世界100か国で使われている「英語の正しい発音とスピーキング」を学ぶAIアプリ

 世界100か国で使われている英語の正しい発音とスピーキングを学ぶAIアプリ「ELSA」は、京都大学・聖光学院・武蔵・栄光学園などに導入されている。「ELSA」の共同創業者でありCEOのヴー・ヴァン(Vu Van)氏 に、同アプリの特徴と可能性について話を聞いた。

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「ELSA」の共同創業者でありCEOのヴー・ヴァン(Vu Van)氏
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 世界100か国で使われている英語の正しい発音とスピーキングを学ぶAIアプリ「ELSA (English Language Speech Assistant)」。日本では教育現場での活用も広がりを見せており、すでに京都大学・聖光学院・武蔵・栄光学園をはじめ、約60校が英語学習に「ELSA」を取り入れている。

 「ELSA」の共同創業者でありCEOのヴー・ヴァン(Vu Van)氏 に、同アプリの特徴と可能性について話を聞いた。

英語学習アプリ「ELSA」とは

--日本でもELSAのユーザーが増加しています。日本人は英語の発音やスピーキングに苦手意識をもつ傾向が強いですが、日本のユーザーからの反応はいかがでしょうか。

 おっしゃるとおり、日本の英語学習者は、人前で間違えることを非常に恐れています。私の出身国ベトナムをはじめ、他のアジア諸国でも人前で間違えて恥ずかしい思いをすることを嫌う文化がありますが、特に日本はこの傾向が強いようです。しかし、人前ではなくELSAが相手だと、ユーザーは安心して練習できます。学習者は、たとえ10回間違えても、周りの目を気にせず練習を続けることができるのです。そうやって安心できる環境で練習を重ねた結果、ELSA利用者の約9割が、「実際に人と英語で話す際に、自信をもって話すことができた」と答えています。

ELSA共同創業者兼CEOのヴー・ヴァン(Vu Van)氏 。米スタンフォード大学でMBAを取得。経営戦略コンサルティング会社勤務を経て2015年1月にELSAを設立

 他にも、多くのポジティブなフィードバックをいただいています。たとえば、ELSAはアプリを開けばいつでも学習できるので、寝る前でも毎日の習慣として継続することができます。いつでもどこでも使える利便性のほか、ゲーム感覚で楽しいという意見もあります。また、アプリでの学習は孤独になりがちですが、ELSA内にはコミュニティもあり、人と繋がりながら学習を進めていけるので、モチベーションが続くとも言っていただいています。

--英語学習のアプリはたくさんありますが、ELSAの強みは何でしょうか。

 最近は生成AIの登場により、AIトレンドが隆盛を極めています。しかしELSA は、それに先駆けて2015年にスタートし、AIを駆使した語学学習ツールとしては、先駆的な存在として認知されています。

 ELSAの語学学習ツールとしての強みは、英語を母国語としないスピーカーのさまざまなアクセントに対して高い理解力をもっていることです。日本人が話す英語に対する精度も非常に高いです。ELSAは全世界で30万人以上のユーザーがいますが、そのうち約2割が日本のユーザーです。AIはデータがあってこそ力を発揮できますが、日本人の英語に関しては十分なデータがあるため、日本人のミスの傾向を理解し、日本人に合わせたフィードバックが可能なのです。

 また、個人レベルでもELSAとの会話を通じてデータがどんどん蓄積されていくので、ユーザーの興味や関心がサッカーなのか、食べ物なのかといった傾向を把握し、それに基づいて学習者に合わせた会話ができます。

--ELSAは、発音矯正に重点を置いたアプリだという印象がありますが、実際はどうなのでしょうか。

 確かに、7年前にスタートした際には、発音矯正にもっとも注力していました。英語が正しく理解されず、自信を喪失して、話すことが怖くなるという悪循環を断つためには、発音の矯正がもっとも近道だと考えたからです。その後、技術の進歩やユーザーからのリクエストを反映し、発音だけでなく会話練習も可能なアプリに進化しました。現在のELSAは、ユーザーの音声から発音、リズム、イントネーション、速度まで判定し、フィードバックができるようになっています。また、ロールプレイ用のシナリオは、「初対面での挨拶」「カフェでのオーダー」「友達との会話」など、あらゆるシチュエーションに対応できる多彩なシーンを用意しています。さらに、「あなたが使ったこの単語より、こちらの単語のほうが適していますよ」といったアドバイスも可能です。

 こうしてELSAは、AIによるチューター(指導者)が英語のスピーキングを多様な観点から個別指導する最初の企業となりました。今後もユーザーのフィードバックに応えながら、進化を続けていきます。

AIによるチューター(指導者)が英語のスピーキングを多様な観点から個別指導する

学校現場でのELSA活用も

--日本の英語教育の現状については、どのように考えていらっしゃいますか。

 日本は英語教育において、読解と文法を重視してきた歴史があります。入試ではスピーキングを含まないため、教室で英語のスピーキングを訓練する機会が多くありません。その結果、たとえ英単語をたくさん覚えていても、いざ話そうとしたときにうまく使えないのです。このような状況から、英語を話すことに強い抵抗を感じている生徒が多いようです。特に日本の生徒は完璧主義の傾向があり、ミスを犯すことを恐れています。しかし、文法には正誤がある一方で、スピーキングは正誤を気にするよりも、とにかく話して慣れることが大事です。日本の生徒には、恐れることなく英語を話せる環境がもっと必要だと考えています。

--日本では、ELSAは個人だけでなく、学校単位での利用も広がってきています。ELSAを学校教育に取り入れるメリットは何でしょうか。

 ようやく最近は、日本政府が英語教育においてスピーキングを重視するようになりつつあります。これは大変心強いことですが、現実問題として、1人の教師がクラスの生徒全員にマンツーマンでスピーキング指導をすることは不可能です。そもそも先生自身もスピーキングに苦手意識をもっていることが多く、指導へのモチベーションが低い場合があり、これでは生徒に良い影響を与えません。こうした課題に立ち向かうためには、AI技術を駆使したソリューションが有効です。ELSAを使って生徒が自立して学習し、教師はそれをサポートすることで、生徒は効率的に学ぶことができ、教師は過度のプレッシャーや負担を負うことがありません。

 また、これまで、英語を習得するには、英語がネイティブな友達を作る、留学するなど、リアルな英語環境が必要だと思われていました。しかし、誰もがネイティブな友達を作れる環境にいるわけでも、留学できるわけでもありません。ところがELSAなら、いつでもネイティブを相手に英語を学べる環境が、誰にでも安価に平等に与えられるのです。

--教育現場では、ELSAはどのように使われているのでしょうか。

 日本では、現在約60校でELSAを導入しています。特に成功しているのは、授業の導入部分で10分から15分ほどELSAを使うという活用法です。授業後は教員がさらにコンテンツを加え、生徒は自宅でもスピーキングの練習を行います。ELSAには教員向けのプラットフォームがあり、教員はコンテンツをカスタマイズしたり、各生徒の進捗状況をリアルタイムで把握したりすることが可能です。ELSAを英語の授業に導入することで、教員の負担は軽減されるうえ、AIチューター(指導者)から生徒ひとりひとりに個別最適化された指導を受けられるので、非常に効率良くスピーキング力が鍛えられるのです。

--今後の日本での展開について、展望をお聞かせください。

 すでにELSAは一般市場向けには高い人気を誇り、ダウンロード数も高水準ですが、もっと認知を広げ、英語を学習する人々のすべてのデバイスに浸透させたいと考えています。また、学校での活用も、2024年には現在の3倍にまで拡大させたいと考えています。公立校も私立校も、小学校から大学まで、生徒たちが英語をゲーム感覚で楽しく学ぶサポートができれば嬉しいですね。

 さらに、企業やビジネスマンにも、英語でのコミュニケーション・トレーニングのツールとして、ELSAを活用してもらいたいです。日本の方には、ビジネスシーンでも英語を話すことを恐れず、自信をもっていただきたいです。

--最後に、これから英語学習を頑張りたい人へのメッセージをお願いします。

 「英語は特別な才能がないとうまくならない」という都市伝説があるようですが、これは真実ではありません。英語の習得にいちばん大切なのは、母語を習得するのと同様に、継続して触れ続けることです。ですから、どうかミスを恐れないでください。ミスを恐れると、話すことが怖いから話さない、話さないと練習量が足りないから話せるようにならない、という悪循環に陥ってしまいます。ELSAを使って毎日話してほしい。もし、英語があなたの人生にとって必要不可欠だと感じるのであれば、ぜひ「継続」してほしいと思います。

《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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