを選ぶなら、高反発のものが、体が沈みすぎず、寝返りが打ちやすいです」

 親がすべきことは、子どもに基本的な生活習慣をつけるとともに、規則正しい生活をさせ、時間になったら寝るよう促したり、質のよい睡眠を得るための環境を整えることといえるだろう。

質のよい睡眠を得るために



 睡眠不足のときは、昼寝が効果的。「眠いときに無理して勉強するよりも10分程度昼寝をするといい。ただし、30分以上眠ってしまうと、目覚めた後の認知機能はむしろ下がります。また、昼寝が長すぎたり夕方以降に昼寝をするのも夜の睡眠の質を落とすので、昼寝をするなら15時までがベストでしょう」と枝川氏。

 ところで、睡眠負債を抱えているかどうかはどのようにすればわかるのだろうか。枝川氏によると、(1)朝すっきり目覚められない、(2)お昼以前に眠くなることがある、(3)布団に入ると即、眠ってしまう場合は睡眠不足が疑われるとのこと。

 塾などでどうしても、週2~3回睡眠不足になる日があるという場合は、翌日早めに寝るなどしてバランスを取るといい。

 それでも睡眠時間がとれない場合は、特に睡眠の質を上げることも重要なポイントだ。たとえば、寝室の環境や寝具を整えることも考えてみよう。

学習と睡眠の関係のポイント



・子どもの学力向上には、基本的な生活習慣を整えることが大事
・睡眠不足は、子どもたちの将来にわたって悪影響を及ぼす可能性がある
・適正な睡眠時間を確保し効率よく勉強するために24時間をどうデザインするかが大事
・よい睡眠=時間×質
・睡眠の質には、寝室の環境や寝具選びも大切な要素

参加者の声



 自分の睡眠不足の悩み、お子さまの睡眠の影響への疑問など、今回のセミナー参加者の思いはさまざま。参加者にセミナーに興味をもったきっかけや感想を聞いた。

我が子に時間のメリハリがないのが悩み



 小5の受験生がいます。時間のメリハリがないのが悩み。昼間ダラダラして睡眠時間は短い。少しキレやすいところがあるのも気になっていました。睡眠の大切さを聞いて、生活リズムをつけること、質のいい睡眠をとることが大事というお話が印象に残りました。(足立区)

睡眠が子どもにどのような影響を与えるのか知りたい



 3歳の息子がいます。幼児期からの睡眠が大事とは聞いていました。将来息子が小学校に入ったり受験期を迎えたときに、睡眠がどのように影響を与えるのか知りたいと思って参加しました。睡眠の大切さがエビデンスも交えて確認できたのでよかったです。(大田区)

自分の睡眠の質がよくない



 小学校2年の息子と4歳の娘がいます。自分の睡眠の質がよくないと思っていたのと、子どもにはどんな影響があるのか知りたくてきました。3大生活習慣の話は大変ためになりました。今まで当たり前に思っていた「眠る」ということについて、親としてきちんと子どもに注意していかないといけないとわかりました。(港区)

スイーツを楽しむ参加者たち

ライズ(RISE)が取り組む健康睡眠プロジェクト



健康睡眠ライズとは



 日本人の睡眠時間は世界ワースト2位(OECD 2009年調べ)。子どもの睡眠不足も深刻だ。ライズは「質のよい睡眠」のために、2016年に「健康睡眠プロジェクト」をスタート。「健康寝具・マットレスは高額」「寝具は一生もの」「柔らかく体を包み込むのがよい寝具」などのこれまでの寝具の常識を覆し、「良い寝具を正しい価格で」提供し、すべての人を幸せにする健康睡眠文化を提言している。

ライズのマットレスとは



 人は眠っている間に体を動かすことで、血流やリンパの流れを促したり、寝具と身体の温度調節を行ったりする。この「動的睡眠」を実現し、良質な睡眠をもたらすのがライズの高反発のマットレスだ。ライズの製品詳細はこちら。

石田勝紀氏、枝川義邦氏と宮崎誠司社長
石田勝紀氏、枝川義邦氏と宮崎誠司社長

<提供:ライズTOKYO>
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

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