「幸せ」はトレーニングで増強できる!? 生理学研究所が発表

 自然科学研究機構生理学研究所は7月14日、「幸せと脳との関連が明らかになった」とする研究成果を発表した。幸福度が高い人ほど、ポジティブ感情に関連している脳領域の体積が大きく、そのために幸せな気持ちを感じやすいことがわかったという。

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幸福度と吻側前部帯状回の大きさとの関連
  • 幸福度と吻側前部帯状回の大きさとの関連
  • 幸せ感情と吻側前部帯状回活動との関連
 自然科学研究機構生理学研究所は7月14日、「幸せと脳との関連が明らかになった」とする研究成果を発表した。幸福度が高い人ほど、ポジティブ感情に関連している脳領域の体積が大きく、そのために幸せな気持ちを感じやすいことがわかったという。

 生理学研究所の定藤規弘教授、小池耕彦特任助教、中川恵理特任助教、愛知医科大学の松永昌宏講師らの共同研究グループが、幸せと脳の関連に注目。磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて、幸せに関連する脳領域を構造面・機能面から調べた。

 研究グループによると、「幸せ」には、好きなものが得られたときなどに経験する一時的な側面「幸せな気持ち(幸せ感情)」と、自分は幸せであると安定して認知される長期的な側面「幸福度」があり、2つの側面は相互に関連していることがわかっていたという。ただ、なぜ2つの側面が関連するのか、生理学的基盤は解明されていなかった。

 MRI実験では、参加者に「好きな人に告白してOKをもらった」などポジティブな出来事、「好きな人に告白してフラれた」などネガティブな出来事、感情的にニュートラルな出来事などをMRIの中で想像してもらい、脳領域との関連を調査した。

 その結果、幸福度が高い人ほど内側前頭前野の一領域である吻側前部帯状回(ふんそくぜんぶたいじょうかい)と呼ばれる脳領域の体積が大きいこと、幸せ感情の程度が高い人ほど吻側前部帯状回の活動が大きいことが判明。さらにポジティブな出来事を想像しているときの吻側前部帯状回の活動は、その場所の体積と相関していることも明らかになった。

 このことは、幸福度が高い人ほど、ポジティブな出来事に直面したときに幸せ感情を感じやすいことを意味しており、幸福の生理学的基盤が「吻側前部帯状回」という神経基盤の構造や機能と関連していることを示しているという。

 研究グループの定藤教授は「最近の研究で、脳は筋肉と同じように、鍛えれば鍛えるほど特定の脳領域の体積が大きくなることがわかっていますので、今回の結果は、楽しい過去の記憶の想起や、明るい未来を想像するといったトレーニングにより、持続的な幸福が増強する可能性を示したものといえます。トレーニング効果は今後実験的に確認する必要があるでしょう」とコメント。国民の幸福度の向上に結びつくことに期待を寄せている。

 研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、科学研究費補助金の補助を受けて実施。研究結果は、NeuroImage誌の4月13日オンライン版に掲載されている。
《奥山直美》

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