新学習指導要領の全面実施による不安、「教員の多忙化の加速」87.4%

 ベネッセは、学校・教員の実態や意識についての「中学校の学習指導に関する実態調査報告書 2011」をホームページに公開している。

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今年度、全校的な取り組みとして、次のようなことを行っていますか(行う予定ですか)
  • 今年度、全校的な取り組みとして、次のようなことを行っていますか(行う予定ですか)
  • 今年度、全校的な取り組みとして、次のようなことを行っていますか(行う予定ですか)
  • 今年度、実力テストを実施する予定ですか
  • 新学習指導要領の実施によって、次のような教育内容や活動がどれくらい充実すると思いますか
  • 新学習指導要領の全面実施にあたり、次のことにどれくらい不安を感じますか
  • 今年度、理科の先行実施に取り組むなかで、次のようなことは課題になっていますか
  • 新学習指導要領における学習内容の増加に、どのように対応する予定ですか
  • 次の項目について満足できる水準の力や態度を身につけている生徒は、どれくらいの割合ですか
 ベネッセは、学校・教員の実態や意識についての「中学校の学習指導に関する実態調査報告書 2011」をホームページに公開している。

 同調査は、全国の中学校の教務主任(有効回答数は2,839名)に対して「学校での取り組み」を、理科教員(有効回答数は7,042名)に対して「学習指導に関する実態」をテーマに、郵送による質問用紙で実施。調査時期は6月〜7月。

 全校的な取組みの実施率をみると、「家庭学習の指導」(95.3%)、「生活習慣の指導」(94.7%)などの家庭での活動にかかわる指導は、ほとんどの学校が行っている。補習などの補完的な学習指導は、「夏休み中の授業や補習」の実施率が77.5%と高いが、「放課後の補習授業」は55.1%、「土曜日の授業や補習」では18.1%である。

 全校的な取り組みの実施率を経年でみると、「保護者や地域住民による授業支援(ゲスト講師など)」は昨年度に比べ15.7ポイント減と大きく実施率が下がっている。また「長期休業期間の短縮」「土曜日の授業や補習」は実施割合は大きくないものの2008年度からみるとそれぞれ17.5%→25.7%、13.4%→18.1%と増加傾向にある。

 1年間に行われる定期テストの平均実施回数は、3学期制の学校ではどの学年も2011年度で4.5~4.6回程度、2学期制の学校では1・2年生で4回程度、3年生で3.5回程度である。3学期制では学年によってあまり違いがみられないが、2学期制では3年生のテスト回数が1・2年生と比較すると少なくなっている。

 今年度の実力テストの実施状況について「行う」とする学校は81.1%である。「行う」と回答した学校のうち年間の平均実施回数は、1年生は1.5回、2年生は1.6回であるのに対し3年生は4.1回となっている。実施時期は1・2年生は1月、2月が多いが3年生は9月、11月、1月と秋以降の実施が多い。

 新学習指導要領のおもな改善事項について、新学習指導要領の実施によりそれぞれの活動が充実するかどうかについて尋ねた質問では、「理数教育」(87.8%)と「言語活動」(81.1%)は「充実する」と評価する学校が多い。それ以外の項目は「今までと変わらない」との回答が半数以上。また昨年度と比較すると、「言語活動」が6.6ポイント(74.5%→81.1%)、「伝統や文化に関する教育」が4.6ポイント(38.7%→43.3%)増加している。

 新学習指導要領の全面実施による不安として、「教員の多忙化の加速」(87.4%)や「担当教科による教員間の負担のアンバランス」(同83.5%)、「人員の不足」(78.6%)が上位に上がっている。特に「教員の多忙化の加速」は「とても不安」だけでも46.7%と高い値になっている。次に、「生徒間の学力格差の拡大」(同63.1%)や「生徒の疲れの増加」(59.5%)など、生徒に関する不安が続いている。

 理科の先行実施において課題となっていると認識している割合が高いのは、指導計画にかかわる、「実験・観察時数の確保」(61.2%)、「文部科学省の配布する教科書補助教材での指導」(60.4%)、「3年間を見通しての指導計画の作成」(59.3%)で、3年間一貫して上位にきている。一方、「理科室の確保」(2009年度40.3%→2011年度52.1%)や「指導教員同士の連携」(同40.3%→同50.0%)などは、「課題となっている」との認識が徐々に増加している。

 新学習指導要領における学習内容の増加への対応として、「今のままで対応できる」とする回答は51.5%である。次に、「全体的に授業の進度を速める」が34.5%、「教科書の内容のうち、ポイントを絞って教える」が27.5%と、授業の進行における工夫での対応を予定しているのが約3割程度である。一方、「宿題などを増やす」や「家庭学習(宿題を除く)指導を強化する」など、学校外での学習を活用した対応を予定しているケースは1割程度にとどまっている。

 また、理科の学習指導において、教員が満足できる水準で能力や意欲を身につけている生徒がどれくらいいるかについて尋ねた質問では、「基礎的・基本的な知識・技能」や「理科に対する関心や学習意欲」を身につけている生徒が「7割以上」いると認識している教員は4割強である。一方で、「知識・技能を活用して課題を解決する力」を身につけている生徒が「2~3割以下」とする割合が4割弱あり、「7割以上」は1割程度である。これらの傾向を新教育課程の先行実施前の2008年度調査の結果と比較しても、ほとんど変化はみられない。
《前田 有香》

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