ネット依存、治療キャンプ参加前後で生活習慣など改善

 国立青少年教育振興機構は、「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」報告書をWebサイトに公表した。ネット依存対策の治療キャンプ参加前後では、生活習慣やインターネット・ゲーム依存度などに改善がみられたという。

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「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」報告書
  • 「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」報告書
  • 生活習慣等に関する調査結果のポイント
 国立青少年教育振興機構は、「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」報告書をWebサイトに公表した。ネット依存対策の治療キャンプ参加前後では、生活習慣やインターネット・ゲーム依存度などに改善がみられたという。

 近年、スマートフォンなど情報機器の普及に伴い、インターネットの長時間利用による生活習慣の乱れなどが指摘され、いわゆる「ネット依存」への対応が求められている。

 国立青少年教育振興機構は、2014年度(平成26年度)から2019年度(令和元年度)に文部科学省の委託を受けて、ネット依存またはネット依存傾向の13~22歳の男子16人を対象に8泊9日の宿泊体験事業(本キャンプ)を実施し、モデルプログラムの開発を進めるとともに、事業前後の参加者の変容について検証した。本キャンプ後には、2泊3日のフォローアップキャンプも実施している。

 「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」では、国立青少年教育振興機構と国立病院機構久里浜医療センターが連携。教育と医療の融合により、治療としてだけでなく、教育的視点も取り入れた体験活動プログラムを取り入れている。

 「生活習慣等に関する調査」では、国立青少年教育振興機構が実施した「子どもの生活力に関する実態調査」(2015年)で抽出された5因子23項目からなる生活スキル「コミュニケーションスキル」「礼儀・マナースキル」「家事・暮らしスキル」「健康管理スキル」「課題解決スキル」と生活習慣の変容(起床時間と就寝時間)について検証した。

 事業前と事業3か月後を比較すると、コミュニケーションスキルは0.38ポイント、家事・暮らしスキルは0.46ポイント、健康管理スキルは0.34ポイント上昇した。特に「毎朝、朝食を食べる」は0.74ポイント、「初めて会った人に自分から話しかける」は0.65ポイントの増加となった。

 アンケートによると、参加者からは「学校に行く回数が増えた」「ゲーム以外の楽しみが増えた(外に出るようになった)」「夜早く寝るようになり、朝早く起きれるようになった」などの声があったという。

 「インターネット・ゲーム依存者に対する治療キャンプの効果」に関する研究では、本キャンプとフォローアップキャンプの両方に参加した10人を統計の対象とした。本キャンプ前とフォローアップキャンプ前を比較すると、インターネット・ゲーム依存度を示す指標は改善傾向にあり、自己効力感を示す指標も向上していた。

 インターネット依存度の低下については、キャンプというインターネットやゲームといった電子デバイスから離れた環境に置かれたために依存度が改善し、それが一定期間の有効性をみたと分析。認知行動療法などの心理療法、メンターやほかの参加者らとの交流やそれらを通した自己洞察、キャンプならではのアクティビティや共同生活なども複合的に作用した結果と考えられるという。

 調査結果を受けて、報告書では「日本全国にはまだ多くのインターネット・ゲーム依存に悩む青少年や家族が多い。今後このような取組みが広がっていくことが望ましい」などと考察している。
《奥山直美》

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