首都圏模試に聞く【中学受験2019】変化する学校選びの観点

 大手中学受験塾、受験情報誌編集長などを歴任し現在は首都圏模試の主催に携わる、首都圏模試センターの北一成氏に2019年の志願動向や注目の新設校、多様化する中学入試の現状について聞いた。

教育・受験 小学生
首都圏模試センター取締役教務部長の北一成氏
  • 首都圏模試センター取締役教務部長の北一成氏
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 四谷大塚、日能研、サピックス、そして首都圏模試が中学受験における“4大模試”とよばれている。なかでも、首都圏の受験者が多くを占め、幅広い層の実力を測ることができるのが首都圏模試である。大手中学受験塾、受験情報誌編集長などを歴任し現在は首都圏模試の主催に携わる、首都圏模試センター取締役教務部長の北一成氏に2019年の志願動向や注目の新設校、多様化する中学入試の現状について聞いた。

転機を迎えつつある中学受験



--近年、中学受験をとりまく価値観が変化しているといいますが、それはどういったことでしょうか。

 ここ10年近く、小学生の学習スタイルが2極化しているという印象があります。新4年生から大手塾に通って難関校を目指す子どもは増えていますが、全体としては塾通いをしている子どもの人数は減っています。背景には、英会話やスポーツ、プログラミングや音楽など小学生の「習い事市場」が拡大し、いわゆる“受験塾通い”から習い事などに重きをおく家庭が増えているといった傾向があります。

 教育をめぐる価値観に分断が見られる、そう分析しているのですが、リーマンショックや大震災を経てから親となった世代には「有名な中高、大学に行って有名企業に入っても何ら保証されない時代がきている」と従来の偏差値偏向型の教育に疑問をもつ方が増えてきています。週4日、5日と塾に通って小学校生活を受験勉強に費やすより、習い事などの経験や家族の時間などを重視し、偏差値ではないところで、我が子にとって最適な学校を選びたいと考える家庭が目立ち始め、そういった若い世代の保護者の価値観、志向の変化を反映した新たな教育・学校がここ数年の間で続々と登場しています。

--2018年度の中学入試のトピックスと、それらを踏まえた2019年の志願動向、出題傾向を教えてください。

 まず1つ目にいえるのは、塾通いをする小学生が減っている一方で、最難関から難関校を目指す受験者は依然として増加していることです。サピックスや早稲田アカデミーなどの進学塾で2~3年かけて4教科を勉強してきた上位生の多くが、高い目標に向けてチャレンジした結果、開成や女子学院、桜陰、栄光学園、慶應普通部、早稲田高等学院などの最難関校を強気で志願しています。来年もこの傾向は引き継がれると見ています。

 2つ目は、ここ数年、盛んにいわれていますが、有名大学の付属校人気ですね。慶應義塾や早稲田を筆頭にGMARCHに加えて、2018年に関しては日本大学、東海大学、東洋大学の付属校のいくつかも、人気を高めました。大学入試改革を2年後に控え、6年後の大学入試にとらわれることのない大学付属校を好む傾向に加えて、アクティブラーニングやICT教育、高大接続などの思い切った取組みが評価を高めています。

 3つ目は、出題内容そのものの変化。「考える力」「自分の言葉で表現する力」などが問われるような出題が増えています。ここにも2020年以降の大学入試の方向性が反映し、従来の4教科や2教科の入試問題のなかに「思考力」「表現力」「判断力」を問う問題を意図的に入れてくるケースが増加しています。麻布や武蔵、栄光学園などの難関校では今までもこういった出題はありましたが、海城、慶應中等部をはじめ、多くの難関~中堅の難易度の私立中でも「考える力、自分の言葉で表現する力」が問われる問題が見られ、2019年度もその傾向は続くと予想しています。今春2018年入試の開成の国語では、大設問まるまる1題が、公立中高一貫校の適性検査と似た形式の出題であったことは大きな話題となりました。

 また、私立の入試問題においても公立中高一貫校の適性検査問題と共通する、「その場で考え、表現する力」を問うタイプの、「適性検査型入試」「総合型入試」「記述・論述型入試」「思考力入試」「自己アピール(プレゼンテーション型)入試」といった、いわゆる「新タイプ入試」を取り入れる学校が前年の120校から136校に増加しているということも見逃せません。これらで問われる思考力や自己アピール力は、今後の大学入試で求められる力を中学入試において先取りしているともいわれています。

偏差値にとらわれない、さまざまな評価軸へ



--適性検査型入試のほか、思考力型やプレゼン型、教科をまたいだ合科型など、新タイプ入試は今後増えていくのでしょうか。

 大学入試改革でも、その先の社会で求められる力においても、詰め込まれた知識ではなく思考力や表現力が鍵を握ることは間違いありません。中学受験においても、従来の4教科のペーパーテストで測る学力とは違う物差しで子どもたちの多彩な資質を測ってもいいのではないか、という「新たな評価軸」をもつ学校が増えています。

 ペーパーテストではなくアクティブラーニング型の入試を導入する学校も増えつつあり、英語を使ったワークショップ形式で進められる共立女子の「英語インタラクティブ入試」、宝仙理数インターの「リベラルアーツ(プレゼン型)入試」、レゴブロックを使った聖学院の「思考力ものづくり入試」などが話題になりました。こういった適性検査型入試、思考力入試、記述型入試、自己アピール入試、プログラミング入試、得意科目選択型入試など、4教科、2教科以外のさまざまな入試スタイルの実施校については2019年度も要注目です。

--新タイプ入試を実施する、学校側の目的とはどんなものでしょうか。

 学校側の狙いとしては、こういった思考力型の入試においては知識量や正確さが問われることが中心ではなくなるため、塾にしっかり通った子どもというフィルターを外して、与えられた課題についてその場で考え、自分の言葉で表現する力がある子を判別することができます。そうして入学してくる生徒たちの素質や能力を、さらに中高6年間で伸ばしていくような教育を目指すといった意義もあるでしょう。もちろん、従来の4教科の勉強で力を発揮することが得意な子も大勢います。そういった意味では、子どもの得意分野や、家庭の価値観・教育観に応じた入試・学校選びができる時代になってきていると思います。

増える午後入試と算数入試



 昨年に見られたひとつの大きな動きが、男女ともに人気校が「午後入試の新設」に踏み切ったことでしょう。2019年も、香蘭女学校が2日の午後入試を新設、普連土学園、昇華学園、山脇学園などが2月1日の午後入試を新設予定です。

 また、世田谷学園、巣鴨が2月1日午後に算数入試を新設。1月校の埼玉栄東が同じく算数入試を新設することを公表しており、人気を集めることが予想されています。東大に10数人の合格者を出すような実績のある上位校がこういった午後入試や単科型入試を取り入れることによって、中堅校などもその流れに続く傾向があります。今後も午後入試や単科型入試は増え続けるでしょうね。

首都圏模試センター取締役教務部長の北一成氏
首都圏模試センター取締役教務部長の北一成氏

21世紀型へと変わっていく学校選びの観点



--保護者の教育観の変化にともない、新しい教育スタイルの学校が増えているといいます。2019年の新設校で注目している学校とその理由を教えてください。

 偏差値にとらわれない新しい価値観のもと、「21世紀型教育」「グローバル教育」など世界標準ともいえる新たな教育を標榜する学校が注目を集めています。

 来春2019年の新設校であり、ユニークな「dots〈原体験〉教育」という新たなコンセプトを展開する埼玉の細田学園、ニューヨークで生まれた教育メソッド「ドルトンプラン」を実践する日本で唯一の中高一貫校として開校するドルトン東京学園などが注目されています。

 また、箕面高校で海外大学への進学実績を跳躍させた実績をもつ日野田直彦校長が就任し、グローバル&サイエンスを掲げて海外大学への進学を目指し2019年より中学が共学化する武蔵野大学中学校、2019年から日本大学の準付属校となり、2022年には「SGH(スーパーグローバルハイスクール)」と「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」にダブル申請をする予定の目黒日大の注目が高まっています。また、首都圏の公立中高一貫校としては初めての「IB(国際バカロレア)スクール」として新設されるさいたま市立大宮国際中等教育学校なども注目ですね。

 もちろん、新設校以外でグローバル教育に力を入れている人気校が多数あります。世界50か国の私学180校が所属している国際私学連盟「ラウンドスクエア」に加盟している八雲学園、模擬国連などの国際的な活動が目立つ洗足学園、全教科でアクティブラーニングを進める三田国際学園などの期待校が人気を高めていますし、すでに難関に位置する広尾学園、渋谷教育学園渋谷、渋谷教育学園幕張、市川などの名が人気校としてあがっています。また、一歩先を行く理数系教育(=STEAM教育)で人気なのは豊洲に移転した芝浦工業大学中高、三田国際学園、宝仙理数インター、先進特待コースを設けている安田学園などですね。

中学受験生の学力は入試直前まで伸びる



--模試の効果的な活用法について教えてください。

 勘違いしないでほしいのが、模試そのもので点数をとることが目的ではありません。あくまで模試は、目標までの距離や自分にとっての課題、ここまではできたという到達点や、自分の強みや弱点を知るためのもの。首都圏模試では、中学入試でポピュラーな問題を幅広い難易度で出題しているので、テストの結果を見て自分が解けなかった問題を、再度解き直しをすることが力になります。保護者も、模試の判定で「志望校に届いていないじゃない」と思うのではなく、「第2志望までは合格判定だけど、第1志望に届くには、今回得点できていなかったこの分野を頑張ろう」というように子どもがこれから伸びていくためのプラスの材料として模試を活用してほしいと思っています。

 また、継続して受けることで、自分がどこの位置にいるかということがわかりますし、違ったタイプの問題にも触れることができます。

--6年生は入試に向けてラストスパートの時期に入ります。これからの過ごし方についてアドバイスをお願いします。

 夏期講習が終わり9月に入って過去問に取り組み始めた方も多いと思いますが、始めから過去問がスラスラ解ける子はまずいませんし、もっと言えば12月になって解けていなくても焦ることはありません。なぜなら、受験生の学力は入試直前まで伸び続けるからです。埼玉など1月入試校を受けてようやく入試本番の緊張感に触れ、「これは2月1日まで頑張らないとヤバイ」と残りの3週間でスイッチが入り、大きく実力を伸ばした子も大勢見てきました。特に、男の子は精神的に幼い面もありますから、友達が本気になったのを身近で感じたり、入試を経験した緊張感をバネに、自分もスパートをかけるケースなど、最後の追い込みで底力を見せる子どもがいます。そうしたわが子の可能性を最後まで信じてほしいですね。

 この時期の保護者の役目は、ひたすら子どもの応援をしてあげることです。それから、1校や2校落ちても当たり前だと思うこと。そのためには複数の併願校を準備して、ドーンと構える気持ちが大切です。体調面と精神面は母親がよくわかっていると思いますので、あまり動揺しないで寄り添ってあげてほしいですね。また、落ちて悶々としてどうしていいかわからないときこそ、塾の先生を頼ってほしいと思います。電話したり、訪ねて行って1問だけでも問題を解いたり、適切な助言を聞くことで気持ちを切り替えることができます。

 私は、不合格になる経験と合格する経験、どちらもしたほうがいいと思っています。たとえ不合格になっても、悔しさを今後の糧にすることができます。「自分はここまできたけど、まだ先の目標がある」というように、成果と目標の差を知ることも成長につながるでしょう。入学した学校がその子にとっての一流校なんだということを忘れないでほしいと思っています。

--ありがとうございました。

 大学進学実績や偏差値でランク分けされる志望校選びに疑問を持ち始めている保護者が増え、新たな教育スタイルの学校に価値を見出し始めているという。様変わりする中学入試、日本の教育・大学入試の変遷期に直面するなかで、入試タイプや志望校の選択肢もますます増えていくことになるだろう。個々の家庭の教育観を見つめ直し、子どもの個性や得意分野を見極めることの大切さを改めて感じた。
《吉野清美》

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