立命館守山が探究で育む「学び続ける力」と「挑戦するマインドセット」

 立命館守山中学校・高等学校は探究活動を重視し、生徒の学び続ける力と挑戦するマインドセットを育んでいる。生徒たちは社会課題に挑むプロジェクトに取り組み、自らの興味を起点に成長を実感している。

教育・受験 中学生
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「学びの極意は探究にある」と探究活動に力を入れる立命館守山中学校・高等学校。在校生5人と同校を卒業した起業家も交えて話を聞いた。
  • 「学びの極意は探究にある」と探究活動に力を入れる立命館守山中学校・高等学校。在校生5人と同校を卒業した起業家も交えて話を聞いた。
  • インタビューに応じてくれた、(左から)玉井さん、山田さん、岩崎校長先生、森さん、末瀬さん、三村さん、能登さん
  • 模擬起業グループ「biwakona」代表の山田健太郎さんと同グループに所属の玉井芳果さん
  • 玉井芳果さんは「latte link」としても活動している
  • 「latte link」に所属している3人
  • 立命館守山高等学校3年生で「latte link」に所属の三村由莉さん
  • 立命館守山高等学校3年生で「latte link」に所属の末瀬花さん
  • 立命館守山高等学校3年生で「latte link」に所属の能登優佳さん

 「学びの極意は探究にある」と探究活動に力を入れて取り組んできた立命館守山中学校・高等学校。生徒ひとりひとりが自分の興味・関心を起点に学びをどのように深めていくのか。探究心をくすぐり、学校の授業の枠を超えて新しいことに挑戦しようとする進取果敢の校風とは。

 同校に在籍する5人の高校生を中心に、高校から大学まで立命館で学んだ女性起業家も交えて話を伺った。

インタビュイー:立命館守山高校3年生 玉井芳果さん三村由莉さん能登優佳さん末瀬花さん山田健太郎さん水野皓太さん/ATTRACTIC株式会社代表取締役(立命館OG)森麻里さん

インタビューに応じてくれた、(左から)玉井さん、山田さん、岩崎校長先生、森さん、末瀬さん、三村さん、能登さん

学校の枠を飛び越え、ビジネスコンテストにもチャレンジ

--皆さんはそれぞれ「latte link」と「biwakona」というチームで活動していらっしゃいますが、どんな活動なのか教えていただけますか。

玉井さん:ここにいる女子生徒4人で「latte link」というチームをつくり、地域社会とのつながりが薄れてきている若者世代に着目して、「交流」をテーマに活動してきました。私たちのおもなプロジェクトは2つあります。

三村さん:1つは、コーヒー豆のカスを使ったプロジェクトです。地域のカフェでインタビュー調査をした結果、コーヒー豆のカスが大量に廃棄されていることがわかりました。コーヒー豆のカスには消臭効果があります。そこで、瓶の中にコーヒー豆のカスを入れ、貝殻を入れたり、季節にあわせてデコレーションしたりして、小さな子供から高齢者まで、みんなで一緒にオリジナルの消臭剤を作ろうというイベントを実施。コーヒー豆のカスをリサイクルするというゴミ問題の解決にもつながるうえ、幅広い世代間の交流が生まれ、地域活性化にも貢献する点が評価されて、「日経STEAM未来の地球会議」というシンポジウムでは特別賞を受賞しました。

末瀬さん:もう1つはアプリ開発です。訪日外国人の増加により、オーバーツーリズムに悩む都市が増えています。一方で、もっと地方にも足を伸ばして地元の人々との文化交流を望む外国人に加え、外国人と接点をもち、国際経験を積みたいと願う日本人の若者も少なくありません。

 そこで私たちは、社会課題を解決するアイデアをアプリにする「テクノベーションガールズ」というコンテストに参加し、都市部に集中しがちな訪日外国人と、地方で生きた外国語を使いたい高校生・大学生をマッチングするアプリを開発しました。オーバーツーリズムの問題を解決するとともに、世界中で未だに紛争が絶えない中、市民レベルでの対話こそが平和への一歩となると考えたアイデアは、スポンサー賞を受賞しました。

能登さん:このアプリを使うことで、地域のお店や博物館などで外国人と高校生・大学生が安全に交流できます。滋賀県発祥のスーパーマーケットチェーン「平和堂」や、カフェ&和洋菓子販売の「ラコリーナ近江八幡」も、このアプリを交流場所として導入したいと協力して下さり、滋賀県から全国へ普及を目指しているところです。

「LatteLink」の玉井さん

--アプリ開発の知識はどこで身に付けたのですか。

玉井さん:4人とも学校の授業で勉強していた程度で、ほぼ初心者の状態でした。しかし、このコンテストのプログラムではアプリ開発講座とビジネス開発講座をそれぞれ無料で10日間ずつ受けられるので、学びながらコーディングできるようになりました。

「LatteLink」の左から末瀬さん、三村さん、能登さん

--「biwakona」というチームではどんな活動をしていましたか。

山田さん:僕たちは、「琵琶湖の魅力を次世代に、全国に」という理念のもと、琵琶湖の小鮎とワカサギの佃煮をベースにしたふりかけを作っています。「湖食離れ」が進む若者に届けたいという思いから、ふりかけという身近な食品に着目し、商品開発をしました。規格外だったり、加工の段階で頭が取れたり、お腹が裂けたりして、商品としての価値が下がってしまっている魚を再利用することで、フードロスの解消にもつなげています。オンラインのほか、自分たちで販売してもらえる場所を開拓して委託販売も行い、1か月間で830個を完売しました。

--商品開発にかかる資金はどのように調達したのですか。

山田さん:リアビズ模擬起業グランプリ」に参加し、ファイナリストに選ばれたので、30万円の融資を受けることができました。

模擬起業グループ「biwakona」代表の山田健太郎さんと同グループに所属兼「latte link」でも活動している玉井芳果さん

探究に軸足を置いたカリキュラムで身に付いた力とは

--皆さんの行動力には感心するばかりですが、こうしたプロジェクトを含め、探究に軸足を置いた立命館守山の教育を通じて、自分はどんなふうに成長したと感じますか。

玉井さん:私は中学校から入学したのですが、中高を通して授業中にグループで話しあう機会がとても多かったせいか、何が課題なのか、どうすれば良いかを自分なりに考え、それを解決するために学びを深めていくという「学びに向かう力」が身に付いたと思います。

山田さん:高3という学年は大学受験のために勉強に専念するイメージをもたれるかもしれませんが、僕は高3になってから週1日、立命館大学の衣笠キャンパスで探究の授業を受けています。ひとりひとり掲げるテーマは違うので、ただ講義を聞くのではなく、自分の探究テーマについてプレゼンしたり、大学の先生と対話形式でアドバイスをもらったりします。双方向で意見や質問を交わすことで、「この視点は本当に正しいのか」「ほかの視点があるのではないか」と考える批判的・論理的思考力や問いを立てる力が身に付いたと思っています。

能登さん:私も山田くんと同じく、毎週衣笠キャンパスに通っています。大学の授業では、元々自分が応援していた「滋賀レイクス」というプロバスケットボールチームに関連する探究をしているのですが、社会のさまざまな方と接する機会を通じて、コミュニケーション力や、新しいアイデアを生み出す力、さらに実行力も身に付いてきたと感じています。

三村さん:私は他大学への受験を目指すコースに在籍しているので高3での探究はありませんが、高2までは子育てをテーマに取り組んでいました。高校生のうちから子育てに関する意識を育むことを目指し、静岡県のNPO法人に協力をお願いして、高校生向けにオンラインでの子育て体験授業を企画しました。最初はまったくご縁のない方に引き受けてもらえるかなど不安でいっぱいでしたが、能登さんが言ったように、「行動しなければ始まらない」という行動力の大切さを学びました

末瀬さん:私は山田さんと能登さんのように、立命館大学のびわこ・くさつキャンパスに週1日通いながら、殺虫剤を作る研究をしています。界面活性剤の成分を利用して虫の呼吸行動自体を妨げてしまう方法で、マラリアなどの強い毒性を持つ虫にも効果的な殺虫剤を目指しています。自分1人の力ではこのような研究は進められませんが、大学の先生からアドバイスをもらったり、いろいろな人々と協力したりと、それぞれが力を貸しあいながら物事を成し遂げていく協働力を身に付けられていると感じています。

立命館という環境が育む「挑戦するマインドセット」

--森さんはここ滋賀県を中心に、おもに中小企業のIT支援を行う会社を経営されています。ご自身で起業されたとのことですが、立命館には元々そうした起業文化があるのでしょうか。

森さん:大学発ベンチャーの数では、日経BPコンサルティングが調査した最新のデータによると、立命館は全国で10位にランキングしています。

 今も生徒さんたちの話を聞いていて、こんなに多様なことに挑戦できる高校は、ほかにはないのではないかなと思いました。私の母校である京都の立命館宇治高校をはじめ立命館高校もそうですし、北海道の立命館慶祥高校から宇宙関連ビジネスで起業された卒業生の記事をリセマムで読んで感じたことですが、「自分で選び、自分で道を切り拓く」というカルチャーは立命館ならではだと思いますね。決して起業だけがすべてではありませんが、何事にも「まずは挑戦してみよう」と思えるマインドセットが育まれたのは、自分の人生にとって大きなアドバンテージになっていると感じます。

山田さん:立命館大学では「総長PITCH THE FINAL」という、立命館学園の学生・生徒が社会課題を解決するための起業アイデアを総長や投資家に直接提案するコンテストが行われていて、立命館守山高校の先輩たちが大学生に混じって総長賞を受賞したこともあります。学園全体でも起業を応援する風土があるなと思います。

ATTRACTIC株式会社代表取締役 森 麻里さん

ATTRACTIC株式会社代表取締役 森 麻里さん
立命館大学を卒業後、Sky株式会社でインストラクターとして2万人超の顧客にソフトウェアやPC、タブレットの使い方を指導。「人と企業をITで繋げる」を企業理念に、LINE公式アカウントやLステップで事業課題を解決するビジネスで起業。 さらに、女性が子育てと両立した働き方が実現できるよう、リスキリング講座の提供や就職・転職支援なども行っている。第8回京都女性起業家賞(アントレプレナー賞)にて「京都府知事賞優秀賞」を受賞。


「入学して変わった」仲間と切磋琢磨し成長を実感

--高校生の皆さんは、入学前からチャレンジ精神と行動力を兼ね備えたタイプだったのか、それとも立命館守山に入学してから変わったのか、どちらなのでしょうか。

能登さん:私は中学までと今とでは全然違います。両親にも良い意味で「変わったね」と言われますし、自分でもそう思います。もし違う高校に行っていたら、今のように積極的に自分から動くようなタイプではなかったかもしれません。

玉井さん:私の場合はどちらかというと元から行動的なタイプでしたが、それでもこの学校でいろんな先輩が活躍する背中を見て、「めちゃくちゃカッコ良いな」「自分もあんなふうになりたいな」と刺激を受け、もっと自分ができることをやろうと思えるようになりました。同調圧力がなくて、安心してみんなが「出る杭」になれる。周りの友達もすごく応援してくれます。

末瀬さん:玉井さんの言葉にすごく共感します。学校にいるみんながそれぞれ頑張っていることに対して、誰ひとりそれを変な目で見ることはないです。私は高校から入学しましたが、中学校までは、何か新しいことへチャレンジしたい気持ちがあっても、どうして良いかわからなかったり不安で自信がもてなかったり、最初の一歩が踏み出せずにいました。でもここには、そうやって立ち止まっている自分の背中をそっと押してくれる環境があるんです。私自身は、先ほどお話ししたプロジェクトや探究以外に留学にも興味があったのですが、国際部で専任の先生からプログラムの情報や渡航に関するアドバイスをもらい、カンボジアや台湾への短期留学を実現することができました。

--周りにこんなたくさん出る杭があると、かえって気後れしてしまう人もいませんか。

水野さん:僕は山田くんと一緒に「biwakona」の活動をやってきて、生徒会長など多方面で活躍していた山田くんを見ながら、「自分もやらなきゃな」って思えました。同級生でこれだけのことができるんだなって思うと、ぼく自身の自信になるし、希望にもなるんです。力になりたい、でも負けられないなって思います。

探究活動は教科学習への意欲を高める

--探究を深めていくには、学問の基礎となる学習も大切です。高校生の皆さんは、探究を通じて学校での勉強も大事だと感じることはありますか。

末瀬さん:私は自分の探究で論文など専門的な内容に触れることも多く、特に英語と化学に関しては学校の授業に対するモチベーションが上がりました。界面活性剤の研究では化学の授業で習う内容がよく出てくるので、教科書と自分の探究がこうやってつながっているんだとわかるとワクワクします。

 また、カンボジアや台湾に行った際には、英語が公用語じゃなくても、英語ができればできること・学べることがたくさんあるなと実感できました。

能登さん:私は、自分たち開発したアプリをもっと社会に普及させたいという思いから、企業の仕組みや株式などについて知りたいという気持ちが高まり、特に政治経済の授業が楽しくなりました。

玉井さん:私は探究を通じてさまざまな大人と交流していくうちに、今まで「なぜこんなことを覚えないといけないの?」と思っていた知識も、一般教養として知っておくべきことなんだなと感じるようになりました。探究を通じて、教科書の勉強の大切さをわかるようになった気がします。

--探究を進めていくと、「なぜ?」「どうやって?」といった問いが湧いてくるもの。その過程で、教科学習の重要性に気付くこともある。知識を得ることと解決策をつくることとを行ったり来たりしながら学びを深め、もっと挑戦したいというマインドを育んでいく。まさに探究の真髄を見せてもらったような気がします。本日は貴重なお話をありがとうございました。 

校長先生からのメッセージ

立命館守山中学校・高等学校 岩崎成寿 校長 

 教員として日々意識しているのは、生徒の「学び続ける力」をいかに生み出し続けられるかということです。たとえば大学入試に向けて熱心に受験勉強をしても、入試が終わった途端に学びが途切れる生徒は少なくありません。本校にも他大学への進学を目指すコースがありますが、探究を経験した生徒たちは合格がゴールではなく、『大学に入ったらこんなことを学びたい』と入学後の未来を見据えています。

 では、学び続けるためには何が必要なのか。いちばんは社会とのつながりではないでしょうか。野球に例えると、従来の学校教育が基礎練習に徹していたのに対し、探究は練習試合にあたります。試合で実践してみて初めて気付くことはたくさんあるはずですから、本校の探究活動では社会へのフィールドワークを必須としつつ、実際に社会に影響を与えるレベル、つまり「社会実装」をめざすことを奨励しています。教師によってお膳立てされたものではなく、生徒自らが社会に出て考え、実践・実装し、時には失敗も経験しながらも目標に向かって挑戦し続ける経験が大事なのです。

 合格や成績といった外発的な動機ではなく、生徒ひとりひとりの内側から湧き出る興味や関心を起点に、「学び続ける力」「挑戦し続けるマインドセット」が育っていくような学びの仕組みをより充実させていきたいですね。


生徒の学び続ける力を育みたいと語る、岩崎校長

 次々と出てくる生徒さんたちのエピソードから、探究活動を通じて経験した学ぶことの楽しさが、ひとりひとりの揺るがない軸となって浸透していることに感銘を受けた。琵琶湖からのやさしい風を受けながら、生徒の探究精神をのびのびと育む同校の今後に一層期待したい。

立命館守山中学校・高等学校の公式サイト
《土取真以子》

土取真以子

関西在住の編集・ライター。教育、子育て、ライフスタイル、お出かけのジャンルを中心に、インタビュー記事やイベントレポートなどの執筆を手がける。教育への関心が強く、自身の出産後に保育士資格を取得。趣味が旅行とハイキングで、目標は親子で四国お遍路&スペイン巡礼。

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