医学部受験指導のプロと現役医学部生が教える、年内に取り組みたい小論文・面接対策のコツ<小論文編>

 共通テスト後、すぐに私立大学医学部の入試が始まるタイトなスケジュールが強いられる医学部受験。今から備えておきたいのが、小論文・面接対策だ。駿台予備学校の医学部専門校舎・市谷校舎の秋庭孝一郎氏と同校を卒業した現役医学部生のおふたりに、実体験も含め話を聞いた。

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医学部受験指導のプロと現役医学部生が教える、年内に取り組みたい小論文・面接対策のコツ<小論文編>
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 医学部受験のスタートとなる大学入学共通テスト(以下、共通テスト)まで残り2か月を切った。共通テスト後はすぐに私立大学医学部の入試が始まるタイトなスケジュールだ。そこで、今から備えておきたいのが、小論文・面接対策。小論文・面接試験は医師としての適性や能力が問われる医学部ならではのものだが、どのように効率よく対策を進めていけば良いのだろうか。

 駿台予備学校の医学部専門校舎・市谷校舎で高卒クラスの国公立大医系コースを担当している秋庭孝一郎氏、同校舎の卒業生で順天堂大学・医学部医学科1年生の吉武優さん、千葉大学・医学部医学科1年生の千葉恒輝さんに、医学部入試の小論文・面接試験の対策について話を聞いた。2回にわたる小論文・面接対策連載の1回目は、小論文対策をお伝えする。

大学によって大きく異なる形式・設問内容

--医学部入試では小論文を課す大学が多いですが、医学部は小論文で受験生の何を見ようとしているのでしょうか。

秋庭氏:大別すると3つ。能力医師になる目的意識適性だと考えます。

 能力については、設問や課題文が正しく読み取れているか、論理的な文章を構成できるかのほか、教養的な知識も含まれます。上記3つのどこに重きを置いているかによって、小論文のテーマや設問に大学ごとの特徴が表れます。医師になるには、文章を書く力や論理的に説明する力も必要です。また、小論文を通じて、病に苦しむ患者さんに向き合うことへの覚悟や倫理観も問われているように感じます

--具体的にはどういった問題が出されるのでしょうか。

秋庭氏:ユニークな例として挙げられるのは、順天堂大学の問題です。2023年度は、特攻隊日本兵の写真を1枚提示し「特攻隊員の家族への手紙を自分で書き、それについて800字以内で言及しなさい」という問題でした。

 言うまでもなく特攻隊はあってはならないことですが、この設問ではただ否定的な立場から主張をすれば正解というわけではなく、各々の立場や時代背景に沿って適切な主張ができるか受験生が自らの考えや思いに対して説得力のある理由付けができるかといった部分を見ているのではないかと思います。この設問自体センセーショナルですし、順天堂大学は高確率で小論文で書いた内容について面接で言及されるので、学生からの面接対策の相談も多かったですね。

--他にも昨年度の入試で印象に残る問題はありましたか。

秋庭氏:横浜市立大学は国公立大学前期入試で小論文を課す数少ない大学です。昨年度の内容は「皆さんはこれまでの人生のさまざまな年代、局面で、さまざまな人から叱られ、またさまざまな人を叱ってきたと思います。『叱る』という言葉には『指導』になにがしかの『怒り』が含まれているように感じられます。『指導』において『怒り』はなぜ生じるのかを説明し、『怒り』の要素の功罪について1,000字以内で論じなさい」というものでした。

 これは、抽象的な話題に対して、自分の経験を踏まえて論考し文章を構成する力、また、設問自体にどういう意図があるかを分析する力が求められます。

 もう1つ、北里大学の論文試験をご紹介しましょう。こちらは長文の課題文を読んだうえで、「内容を要約」「傍線部の理由を文中の言葉を使って100字以内で述べる」「ネットから医学知識が得られる中で医師を志す学生はいかに知識を身に付けていくべきか、本文を踏まえての考えを800字以内で述べる」という設問に答えるものでした。最初の2問はまるで国語の現代文のような問題ですが、3問目では医師としての適性や考え方に重きが置かれているように見受けられます。

 このように、大学によって設問の内容はさまざまで、受験生を見るにあたって何を重視しているのかも異なるというのがよく分かると思います。

医学部に合格した先輩たちの事例は「宝」

--小論文の対策について、医学部生のおふたりはいつごろから始めましたか。具体的にやって良かったこと、一方できなかったけれどやっておけば良かったと思うことはありますか。

千葉さん:僕は小論文の配点が大きい大学を受験する予定がなかったので後回しにしてしまい、着手したのは駿台市谷校舎で小論文対策の特別講座を受けた11月でした。ただ、そこからでも間に合ったのは、駿台卒業生の合格体験記「サクセスレポート」を読み、具体的に出された問題とそれに対して合格した先輩たちがどう答えたかを頭に叩き込み、イメージトレーニングができたからです。これは非常に役立ちました。

吉武さん:私は元々国語に自信がなかったので、11月に順天堂大学の小論文に特化した対策講座を受講しました。さらに、12月の冬期講習では4日間の医系論文講座を受け、体系的な小論文の書き方を学びました。

 いちばんやって良かったと思うのは、クラス担任に志望理由書の添削をしてもらったことです。その大学のアドミッションポリシーに基づき、どんな医師になりたいかといった自分のビジョンを添削してもらい、自分の考えや意見をどう表現すればうまく伝わるかについてアドバイスを受けました。また、添削をしてもらいながらクラス担任との面談を通じて自分自身の理想の医師像が明確になったこと、表現の仕方をその中でも学べたことは、小論文対策としても非常に有効でした。ただ、添削を受けたのが12月だったので、共通テストや過去問の対策などと並行することになり慌ただしく、もう少し早くから落ち着いてやっておけば良かったと思いました。

秋庭氏:今、話題にあがった「サクセスレポート」は、駿台から医学部への合格者体験記として、学科試験への準備から当日のできばえ、面接・小論文で聞かれた内容やその対策、本番ではどんなことを答えたかといった具体的な事例を蓄積してきたものです。駿台に通う校内生であれば誰でも閲覧できます。

 小論文と面接への評価は、受験生にとって把握しづらい部分です。そのことからも「サクセスレポート」は、全国最多の医学部合格者を輩出してきた駿台の宝ともいえるデータです。あくまで駿台生限定にはなりますが、こうした合格事例に目を通し、おもにどういったことが問われるのか、受験を考えている大学ごとに目線合わせをしておくのは大変有効だと思います。

--今は11月。時間が限られる中で、小論文対策として「最低限」やっておくべきことは何でしょうか。

秋庭氏:おもに私立大学医学部入試の話になりますが、この時期は受験する可能性の高い大学がある程度絞れる時期だと思います。まずはその候補大学について、前年度を含めて2年分くらいの過去問を解いてみることをお勧めします。

 共通テスト対策が本格化する前に過去問に向き合い、出題テーマの傾向、分量などを把握し、少なくとも小論文のせいで落ちてしまうことがないよう、まずは解答のイメージを掴んでおくことが出発点になると思います。

 医学部合格者の中には「1次試験合格後に小論文対策を始めても間に合った」というケースが毎年なくはありません。ただ、それはその人が元々もち合わせている国語力に依存する部分が大きく、学習計画としてお勧めはできません。できる限り早めに準備しておくというのが重要だと思います。

アドミッションポリシーや過去問を「読みもの」として休憩ツールに

--医学部生のおふたりは、教科の勉強と小論文対策をどのように両立したのですか。また、入試本番はどのように向き合ったのでしょうか。

千葉さん:基本は教科の勉強が中心でしたが、受験予定の大学のアドミッションポリシーをはじめとした情報や「サクセスレポート」を読みものとして、休憩など隙間時間の気分転換に目を通していました

 入試本番では、「この大学に行きたい」という気持ちを伝えることがいちばん大事だと考え、その思いが伝わる文章を書くように心がけました。

吉武さん:私の場合も教科の勉強だけでとても忙しかったので、小論文は直前にぎゅっと集中してやる方が効率的だと思い、冬期講習で小論文講座を取りました。授業中に対策を完結させるつもりで受講しましたが、結果的には教科の勉強の良い息抜きにもなりました。

 また、千葉さんと同様、私も勉強の合間にアドミッションポリシーなど大学の情報に目を通していましたが、読むたびモチベーションが上がりました。大学の教育方針は面接でも聞かれるので、しっかりと読み込みました。入試本番では、講習で小論文の書き方の訓練ができたおかげで、緊張せずに臨むことができました。

合格者に共通する小論文対策の秘訣

--おふたりとも基本は教科の勉強をしつつ、直前で対策講座を取ったり、隙間時間に大学の情報に目を通したりと、メリハリをつけた対策をしていたのですね。秋庭さんは毎年たくさんの医学部合格者をみてこられて、合格者に共通する小論文対策の秘訣は何だと思いますか。

秋庭氏:それは「医師になることへの心構えをもつ」ことに尽きるのではないでしょうか。

 今の2人のエピソードのように、隙間時間の気分転換に医学部の情報を読みものとして使うというのも、その心構えの表れでしょう。

 多くの受験生が学科試験対策だけでも多忙を極める中、医学部受験生はさらに小論文や面接の対策もしなければなりません。それでも前向きに、「自分は先々医師として働くのだから、これくらい必ず間に合わせるぞ」といった気構えが求められるのだと思います。つまり、これは目先の小論文の訓練以前に、医学部で学び、将来多くの人の健康や生命に従事していく医師になるんだという自覚が出発点であるということ。その覚悟が固まれば、自ずと時間をうまく使って、教科の勉強とも両立しながら効率的に対策できるようになるはずです。

--日々の生活や心構えが医師の世界へと繋がっていくのですね。医学部生のおふたりは、子供のころ、あるいは中高時代にやっていたことの中で、小論文対策に繋がったと思うことはありましたか。

千葉さん:僕自身もあまり国語は得意ではなかったのですが、中高時代は、学校の定期考査で記述問題が多かったり、文章を要約したりと、文章を書く機会がたくさんありました。そのおかげで文章を書く力がずいぶん鍛えられたと感じています。

吉武さん:長い間続けてきた習い事の経験が、小論文の中の表現として発揮できたと思っています。私の場合はピアノです。

 冒頭に秋庭さんが紹介された順天堂大学の問題で、私は特攻隊の立場で家族に宛てた手紙を書く中で「鳥になって帰ってくるから、心配しないでね」と書いたんです。順天堂大学は小論文の内容について面接で問われることが多く、私も例に違いませんでした。面接官の先生から「この豊かな感性には、あなたがピアノをずっと続けてきたことが結び付いているのかもしれないね」という言葉をかけていただき、文章から自分の経験から培われた感性や人格を感じていただけたのかなと思いました。

医師になることへの情熱をアピールする場

--最後に、小論文対策に関して、医学部を目指す受験生にメッセージをお願いします。

千葉さん:僕は、小論文試験は「自分の情熱を伝える場」だと思っています。受験生の皆さんには情熱が伝わるような熱い論文を書いてほしいなと思います。情熱をアピールするには、アドミッションポリシーに書いてあることに繋げ、「大学の教育方針を深く理解している。ぜひこの場で学びたい」という姿勢を見せることが有効だと感じました。受験する大学が提供する情報は丁寧に読んでおくことをお勧めします。

吉武さん:順天堂大学の学是は「仁」。医療従事者としての思いやりを何よりも重視しています。受験生の皆さんは小論文というと医学的な専門知識を身に付けなければと思うかもしれませんが、医学部ではそういう知識も大切ですが、その人の率直な意見や考え方、そして医師になる上での倫理観や情熱があるかどうかもみられていると思います。自分の人間性や魅力と共に「この大学でこんなことを学びたい」という思いを表現できれば、さらに良いものになると思います。

秋庭氏:医学部受験の持つ最大の特殊性は、学部選択が職業選択に直結するところです。ですから、大学で6年間勉強し、医師国家試験を突破した後も、医師としてどう働くかまでのライフプランを含めた長期的なビジョンが重要なのです。

 入試は正解か不正解かで白黒が付きますが、実際の医療現場では、患者さんごとに異なる事情を考慮しつつ、総合的な判断や分析、それを表現する力も必要になります。入試を突破する学力を身につけるのは大前提ですが、そのうえで、それとは別の領域の力が医療の世界では求められるはずです。そこまで思いを馳せることができれば、自ずと小論文対策へのモチベーションも高まるのではないでしょうか。

 医学部受験の過程で「やることが多くて大変…」と思ったときこそ、自分が将来、医療現場で活躍している姿をイメージして、そうした現場で活躍するなら、「ここでへこたれている場合じゃない!」と気持ちを強くもって臨んでください。

--ありがとうございました。


医師になるための強い思いを持って受験に臨む

 医学部受験は総合的な人間力が試される受験であることが示された座談会だった。逆に言えば、医師になるという強い気持ちをもち、どう働いていくのかまでイメージしながら受験に臨むことが対策の軸となり、小論文でもそうした情熱や考え方、人間性をアピールすることが重要になるということである。

 入試本番まであとわずかの時間、医師になりたいという強い気持ちをもって、受験と小論文に臨んでほしい。そして、将来医学部受験を考えているご家庭では、読み書きの機会を増やすことが今からできる最善手かもしれない。

【対象】高3生・高卒(浪人)生・高1生・高2生・中学生
冬期講習・直前講習 12/11(月)~3/13(水)

【対象】中学生・高1生・高2生/保護者
11都道府県19会場で12月・1月開催 医学部入試情報講演会

高1生になる前に、ライバルと差をつける短期集中講座
市谷校舎 中3生対象医系数学・医系英語 冬期講習

《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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