【大学受験2023】3回目の共通テスト、易化を期待せず予想問題の活用を…駿台

 大学入学共通テストまで1か月を切った。本番までどう過ごせば良いのか。過去2回の振り返りと2023年度の出題予想を駿台予備学校市谷校舎・校舎責任者の細谷一史氏に話を聞いた。

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大学入学共通テストまでにあと1か月を切った
  • 大学入学共通テストまでにあと1か月を切った
  • 易化に期待するな…ともすれば英語難化の可能性も?
  • 取材に応じてくれた駿台予備学校市谷校舎・校舎責任者の細谷一史氏

 大学入学共通テスト(以下、共通テスト)までいよいよあと1か月。前回2022年度は平均点が大幅にダウンしたが、今回もまだ3回目。傾向や難易度が定まらず、対策が立てにくいと感じている受験生は多いだろう。

 果たして本番までどう乗り切れば良いのか。駿台予備学校市谷校舎・校舎責任者の細谷一史氏に話を聞いた。

ボリュームのある問題を正確に読み解く力

--初めに、共通テストの受験者数はどのような推移をたどっているか教えてください。

 2018年度のセンター試験では58万人以上いた受験生が、2022年度の第2回共通テストでは53万人となり、5年連続で減少しています。

 少子化の影響は大きいものの、センター試験から共通テストに切り替わるタイミングでちょうど高卒生(浪人生)が激減したことや、一般入試を待たずに推薦入試で進学先を決めるケースが増えていることも大きな要因でしょう。

 2023年度も、志願者数は昨年比3.4%減少し、受験者は年々減ってきているというのが現状です。ただし医学部医学科(以降、医学部)受験者に関して言うと、模試の動向から、高卒生はほとんど減っておらず、現役生からの人気も高い傾向が見られます。医学部受験の場合、共通テストを受験する割合も高いので、医学部に限ると、志願者は引き続き多い状況だと言えます。

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--共通テスト全体では志願者が減っている一方で、医学部だけは堅調に推移しているということですね。では、気になる出題の傾向について。第2回となる2022年度の試験は数学の平均点の大幅ダウンで波紋を呼びました。まず2022年度の試験について振り返っていただけますか。

 共通テストに切り替わって2回目となる試験でしたが、センター試験のときから問題の形式が大きく変わったこと、中でも分量が増えたことが特徴的でした。

 特に、大きく平均点を下げた数学に関しては、試験時間が長くなったこともあり、問題のページ数がぐっと増えています。具体的には2020年度の最後のセンター試験では数IAが18ページ、数IIBが14ページだったのが、2022年度ではそれぞれ23ページ、24ページに増えています。つまりセンター試験と比べて、時間内で正確に問題を読み解く力、読解力を求められていると言えます。

 英語に関しても同様で、センター試験で出題されていた発音・アクセントの問題と文法問題がなくなった分、共通テストでは読解問題の量が増えています。とりわけ共通テスト2回目は、1回目よりもさらに単語数が増えています。英語でも多くの情報を素早く正確に読み取る力が求められていることがわかります。

--問題の形式が大きく変わったことに加えて、難易度自体も上がったと言われていますが、これについてはどのように分析されていますか。

 確かに難易度もかなり上がっています。

センター試験では、全体の平均点が下がっても、東大・京大・医学部受験者は高得点を維持し続けられているという二極化が見られましたが、2022年度は受験者全体を見ても満遍なく平均点が下がりました。どの立ち位置にいても得点しにくく、ずいぶん難しかったと見ています。

 平均点が大幅に下がった主な要因としては、先ほどお話ししたように問題の形式が変わったことと、難易度自体が上がったことの両面が影響したと考えています。

取材に応じてくれた駿台予備学校市谷校舎・校舎責任者の細谷一史氏

易化を期待せず、過去2回をスタンダードに

--3回目となる2023年度の共通テストはどのようになるとみていらっしゃいますか。

 「2022年度があれだけ難しかったから2023年度は平均点も上がるだろう」と楽観的な予想をするのは少々危険です。というのも、共通一次試験、センター試験共に、開始から2年目、3年目と続けて平均点が下がっているのです。

 さらに2022年度は数学のインパクトが大きく「平均点が大きく下がった」と話題になりました。決して全科目が一斉に難化したというわけではありません。実は英語の平均点は上がっています。逆に、2023年度は英語が難化する可能性もあるのです。そう考えると、共通テスト全体として来年また平均点が下がったとしてもおかしくはありません。

 難易度としては、センター試験とはまったく別物としてとらえ、過去2回の共通テストをスタンダードとして考えていくべきでしょう。センター試験の過去問ができたからといって、それが共通テストで使える力かどうかは別問題です。

--模試のデータから見える人気の学部等、最新の動向を教えてください。

 模試の動向を見ると、厳しい経済環境下の志望動向が明確に出ています。

 コロナ前に「景気が良い」と言われていたころは文系の人気が高かったのですが、コロナ禍に入ってここ2年くらいは「文低理高」です。

--「手に職」を求める傾向ということですね。

 おっしゃる通りです。資格に直結する系統の人気が高く、その最たるものが医学部・薬学部です。

 また、理系の新しいトレンドでいえば、中学高校の探究型学習のテーマに選ばれやすく、ニュースでもよく取り上げられるSDGs系の領域に人気が集まっています。これまで農・水産系はあまり人気がなかった分野ですが、ウクライナ侵攻での食料品の価格高騰や、近年の環境・資源・食の問題により、注目が集まるようになりました。

 日本は少子化の一途でも、世界の人口は80億人を突破し、世界規模ではその人口をしっかりまかなっていくことが非常に大きな課題です。農・水産系の領域は、まだまだ未解決の問題が多く、探究型学習や日ごろ目にするニュースを通じて、そこに夢ややりがいを感じて志望する受験生が増えているということでしょう。

 もちろん、社会では一層DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいきますので、AIやICT等の情報通信関連系も数年前から堅調な人気が続いています。

 中でも今年、目を引くのが、ソーシャル・データサイエンス学部を新設する一橋大学です。ベネッセコーポレーションと共同で実施している「駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試」でも非常に人気で高偏差値となっています。一橋大学というと、文系に括られるイメージがありましたが、今後はこうして文理の枠を超え、優秀な人材を獲得したいと考える大学が増えていくでしょう。

--地方の国公立はどのような傾向でしょうか。

 日本の景気減退やコロナ禍の影響もあり、地元志向は強まっています。少子化の影響で子供の数が減り、地元に残ってほしいと望む保護者が増えているのも間違いないと思います。地方の学力上位層が、東大・京大ではなく、地元の国公立大学医学部に進むという傾向も継続していますね。

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共通テスト利用入試で、時間と労力を節約…受験機会を創出

--共通テスト利用入試についてお伺いします。共通テストを利用する大学数の推移とその背景を教えてください。

 共通テストを利用する大学は増加傾向です。

 1校ずつわざわざ入試を受けに行かなくても、出願時に共通テストの結果を送るという簡単な手続きだけで複数の大学をまとめて受験できるため、受験生にとっては時間と労力の節約になります。

 また、共通テストは日本全国に試験会場があるので、特に都市部の私立大学を受験することが距離的に不利な受験生にとって、受験機会が増えることになります。大学側からしても、受験生を全国各地から獲得できるというメリットがあるので、増加傾向にあるのはそういった背景からでしょう。

 医学部はまだ他の学部学科に比べれば共通テストを利用する大学は少ないですが、こうした観点からも今後は増えていくかもしれません。

--共通テスト利用入試だと受験料も安く済みますし、活用することで得られる恩恵は大きいですね。一方でデメリットはあるのでしょうか。

 特にデメリットは考えられません。ただ、強いて挙げれば、私立大学の専願者はわざわざ共通テストの対策をしなければならないので、その分負担が増えるということでしょうか。

--共通テスト利用入試を活用したほうが良いのは、どんな受験生ですか。

 単純に共通テストという試験との“相性”が良い受験生だと思います。たとえば記述形式は苦手だが、マーク式が得意という場合は共通テストに向いています。お話ししてきたように、共通テストの出題内容も特徴のあるものになってきていて、公式や知識の丸暗記だけでは太刀打ちできない出題が増えています。向き不向きが分かれるところだと思いますので、対策は入念に行う必要があります。

--共通テストの直前対策についてお聞きします。いよいよあと1か月ほどですが、どのような学習を進めていけば良いでしょうか。

 直前1か月となると、全科目「すべての時間を共通テストに振り切らなくては」と思うかもしれませんが、そんな必要はまったくありません。むしろ現役生は理科・地歴公民に関しては、まだ完成していない人も多いと思うので、手をつけていない範囲や不安な分野を着実に固めてください。その方が確実に本番での得点力は上がります。

 また、理系の人は2次試験に数学IIIが出題されますので、共通テストがあるからといって1か月間まったく数学IIIに触れないのは危険です。さらに私立大学の医学部を受ける場合は、共通テストの2日後から2次試験が始まるところもありますので、12月中に過去問をやっておかないといけません。

 年内の学習としては、数学(共通テストは数学IA・数学IIBのみ)や英語等、早めに始められるものから着手しつつ、弱点の補強や数学III、私立の過去問対策を、自分自身の仕上がり具合に合わせてスケジューリングしていくことが大切です。

 年が明けたら、本番までの約2週間をすべて共通テスト対策に充てるのは大いに有効です。共通テストは私立大学の個別試験、国公立大学の2次試験とはまったく傾向が違うので、必ず対策をしたうえで受験するようにしましょう。

--具体的に「対策する」と言っても、共通テストは過去問がまだ2年分しかありません。先ほど、共通テストはセンター試験とは形式も難易度も異なるというお話でしたので、センター試験の過去問ではなく、別の問題集を参考にすべきですね。

 駿台でも作成していますが、各予備校が作成している予想問題集に取り組んでみるのが良いですね。取り組んだ結果、苦手な分野が見つかったら、その単元を念入りに補強しつつ、間違ったところはとにかく繰り返し解くという復習方法が効果的だと思います。

12月模試をきっかけに「最後に一段階ギアを上げる」

--特に現役生の12月時点では、いくら学力が高い人でも共通テストタイプの問題にまだ慣れていないために、志望校の合格に必要なレベルまで得点できないというケースが多いと聞きます。

 はい、12月実施の「駿台atama+プレ共通テスト」模試でも思った以上に得点できず、落ち込んでしまう現役生は毎年とても多いです。

 でもその受験生にとって最後の模試だからこそ、作成者である講師たちは、あえて受験生がつまずきやすいところを意識して出題しています。この模試で間違ったところをできるようにすれば、それだけで2点、3点と確実に積み上がっていきます。ただ暗記すれば良かったという軽微な間違いもまだあるはずです。それに気づき、共通テストに向けて一段階ギアを上げるというのが、12月に模試を受けることの意義です。

 こうした2点、3点が合否に直結しますので、間違ったところから今の自分に何が足りないかを分析し、きっちり修正して復習していくこと。それが合格までの流れをつくるうえでの非常に大事なプロセスなのです。最後まで詰めていきましょう。

--「落ち込まず、間違いを少しでも次の得点に」という貪欲さですね。いよいよ1か月後には共通テストを皮切りに大学入試が本格的にスタートします。受験生へのメッセージをお願いします。

 これは冗談のような奇跡のような話ですが、12月の最後の模試から共通テスト本番までに3桁も点数を伸ばす受験生が、実は結構いるのです。「200点アップなんてありえない」と思うかもしれませんが、毎年起きています。

 そういう受験生に共通するのは、もう自分はダメだとネガティブになったり、自分で勝手に上限を決めて諦めてしまったりというようなことを絶対にしないところ。最後の1か月、「自分はここから頑張るんだ」というメンタリティが大切です。最後まで決して諦めず、勉強したら勉強しただけ伸びるという気持ちで、粘り強く努力し続けてください。

--2024年度以降に受験を控える高1・高2生にも、共通テストに関してのアドバイスを。

 共通テストの多くの範囲は、高1・高2で履修している内容から問われます。今やっている勉強が、そのまま入試に直結しているということを絶対に忘れないこと。高1・高2それぞれで扱われる範囲は、しっかりとその学年のうちに仕上げておきましょうね。

--本日はありがとうございました。

 共通テストは次回がまだ3回目。傾向が読みづらい中でどのような対策をすべきか、具体的なアドバイスをいただけた。ここから約1か月。集中すべきは、出題傾向や平均点を占うことではなく、自分に足りないところを見つけ出し、1つずつ補強していくという地道な作業。そして、まだ自分には伸びしろがあると自分を信じ続けることだ。睡眠や食事などを通じて体調管理に気を付けながら、最後まで諦めず、頑張り抜いてほしい。

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《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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