【プログラミング教育4】遊びと学びは一体…CANVAS石戸奈々子氏

 第4回の本記事では、11年前から子ども達にプログラミングのワークショップを提供し、ご自身も母親でいらっしゃるNPO法人CANVAS(キャンバス)理事長の石戸奈々子氏のインタビューをお届けする。

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石戸奈々子氏
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 国内外を問わず、子どものプログラミング教育が盛んに行われている。「プログラミング教育=将来はプログラマー」ということではなく、文章の読み書きや計算といった、子どものうちに身に付けるべき基礎的な能力・学力という位置付けで捉えられているのだ。

 「子どもがプログラミングを学ぶメリットは何なのか」「子どもに学ばせるとしたらどういったことから始めればいいのか」...学校および民間の取組み、有識者インタビュー、子どもに人気のプログラミングツールやサービスなど、全7回の連載で子どものプログラミング教育事情をお届けする。

 第4回の本記事では、12年前から子ども達にプログラミングのワークショップを提供し、ご自身も母親でいらっしゃるNPO法人CANVAS(キャンバス)理事長の石戸奈々子氏のインタビューをお届けする。

◆遊びと学びは一体

--「つくる」をテーマに全国から選りすぐりの子ども向けワークショップ・プログラムを集めた世界最大の子ども創作イベント「ワークショップコレクション」を2004年から毎年開催している中で、プログラミングのワークショップも人気だそうですね。子どもはどういうところに楽しみを感じているのでしょうか。

 子ども達にとって遊びと学びは一体のものです。子ども達は、日々の遊びの中で、いろんなことを学び、いろんなものに触れて、いろんなものを作りながら、たくさんのことを学んでいます。プログラミングも同じで、新しいことを発見しては色々と実験し、新しいアイデアを思いついては、試行錯誤しながら形にしています。実際に手を動かしてつくりながら考えることにより、思考が身体化し、どんどん新しいアイデアが生まれてきます。何よりも、自分が書いたプログラムでモノが動くって、子ども達にとってすごくワクワクする経験だと思います。新しい表現手段を手に入れることができるというのはとても楽しいことです。

 ゲームづくりでも、子ども達からは「キャラクターをこうしたい!」「テーマソングもつくりたい!」「ゲームオーバーを工夫したい!」など、次々とアイデアが生まれ、休憩時間も惜しんで制作に熱中する姿が見られました。子ども達は、心で感じ、頭で考え、手で表現しています。全身をフル稼働させています。子ども達が真剣に物事に取り組んでいるとき、それはその子たちにとって意味のある活動をしているときだと思います。夢中になる時間は楽しいですよね。

◆総合力が求められるプログラミング

--CANVASではどのようにプログラミング学習を進めていますか。

 たとえば小学校3~6年生を対象にした2日間のサマーキャンプでは、「このプログラミング言語を書けるようになりましょう」ではなく、「みんなで動く遊園地を作ろう!」というところからスタートします。すると子ども達は「こういうふうに観覧車を回したい」「こういうコーヒーカップを作りたい」と思って、「そのためにどんなプログラムを書けばいいんだろう」と、いろいろ学ぼうとします。

 私たちは「プログラミングを学んで欲しいのではなく、プログラミングで学んで欲しい」とよく言っています。プログラミングを通じて、論理的に考え、課題を解決する力や、他者と協働で新しい価値をつくり出す力を生み出していって欲しいのです。

 実際に、子ども達は、プログラミングというものづくりを通じて、試行錯誤しながら、自らの知識を構築していっています。

 また、プログラミングを通じて新しいものを生み出すときには、さまざまな知識や力が求められます。算数の計算や図形の性質の理解、国語の文章読解力や作文力、図工や音楽の創造力。問題解決力、論理的思考、そして協調性。断片的に学んできた知識を統合し、活用する、応用力、総合力を身に付けることができるのではないか? と思います。

 たとえば、テニスのゲームをつくるにあたり、ボールを滑らかに飛ばすためにサイン(sin)・コサイン(cos)を学んだ子どももいます。学校で学んだことが統合されていく。そして学校の勉強がどのように役に立つのかを実感することができる。プログラミング学習にはそのメリットがあって、「つくりたいものをつくっていくうちにプログラムが書けるようになっちゃった」というのが理想だと思っています。
《柏木由美子》

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