iPadを取り入れ能動的な協同学習を実践…西武台新座中SACLA

 西武台新座中学校(埼玉県新座市)は11月9日、ICT教育を推進するスタジオ型教室「SACLA(Seibudai Active Learning Lab)」において、iPadを活用した総合的な学習の公開授業を実施した。

教育ICT 中学生
スタジオ型教室「SACLA」
  • スタジオ型教室「SACLA」
  • 授業の説明を行う河野芳人教諭
  • 本や新聞での調べ物も大切
  • 操作につまずいたら、まずは生徒同士で教え合う
  • インターネット上の写真を活用
  • まとめカード
  • 河野教諭と生徒たち
  • メール送信により班長のiPadに全スライドを集約
 西武台新座中学校(埼玉県新座市)は11月9日、ICT教育を推進するスタジオ型教室「SACLA(Seibudai Active Learning Lab)」において、iPadを活用した総合的な学習の公開授業を実施した。

 SACLAは、多面プロジェクターや無線インターネット環境、グループワークやディスカッションに適した可動式の勾玉(まがたま)型テーブルを備えた教室だ。同校では東京大学 重田勝介助教をICT活用教育アドバイザーに迎え、生徒1人1台のiPadを活用したICT利活用教育を実践している。

◆学びの基本はアクティブ・グループ・ラーニング

 「グルーバル社会で活躍できるたくましい人間の育成」を重要課題に掲げる西武台新座中学校では、「実力を養うことができるアクティブ・グループ・ラーニング(AGL:能動的な学習)を学びの基本とし、それを補完するためにICT活用を推進している」と深澤一博校長は説明する。

 授業を受けたのは、同校の1期生である中学1年生2クラスの28名だ。入学時に学校から支給されたiPad 2を利用して、授業が行われた。なおiPadは学校が管理しており、授業で利用しない際には、SACLAの充電機能付きの保管庫に格納されている。

◆ICT活用でAGLを実践

 この日の授業は9グループに分かれ、「ゴミ問題」について、インターネットや書籍などの資料で調べた「調査カード」と、その情報を集約した「まとめカード」を元に、「ゴミ問題の概要、原因、解決策」を説明するプレゼン資料をiPadで作成し、発表するという流れで行われた。担当するのは総合学習の河野芳人教諭だ。「ゴミ問題に関しての知識を定着させ、他の班の発表を見聞することで、いろいろな問題に関しての知識を広げることが、この授業の目的」という。

 河野教諭は「iPad利用のスキルに重きをおかず、iPadを使ってどう授業を展開するかを大切にしている」と言い、「インターネットだけでなく本や新聞の大切さも知ってもらうよう工夫している」との言葉のとおり、教室には各種資料も用意されていた。また「調べただけでは終わらず、その先が大切。自分たちでチャレンジすることが2学期のテーマです」と説明した。

 発表用のスライドは、プレゼンテーションソフト「Keynote」で作成された。まず、班ごとに3~4名のメンバーで担当ページを分担し、発表内容をまとめた。40分という限られた時間の中でのスライド作成であったため、「スライドに凝らなくていいよ」という河野教諭の声かけがあったが、インターネット上の写真やイラストを配したり、文字にアニメーションを設定するなど、効果的なプレゼンのための工夫を行う班も見られた。生徒たちが興味をもって調べたゴミ問題のテーマは、「ゴミの増加」「日本のゴミ問題」「土壌汚染」「海洋ゴミ」「ナポリのゴミ」「フィリピンのゴミ」「スラム街のゴミ」から「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」までさまざまだ。

◆考察やワークシートへの記述

 各自のスライドの作成が完了すると、メール送信により班長のiPadに全スライドを集約しプレゼン資料を完成させる。続いて、プロジェクターにスライドをミラーリングし、発表が行われた。発表時には、他の班の発表を聞いて、自分なりのゴミ問題の解決策を書き込むワークシート(プリント)が配布され、発表内容について考え、自分なりのゴミ問題の「実行できそうな解決策、新たなアイデア」を考え、記述する時間も用意された。授業をサポートした岩田彩子教諭は「発表しただけで終わらないよう、工夫をしている」と説明した。

◆総合評価をする時間をとることが大切

 授業の振返りでICT活用教育アドバイザーの重田氏は、「調べっぱなし、まとめっぱなしにならないような工夫を授業の段階段階に組み入れ、お互いの総合評価をする時間をとることが大切だ」と説明した。iPad活用の技量にはまったく問題がないが、その他の部分、たとえば情報をどう整理し、どうコミュニケーションをとるかに配慮をしているという。

 SACLAでの授業は、ICT活用による情報収集を行う「INPUT」、教室空間でICTを直接活用せずに情報の比較分析を行う「TRANSFORM」、ICTによる知識伝達を行う「OUTPUT」の3段階で構成され、生徒たちは教室環境を活かした協同作業を行っている。他者と協同しながら何かを作り出し、自ら課題に取り組み、能動的に学ぶ教育環境が大切だという。

 重田氏は、2名の大学の先生と大学院生のチームで、2011年4月よりSACLAの設計から関わり、同校のICT活用教育の支援を行っている。今後は、国内の中学校では2例目となるiTunes Uを開設し、生徒が中心となり制作する学校紹介や教材の公開も予定しているそうだ。

 授業終了後、ICT活用授業について話を聞かせてくれた永瀬夏鈴さんは「iPadの授業をやっている学校はまだ珍しく、授業は楽しいです」と語っていた。また今後は英語の授業でのiPad活用も予定されており、楽しみにしているのだという。同校のICT活用授業は、重田氏も言われるように「派手さ」はないが、従来の学習に無理なく自然にICTを取り入れた例といえそうだ。
《田村麻里子》

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