駿台予備学校が「イード・アワード塾2023」高校生・大学受験生 集団指導 全国の最優秀賞およびオンライン授業の最優秀賞、さらに「講師が良い塾」「教材が良い塾」で部門賞を獲得した。同校のこだわり、今後の展望などについて、現役部門統括の阿見寺英俊氏、既卒部門統括の恒川久仁子氏に話を聞いた。
100年あまりの実績、たゆまぬ進化への評価
--高校生・大学受験生 集団指導 全国の最優秀賞およびオンライン授業の最優秀賞、さらに「講師が良い塾」「教材が良い塾」で部門賞を獲得されました。まずはご感想を教えてください。
阿見寺氏:当校が設立以来こだわり続けてきた講師と教材の質を100年以上を経た今なお評価していただいていることを、非常に光栄に思います。時代とともに学習指導要領も入試問題も刻々と変化しています。当校の講師陣は、そうした変化を敏感に察知し、授業や教材に反映させています。そういった背景から「講師が良い塾」「教材が良い塾」の両部門で評価していただいたのではと思っています。
恒川氏:かつて当校で学んだ方が、お子さんを連れて入学相談会にいらっしゃって「あの先生はまだいらっしゃいますか」と聞いてくださることがあります。「うちの子にも、あの先生の授業を受けさせたいので」と。わが子にも受けてほしいと思っていただけるほど、印象的な教育を提供できているのだと実感でき、とても嬉しいですね。
駿台では受験が終わった生徒に「合格体験記」を書いてもらっていて、その中で、講師や教材に対する評価を綴ってくれる生徒が多いです。講師に対しては、「駿台は論理的に教えてくれる」という声が多いですね。現代文の授業に関しては、卒業生からも「今までは感覚で解いていたけれど、駿台で文章の読み方を論理的に教えてもらった。合格後も読書や論文読解に生かせている」という声も寄せられます。教材について、いちばんよく出てくるのが「駿台のテキストだけで大丈夫」という感想です。
阿見寺氏:教材の質には非常にこだわっています。教材作成チームだけでなく、現場で教鞭を取る講師陣を交えて、残す問題と新しくする問題について協議し、試行錯誤しながら改訂します。そうした練度が高い教材を、生徒にも学習効果が高いと評価してもらっているのは嬉しいです。
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--全国32校を展開されている貴校ですが、どのようなエリア展開、校舎展開をされていらっしゃるのでしょうか。
阿見寺氏:教育における地域格差は依然として課題だと感じています。各地から「駿台で学びたい」という声をたくさんいただいていますので、ニーズがあれば校舎展開もしていきたいとは思っていますが、今後はこれまで以上にオンラインサービスに注力していきたいと考えています。
恒川氏:かねてより地域間教育格差に課題を感じていた当校では、校舎がない地域の学生も、オンラインで授業を受けられるようにICT導入に向けて準備を進めていました。先んじて在校生に対するICT環境の整備を行っている中で、奇しくも、在校生全員にiPadとApple pencilを貸与する用意が整ったタイミングでコロナ禍となりました。多くの教育機関でオンライン授業を始めたことで、デバイス購入の争奪戦が起きたり、混乱もあったりと聞きますが、当校はすでにハード面もソフト面もオンライン対応を進めていましたので、落ち着いて移行することができました。
それ以降、すっかりオンライン授業が定着し、現在はオンライン授業の生徒の55%が「近隣に駿台の校舎がない」という理由での遠隔地からの参加、45%は通学圏内でありながら、通学に伴う時間や交通費を節約したいなどの理由で、自宅から受講している生徒という割合になっています。
洗練された良質な教材と「スマート」な講師陣
--「講師が良い塾」で部門賞を獲得されました。採用や育成など、講師に質におけるこだわりを教えてください。
阿見寺氏:当校の講師採用試験は非常に厳しいと思います。駿台の指導の特長は、1つ1つの問題を丁寧に読み解き、その原理原則に立ち返り、答えに至るまでの着想や着眼点を教えることで、汎用性の高い学びを提供するという点にあります。各問題の答えを教えるのではなく、その単元あるいは科目などの広い視野で、全体像を把握できるようにすることで、類題や発展問題にも対応できる力を育てるのが目的です。
講師にとって、たとえ東大の入試問題を解いて解法を教えることはできても、その問題を原理原則から教えることは並大抵のことではありません。採用試験では、駿台講師としての能力があるかどうかを見抜くために、具体的な問題を提示し、実際の授業を想定しながら「この問題をどう教えるか」を詰めていきます。私自身も採用試験に立ち会うことがありますが、試験官の厳しい眼差しは「本気」を感じます。妥協することなく「なぜ?」「どうして?」と繰り返し問いながら選考をするので、たとえ他塾で活躍している先生でも、たじろいでしまうほどです。こうして採用の段階でかなり絞り込まれますが、採用後も継続的な研修の実施や、卒業生・在校生からの授業評価を通じて、教授スキルの向上に努めています。
恒川氏:難しい問題を細分化し、「難しく見えるけれど、このアプローチを使えば最短で解答の筋道が見えてくるよ」と原理原則に立ち戻って教えられる講師は非常に限られています。そういったスマートな人材を探すことが、駿台の講師採用です。また、各教科の講義を担当する講師のほか、駿台では生徒の進路相談を受けたり、メンタル面をサポートしたりするクラス担任を配置しています。クラス担任になるためには、当校独自の「大学受験コーチング検定」に合格する必要があり、ICT活用、生徒のモチベーション管理、声のかけ方などについて、駿台全校で規定するレベルをクリアすることが求められています。
定期的に実施している授業評価アンケートで生徒から寄せられた声に対しては、私たちが講師と面談をし、改善につなげるように指導しています。講師という職業は基本的に個人事業主で孤独になりがちですから、私たちもできる限りのコミュニケーションを心がけています。これらの取組みを通じて、講師とクラス担任が連携し、質の高い教育を安定して提供できるよう、努めています。
--「教材が良い塾」でも部門賞を獲得されました。教材制作や活用におけるこだわりを教えてください。
阿見寺氏:当校の教材作成は、実際に教鞭を取る講師たちと連携しながら、常にブラッシュアップを続けています。生徒の反応や声も参考にしながら、授業の構成と連動する学習効果の高い問題を推敲しています。
恒川氏:講師に対しても教材の内容や使いやすさについて、アンケートを頻繁に行っていますし、学生にも年2回のアンケートで意見を募っています。
阿見寺氏:当校は、問題の量より質を重視しています。他塾では、同じような問題を10問、20問と解かせる「習うより慣れろ」の方針も見られますが、当校は真逆です。扱う問題は決して多いわけではありませんが、国語の題材にしても、数学の問題にしても、1つの問題を解く過程で、その根底にある原理原則を理解でき、さらに応用力を身に付けられる問題を練りに練って厳選しています。
恒川氏:解答や解説を記載してないことが当校のオリジナル教材のこだわりです。非常に細かい解説の付いた分厚いテキストを利用している塾もありますが、予習の段階で解説を参考にしてしまうと、解けたつもりになってしまい、授業へのモチベーションも下がってしまいます。当校では、授業で1つの問題に向き合い、講師がさまざまな解法を提示していきます。「解けたらそれで終わり」ではなく、1つの問題にさまざまな方面からアプローチし、原理原則を教えます。授業中に受け取る知識量は非常に多いです。
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阿見寺氏:当校の教材は非常にシンプルですが、学びの多い良問を集めています。一方で、このシンプルな教材を使って学びの多い授業を展開するには、講師の知識とスキルが必要です。当校は1コマ50分の授業で、たとえば数学であれば1回の授業で2問扱います。1つの問題で約30分語ることができるだけの質の高い講師陣が揃っているわけです。
ICTを活用し、効率的に力を付ける仕組み
--2021年から3年連続でオンライン授業 最優秀賞も受賞されています。コロナ以前からオンライン授業の構想があり、準備をされていたとのこと。オンライン授業における貴校のこだわりを教えてください。
恒川氏:ちょうどコロナ禍でのニーズと重なるタイミングで、2020年度からオンライン授業を開始しました。全国どこからでも、教室で受けるのと同質の授業をリアルタイムで提供できるだけでなく、クラス担任による、学習指導やモチベーション管理などのサポート(学習コーチング)や出願校選定などの進学相談も実施しています。また、質問アプリ「manabo(マナボ)」も導入しており、365日24時まで質問ができる体制を整えています。いずれも在校生に貸与しているiPadで利用できます。
阿見寺氏:「manabo」はいつでも質問したいときに、その場で画面共有しながら個別に指導を受けられるので、生徒からも好評です。質問内容に応じて、クラス担任に聞いたり、「クラスリーダー」と呼ばれる大学生のチューターに聞いたり、相談相手を選ぶことができます。相談が終了すると、先生はその対応について5段階で評価され、公開されます。先生にとっては厳しいシステムですが、質の向上につながっています。
--貴校において、ここ最近注力されていること、および今後予定しているアップデートについて教えてください。
阿見寺氏:今後も引き続き、ICTのさらなる推進と充実を図っていきます。2021年に開発導入した駿台オリジナルのICT教材「S-LME(スルメ)」の活用も強化していこうと考えています。「S-LME」は記述型問題に特化したAI教材で、出題への解答をApple pencilで画面に書くことで自動的に採点をしてくれます。間違えた場合にはヒントを提示し、それでもわからない場合はチューニングして、より粒度の高いヒントを出してくれます。個人の理解度にあわせて答えまでの道筋を少しずつ示してくれる、この仕組みを私たちは「ヒントアダプティブ」と呼んでおり、この仕組みで特許を取得しています。従来の教材のように、自動採点して解答を表示するだけではなく、ヒントを出しながら着想を教え、生徒の気付く力、考える力を育んでいくことができます。
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恒川氏:個人で学習を進めていると、ついすぐに解答を見てしまいたくなりますが、この仕組みを使えば、昨今多くの大学の入試問題で測られる思考力を着実に付けることができます。さらに「S-LME」では、クラス担任が生徒が解いている状況をリアルタイムで確認できるようになっており、予習復習の進捗状況もわかります。個々の生徒がどこでつまずいているのかを把握できるので、やらせっぱなしで終わることがありません。また、模擬試験などの成績もデータベース上で連携しており、解けていない分野や正答率を確認できるだけでなく、生徒の成績の伸びも可視化できます。
阿見寺氏:私も導入時「S-LME」を使って数学や物理の問題を解いてみましたが、問題に丁寧に向き合って原理原則を理解するという当校のポリシーに合致していると感じました。高校の先生方に試してもらうと、決まって「うちの授業でも使いたい」と言われますし、説明会で保護者の方に体験してもらうと、皆さん夢中になって問題を解き続けていらっしゃいますね。
恒川氏:既卒生向けには、授業の中で複数のICT教材を存分に活用する「プレミアムサポートコース」を提供しています。講師は授業に加えてタブレットで生徒の習熟度を確認しながら机間をまわり、手が止まっている生徒に声をかけて指導します。自分から積極的に質問できる生徒ばかりではないので、必要に応じて講師からアプローチすることで、きめ細かいサービスが実現できています。
阿見寺氏:「プレミアムサポートコース」は、集団指導と個別指導の良い点を融合したコースだと言えます。最短で成績が向上するため、非常にニーズが高まっていると感じています。かつての駿台は、超難関大志望の学生しか通えないハイレベルで厳しいイメージがあったかもしれませんが、今はこうしたサポート体制が整ったことで、どのレベルの学生に来ていただいても成績を伸ばすことができます。今後もICTを活用して、よりきめ細かで質の高い指導を充実させていきたいと考えています。
地域格差をなくし、日本の教育に改革を
--今後、貴校が目指すところ、そして展望を教えてください。
阿見寺氏:駿台の方針は、難しいことにチャレンジしていくことです。今の子供たちにも、自分の可能性を信じてチャレンジする力を付けてほしいですし、駿台にはその環境があると自負しております。「日本の教育をより良くしていく」というのが私たちの目指すところであり、そのために引き続き取り組むべき課題は、教育の地域格差だと考えています。これからも、ICT活用、オンライン授業の充実を通して、当校の教育を全国に届けるための整備をしていきたいと思います。
恒川氏:地域格差の解消は、ここ数年で実現に近づいてきている印象です。阿見寺の言うように、2020年以降の取り組みをさらにアップデートしていきたいですね。
現代の子供たちは、タイムパフォーマンスを重視するあまり、「時間がかかることや面倒くさいことはやりたくない」「早く結果を出したい」という傾向にあります。従来のように、易しい問題から順を追って取り組み、皆で足並みを揃えて勉強する方法は、時代にそぐわなくなってきています。従来のような量をこなす学習ではなく、洗練された良問にじっくり向き合う、そして学習にICTを取り入れ、効率良く勉強していくという当校のスタイルは、まさに現代に適しているのではないでしょうか。今後も生徒や保護者の皆さんに満足いただける質の高いサービスを提供していけるよう、尽力してまいります。
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コロナ以前から構想が進んでいたという駿台におけるICT活用は、予想以上に進んでいた。3年連続のオンライン授業最優秀賞は、そういった先見の明から始まり、日々のたゆまぬアップデートの賜物だと感じた。優れた教材とレベルの高い講師陣、そこにICTの力が加われば、まさに鬼に金棒。生徒たちの可能性がどこまで伸ばされるのか楽しみだ。最後に、時代の変遷とともに進化し、評価され続ける同校に敬意を表したい。
顧客満足度No1、たゆまぬ進化を続ける「駿台予備学校」